小菅努の商品アナリスト日記

マーケット分析の専門ブログ。金、プラチナ、石油、天然ゴム、穀物、砂糖、コーヒー市場などコモディティ市場を中心に、為替、株式市場などもカバーします。

金融機関、商社、事業法人様向けにマーケット分析情報の配信業務を行っています。コモディティ、FX市場の有料レポート配信サービス(法人向け)、寄稿・講演のご依頼などのお問合せについては、下記E-Mailまでご連絡下さい。折り返し連絡させて頂きます。

マーケットエッジ株式会社 http://www.marketedge.co.jp/
E-mail  kosuge.tsutomu@outlook.com

TOCOMゴム、一目均衡表の雲上限での攻防続く

東京ゴム先物相場は、一目均衡表の雲上限との攻防中です。今回のダウントレンドで雲に突入したこと自体が初めてですが、一気に雲上限もブレイクできるか否かの分岐点です。

20170722_4














(出所)Reuters 

ちなみに、前回雲をブレイクした昨年9月は、その後の大相場に発展しました。その当時の雲は薄かったのであっさりとブレイクが実現しましたが、7~8月に雲が強力な上値抵抗となっていただけに、下げ相場に一服感が広がりました。
20170722_5














(出所)Reuters 

更にその先だと、昨年3月にも雲をブレイクし、その後は2カ月近くにわたって急伸地合が形成されました。
20170722_6














(出所)Reuters 

過去の経験則からは、単純に雲を抵抗帯とみた判断に有効性も見られますが、今回はどうでしょうか。この視点だと、抵抗線214.80円、支持線は雲下限と基準線の重なる199.60円になります。各所で聞きますと、最近のゴム相場は余りに材料が少ないため、この種のチャート分析も流行のようです。

ナイジェリアに生産上限設置も、リビアは見逃された理由

産油国の協調減産では、石油輸出国機構(OPEC)内ではリビアとナイジェリアの二カ国が減産割当の適用除外になっています。両国ともに内戦などで減産状態を強いられているため、その状況下で政策減産を迫るのは余りに「酷」であり、寧ろ生産環境の正常化が許容できるとの合意があったためです。

7月24日の減産監視委員会(JMMC)では、ナイジェリアについては生産上限の設定が合意されましたが、リビアに関しては今回も生産上限の設定はなく、今後はOPEC内で唯一増産のフリーハンドを確保することになります。

20170722_2















(出所)EIA

なぜリビアだけが依然として特別扱いされているのかは、上のグラフを見ると一目瞭然です。つまり、リビアは急激な増産トレンドにあるものの、未だに絶対的な産油量からみれば通常時から大規模な減産を強いられた状態に変わりがないのです。

カッザーフィー大佐の独裁政権が崩壊した2011年の内戦時にリビアの産油量はほぼゼロまで落ち込んでいましたが、内戦終結後は日量140万バレル程度まで産油量が回復していました。しかし、その後は東西政治勢力の対立による内戦が勃発し、特に13年から14年にかけては大規模な減産を強いられました。

OPECの統計によると、6月の産油量は日量85.2万バレル、リビア国営石油会社(NOC)の報告だと既に100万バレルを超えている模様ですが、140万バレルを通常の生産体制と定義すると、まだ30%近い減産状態にある訳です。

NOCの最新の産油計画だと、17年は日量125万バレル、18年は150万バレルまでの増産が見込まれています。NOCのトップMustafa Sanalla氏は210万バレルを目指すとも発言しています。さすがにそこまでの増産を他産油国が静観することはなく、特にロシアは既にリビアの動向に神経をとがらせています。

リビア側としては、協調減産の期限切れまで何ら減産を行わない状況で、原油高の恩恵を受けるだけのフリーライドが理想的でしょうが、既にナイジェリアも産油量上限の設定を受け入れる中、リビア包囲網は徐々に狭まっているとみた方が良さそうです。

