小菅努の商品アナリスト日記

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原油市場に過去最大の投機資金が流入中

原油市場で投機買いの規模が過去最高を更新した。米商品先物取引委員会(CFTC)が1月19日に発表した最新データ(1月16日時点)によると、WTI原油先物・オプション市場における投機筋(Money managed)の買い越し枚数(=買いポジション-売りポジション)は、NYMEXとICEの二つの市場を合計して前週比4万0,855枚の54万1,990枚(1枚=1,000バレル)に達している。

昨年末の46万0,836枚からは8万1,154枚(17.6%)の急増であり、年初から原油市場に大量の投機資金が流入したことが確認できる。この期間のWTI原油先物相場は1バレル=60.40ドルから63.70ドルまで3.30ドル(5.5%)の急伸となっているが、昨年中盤以降の強気スタンスが維持されている。

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底流にあるのは、シェールオイルの増産拡大などで大きく過剰供給方向に歪んだ国際原油需給が、需要拡大と昨年1月から始まった協調減産の成果によって正常化し始めていることがある。過剰供給解消が実現するのか不透明感が強かった昨年7月2日時点では、投機筋は僅か15万7,291枚の買い越しに留まっていたが、その後の約6カ月半で原油市場に滞留する強気の投機資金の規模は3.4倍にまで急増している。原油安の時代が終わった可能性が高いことを強く印象付けられる。

しかも年末年始を挟んでは、1)イランの地政学リスク、2)米原油在庫の急減、3)北半球の寒波、4)ドルの急落、5)世界的な株高など、マクロ需給環境以外の要因からも、原油市場に対する投機資金流入が加速し易い環境が整った。

ただ、こうした急激な投機資金の流入は原油高を加速させる一方で、急反落のリスクを高めることになる。

例えば、昨年1~2月には石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどの協調減産がスタートしたことで投機筋の買い越し枚数は2月26日に44万3,703枚に達したが、その後は上述のように7月2日の15万7,291枚まで急減している。投機資金の流入で原油相場が50~55ドル水準まで値上がりしたことで米国のシェールオイル生産活動が一気に活発化した結果である。原油市場における投機資金の流入が過熱化したことが、需給見通しを悪化させたのだ。そして、現在の投機資金の規模はその当時を大きく上回っている。原油相場も2014年12月以来の高値圏となる60~65ドル水準まで値上がりしている。
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需給バランスが供給超過から均衡、そして供給不足に転換するにつれて、原油市場に対して投機資金が流入し、原油価格が上昇する展開には、何ら大きな問題はない。しかし、投機主導で必要以上の値上がりが実現すると、実際の需給環境よりも需給がタイト化しているシグナルが需要家と生産者の双方に発せられ、本来は必要がなかった需給緩和圧力が発生することになる。

国際エネルギー機関(IEA)は19日に発表した最近の月報において、原油高に伴う需要減退、更には天然ガスへの需要シフトが発生していることを報告している。また、米国、カナダ、ブラジルなどの産油量見通しが上振れしていることも報告している。まだ18年の国際原油需給バランスは均衡化見通しが基本になっているが、「原油高→需要抑制」、「原油高→供給拡大」のフローが発生し始める中、投機資金の流れが逆転し始めると思わぬ急落リスクも浮上することになる。

原油相場は緩やかにコアレンジを切り上げていく可能性が高いものの、年初からの原油相場急伸と投機資金の流入状況は、強気派にとっても不安を抱かせる状況になり始めている。特に、シェールオイルは中東産油国とは異なり、投資開始から生産開始までのタイムスパンが短縮されているため、原油価格変動の影響は数カ月程度で実際の産油量に反映される傾向にある。ここ最近の原油高がシェールオイルの増産加速を促すのは必至であり、それはリグ稼働数や米エネルギー情報局(EIA)の生産予測調査などにも明確に見て取れる。投機資金の流入による原油高は分かり易い現象だが、需給正常化の流れを阻害するか否かの議論の行方によっては、急反落のリスクを抱えることになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油市場に過去最大の投機資金が流入中(Yahoo!ニュース)

年初の原油価格が高騰

年初の原油価格が高騰
上昇余地は限定的か

2018年の原油相場は、年初の取引開始と同時に急伸地合を形成した。NY原油先物相場は、昨年末の1バレル=60.42ドルに対して、1月第二週には早くも63ドル台まで値位置を切り上げている。これ14年12月以来となる約3年ぶりの高値を更新したことを意味し、昨年6月の42.05ドルをボトムとした原油高のトレンドが維持されていることが確認できる。

年末・年始の原油相場で材料視されたのは、イラン情勢の緊迫化だった。イラン国内では、高インフレや失業率上昇などに不満を強めた市民が大規模な反政府デモを展開し、同国からの原油供給に不確実性が高まったことが、原油価格に対してリスクプレミアムの加算を促した。イランは石油輸出国機構(OPEC)内で第三位の産油国であり、反政府デモが原油供給に影響を及ぼすと、不測の需給ひっ迫状態が実現する可能性もあるためだ。

