小菅努の商品アナリスト日記

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金相場の強気派にとって不都合なデータ(2)

今朝(8月4日付)の日本経済新聞にコメントが掲載されています。今週初めに取材対応したものですが、金価格上昇にもかかわらず金上場投資信託(ETF)残高が減少している「謎」についてです。

私は、世界的な金融政策正常化の流れ+政治リスクの後退で金ETF市場から資金が流出しているのに対して、金価格上昇はドル安に反応した短期筋のショートカバーに過ぎないとの分析を紹介しました。

金価格の上昇と金ETF売却のどちらが正しいのかは今後の議論ですが、グローバルマクロ戦略で金市場に魅力を感じない向きが増えていることは、少なくとも現在の金価格の上昇圧力の持続力を疑問視させる動きと言えそうです。



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金ETFの投資残高
(出所)Reuters

中国の地金・コイン販売減少に思う

中国の金現物需要です。四半期ベースで、バー・コインと宝飾の二区分になります。バー・コイン投資は中国の資本流出が警戒された昨年10~12月期、そして今年1~3月期に100トン超の急増となりましたが、4~6月期は落ち着いてきたことが確認できます。中国人投資家の資本流出懸念、人民元不信が一服したと言えそうです。

宝飾は低水準での安定傾向です。もはやギラギラとした24金の宝飾品は、中国のトレンドではなくなっていることが確認できます。

無題

インフォーマの米穀物生産高見通しを前提にすると?

米穀物調査会社インフォーマ・エコノミクスが2017年度の米穀物生産高、イールド見通しを公表しました。下記の数値になります。

【トウモロコシ】
生産高:135.90億Bu
イールド:162.8Bu/エーカー
【大豆】
生産高:42.35億Bu
イールド:47.7Bu/エーカー

さて、この数値をどのように評価するかですが、残念ながら米農務省(USDA)の直近報告ではトレンドイールドが採用されているため、USDA予想との比較はまだできません。ただトレンドイールドを前提としたUSDA7月需給報告の数値は下記の通りです。

【トウモロコシ】
生産高:142.55億Bu
イールド:170.7Bu/エーカー
【大豆】
生産高:42.60億Bu
イールド:48.0Bu/エーカー


一見して、トウモロコシがUSDA7月報告と大きく異なる数値になっていることが確認できます。生産高ベースだと6.65億Buの差は深刻に受け止める必要があるでしょう。

仮にUSDA7月需給報告で生産高の数値だけをインフォーマの予測値に置き換えると、在庫見通しはどのように修正されるのでしょうか。計算してみますと、7月報告の23.25億Buから16.60億Buまで減少します。在庫率だと16.2%から11.6%までの引き下げになります。この在庫率は、2013/14年度と14/15年度の間になり、4年ぶりの低在庫環境と評価されることになります。

この種の需給見通しの計算はそこまで単純化できませんが、このインフォーマの生産高予想が実態に近い数値であれば、トウモロコシ相場のコアレンジは300セント台の前半や中盤ではなく、後半に設定されることになります。

当面は天候相場の後処理が優先されますが、大きく下げるようであれば需給相場期に向けて物色妙味も出てきそうです。

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米原油在庫減少→WTI原油高の流れ

米原油在庫とWTI原油価格との逆相関が回復傾向にあります。原油在庫の減少は4月から始まっているにもかかわらずWTI原油は逆に水準を切り下げる展開が続てきましたが、6月下旬以降は在庫減少とWTI原油価格上昇の教科書的な需給分析が機能する局面に回帰しています。

下の図では、左上が年初で、左下が直近の値になります。

直近の7月28日時点の米原油在庫は今年最低を記録していますが、まだ原油価格は今年の最高に到達していません。ドル安の進行状況などを考慮に入れなくても割安と評価できそうです。

無題 

「赤いダイヤ(DVD)」

某メディアの記者と話している時に話題に出て、久しぶりに見てみました。在庫の玉締めを行ってからの買い上げによる暴騰相場、嘘の入庫情報による相場急落など、映画としてみる分には楽しいですね。インターネットがなく、情報の価値が今よりも遥かに高かった時代の小豆相場の話です。