20170722_3




























(出所)Google Mapよりマーケットエッジ加工

第4回JMMC、ナイジェリアの生産上限設定にサプライズ感

7月24日に減産監視委員会(JMMC)の第4回会合がロシアで開催されました。

20170725_1










(出所)OPEC

6月時点では、当時のWTI原油相場が1バレル=40ドル割れの脅威に晒されていたこともあり、今会合では減産幅積み増しなどの追加政策対応を勧告し、減産強化の道筋を描く可能性が高いとみられていました。しかし、その後の原油価格上昇と在庫減少で追加減産の緊急性は薄れ、今会合に対するマーケットの期待値は必ずしも高くなっていませんでした。つまり、現時点での追加政策対応は不要であり、どのような議論が行われるのかを確認すれば十分との評価が優勢でした。

その意味では、ナイジェリアに生産上限を設定できたことには、サプライズ感がありました。事前のナイジェリア当局者の発言などから、筆者も今会合では可能性を検討するレベルに留まると考えていました。今後は、日量180万バレルまで若干の増産を許容しつつ、その後にフラットな生産体制に移行し、更には減産対応も検討してもらうという流れになります。リビアもこの流れに組み込めなかったことは強気派にとって残念な結果とも言えますが、リビアは急激な増産が続きながらも産油量の絶対水準が低いことで、当面は増産継続を静観することになりました。そもそも、リビアの現在の内戦環境にあっては、国家レベルでの減産体制を引くことは不可能といった議論もあったようです。いずれにしても、リビアとナイジェリアの無制限な増産によって、需給リバランスが破たんするリスクを軽減させることには成功しました。

マーケットが同会合に設定していた事前のハードルがかなり低かったこともあり、この結果に原油相場が買いで反応を示したのは当然と言えるでしょう。きちんと減産順守率を高めに設定しておけば、追加施策がなくても需給リバランスが進展するとの期待感が、現在の原油市場に存在していることが再確認できます。

警戒されたのは、今会合をきっかけに突然に追加減産の「催促相場」が始まってしまう展開でしたが、現時点ではその兆候は確認できません。一応は減産期間延長など追加施策のカードが存在することを誇示しつつ、そのカードを温存する姿勢を示したことは、現段階でのベスト・アンサーだったと評価しています。あくまでも減産によって需給リバランスを目指す産油国の本気度が再確認できました。

需給リバランス実現への道筋は長く険しいものですが、シェールオイル生産の安値限界ラインも見え始める中、協調減産主導の需給リバランスへの期待感が原油価格に反映され易い環境です。在庫減少データを確認しつつ、シェールオイルに過度の増産エンジンが掛からない価格水準を打診することになりそうです。在庫とシェール生産統計を確認しながら、ゆっくりとしたペースでのコアレンジ切り上げが打診される展開を想定しています。まずは50ドルの節目回復が問われます。

日本フィナンシャルセキュリティーズ主催セミナー「金価格が決まる歴史」のお知らせ

日本フィナンシャル・セキュリティーズ(岡藤グループ)主催のセミナーで講演を行います。猛暑の中かと思いますが、宜しければお越し下さい。普段はWebセミナーですが、今回は会場セミナーになります。

タイトル:金価格が決まる歴史
開催日時:2017年8月26日(土) 13:00~15:00
場所:日本フィナンシャルセキュリティーズ東京本店(東京都中央区新川2-12-16)
参加資格:無料(要申し込み)

参加方法:こちらのリンクからお申込み下さい。

内容:50年分のデータから過去の金価格の変動要因を検証し、それを前提に短中期分析につなげる予定です。原油も少しだけ話すかもしれません。


沖縄に海底金鉱脈発見、黄金の国伝説は生きている?