しかし、その後は反政府デモが収束に向かったにもかかわらず、原油相場は更に上値を切り上げる展開になっている。今回の反政府デモでは原油一滴も供給障害は発生しない見通しだが、原油相場は積み上がったリスクプレミアムの剥落を進めることなく、逆に上昇ペースを加速させている。

極めて投機色の強い値動きと評価しているが、今回のデモをきっかけに米国=イラン関係が一段と悪化していることもあり、イラン核合意の見直し議論の活発化などが本格化すると、イラン産原油が長期にわたって落ち込むリスクも浮上することになる。現実問題として、イラン核合意は米国単独で破棄が可能なものではなく、直ちにイラン産原油を取り巻く環境が大きく変わる可能性は低い。ただ、昨年に協調減産の需要拡大の効果で在庫環境の正常化が進んでいることもあり、マーケットはこの種の供給不安に敏感に反応する「通常の相場環境」に回帰しつつある。

もっとも供給「障害」ではなく供給「不安」に留まる限りは、原油高には限界がある。原油相場の高騰は需給ひっ迫リスクのシグナルとなり、本来であれば必要ではない需要抑制や増産圧力が、必要以上の需給緩和状態をもたらすリスクを高めるためだ。特に、シェールオイル産業は既に昨年後半の油価上昇に反応し始めているだけに、近く増産ペースが加速する可能性は国際エネルギー機関(IEA)などからも指摘されている。

18年の世界石油需要は前年比で日量130万バレルの伸びが想定されているが、米産油量は既に97万バレルの増産が予想されている。しかも、米エネルギー情報局(EIA)は過去5か月連続で米産油量見通しを引き上げており、このまま原油高を放置しておくと、需要拡大幅をシェールオイル増産幅が上回り、在庫調整の動きが巻き戻される可能性も浮上する。実際にイラン産原油に供給障害が発生すれば60ドル台定着も可能になるが、現状では投機色の強い高値水準であり、持続可能性は乏しいと評価している。
(2018/01/10執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月15日「私の相場観」

原油価格が高騰している5つの理由

国際原油価格が高騰している。NYMEX原油先物相場は、昨年末の1バレル=60.42ドルに対して、1月11日の取引では一時64.77ドルまで上値を切り上げている。これは2014年12月以来の高値であり、16年2月の26.05ドルからは約2.5倍の値上がりになる。ICEブレント原油先物相場に至っては、1月11日に一時70ドルの大台に乗せており、原油価格の復調が強く印象付けられる状況になっている。
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ではなぜ原油価格は高騰しているのだろうか。ここではマーケットが注目している5つの理由を紹介したい。

■理由1:地政学リスク
2017年末から18年にかけて急浮上したテーマが、地政学リスクである。昨年は専ら北朝鮮情勢が注目されていたが、原油市場における関心が高まっているのはイラン情勢である。イランでは年末・年始に大規模な反政府デモが発生したことは国内メディアでも大きく報じられたが、それに伴う供給障害は発生しなかった。しかし、トランプ米大統領はイランとの核合意見直し、追加制裁に意欲を示しており、米国=イラン関係の悪化が不測の供給障害を招くリスクが警戒されている。

■理由2:在庫減少圧力
よりマクロな視点だと、世界的な原油在庫の減少圧力も原油高に寄与している。世界経済の好調さを背景に需要が堅調に推移する一方、石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが協調減産を実施する中、原油需給バランスの指標となる在庫は急激に落ち込んでいる。米国の場合だと、昨年3月時点では5億3,000万バレルを超えていた原油在庫が、直近では4億1,950万バレルまで減少している。しかも、11月中旬以降は8週連続で減少中であり、需給環境の正常化が強く印象付けられる状況になっている。
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■理由3:シェール生産統計の悪化
一方、原油高を抑制する要因としてシェールオイルの生産動向が注目されていたが、昨年12月以降はやや低調な指標が目立つことも、原油高に安心感をもたらしている。こちらは積極的な相場の押し上げ要因というよりも、下落圧力を阻止する要因になる。米国の石油リグ稼働数は昨年12月8日の751基をピークに、1月5日時点では742基まで落ち込んでいる。また米産油量は昨年12月15日時点の日量979万バレルに対して、1月5日時点では949万バレルまで減少している。「原油価格高騰→シェールオイル増産」のフローが確認できないことも、投機買いに安心感をもたらしている。