今の時代もこれと似たような話は聞きますが、消費地在庫の不正を使った相場操縦はさすがに無理ですね。せいぜい、嘘情報を流す程度でしょうか。最近は上海ゴムでこれと似たような動きもあったとも聞きましたが、私には真偽がわかりません。

それにしても、若い三田佳子が綺麗です。

大豆の作柄改善報告に強気筋は恐怖しよう

米農務省(USDA)が発表した作況報告では、大豆の「良」以上の比率が前週の57%から59%まで上昇しました。干ばつ被害が深刻化し始めてから、この数値が上振れするのは初めてのことです。この数値は7月30日時点のものですが、産地天候の改善報告が作況報告の数値にも反映された形です。

州別でみると、ノースダコタ州は41%から34%まで低下するなど、手離しで歓迎できる数値ではありません。土壌水分のデータは悪化傾向が続いており、トウモロコシの作柄は大豆とは逆に悪化しています。まだ干ばつの厳しい影響が窺える数値とも言えます。

ただ、産地の気象環境が徐々にではありますが、改善傾向を見せる中、この種の作柄改善を示唆する統計は、強気派に恐怖心をもたらすことは間違いないでしょう。あくまでも作況報告よりも産地気象環境に注目すべきですが、弱気筋は強力な援軍を得られた格好になっています。

無題




















(出所)UDAよりマーケットエッジ作成

WTI原油も50ドル台回復、強気派の見ている7点

7月31日の取引で、WTI原油先物相場がついに1バレル=50ドルの大台に乗せました。6月には40ドル割れも警戒されていたのと比較すると隔世の感が強い値動きです。6月は協調減産による需給リバランス失敗との見方が広がっていましたが、現在は「なんとかなるのではないか」との見方が浮上していることが、安値是正に直結しています。

要因としては、1)4~6月期以降の需要拡大、2)着実な在庫減少圧力と減少見通し、3)産油国の協調減産に対する本気度、4)ナイジェリアへの生産キャップ設定、5)シェールオイルの安値限界に対する警戒感、6)ベネズエラ情勢の緊迫化、7)ドル安・低金利環境など、様々なポイントが指摘可能です。

ただいずれにしても、特に追加減産対応などが要求されなくても、原油需給リバランスが実現するとの信頼感がマーケット全体に広がっていることが重要です。在庫の5年平均回帰という大目標の達成は簡単ではなく、まだ厳しく長い道のりを想定していますが、7~9月期は原油安是正を進めるのであれば最大のチャンスであり、需給見通しに沿った通りの値動きと評価しています。

問題は、原油高は「5)シェールオイルの安値限界に対する警戒感」を解消させるのみならず、「シェールオイル増産への警戒感」というネガティブ材料に転換させてしまうことです。どこまでシェールオイルの増産圧力を許容できるのかが、原油相場の戻り高値を決定づけます。現状だと50~55ドル水準が適正ラインと考えていますが、6月の行き過ぎた下げ相場と同様に、安値是正の動きも行き過ぎる傾向があります。

無題

















NYMEX原油先物相場
(出所)Reuters

第二のイラン化が警戒されるベネズエラ

ベネズエラではマドゥロ政権が憲法を改正して与党・統一社会党が新議会を掌握することを目的に、制憲議会選挙を強行しました。議会では野党が多数派を占めていますが、全議席を与党が獲得し、大統領の権限を強化する憲法改正を進めることで独裁体制を強化することが目指されることになります。

ただ、野党は今回の選挙をボイコットしており、米欧のみならず南米の周辺国からも「非民主的」な選挙には批判の声が強くなっています。

それだけであれば新興国特有の政治的混乱状況で終わりますが、ベネズエラは石油輸出国機構(OPEC)にも加盟する主要産油国であることが、問題を複雑化させています。米政府は直ちに同国の石油産業を制裁対象とする検討に入っており、輸入禁止や石油産業に対する投資禁止など、ベネズエラの石油業界を崩壊させることで、資金面からマドゥロ政権にダメージを与えることが目指される方向に議論が進んでいるためです。