海上保安庁は7月21日、沖縄久米島沖の水深1,500~1,800mの海底で火山地形を発見したと発表しました。周辺を調査した石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると熱水噴出孔(チムニー)が複数発見されており、金、銀、銅、亜鉛などを含む鉱石が採取されています。

20170724_3



















20170724_4





















(出所)JOGMEC

JOGMECによると、珠美サイトで2.9グラム/1トン、銀水サイトで13.6グラム/トンと、平均的な金鉱石の3グラム前後と同等かそれ以上の金含有量が報告されています。「地中に金属の鉱床が存在する可能性がある」として、「沖縄海域には従来の探査手法では発見が困難な海底熱水鉱床がまだまだ存在する可能性を示唆しています」と今後の調査にも強い期待感を示しています。
20170724_1












20170724_2



















(出所)JOGMEC

あくまでも「海底熱水鉱床の資源量確保」を目的としたもののため、直ちに商業ベースでの金生産が予定されている訳ではありません。陸上の鉱床と海底の鉱床では技術レベルも採算環境も全く異なるため、現時点では実際に供給を行う「資源の確保」ではなく、資源の存在を確認する「資源量確保」に過ぎません。

【用語解説】
資源量(resources)=ある地域内に理論的に存在する資源の極限量。または、将来の探鉱によって付加されると考えられる量。

ただ、海底に火山地形を数多く有する日本にとっては、実際の生産は可能か否かは保留するとしても、大量の金埋蔵量を有している可能性が高まっていることは、「黄金の国ジパング」伝説が新技術によって復活しつつあると考えると夢がありそうです。

金は星(地球)の形成過程で合成されたと言われており、地球内部の鉱床が熱水鉱床などの形で隆起すると、地上でも採取可能になります。例えば、佐渡の金山は有名ですが、これは日本海側で海底隆起が発生したことで佐渡島が形成される過程において、海底鉱床が地上に出てきたために金採取が可能になった結果です。

日本の周辺には、金、銀に限らず海底鉱物資源の存在が多数確認されていますが、資源量の増大と技術の蓄積、採算ラインの切り下げが実現すると、日本が産金国、産銀国になる時代も来るのかもしれません。単純な資源確保の観点では、佐渡島のように海底隆起で海底の金鉱脈が地上に現れるのが望ましいのでしょうが、その際は日本列島の形が変わってしまいそうです。

オピオイドに対するイエレンの警告、経済には痛みある鎮痛剤

「オピオイド系鎮痛剤(Opioid Epidemic)」がFEDウォッチャーの間でも話題のテーマになっています。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が7月12~13日の議会証言において、オピオイド中毒患者の増加が雇用者数の伸び、労働参加率引き上げを阻害する要因になっている可能性を指摘したためです。薬物中毒で死亡者や要治療者が増えていることに加えて、フルタイムの就労が困難な人が増えていることが、経済成長との比較で就労者数の伸び悩みを招いている可能性が高まっていることが、金融政策においても重大な関心事になっています。

「オピオイド」とは聞きなれない言葉ですが、日本緩和医療学会は、「オピオイド(opioid)とは、麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などのアルカロイドおよびモルヒネ様活性を有する内因性または合成ペプチド類の総称である。」と解説しています。古くはケシから採取されるアヘンがありましたが、鎮痛剤として利用される麻薬性の薬品のことです。終末治療の痛みを緩和する目的などで使用されています。

しかし、麻薬性のある薬品はいわゆる「ドラッグ」としての使用が可能であり、その広がりが問題になっている訳です。米保険福祉省(U.S. Department of Health & Human Services)からは、2015年時点のデータとして下のような数値が報告されています。
201723




























オピオイド乱用者が1,250万人おり、3万3,091人が死亡しました。この他に、ヘロインの乱用者が82万8,000人おり、こちらは9,580人が死亡しています。オピオイド乱用者は1日当たりで100人近くが死亡した計算です。この大部分は成人で本来であれば就労能力を有した人と見られますが、死亡はしなくても就労が不可能な患者が増えれば、家計部門の収入に減少圧力が働くことになります。

1,250万人のオピオイド乱用者の就労比率のデータはありませんが、就労不可能な比率が1割としても125万人が労働市場から退出してしまうことになります。ある程度のまともな職種だと、ドラッグ検査が求められることもありますが、それに通過できない場合には労働市場からの退出や低賃金のパートタイム就労を迫られることになります。