■理由4:ドル安
また、為替市場でドル安圧力が発生していることも、ドル建て原油価格の押し上げ要因になっている。米経済は好調であり、金融政策も段階的な利上げが行われるなど、ドルを取り巻く環境が大きく悪化している訳ではない。ただ、最近は日欧など米国以外の国の金融緩和政策も是正されるとの見方が、ドル相場を押し下げている。ドルインデックスは昨年10月27日の95.15ポイントをピークに、1月12日時点では91.68ポイントまで下落し、昨年9月20日以来の安値を更新している。最大で3.6%ものドル安圧力が発生していることは、それに相当する原油価格の上昇率を正当化することになる。
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■理由5:投機マネーの動き
そして意外と大きな影響があるのが、投機マネーの動向である。国際原油需給が緩和から正常化に向かう過程において、投機筋はこれまでの売りポジションを急ピッチで解消している。それと同時に買いポジションを積み増しており、原油市場では投機主導の価格押し上げ圧力が急激に高まっている。NYMEX原油先物市場における大口投機筋の買い越し枚数は、昨年6月27日時点の32万7,188枚に対して、1月2日時点では62万4,213枚まで拡大している。世界的な株高の影響もあって投資家のリスク選好性は強くなっており、必要以上の投機資金が原油市場にも流れ込んでいる。
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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油価格が高騰している5つの理由(Yahoo!ニュース)

ガソリンが2年5ヵ月ぶり高値、トランプの中東政策を警戒か

資源エネルギー庁が1月11日に発表した「石油製品価格調査」によると、レギュラーガソリンの全国平均価格(1月9日時点)は1リットル当たりで前週比0.2円高の141.9円となった。これで3週連続の上昇となる。昨年の7月3日時点の130.3円をボトムに過去半年で累計11.6円(8.9%)の値上がりになった計算だ。これは2015年7月27日以来となる、約29カ月(2年5ヵ月)ぶりの高値を更新していることを意味する。

国際原油価格の上昇が続く中、日本の原油調達コストは着実に値上がりしており、それがそのまま国内ガソリン相場にも波及した格好である。国際原油相場が急落する以前となる14年前半から中盤にかけての160円台後半は大きく下回っているが、16年3月7日の112.0円を最安値としたガソリン価格上昇のトレンドは維持されており、安いガソリン価格時代の終わりが強く印象付けられる状況になっている。

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■トランプ大統領がガソリン価格を押し上げる可能性
国際指標となるNYMEX原油先物相場の動向をみてみると、昨年前半は年初の1バレル=50~55ドル水準に対して6月21日の42.05ドルまで急落していたが、年末にかけては60.42ドルまでの急激な切り返しをみせた。石油輸出国機構(OPEC)やロシアの協調減産体制が維持されている一方、世界の石油需要は堅調な伸びを示しており、余剰在庫が一掃とまでは言えないが解消方向に向かっていることが高く評価されている結果である。

その流れは年明け後も維持されており、直近の高値は63.67ドル(1月10日)にも達しており、14年12月以来の高値が更新されている。年末・年始を挟んでイランの反政府デモが供給不安を高めたが、その後は反政府デモが収束に向かったにもかかわらず、原油価格の高騰が続いている。

米国でイランとの核合意を見直す議論が活発化する中、一種の「トランプ・リスク」が強く警戒されている結果である。金融大手シティ・グループなどは1月9日付の最新レポートにおいて、中東や北朝鮮の地政学リスクが顕在化すれば、70~80ドルまで原油価格が更に高騰する可能性を警告している。

14年や15年の段階では過剰在庫を抱えていたことで、国際原油市場は各種の供給リスクを無視することができ、マーケットは寧ろ供給トラブルを原油需給・価格正常化のきっかけとして歓迎するムードさえみられた。しかし、在庫過剰の解消が進んでいることは、供給ショックに脆弱な通常の原油需給・価格環境に回帰し始めていることを意味し、トランプ大統領の対イラン政策の行方によっては、ガソリン価格の160円台乗せといった事態が予想以上に早く実現する可能性も浮上することになる。

仮にこうした中東や北朝鮮情勢を巡る大きな混乱状況が派生しなければ、シェールオイルの増産圧力が原油価格の上昇余地を限定することになる。米エネルギー情報局(EIA)は今年の原油価格の平均値として、現在の値位置を大きく下回る55.33ドル(昨年は50.79ドル)を想定している。このため、必要以上の原油高は逆に将来の需給緩和・価格低下リスクを高めることには注意が必要である。ただ、原油市場では余り材料視されていなかった「トランプ・リスク」について、今後はドライバーも関心を払う必要がありそうだ。米国=イラン関係の行方によっては、国内ガソリン価格は更に急騰することになる。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役社長 小菅努】

(出所)ガソリンが2年5ヵ月ぶり高値、トランプの中東政策を警戒か(Yahoo!ニュース)

2017年の金ETF市場を検証する

2017年の金上場投資信託(ETF)市場は、前年比で198トンの投資残高増加になった。16年の547トンからは64%の大幅な減少になったものの、2年連続で金ETFは投資残高を拡大することに成功している。

金ETFは金投資需要を喚起する目的で2003年に初めて設定され、ピークとなる2009年には年間645トンもの投資需要を創出している。同年の金鉱山生産量は2,589トンであり、新産金の四分の一が金ETF市場に吸収され、金需給の引き締めに寄与していた。