これは、核開発問題で米欧と対立したイランに対して採られた施策と同じ方向性であり、ベネズエラの「第二のイラン化」とも言えるリスクが浮上しています。

米エネルギー情報局(EIA)のデータによると、5月に米国が輸入したベネズエラ産原油は日量70.8万バレルであり、全輸入量839.7万バレルの8.4%を占めています。シトゴやバレロはそれぞれ日量20万バレル程度の輸入を行っていますが、重質油の主要輸入先であるベネズエラに対する経済制裁は、米国内の製品供給に対しても懸念を抱かせるものになります。

仮に投資分野に限定された制裁でも、既に経済破綻で投資能力が欠如しているベネズエラ石油業界は大きなダメージを受けることになります。直近の6月時点の産油量は日量193.8万バレルですが、販売難と投資難に直面した際に、この産油量がどこまで落ち込むのかは試算するのが難しい問題です。

経済制裁の内容によっては、急激な落ち込みになる可能性もあり、これまで投資不足で緩やかな減産状態にあったベネズエラが、突然に原油市場の主役の座に躍り出た格好になっています。新たな地政学リスクの誕生と言えそうです。

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(出所)EIA、赤線は筆者加工

本気度を高める産油国、減産順守率引き上げを協議へ

石油輸出国機構(OPEC)は、8月7~8日に加盟国と非加盟国との間で専門家会合を開催すると発表しました。7月24日の減産監視委員会(JMMC)では減産順守強化への働き掛けが強化されていましたが、その具体策を協議する会合になります。OPECは「技術会合(technical meeting )」と位置付けています。

この会合で何かの結論を出すことが目指される訳ではなさそうですが、どうすれば減産順守率を100%に近づけることが可能か、議論を深める場になりそうです。参加予定国にはクウェート、ロシア、サウジアラビア、UAE、イラク、カザフスタンなどの名前が挙がっていますが、少数国間での協議になりそうです。この場での議論を元に、技術委員会(JTC)やJMMCに報告を行い、具体的な施策を検討する流れになるのでしょう。

現時点では来年3月まで協調減産が継続される予定ですが、需給リバランス実現に対する期待感が高まりつつあるタイミングで、改めて減産順守率引き上げへの動きを見せていることは素直に評価できます。24日の会合ではナイジェリアの産油量に上限を設定することにも成功しており、産油国サイドが勝負に出ている感が強くなっています。

JMMC continues efforts to effectively monitor the implementation of the Declaration of Cooperation No 33/2017

Vienna, Austria
29 Jul 2017

Following the 4th Meeting of the Joint OPEC-Non-OPEC Ministerial Monitoring Committee (JMMC) in St. Petersburg, Russia, on 24 July 2017, the Joint OPEC-Non-OPEC Technical Committee (JTC) has been instructed to convene with some OPEC Member Countries as well as some non-OPEC participating countries to identify ways and means of raising levels of conformity.

Consequently, meetings will be held in Abu Dhabi, United Arab Emirates, on 7-8 August 2017 and will be co-chaired by Kuwait and Russia, in the presence of representatives from the Kingdom of Saudi Arabia, which is serving as President of OPEC in 2017.

Other Members of the JMMC/JTC will not be attending as they have delegated to the Co-Chairs the responsibility of conducting these meetings and reporting back to the JTC and the JMMC accordingly.

This is a technical meeting being held to better understand the difficulties and obstacles faced by some OPEC and non-OPEC participating countries and to assess how conformity levels can be improved with the goal of achieving a faster rebalanced global oil market, for the benefit of producers and consumers alike.
(出所)OPEC

北朝鮮のICBM発射、市場はレッドライン超えずとの評価

北朝鮮は7月28日午後11:41頃、日本海に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射しました。北朝鮮側は4日に続いて「火星14」を発射したと発表しており、北朝鮮が米本土を攻撃する技術的要件を整えつつあることが確認できます。
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(出所)読売新聞

マーケットの視点では地政学リスク(geopolitical risk)の織り込みがみられるか否かが焦点になりますが、同日の欧米市場の金価格、ボラティリティ指数などは特段の反応を示しておらず、現段階では米国の対北朝鮮政策が転換期を迎える「レッドライン」は超えていないとの評価が、マーケットにおいては優勢であることが窺えます。