201723






















上は、NY Timesに掲載された人口10万人当たりのオピオイド乱用者の死亡者数です。特にここ数年で伸びが加速し、今や20人前後/10万人に達しています。本来であれば就労しているはずの人達が、フルタイムからパートタイム、そして失業、更には死亡と、階段を駆け下りているのです。

county-drug-overdose-deaths















こちらはボストン連銀作成の、人口当たり死亡者数のマップです。地域的な違いが大きい問題であることが確認できます。

イエレンFRB議長はオピオイド中毒と労働参加率に因果関係があるのかは断定できないとしていますが、先進国でオピオイド中毒者が増えているのはアメリカだけだと、経済の観点から無視できない影響が生じていることを指摘しています。米国においては犯罪を貸した収監者の増加、収監経験者の就労の難しさも問題になっていますが、ここ最近は地区連銀からもこの問題のリサーチペーパーが増え始めています。米経済の新たなリスクとして警戒レベルを引き上げておく必要があるでしょう。

コモディティ市場も警戒するゴールドマンのQ2収益悪化

7月18日に米ゴールドマン・サックスが発表した4~6月期決算では、収益(revenues)が前期比9%減、前年同期比17%減となりました。部門別では、債券為替コモディ部門(FICC)が前期比31%減、前年同期比40%減と大きな落ち込みになったことが、収益環境全体を下押しした格好です。

下のグラフはFICCと株式の各部門の収益をグラフ化したものです。2015年7月からボルカー・ルールの適用が始まりましたが、それと前後してFICC部門の収益環境が急劇に悪化していることが窺えます。金額ベースでも11.59億ドルは、2015年10~12月期の11.23億ドルに次ぐ低水準です。
20170723_9

















こちらはFICC収益の前年同期比です。前年同期が20%増となっていた反動もあるのでしょうが、40%減はそれを考慮に入れても厳しい数値です。市況全体の低迷もあるのでしょうが、ボルカールールで自己勘定取引に強力な制限が課せられる中、コモディティ取引の収益が大幅に落ち込んでいる結果です。既にJPモルガンやバークレイズ、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行などがコモディティ取引の縮小、撤退などを進めていますが、唯一コモディティ取引事業の地位を維持しているゴールドマン・サックスも収益減少圧力に晒される中、同社株主などマーケットからは同事業の縮小、撤退圧力が一段と強まり易い状況になっています。
20170723_10

















ゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)ロイド・ブランクファイン氏は、一貫してFICC部門の責任者を務めており、その前はゴールドマン・サックスに買収された商品先物会社Jアローン(J. Aron & Company)の出身でした。専ら貴金属セールスでキャリアを積み、そこでの実績をもとにゴールドマン・サックスのトップまで上り詰めた人物です。
lloyd-blankfein-193x193










(出所)Goldman  Sachs

トランプ政権の国家経済会議(NEC)委員長を務めるゲーリー・コーン氏も、同じくJアローンズからゴールドマン・サックスの社長を務めた人物ですが、同社幹部にはこのようにJアローンズ出身者が数多く居ます。

同社がコモディティ取引事業のプレゼンスを維持しているのが、単純な「思い入れ」なのか、他の大手金融機関とは異なる事業戦略・見通しの結果なのかは分かりません。ただ、株式市場から強まるコモディティ事業の縮小、撤退圧力に逆らえないのではないかとの見方が一段と強化されていることは、同社の業績環境に対してはポジティブに機能する可能性が高い一方で、コモディティ市場の更なる不安定化を促すリスクになりそうです。

なお、ゴールドマン・サックスはダウ工業平均株価全体の7.0%を1社のみで構成しています。JPモルガン・チェースの2.9%と合計して、ダウは10%程度が金融株の動向に支配されています。

住友ゴムが中国で増産? 低燃費タイヤの基礎知識

住友ゴム、中国タイヤ生産6割増 低燃費用 300億円投資
「住友ゴム工業は2020年をめどに中国でのタイヤ生産能力を6割増の1日あたり最大10万本に引き上げる。」(日本経済新聞)

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO18983830Y7A710C1TJ2000/ (有料記事)

住友ゴム工業からは何もプレスが出ておらず、日経新聞が得意な「飛ばし」記事の可能性もありますが、同記事によると「深刻な大気汚染を背景にした低燃費タイヤの需要拡大に対応する」として、低燃費タイヤを武器に中国市場のシェア拡大に乗り出す方針と伝えられています。