しかし、米国で金融緩和縮小の議論が活発化し始めた13年には912トンの投資残高減少となり、その後は14年が184トン減少、15年が125トン減少と、金投資需要環境の悪化が金ETF残高の減少を招き、それが金需給の緩和から更に金相場を押し下げる悪循環に陥っていた。

だが、イギリスの欧州連合(EU)離脱問題が浮上した16年には547トン増と4年ぶりに投資残高が増加し、その流れが勢いこそ鈍化したものの、17年にも引き継がれたことが確認できる。
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■金ETF購入の主役は欧州勢
地域別では、北米が63トン増(17年は226トン増)、欧州が149トン増(同281トン増)、アジアが13トン減(同35トン増)、その他が1トン減(同5トン増)になっている。北米と欧州は二年連続で投資残高を増やしているが、その規模は大幅に縮小している。前年比では北米が72%減、欧州が47%減となっており、特に北米地区の減少率が大きくなっている。

金ETF需要拡大に占める欧州の比率は、16年の51%から17年は75%まで上昇しており、欧州の機関投資家が金ETF市場の主役になっていることは明らかである。

では、なぜ欧州の機関投資家は金ETFを購入しているのだろうか。この点に関しては、欧州地区の政治リスクが強く影響した可能性が高い。移民問題、更には債務危機をきっかけに欧州にはこれまでの求心力が遠心力に転換しており、政治的な不満の高まりから投資環境の不確実性が増している。昨年の場合だとブレグジットが大きなテーマになったが、今年もフランス大統領選、ドイツ議会選挙などの政治リスクが、欧州機関投資家に対して金ETF購入を促したことが強く窺える。

そして欧州政治リスクの危機レベルとしては、金ETF購入量が47%もの大幅な減少になったことからは、「ブレグジット>フランス大統領選」だったことが窺える。欧州政治リスクへの退避ニーズは維持されたものの、18年の政治リスクは17年のブレグジット時ほどのレベルではないというのが、欧州の機関投資家による投資評価だった模様だ。

18年も3月にイタリア総選挙、更にはブレグジットの実行手続きが本格化するなど幾つかの政治リスクを抱えているが、改めて金ETF買いが膨らむか否かは金価格動向を考える際のみならず、欧州政治リスクを計る上での指標としても注目しておく必要がありそうだ。

■意外と動かなかった米投資家
一方、米国ではトランプ大統領の政治リスクが連日のように報じられていたが、米国の機関投資家は大きな動きを見せなかった。すなわち、トランプ米大統領に起因する政治リスクに関しては、必ずしも真剣に捉えられていなかったことが窺える。これは昨年の株価高騰とも整合性が取れる動きである。

二年連続の投資残高増加となったことからは、株高局面でもヘッジとして金ETFを購入しておきたいというトレンドは形成されていたことが確認できる。ただ、その規模としては前年比で72%の減少であり、ブレグジットと比べると大きな問題ではないとの評価が優勢だった模様だ。

唯一の例外とも言えるのが、8~9月にかけての投資残高急増である。8月は31トン増、9月は59トン増となっており、年間需要の大部分がこの時期に集中している。北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って朝鮮半島有事、更には北朝鮮による米本土攻撃が警戒された時期であり、北朝鮮情勢は米国の機関投資家に強い危機感をもたらしたと言えよう。

ただ、その後の10~12月期は12トンの減少に転じており、この問題はピークを脱したと評価した向きが多かった模様だ。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)2017年の金ETF市場を検証する(Yahoo!ニュース)

データでみるビットコイン先物のプレイヤー

昨年12月17日に米CMEグループでビットコイン先物の取引が開始されてから3週間が経過した。米国では米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週火曜日時点のデリバティブ取引の建玉状況を金曜日に公表しているが、ビットコイン先物に関してもデータが集計されており、売買状況が徐々にではあるが、明らかになり始めている。

下の表は過去3週間の建玉状況を一覧にしたものだが、まず注目されるのは「ディーラー」と「アセットマネジメント」区分の建玉は殆ど存在しないことである。「ディーラー」は金融機関のプレイヤー、「アセットマネジメント」は年金基金や投資信託などが含まれるが、この分野の売買は殆ど行われていない。すなわち、金融機関のリスク管理に伴う売買、機関投資家の売買はほぼ無視できる程度の規模に留まっている。

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一方、ある程度の規模を持った建玉が報告されているのが「レバレッジ投資家」になる。ここにはヘッジファンドや商品投資顧問業者(CTA)が含まれ、短期の値幅取りを狙った投機筋の参入は確認できる。

直近で最も建玉が多いのは「その他(報告義務あり)」であり、企業や小規模銀行などが主にヘッジ目的で売買を行っているものになる。そして、これに相当する建玉が存在するのが「その他(報告義務なし)」であり、いわゆる小口投資家になる。

つまり、スタートから3週間のビットコイン先物のメインプレーヤーと言えるのは、ヘッジ目的の売買と小口投資家であり、銀行や年金基金といった機関投資家の動きは殆ど存在せず、ファンドが僅かに打診的な売買を行うレベルに留まっている。