北朝鮮の金政権側としては、大量破壊兵器を廃棄したことで潰されたイラクのフセイン政権、核開発を放棄してアラブの春で殺害されたリビアのカダフィ政権などの二の舞は避けたいというのが軍事政策の柱であり、米本土に対する攻撃能力確保は至上命題とされているものです。「攻めこそ最大の防御」というのが、北朝鮮の出している答えです。一方で、米国側からは北朝鮮の核開発+ICBM攻撃獲得は超えてはいけない「レッドライン」との意見がありますが、マーケットは冷静な対応を続けています。

この問題はマーケットを大きく動かす材料として陳腐化し始めており、仮に朝鮮半島有事のリスクを織り込む必要性が高まるとすれば、段階的にではなく、突発的に織り込む流れが今後の基本になりそうです。ボラティリティ発生が消滅したのではなく、先送りされているに過ぎません。そして、そのエネルギーは段階的な織り込みよりも大きなものになるはずです。

なお、トランプ米大統領は自身のTwitterアカウントにおいて、「中国には本当にがっかりしている」、「北朝鮮問題について何もやっていない。対話するだけだ」、「中国は簡単にこの問題を解決できるはずだ!」と、北朝鮮よりも中国に対して怒りを示しています。

北朝鮮との貿易禁止といったより踏み込んだ対応を求めていることが窺えます。既に中国の調停期限とされた100日は過ぎていますが、引き続き中国にこの問題の解決に向けての働きかけを要請しています。現在は、中国がトランプ大統領のメッセージをどのように受け止め、どのような対応を示すのかが焦点になる時間帯が続くことになりそうです。中国への失望を示したTweetで貿易について言及していることからは、貿易制限の要求を示唆したとの解釈もできますがどうでしょうか。



まだ厳しいエクソン・モービルのQ2決算

7月28日にエクソン・モービルが4~6月期決算を発表しました。4~6月期の油価は低迷しましたが、こうした中で石油会社の収益環境、そして投資環境がどのような状態にあったのかは、今後の原油価格動向を考えるに際しての重要データになります。

エクソンの純利益は33.50億ドルとなり、1~3月期の40.10億ドルからは16.5%の減少となるものの、前年同期の17.00億ドルからは97.1%の急増となりました。油価回復と連動して業績環境は改善傾向にあります。2016年10~12月期の16.80億ドルで業績のボトムは確認した格好です。ただ、4~6月期の油価では減益圧力が発生することも確認されており、特に上流部門の業績環境が急激に悪化していることが確認できます。

1~3月期の40.10億ドルから4~6月期に33.50億ドルまで6.60億ドルの減益になった内訳ですが、上流部門が10.68億ドルの減益になっています。欧州の投資が膨らんだ影響などが指摘されていますが、下流部門が2.69億ドルの増益となった影響が完全に相殺されています。
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そして設備投資をみてみると、39.25億ドルとなり、1~3月期の41.69億ドルからは5.9%の減少となっています。前年同期の51.58億ドルからは23.9%の減少です。油価に底入れ感が浮上しているとは言え、まだ投資を抑制して利益を作り出している状況にあることが確認できます。
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(出所)Exxon Mobile

金相場の強気派にとって不都合なデータ

COMEX金相場は上昇地合を継続しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)、4~6月期国内総生産(GDP)速報値と大きな二つのイベントを迎えましたが、いずれも米金融政策正常化への信認を高めることができなかったことが、ドル売り・金買いの最近のトレンドを追認しているためです。

金相場の短期トレンドは明らかに上を向いています。ドルインデックスの年初来安値更新、米長期金利の低下など、通貨と金利の双方の観点で金価格には追い風が吹いています。

一方で強気派にとっては不都合と言えるデータも幾つかありますので、今回はその一つを紹介したいと思います。それが、内部要因のデータです。

価格上昇には「新規買い」と「買い戻し」の二つのパターンが存在し、強気派の視点であれば「新規の買い」が大きく増えて取組高が急増していく流れが理想的です。このため金市場でも投機買いの拡大が期待される所ですが、大口投機筋の買いポジションは直近の7月25日の週で前週比3,067枚増の22万0,299枚です。7週間ぶりに増加に転じたことは大きな変化とも言えますが、金価格の値動きからは残念な結果と言えそうです。