住友ゴム工業のタイヤのメインブランドは「ダンロップ(Dunlop)」であり、その中の低燃費タイヤとしては「エナサーブ」のブランドがあります。同社のウェブサイトによると、「転がり抵抗値」を従来品に対して12%低下させるとされています。

20170723_7












(出所:住友ゴム工業)

自動車の燃費はエンジン性能に加えて、走行時に自動車が受ける各種抵抗を低下させることによって、向上させることが可能です。タイヤに関しては、道路との摩擦で生じる「転がり抵抗」に影響しますが、一般社団法人自動車タイヤ協会によると、燃費全体に占めるタイヤの寄与率は一般走行で7~10%となっています。
20170723_8









20170723_8











(出所:一般社団法人自動車タイヤ協会)

「転がり抵抗値」を下げると燃費効率は改善しますが、自動車制御性能は低下するため、劇的な数値の変化が実現する訳ではありません。ただ、技術改良によって「転がり抵抗値」は段階的に引き下げられており、上述の住友ゴム工業の場合は従来品に対して12%軽減とされています。

燃費に対するタイヤの寄与度を10%とすると、「転がり抵抗値」を12%引き下げた際の燃費への影響は下記の計算式になります。

10%×12%=1.2%

つまり、燃費効率を1.2%引き下げることが可能になり、その分だけ化石燃料の消費を抑制することが可能になります。

低燃費タイヤの正確なシェア統計はありませんが、住友ゴム工業は4月19~28日に開催された上海モーターショーにおいて、「ゴム技術でタイヤにイノベーションを巻き起こす」をテーマに低燃費タイヤの積極的なプロモーションを行っていました。低燃費タイヤは、ミシュランやブリジストンなど他のメーカーも当然に手掛けていますが、現時点で優位性があると言われる住友ゴム工業の挑戦状況によっては、中国国内のエネルギー消費にも一定の影響が生じてくる可能性がありそうです。1.2%の燃費効率改善はガソリン100リットルが98.8リットルに変わるだけとも言えますが、中国市場全体で普及が進めば環境対応のみならず、エネルギー消費抑制の観点でも寄与度は大きいでしょう。

天然ゴム市場分析の立場では、それに伴い原料における天然ゴムの消費比率が増えるか否かの方が重要ですが、中国では環境問題の深刻化からこの種の低燃費タイヤに政府支援が行われる可能性も十分にあり、今後の展開は単純な市況分析の枠を超えて注目したいところです。

それにしても、この住友ゴム工業の中国生産拡大のニュースについては、日経新聞以降の後追い報道もありません。どこまで信じて良い記事なのかは分かりませんが、低燃費タイヤがタイヤ業界のみならず、エネルギー消費、環境問題に大きな影響があるテーマであることは間違いありません。

米穀倉地帯の干ばつ状況とアウトルック

シカゴ穀物相場は天候相場のクライマックスを迎えています。小麦に関しては天候リスクの織り込みがほぼ一巡した格好ですが、トウモロコシと大豆に関しては受粉期の進展途中であり、なおイールド予想に大きな不確実性が残されています。

今季の天候相場は、作付け期の多雨から6月以降は干ばつ懸念にテーマがシフトしました。下の図は、米農務省(USDA)の「Drought Monitor(干ばつモニター)」の報告です。干ばつ報告については、「なし」から「D0-D4」の合計6区分がありますが、マーケットの傾向としては「D2」以上が増えてくると、天候リスクが意識され易くなる傾向にあります。直近ではカナダ国境付近に厳しめの干ばつ報告が行われていることが確認できます。州としてはノースダコタとサウスダコタが中心になります。したがって、この地域の干ばつが緩めば売り、強まれば買いというのが、6月以降の穀物相場の基本テーマです。
20170723_1




