■大口の売りvs小口の買い
では、各プレイヤーがどのような売買を行っているかというと、「レバレッジ投資家」は3週間連続で売り越しており、ビットコイン先物が上場すればヘッジファンドは売りで参戦するとの強気派の懸念が裏付けられた格好になる。ただ、その規模は必ずしも大きくはなかった。

一方、「その他(報告義務あり)」も一貫して売り越しているが、ヘッジ目的の売買であれば納得のいく動きである。しかも、取組高は徐々にではあるが増加傾向にあり、ビットコイン価格が乱高下する中でビットコイン先物がその機能を果たし始めたと言える。

こうして大口投機筋はほぼ完全な売り越し状態にあるが、これに対抗しているのが小口投資家になり、こちらは3週連続で買い越している。ビットコイン価格動向にかかわらず一貫して強気スタンスが維持されている。

比率としては、買いポジションの63%が小口投資家、売りポジションの72%がその他(報告義務あり)となっており、「大口投資家の売りvs小口投資家の買い」の構図が明らかになっている。
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■取組高は漸増傾向も、低レベル
取組高全体は増加傾向にあるものの、直近の1月2日時点でも4,065枚に留まっており、注目度の高さの割には活発な売買が行われているとは言い難い。ビットコインは週末や祭日なども関係なく24時間取引されているが、ビットコイン先物には取引所の定める売買時間が存在しており、投機の場としてもヘッジの場としても限界がある。

また、取引証拠金がビットコインではなくドルであること、レバレッジの高さなども、ビットコイン投資家の関心を集めきれていない背景として指摘されている。ただ、今後の市場の拡大、更にはビットコイン上場投資信託(ETF)など新たな金融商品の開発を見据えれば、ビットコイン先物は必要不可欠な経済インフラになる見通しであり、これから市場をどのように育てるのか、投資家と取引所は手探りで最適解を模索することになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)データでみるビットコイン先物のプレイヤー(Yahoo!ニュース)

ペトロダラーの終焉か、人民元建て原油先物の取引開始迫る

中国で人民元建て原油先物取引が間もなく開始される。昨年12月に中国政府は取引開始の最終承認を行っているが、ポータル・ニュースサイト界面(Jiemian.com)は匿名の先物業者の話として、「1月18日」の取引開始で決まったと報じている。上場される上海期貨交易所の上海国際エネルギー取引所(INE)からの正式発表は行われていないが、12月中にシステムテストも終わっており、昨年から何度も延長が繰り返されていた人民元建て原油先物取引の開始が間近に迫っている。

国際原油価格については、米国のNYMEXで取引されているWTI原油先物、欧州のICEで取引されているブレント原油先物、そして中東(ドバイ)原油の三つが国際指標になるが、いずれもドル建てで取引されている。1バレル(約159kl)を何ドルにするのかを市場で決定し、これを指標価格に油種などに応じて各国が取引価格を決定していく流れになる。

一方、日本では東京商品取引所(TOCOM)がドバイ原油先物取引を上場しており、これは1klを何円にするのかを決定している。国内ではリットル単位の方が利便性が高く、自国通貨である円建ての指標価格を決定している。

その意味では、中国で人民元建て原油先物取引が開始されても、何ら議論に値しないとみることもできる。実際に、中国には上海期貨交易所の他に大連商品取引所、鄭州商品取引所などの大型の商品取引所が存在しており、工業用素材から農産物まで幅広いコモディティ(商品)の人民元建て指標価格が決定されている。

しかし、マーケットでは人民元建て原油先物取引の開始は、銅や大豆といった他のコモディティ先物取引とは異なる意味がある動きとの評価が存在している。すなわち、単純に人民元建て原油の指標価格を決定するのみならず、中国のより大きな国家戦略の中に位置づけられる動きとみられているのだ。具体的には、国際基軸通貨ドルに人民元が挑戦する通貨戦略がいよいよ佳境に入ったとみられている。

■ペトロダラーに挑戦する中国
この議論を理解するためには、「ペトロダラー(Petrodollar)」の話から始めなければならない。あまり聞きなれない言葉かもしれないが、「petroleum(=石油)」と「dollar(=ドル)」を合成した用語であり、国際原油取引では米ドルが国際決済通貨の殆どを占めることで、このような呼ばれ方をする。もっと踏み込むと、国際基軸通貨としてのドルの地位を維持するために、あらゆる国が必要としている石油をドルのみで取引する体制を創出・維持することを通じて、ドルの地位を守るアメリカの国家戦略システムと言える。

ペトロダラーの役割を重視する人達は、このペトロダラーの再循環(リサイクル)体制こそが、米国が世界最大の超大国としての地位を守るために、重要な役割を果たしていると考える。アメリカは「双子の赤字」と言われる巨額の貿易赤字と財政赤字を抱えており、通常であればインフレや通貨価値の低下、国際通貨としての地位低下といったアメリカにとって歓迎できない動きが想定される。それにもかかわらず、一貫して巨額の軍事支出が可能であり、中国に次ぐ世界第二位の経済規模を維持できているのは、ペトロダラーの再循環体制の恩恵と言える訳だ。