一方で、大きな変化があったのは売りポジションで、こちらは前週比2万7,626枚減の12万9,468枚となっています。つまり、相場を押し上げているのは「新規買い」ではなく「買い戻し」ということになり、「先高観」ではなく「先安観の後退」という評価が現在では正しいようです。

好意的に評価すれば、金相場の上昇はこれからが本番とも言えます。まだ投機買いが膨らむ余地が十分に残されているとの解釈も可能です。FOMC前のデータであることも注意が必要です。ただ、6月から7月初めてにかけて撤退圧力が強まった投機買いを再開する動きが見られないことは、金価格の基調は必ずしも強くはない可能性を示唆しています。「買い戻し」一巡で息切れするのか、それとも「新規買い」の本格再開で更に大きく上昇するのか、内部要因データの検証が重要な時間帯を迎えているようです。

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政治家には理解してもらえなかったコメ先物の意義

大阪堂島商品取引所が申請していたコメ先物ですが、どうやら正式上場ではなく試験上場の延長で決着しそうです。



コメ先物は新潟産コシヒカリなどラインナップを充実させ、取引所やブローカーの努力もあって、生産者や加工業者も取引に参加する市場としての成熟さを増している過程でした。筆者も何度か同取引所を訪問して担当者と話したことがありますが、他に上場商品が先細りにあることもあってか、その意気込みは極めて強いものであり、停滞気味の国内商品市場にあっては密かに好感していました。都心の東京商品取引所(TOCOM)にはない、地方取引所特有のムードも実は好きです。

もともと、許認可権を有する農林水産省は試験上場は2回の延長が限界であることを強調しており、事前の報道では上場申請を認可する方向性でほぼ確実とみられていました。取引所の方も当然に事前の調整を行っており、正式上場が認められるとの感触があったはずです。

しかし、自民党の農業プロジェクトチームでは異論が噴出し、政治介入によって正式上場は阻止され、再延長はないとしていた試験上場延長という形で今後も曖昧な時間を過ごす形になりそうです。

市場の成長を考えれば、将来的に市場がなくなるリスクのある試験上場ではなく、是非とも正式上場にして恒久的な取引の場を提供し、新たな市場参加者を呼び込みたい所でしたが、商品取引所法に定められた「十分な取引量」と「流通市場での必要性」といった判断基準とは関係ないところで、正式上場は認められない方向に動いています。

これが「十分な取引量」がないとの反対理由であれば、まだ納得できました。出来高は増えているとは言っても、決して十分な市場の厚みがあるとは言えない状況にあるためです。しかし今回の批判は先物市場があるとコメ価格が乱高下し、農家の反発が強いという、市場関係者の立場からは理解し難いものでした。

価格が乱高下するのであれば高値では受け渡し、安値では受け取れば良いだけです。高値では投機売りも入り、安値では投機買いも入り、それによって価格は平準化する機能もあります。先物市場がないよりも、あった方が価格が安定化し易いのが現実です。

実際に受け渡しが可能な市場参加者は増えており、一時的に乱高下があっても、きちんと需給を反映した価格が実現する下地は十分に整っています。また(投機要因以外でも)価格が乱高下した際には、安定的な売却、調達ができるように、先物市場を活用することも可能です。価格変動のショックを緩和するための先物市場の役割りが理解されていないようです。

そもそも価格の乱高下は決して悪いことではなく、価格が何等かの要因で急伸するということは、市場参加者が将来の供給に不安を抱いていることを意味し、それに対応すればよいだけです。象徴的なのが、投機だと批判が強かった原油ですが、2008年当時の原油価格急騰があったからこそシェール革命が実現し、その後の安定供給が可能になったのです。もし、シェールオイルの供給がなかったら、世界経済の回復が鮮明になる中で、現在は原油供給不足が景気を抑制していた可能性もあったはずです。

結局「投機=悪」、「先物=悪」、「コメ農家は先物市場を望んでいるはずがない」などといった根拠不明の批判によって、コメ先物の正式上場は潰されそうな状況です。農家にとっても、市場価格が存在すること、ヘッジの場が確保できること、新たな売却ルートを確保できることは歓迎できるものであり、過去の取引実績からもコメ先物相場の意味のない乱高下など観測されていません。