では、今後も干ばつ傾向は続くのでしょうか。米気象庁(NWS)の8月予報によると、概ね50~60%程度の確率で平年を上回る気温が予想されています。

20170723_2

























一方、降水量については平年並みまで戻す見通しです。

20170723_3


























下は、10月までの「干ばつモニター」の予想になります。干ばつの中心部が徐々に南下する予想になっています。
20170723_4




















次に短期の気象見通しですが、下は7月22日時点の3日予報です。干ばつ発生地域に低気圧が発生し、前線が形成されていることが確認できます。この予報が、22日のシカゴ穀物相場を押し下げた一因です。週末にかけて降雨が観測され、農作物のストレスが緩和するのではないかとの見方が広がりました。

20170723_5





















こちらはその先の7日予報です。こちらを見ると再び高気圧が発達し、前線がカナダまで押し上げられる予想になっています。ホット・アンド・ドライの再燃を警戒させる天気図ですが、受粉期の最終段階に向けて、もう暫くは気象予報に一喜一憂する天候相場の消化が求められています。
20170723_6


1カ月間で2回目のリグ稼働数減少を考える

アメリカの石油リグ稼働数(米ベーカー・ヒューズ社発表)の伸びが鈍化しています。昨年5月27日の316基で底を打って以降は前週比で増加するのが「当然」となっていたデータですが、6月30日に前週比2基減の756基となったのに続き、7月21日は同1基減の764基となり、過去1カ月で2週間が前週比マイナスとなっています。6月までは、1月13日に前週比7基減となったのを除くと、全ての週が前週比プラスとなっていましたが、少なくともリグ稼働数ベースでは産油環境に一定のネガティブ・インパクトが生じていることが強く推測される状況にあります。

20170722_1


















リグ稼働数と産油量との間には一定の相関関係が認められますが、必ずしも同一視することはできません。1リグ当たりの生産性は刻々と変化しており、リグ稼働数が減少しても増産が続くこともあれば、その逆もあるためです。例えば、2014年10月10日にリグ稼働数はピークを打ちましたが、産油量がピークを打ったのは翌15年6月5日です。実に8か月ものタイムラグが生じています。

ただ、リグ稼働数が増えづらく、更には減少する場面が増えているということは、「稼働停止>稼働開始」のパワーバランスに傾斜し始めていることを意味します。少なくとも稼働開始数が減少しているのは間違いないでしょう。

2014年の経験を振り返ると、原油価格がピークを打ってから16週間後にリグ稼働数が減少に転じ、更にその34週間後に産油量が減少し始めました。ただ、原油価格がリグ稼働数に影響を及ぼし始めるのはそこまでの時間軸を想定する必要はないでしょう。その当時に関しては、寧ろ原油価格が1バレル=90ドル台を割り込み始めたことが、リグ稼働数に影響を及ぼし始める「マジックナンバー」になった可能性が高そうです。

【2014年の原油価格、リグ稼働数、産油量のピーク時期】
◆原油価格ピーク 2014/06/20
  (16週間)
◆リグ稼働数ピーク 2014/10/10
  (34週間)
◆産油量ピーク 2015/06/15

そこで今回のリグ稼働数にブレーキが掛かり始めた原油価格をみてみると、45ドル前後が現在の「マジックナンバー」だと言えそうです。正確な試算ではありませんが、ここ最近の原油価格とリグ稼働数との相関を見ている限りだと、概ね45ドル前後の価格水準にリグ稼働数の「増加」と「減少」の分岐点が存在する可能性が高そうです。減産開始ラインとなると、もう少し下向きに幅を持たせることで、40~45ドル水準が最低限でも要求されると推計されます。

シェールオイル増産にブレーキを掛けるだけで十分との視点であれば40~45ドル水準で十分であり、40ドル割れが打診されるのは、シェールオイルの積極的な減産が要求された時になりそうです。その意味では7月の原油相場リバウンドは、マーケットが必ずしも(現時点での)追加の生産調整を要求していないことを示唆していると考えています。

米原油在庫を使ったWTI原油価格分析

米国の原油在庫とWTI原油が逆相関にあることはイメージできると思います。在庫増加は供給超過、在庫減少は供給不足が発生していることを意味するため、在庫のベクトルと価格のベクトルが正反対の方向を向くのは当然とも言えます。