ロジックとしては、あらゆる国家は石油を必要としており、その国際決済をドルで行う限りは、産油国に巨額のドルが流れ込むことになる。そして、産油国はこのドルを米国債購入などを通じて米経済に還流させることで、アメリカの経済・財政を支援することになる。そしてアメリカはこうした流れを維持するために原油価格を高値誘導する必要があり、国際通貨基金(IMF)などを通じて新興国に資金援助(ドル)を行い、そのドルが原油購入を通じて再び米国に帰ってくる流れになる。

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こうした視点からは、米経済とドルはペトロダラーの再循環体制によって支えられていると言え、今回の中国による人民元建て原油先物取引の開始は、このポスト金本位制のアメリカ経済とドルを支えてきた体制への挑戦ではないかとみられているのだ。

この辺の議論は陰謀論のようなものも数多く、例えばブッシュ政権がイラク攻撃で湾岸戦争に踏み切った背景としては、その当時のフセイン大統領が原油取引の決済をドル建てからユーロ建てに移行すると表明したことが、アメリカの「レッドライン」を超えたとの見方がある。イラクがペトロダラー体制に明確な反旗を翻したことで、他産油国がこうした動きに同調することを阻止するための見せしめとして、アメリカはイラク攻撃に踏み切ったという訳だ。

本稿ではこうした分析の是非については評価しないが、いずれにしても金、ドル、原油市場などには、ペトロダラーの再循環体制が崩壊した場合には、経済・政治・軍事などの面で大きな混乱が生じるとの見方が存在していることは間違いない。中国の人民元国際化への歩みが新たなステージに突入し、ペトロダラー再循環体制に危機が生じるとの見方が存在することが、人民元建て原油先物取引開始の動きが、マーケットで注目されている理由である。

従来は、ペトロダラーに挑戦する通貨があるとすればユーロだとみられていたが、欧州債務危機でユーロは自滅してドルに挑戦する当面の権利を失った。こうした中、世界最大の経済規模を確立し、軍事・政治の点でもプレゼンスを増す中国の通貨人民元が、いよいよドルに本格挑戦を開始する一里塚になるかもしれない動きになっている。

■結論が出るまでは長い時間が必要
仮に世界最大の原油輸入国である中国が、原油取引を順次人民元建てに移行することができれば、原油市場のみならずドルや金市場、更には国際政治・軍事にも大きな影響が生じる可能性がある。中国は既に「一帯一路(シルクロード経済圏)」構想において、資金提供を人民元建てで行うと同時に、地域の資源調達においても人民元決済を広げるなど、中国国外にも人民元建て決済圏を広げる努力を行っている。

その最終段階ともいえる国際基軸通貨ドルへの挑戦は1年や2年で結論が出るものではないが、少なくとも中国の原油取引決済でドルから人民元へのシフトが進めば、ペトロダラー再循環体制の議論を無視するとしても、ドルを取り巻く環境には大きな変化が生じる可能性がある。

ここ数年の通貨市場では法定通貨と仮想通貨との共存が可能かを巡る議論が活発化しているが、その法定通貨内では人民元のドルに対する挑戦が着実にレベルを引き上げている。TOCOMのドバイ原油先物上場などと、中国の原油先物上場の議論は、全く別次元のものである可能性が高いのだ。中国の人民元建て原油先物価格のスタートで、世界の政治経済環境に大きな変革が生じるか否かが注目される局面になっている。
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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)ペトロダラーの終焉か、人民元建て原油先物の取引開始迫る(Yahoo!ニュース)


2018年の金相場展望

2018年の金相場展望
方向性を打ち出しづらい

2018年の金相場は、16~17年の延長線上での展開になりそうだ。すなわち、政治リスクと地政学リスクに下値をサポートされる一方、良好な実体経済や金融政策の正常化圧力が上値を圧迫し、明確な方向性を打ち出すのが難しい相場環境が続く可能性が高い。

米国でトランプ大統領が誕生してから2年目に突入することになるが、世界情勢は依然として不安定化している。「アメリカ・ファースト」政策は着実に実行に移されており、今後も排他的な政策スタンスが世界各地で混乱をもたらす可能性が高い。メキシコ国境の壁建設、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し、貿易相手国に対する貿易収支均衡プレッシャー、軍事的な強硬姿勢などは、現段階で想定されていないリスクを顕在化させる可能性がある。あくまでも漠然とした不安心理に留まることで、投資家のリスク選好性が大きく損なわれることはない。ただ、先行き不透明感は安全資産としての再評価に直結しており、株価動向などに関係なく金が買われ易い地合が続く可能性が高い。