ただ、「先物=悪」という前提条件で間違い、更には「コメ農家は先物市場を望んでいるはずがない」と二重の間違いを政治家が侵している以上、そのハードルを越えるのは大変そうです。自民党内でも、「リスクヘッジには先物も必要」といった声があったようですが、卸や加工業者などよりもコメ農家の市場への取り込みを真っ先に進めなければならない状況になっています。

自民党の会議に、コメ先物市場を活用しているコメ農家を呼ぶことはできなかったのでしょうか?事前に十分な調整を行っていたのでしょうか?取引所も正式上場を楽観視して、もしかしたらこの辺の詰めが甘かったのかもしれません。

結局は、コメ価格は市場ではなく、政府が決めたいということなのでしょうか。これまでの保護農政からの脱却で市場原理に向きあう必要性が高まる中、コメ先物は強力はツールになったはずですが、コメ農家にとっては「味方」であるはずの政治家によってそのツールを壊されてしまう皮肉な状況になりつつあります。

7月27日の10:10から50分を掛けて「米先物取引の本上場申請について」と「平成29年梅雨期における豪雨による農業被害について」の二つの議題を話し合ったようですが、コメ先物上場にはどれだけの時間が費やされたのでしょうか。疲労感ばかりが残るニュースでした。

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(出所)自民党ウェブサイト

大起産業主催セミナー「地政学リスクのシナリオ分析、マーケットはどう動く?」のお知らせ

大起産業主催のセミナーで講演を行います。猛暑の中かと思いますが、宜しければお越し下さい。久しぶりに名古屋での講演です。私の担当は午前中ですが、午後の部もあります。

タイトル:地政学リスクのシナリオ分析、マーケットはどう動く?
開催日時:2017年8月19日(土) 10:30~11:30
場所:名古屋ルーセントタワー16階 会議室F(愛知県名古屋市西区牛島6-1)
参加資格:無料(要申し込み)

参加方法:こちらのリンクからお申込み下さい。

内容:「地政学リスク」を軸に、株式、為替、コモディティなど横断分析を行う予定です。

5月の中朝批判合戦が再開?投資リスクとして要注意

「中国人民日報オンラインメディア、韓国戦争の北の南侵を初めて認める記事掲載」
(中央日報)
 http://japanese.joins.com/article/776/231776.html
韓国戦争(朝鮮戦争)における韓国の北侵説に同調してきた中国共産党機関紙「人民日報」が関連ソーシャルメディアを通じて初めて北朝鮮の南侵説を認める内容の記事を掲載し、後に波紋が広がるとこれを削除していた事実が27日、確認された。 

韓国メディア中央日報によると、中国・人民日報がSNSアカウントで北朝鮮の南侵説を認める記事を掲載しました(同記事によるとその後は削除)。北朝鮮や中国の立場では、朝鮮戦争は韓国、米国の侵略、ないしは挑発によって発生したものとされているため、従来ほどには北侵説を積極的に支持しないにせよ、南侵説は容認するのが難しいものになっています。

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こうした中、共産党機関紙である人民日報が紙面ではないものの南侵説を認めたのは興味深い動きです。中朝関係は、「血盟関係」とも言われていますが、その前提が北朝鮮の暴走であったとすれば、北朝鮮が「米帝」の侵略に対して先頭に立って中国と戦ったとの神話が崩れ、中国は「北朝鮮が自分勝手に起こした妄動」に巻き込まれ、「数十万人の生命が犠牲」になったと中朝の立場が180度入れ替わってしまうためです。

こうした「問題」が生じるのには伏線がありました。今年5月3日に北朝鮮国営通信・朝鮮中央通信が中国が米国と北朝鮮のミサイル開発問題で共同歩調を取っていることに反発し、「朝中関係を破壊するような妄動を続けるな」と警告していたのです。朝鮮中央通信が中国を名指しで批判するのは極めて珍しい事例です。

一方、翌5月4日には人民日報が「朝鮮中央通信の論評は中朝間の利益矛盾をあらわにした」、「中国の確信的利益は朝鮮半島の非核化だ」として、明確な反論を行っています。その中で人民日報は、「北朝鮮が反米の第一線に立って中国を守ってやった」との北朝鮮の理解は「白黒を逆にしたものだ」、「中国は北朝鮮の我儘と妄動の代価を引き受けたのだ」としていましたが、今回のSNS上の記事は、その延長線上にある動きとみた方が良さそうです。