下のグラフは、2010年から2017年7月中旬までの米原油在庫とWTI原油の関係を散布図にしたものです。在庫が3億5,000万バレル前後から4億バレルを大きく超える過程において、原油価格のコアレンジが大きく切り下がったことが確認できます。在庫環境の急変を受けて、原油価格のコアレンジが70~110ドル水準から30~60ドルまで切り下がったことが明確に見て取れます。換言すれば、これが米国内のシェール革命の原油在庫と原油価格に対するショックの大きさを示すものになります。
20170721_1 

















では、米国の原油在庫からWTI原油価格を予測できるかというと、そこまで話は単純ではありません。在庫変動はあくまでも原油価格変動の一つの要因であり、上述のように中長期では比較的高いレベルの逆相関関係が認められるものの、それが短期分析のツールとして有効かは別の議論になるためです。
20170721_8

















上のグラフは、2017年に限定して、米原油在庫とWTI原油の関係を散布図にしたものです。これをみますと、年初からの2カ月程度は在庫変動に関係なく50ドル前半の値動きが続き、その後は在庫動向と関係なく突然に価格水準を切り下げ、その後は在庫減少にもかかわらず40ドル台中盤を中心に保ち合い相場になっていることが確認できます。

仮に、米原油在庫とWTI原油の逆相関が明確に成立しているのであれば、現在の在庫水準からは50ドル台前半が正当化されますが、そうならないことは、まだ1~2月期程には需給リバランスに対する信認が回復していない可能性が高いことを示しています。

足元では、米原油在庫が急ピッチに取り崩されていますが、米原油在庫とWTI原油の逆相関をトレンドとして確立できれば、50ドル台前半までは特に過熱感なく達成可能な一方、50ドル台後半を正当化するためには、更に大幅な在庫削減が必要とのロジックになります。
20170721_9

















ここで用意したのが、米原油在庫とWTI原油価格の相関係数をグラフ化したものです。4週間と12週間で計算してあります。教科書的には逆相関が通常の状態になるため、-1.00に近づくのが理想的です。しかし現実には、逆相関と正相関との間を行き来していることが確認できます。ただ、6月下旬以降は4週間単位だと-0.65と比較的高いレベルの逆相関が認められ、12週間単位でも正相関が崩れ始めていることが確認できます。このまま在庫減少トレンドを維持しつつ、米原油在庫とWTI原油価格の逆相関を確立できるのかが試されています。

なお、下記は2010年から17年までの各年の米原油在庫とWTI原油価格の散布図です。2012年や13年は在庫を使った原油価格分析が有効に機能しましたが、2014年の原油相場急落後は、必ずしも有意性が見いだせず、在庫を使った分析に関してはきちんと逆相関関係が機能しているか否かをチェックする必要があるでしょう。無条件に活用して良いデータではありません。

20170721_2

















20170721_3

















20170721_4


















20170721_5


















20170721_10

















20170721_6

















20170721_7

















20170721_8



月別アーカイブ
本棚
QRコード
QRコード
記事検索
プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業部、営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
kosuge.tsutomu@outlook.com

【SNS】
Twitter

【連絡先】
E-mailでお願い致します。相場動向に関する質問への個別対応は行っていませんのでご了承下さい。
小菅努のコモディティ分析
小菅努のコモディティ分析 ~商品アナリストが読み解く「資源時代」

会員制の有料メルマガです。コモディティの基礎知識から専門的な分析まで提供しています。1,944
円/月、週2回以上の発行です。


詳細や購読のお申し込み方法は
http://foomii.com/00025
をご覧下さい。
コモディティ・デイリー分析
NY金、プラチナ、原油、シカゴ穀物のデイリーレポートです。 法人でのご購読希望の方は、 kosuge.tsutomu@outlook.com までお問い合わせ下さい。
アナリストの視点
Yahoo!ニュース コモディティアナリストの視点

Yahoo!ニュースに不定期で寄稿しています。


過去のレポートはこちら をご覧下さい。
Twitter
amazon.co.jp