2017年を振り返ってみると、リスク資産を買う攻めの投資が行われる一方で、金や米国債などの安全資産を購入する守りの投資も同時に行われる傾向が見られた。すなわち、「株を買って金も買う」がメガトレンドになっていたが、そのトレンドは18年もそのまま維持される可能性が高い。

北朝鮮情勢に関しては材料として陳腐化が進んでおり、ミサイル発射実験程度であれば、特に材料視されない可能性が高まっている。ただ、今後の展開次第では朝鮮半島有事のシナリオも消滅した訳ではなく、金価格の急伸リスクとして引き続き注意が要求される。

ただ、金融経済環境からは、金を購入する必要性が乏しい時間帯が続くことになる。米連邦準備制度理事会(FRB)は17年中に3度の利上げに踏み切ったが、18年もほぼ同ペースでの利上げサイクルが想定されている。インフレ率の急伸がなければ実質金利に対して上昇圧力が強まり易く、金相場は断続的に下向きの刺激を受ける可能性が高い。既に量的緩和の規模縮小も始まっており、代替通貨としての金の役割は着実に低下することになる。

米経済成長率に関しては若干の鈍化が想定されるが、2%台中盤から後半の安定した成長率を確保できる見通し。仮にインフレの底打ちが確認できれば、利上げペースが加速する可能性も十分に想定でき、その際は金価格に対して強力な逆風が吹くことが想定される。

政治リスク、地政学リスクの暴走が見られないのであれば、1200ドル割れの方向性が基本になる。一方、何か不測の政治リスクや地政学リスクへの対処を迫られる事態になれば、1400~1500ドル水準まで値上がりする可能性が浮上する。政治・地政学リスクへのヘッジニーズがどの程度のレベルにあるのか、短期の相場テーマを見定める必要性がある不安定な相場展開が続き易い。
(2018/01/04執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月8日「私の相場観」

イラン反政府デモで仮想通貨の取引急増か?

中東のイランでは年末・年始を挟んで反政府デモが広がりを見せ、世界的な株高傾向は維持されたものの、一部のマーケットでは緊張感が高まった。イラン産原油の安定供給が維持されるのか警戒感が高まる中、国際原油価格は2015年5月以来の高値を更新している。安全資産の代表格である金市場にも投機マネーが流入し、国際金価格は昨年9月以来の高値を更新している。

イラン政府が情報統制を行っていることで不確実な部分も多いが、一連の反政府デモが広がりを見せる中で、仮想通貨市場では顕著な動きがみられた。すなわち、イラン通貨リヤル(IRR)とビットコイン(BTC)との間の取引量が急増しているのである。

昨年12月にはビットコイン価格が急騰したため、各国通貨とビットコインとの間の取引量が増えたのはイランに限られたものではない。このため、イラン人が単純な「投機」でビットコインを購入した可能性も否定できない。少なくとも、一部はこうした短期売買目的だとみて良いだろう。

ただ週間ベースの取引量をみると、11月中旬時点では週に50億リヤル前後だったのが、一時は700億リヤルを突破し、政情不安が伝わり始めた12月入りしてから一気に取引量が急増したことは注目に値しよう。
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これは、イラン国内の経済環境悪化を警戒して、自国通貨リヤルからビットコインに資金を退避させる動きが活発化した可能性がある。イラン経済環境の混乱は、同国通貨の購買力を毀損する動きにつながりかねず、ビットコインなど値上がりしている仮想通貨で購買力を維持したいとの意向が働いた可能性がある。今回の反政府デモは、米国やイスラエル、サウジアラビアなどとの関係悪化も加速させており、このまま法定通貨であるリヤルを保持し続けることが妥当なのか不安心理が広がった際に、仮想通貨が「受け皿」としての役割を果たした可能性がある。特に、イランに関しては米国が経済制裁を科した場合のリスクから米ドル保有リスクも高く、リヤルからの受け皿の選択肢は多くないことも影響した可能性がある。

また、政府が各種統制を強化する中、匿名性の高い仮想通貨で資産を防衛したいとの意向も働いた模様だ。代表的な仮想通貨たるビットコインのみならず、より匿名性の高いモネロ(XMR)などのいわゆるアルトコインに対する資金流入も報告されている。

■新興国で加速する金と仮想通貨の競合
これと同様の動きは、昨年11月のジンバブエでも観測されている。もともと高インフレで代替通貨に対するニーズが高い土壌もあったが、軍事クーデターの発生を受けて、同国内の取引所では国際相場を無視した高値形成が行われた。同国中央銀行は、ビットコインは合法ではないと警告を発していたものの、国際相場の二倍の値段がついても資金が流入する異常事態になった。

従来の常識では、こうした政治環境の混乱環境では国際基軸通貨のドル、安全通貨としての歴史と定評のある金などを購入する動きが一般的だった。しかし、近年は小口資金の法定通貨に対する退避ニーズ、ヘッジニーズの一部が仮想通貨にシフトする傾向が観測され始めている。欧州債務危機時点では、まだユーロからドルや金貨などに資金をシフトさせる動きが優勢だったが、ネットワーク上のデジタルデータのみで瞬時に取引が完結する利便性もあって、少なくとも一部地域で自国の法定通貨の保有リスクが高まった際には、仮想通貨に資金をシフトするトレンドが形成され始めていることは間違いなさそうだ。