かつて、党の機関紙同士の論争が中ソ対立を招いた反省もあって、その後の人民日報は北朝鮮批判のトーンを抑制していました。しかし、改めて南侵説を認める記事を配信したことは、少なくとも中国共産党内の一部には、ここにきて中朝関係見直しの機運が改めて高まっていることを示唆するのかもしれません。北朝鮮が再びミサイル発射実験を行うのではないかとの警戒感が高まるタイミングであり、投資リスクの一つとして北朝鮮情勢に対する警戒レベルを引き上げておきましょう。

4~6月期GDPの事前ポイント検証

7月28日に4~6月期の米国内総生産(GDP)速報値が発表されます。1~3月期を振り返ると、4月の速報値では前期比年率0.7%増とかなり厳しい数値になりましたが、5月の改定値で1.2%増、6月の確定値では1.4%増まで上方修正され、良好とは言えませんが、許容できるギリギリのラインは確保しました。この流れで4~6月期ももう少し強気の数値を打ち出していきたい所です。Reuters集計の市場予測だと2.6%増(レンジは1.8~3.2%増)となっています。

GDPに関しては各種経済指標の独自分析から地区連銀も独自の予想を行っています。下はアトランタ連銀の予測値ですが、直近だと2.8%増です。在庫投資拡大の指標が得られたことで、7月19日時点の2.5%増から上方修正されています。
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(出所)Federal Reserve Bank of Atlanta

こちらはニューヨーク連銀の同様の調査です。直近では2.04%増と、市場予測よりかなり厳し目です。ここ最近は強めの指標が目立ったことで、6月9日以来の2%台回復となっていますが、同連銀はそれほど成長が加速していないとみている数値になります。
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(出所)Federal Reserve Bank of New York

このどちらに近い数値が打ち出されるのかが第一の焦点ですが、マーケットの視点では米金融政策見通しの修正があるか否かの方が重要でしょう。強めの実体経済指標を受けて、「やはり米金融政策正常化は可能」とみるのか、それとも「低インフレ環境に変化はないので米金融政策の正常化は困難」とみるのが、マーケットの反応が注目されます。筆者は、成長路線が続き限りは低インフレの懸念は限定されると考えていますが、マーケットの関心をインフレ集中から逸らすことができるかが打診されるイベントになります。


ゴールドマン=原油は需給リバランス初期の兆候かも

米金融大手ゴールドマン・サックス・グループのエクイティ調査チームは、最近の原油在庫減少を受けて、在庫が正常化する「初期の兆候(signs of the beginning of oil inventory normalization)」である可能性を指摘しました。

年後半にはシェールオイルの増産が想定されるとして、今後もシェールオイルは「抑圧(constraint)」され、石油輸出国機構(OPEC)は「自制(restraint)」する必要があるとしていますが、そのために必要なWTI原油の価格は1バレル=45~50ドルだとしています。概ね現行価格を追認し、6月の原油相場急落に疑問を投げ掛けた格好です。

今後も在庫が減るのか、原油価格の上昇が続くのかは、シェールオイルの生産動向、リビアとないエリアを含んだOPECの生産動向に依存するとしていますが、原油価格の当面の底打ち論を後押しする分析内容と言えそうです。「強気」とまでは言えませんが、「弱気の後退」と言った評価でしょうか。

ただ、今回は原油市場で注目されるコモディティ調査チームではなく、エクイティ調査チームの分析であることには注意が必要です。

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NYMEX原油先物相場
(出所)Reuters

今月は設備投資をしました

今月は、久しぶりに(当社としては)金額が大きめの設備投資をしました。マーケットのリサーチ業は設備投資が少なくて済む業種ですが、レポートの作成にPCだけは必要不可欠です。オフィスにマルチモニターのデスクトップを設置していますが、ノートも一台追加しました。

これまでノートPCはプライベートのを使っていましたが、旧型のために重くて持ち運びが大変だったので、業務効率を上げられそうです。これから投資金額を回収するのは大変ですが、頑張ります。