金と仮想通貨では、技術的な方向性が正反対の方向性にある一方で、法定通貨に対する代替通貨としての性格は共通している部分も多い。取引の利便性などの観点では、明らかに仮想通貨が金に対して優位性を有しており、金はこれまでの「法定通貨との競合」から、「仮想通貨との競合」という二つのテーマを同時に消化する必要性に迫られている。

金市場では、ネットワークに依存せず、鉱山から産出された現物の存在による本源的価値の存在によって、逆に代替通貨としての金の魅力を増すといった議論もある。通貨を取り巻く技術の進歩によって、逆に従来から技術環境が大きく変わらない金の魅力が増すとのロジックである。ただ最近の新興国の金融経済危機にあっては、仮想通貨に対する注目度の高さは否めない状況になっている。単純に仮想通貨全体の価格が上昇しているという時代の追い風もあるのだろうが、金と仮想通貨との競合がどのような方向性に向かうのかは、金と仮想通貨双方の将来に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)イラン反政府デモで仮想通貨の取引急増か?(Yahoo!ニュース)

株を買って金も買う ~金価格が10連騰~

1月4日のCOMEX金先物相場は、年末・年始を挟んで10営業日続伸となった。昨年12月12日の1オンス=1,238.30ドルをボトムに直近高値は1,327.30ドルに達しており、昨年9月15日以来となる約3ヵ月半ぶりの高値を更新している。為替市場でドルが軟化していることに加えて、イランや北朝鮮など地政学リスクの高まりを材料視した買いが続き、明確な上昇トレンドが形成されている。

世界の株価は年初から急伸しており、本来であれば「安全資産」である金相場を積極的に買い進むような投資環境にはない。米株式市場ではダウ工業平均株価が2営業日連続で過去最高値を更新しており、通常であれば金市場からは投機資金が流出し易い相場環境にあると言える。投資家のリスク選好性が高まる局面にあって、金相場が上昇しているのは通常の状態とは言えない。

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■米経済の強気見通しでも下落するドル
こうした異常とも言える値動きの背景にあるのは、一つがドル安である。本来であれば米国株が過去最高値を更新し、米実体経済の指標も好調さを示すものが相次ぐ中、為替市場ではドル高圧力が発生し易い状況にある。しかし実際には、米国株高にもかかわらず米長期金利が一向に上昇しないことに加えて、米国以上にユーロ圏の良好な経済環境がクローズアップされる中、ドルは対ユーロを中心に下げに転じている。「米国の良好な投資環境→ドル高→ドル建て金相場下落」ではなく、「ユーロ圏の良好な投資環境→ユーロ高(ドル安)→ドル建て金相場上昇」の流れが確立している。


これと同様の相場環境は昨年中旬にも観測されていたが、ユーロ圏経済が欧州債務危機、更にはイギリスの欧州連合(EU)離脱を経て成長を加速させていることが、ドル建て金相場を大きく押し上げている。国際基軸通貨ドルと代替通貨たる金は逆相関の関係にあり、投資家のリスク選好性の高まりがドル高圧力に直結しないことが、ドル建て金相場を押し上げている。

■根強い地政学リスクへの警戒感
もう一つの背景が地政学リスクの高まりである。年末・年始を挟んでイランでは反政府デモが広がりを見せており、今後の展開次第ではイラン国内の混乱状況に留まらず、米国やイスラエル、サウジアラビアなども巻き込んだ国際政治環境の不安定化を招く可能性がある。更に北朝鮮では、新たなミサイル発射が準備中との報道があり、改めて朝鮮半島有事のリスクが高まるシナリオも警戒されている。

株式市場はこうした地政学リスクに大きな関心を示していないが、今後の展開によっては実体経済の動向と関係なく投資家のリスク選好性が後退し、株価が急落するリスクを抱えている。こうした中、株式市場における強気スタンスを後退させるのではなく、株式市場における強気スタンスを維持して株高の恩恵を享受すると同時に、安全資産の金を購入して「万が一」に備える動きが金相場の10営業日続伸を促す重要な要素の一つになっている。

「株を買って、金も買う」と言う投資行動は必ずしも一般的とは言えないが、昨年の株価急騰局面でも金相場は底固く推移しており、株高環境にあっても投資家が漠然とした不安心理を抱えていることが明確に示されている。昨年の場合だと、株価が急落して保険としての金が活躍する場面は乏しかったが、株高の恩恵を享受することを基本方針としつつも、保険の金を購入する投資行動は今年も維持されている。

「株式で攻め、金で防衛する」のが、トランプ米大統領誕生後の大きな投資トレンドになっている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)株を買って金も買う ~金価格が10連騰~(Yahoo!ニュース)

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プロフィール
小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業部、営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

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