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ブラジル産コーヒーに刺客、害虫「ブロッカ」広がる

コーヒーの生産リスクとしては干ばつと降霜の二つが注目されがちですが、今年はブラジルの害虫被害が深刻化しています。近年は大規模な害虫被害が報告されることは殆どありませんでしたが、今年は「ブロッカ(broca)」と呼ばれる害虫が大量発生しています。

このブロッカは「coffee berry borer」とも言われますが、「berry(コーヒーの実)」に「borer(穴を開ける)」との文字通りに、コーヒー生豆に穴を開けてしまう害虫です。体長は雄で1.2~1.6mm、雌で1.4-1.8mmと決して大きくありませんが、雌がコーヒーに穴を開けて侵入し、卵を産み付けるため、ブロッカの被害に合うとコーヒーに小さい穴が開き、商品価値は急低下してしまいます。いわゆる「虫食い豆」です。

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(出所)Wikipedia

ここ数年はこうしたブロッカの大規模な被害は報告されていませんでしたが、ミナスジェライス州政府によると、1~2月時点で3%程度の被害が報告されていたのが、収穫期となった現在は30%程度まで被害が拡大しています。

この「ブロッカ」は被害をコントロールするのが難しいものですが、大手コーヒー業者に対しては虫食い豆を販売するのは困難であり、収穫しても販売できない可能性が高まります。害虫被害そのものを抑制しようとすれば、強力な害虫駆除剤が必要であり、いずれにしてもコスト上昇圧力に直面します。最終的には35~40%程度が受けるのではないかとの推計値も見受けられる状況です。

タイミングの悪いことに、コーヒーは増産と減産を繰り返す隔年の生産サイクルにありますが、今年は減産年に該当します。ブラジル食糧供給公社(Conab)は、2017年の同国コーヒー収穫量が前年比で11.3%落ち込むとの試算を行っています。アラビカコーヒーに関しては、16年からの十分な繰り越し在庫が存在するために多少の減産は寧ろ好ましいとの評価さえありましたが、害虫被害の広がりによっては、アラビカコーヒー供給に予想外のタイト感が浮上する可能性も浮上し始めています。

不確実性に備えて、フリーハンドを確保したいFOMC

7月25~26日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されましたが、声明文に特に目新しい材料は見当たりませんでした。

「経済活動が今年ここまで緩やかに拡大している」とマクロ経済評価は強気ですが、「前年同月比でみると、全体のインフレ率と食品やエネルギーの価格を除く指標は低下し、2%を下回っている」と低インフレに対する懸念は強めになりました。前回声明文の「前年同月比のインフレは直近で減少し、食品とエネルギー価格を除くコアインフレと同様に目標の2%を幾分下回っている」と比較すると、「幾分(somewhat)」の文言が削除されているだけ、若干ながら低インフレに対する懸念を強化したと言えます。

一方で、「比較的早期にバランスシートの正常化計画の実施に着手すると見込んでいる」、「経済状況はFF金利の緩やかな引き上げを正当化する形で進むと予測する」など、政策正常化へのコミットメントは維持しています。

9月にバランスシート縮小着手がメインシナリオだと考えていますが、見送ってもサプライズとまでは言えない程度のトーンに留めています。利上げについても、このまま見送っても、12月に着手しても不思議ではない程度のトーンです。結局は、政策判断のフリーハンドを確保しておきたい意向だけが強く窺える内容でした。

問題はマーケットの声明文の解釈論の結果ですが、米金利低下・ドル安での対応が基本であり、最近の低金利・ドル安環境を追認する結果になりました。バランスシート縮小期待を手掛かりに米金利上昇・ドル高での反応も選択肢として成立し得たと考えていますが、インフレに関する文言に敏感な地合が続いていることが確認できます。実体経済が堅調な中での低インフレに対する懸念はそれ程高くないと考えていますが、米金利上昇・ドル買い・金売りを進めるのであれば、とにかくインフレ指標の改善が欲しいというのが現在の地合のようです。

無題


















COMEX金先物10分足
(出所)Reuters

日中取引終値1,249.40ドルに対して、1,260ドル台前半まで、今回のFOMC後の金相場は概ね10ドル幅の上昇で反応しました。
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小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業部、営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。

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