小菅努の商品アナリスト日記

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2018年01月

円高ショックが大きい天然ゴム

◎〔アナリストの目〕円高ショックが大きい天然ゴム=小菅努氏 

TOCOM商品市場では、円高の脅威が増している。国際商品市況は原油を筆頭に堅調に推移しており、CRB商品指数の年初からの上昇率は3.0%に達している。一方、同じ期間にドル円相場は3.7%の円高・ドル安となっており、円建て商品相場は上昇しづらい環境になっている。TOCOMゴム相場は最大で4.8%の下落率を記録しているが、単純計算で下落幅の77%が円高要因で説明が付き、残りの23%が上海ゴム相場の上値の重さや国内在庫の急増圧力によるものと分析できる。

1月23日の日本銀行金融政策決定会合では、大規模な金融緩和策の維持を決定し、黒田日銀総裁は緩和政策の出口を検討すべき局面ではないと明言している。しかし、マーケットは日銀の政策変更の可能性に敏感になっており、今後も円高に振れるケースが増えやすい状況になっている。ドルの利上げ着手局面を振り返ってみれば、実際の利上げに先行する1年半前からドル高圧力が発生していた。円相場もそれと同じパターンをたどるのであれば、今年の円建てゴム相場はマイルドな下押し圧力にさらされる場面が増える可能性を想定しておく必要がある。

一方、ゴムの需給要因は必ずしも重要視されていない。タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国は3月末までに35万トンの輸出削減を行うことで合意している。合意の履行状況を不安視する向きもあったが、各国の報告内容を見る限りは、現時点ではかなり高い合意順守状況にあるもようだ。ゴム生産国の価格低迷に対する危機感は強く、4〜5月前後がピークになる減産シーズンに向けて供給制約は強化される方向に展開している。しかし、産地相場も含めて国際ゴム相場の反応は鈍く、需給動向そのものに対する関心の低さが再確認されるだけにとどまっている。逆に、国内在庫が昨年10月以降に倍増しているといったネガティブな動きも材料視されておらず、昨年と同様に上海ゴム市場における投機マネーの動向が最重要視されることになる。

その中国市場では年初から株価が急騰しており、コモディティー市場における投機マネーの流動性拡大も期待できる環境になっている。しかし実際には、むしろ「コモディティー→株式」への資金フローの方が優勢である。鉄鉱石や石炭相場などもパフォーマンスの低さが目立ち、上海ゴム相場のみが独歩高となるような環境にはない。本来は、国際通貨基金(IMF)が米税制改革の効果で主要国の成長見通しを軒並み引き上げている恩恵を受けやすい状況だが、突然に急伸した後に急落する場面も目立ち、今後も上海ゴム相場は1トン=1万4000元水準で方向性を打ち出しづらい状況にある。中国の各種政策引き締めがピークを脱したことで下値不安は後退するが、同国の17年新車販売台数は前年比3%増にとどまっており、生産地でよほどの大規模な供給障害が発生しない限りは、ボックス気味の展開が続く可能性が高そうだ。

昨年の東京ゴム相場の出来高は13年ぶりの低水準になったが、ゴム需要家にとっては好ましい安定した価格環境ながらも、投資家にとっては仕掛けづらい相場環境が続く可能性が高い。

※小菅 努(こすげ・つとむ)氏 マーケットエッジ代表 


(2018/01/29執筆)
(出所)時事通信社「アナリストの目」2018/01/30

原油60ドル台は時期尚早

原油60ドル台は時期尚早
まだ危うい需給正常化

サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は、2019年以降も主要産油国の間で政策協調を行うことで合意していると発言した。現在の協調減産は18年末までが期限とされており、協調減産の「出口」を巡る議論も活発化しているが、その「出口」に長めの期間を設定することで、協調減産体制からの離脱をスムーズに行うことを意図したものである。今回の協調減産体制によって、国際原油需給・価格環境の安定化を目指す方針を強く示した格好になる。

一方で、サウジアラビアがこのような踏み込んだ発言を行っているのは、それだけ需給見通しの先行きがぜい弱であることの裏返しとも言える。17年は強力な需要拡大圧力と協調減産によって、世界の石油在庫に対しては強力な減少圧力が発生した。特に4~6月期以降は3四半期連続で在庫が減少しており、在庫余剰感は解消方向に向かっている。まだ目標とする在庫の5年平均回帰までは道半ばの状況だが、少なくとも協調減産体制は一定の成果を上げ、国際原油相場は14年12月以来の高値圏まで上昇している。WTI原油は65ドル水準、ブレント原油は70ドル水準まで値上がりしているのは、投機筋が原油需給環境の改善傾向を高く評価していることを明確に物語っている。

ただ、国際エネルギー機関(IEA)の推計では、18年は上期が若干の供給過剰、下期が若干の供給不足であり、年間を通じた需給バランスはほぼ均衡状態との見通しに留まっている。すなわち、現時点では昨年のような大規模な在庫取り崩しが想定されている訳ではない。もちろん、経済破綻状態に陥ったベネズエラ、武装勢力の動きが活発化しているリビア、対米関係が悪化しているイランなどの生産動向によっては、想定外の需給ひっ迫状態が発生する可能性も残されている。その際は、WTI原油ベースで70ドルや80ドルといった価格水準を正当化する余地もある。

ただ、そうした特殊な供給トラブルが発生しないのであれば、堅調な需要環境を考慮に入れても18年中に更に在庫の削減を進めることができるか否かは、ぎりぎりの判断を求められる状況にある。特に、シェールオイル、オイルサンド、深海油田などは原油価格動向に敏感であり、シェールオイルの場合だと数カ月といったタイムスパンで価格変動の影響が生産動向に反映されることになる。

そして、足元ではシェールオイルの生産高見通しを引き上げる動きが相次いでおり、このまま現行価格水準を維持してシェールオイル産業に刺激を与え続けると、18年通期の供給超過といったシナリオも浮上する余地がある。足元では寒波の影響もあって需要が強めに推移しているが、今後は需要の端境期に向かうことになり、そのタイミングでシェールオイル増産が加速するような事態になると、一気に短期需給は緩むことになる。WTI原油の60ドル台定着を進めるのは時期尚早とみている。(2018/01/24執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月29日「私の相場観」

トランプ米大統領1年目の金価格は10%上昇

2017年1月20日にドナルド・トランプ氏が第5代アメリカ合衆国大統領に就任してから1年が経過した。メディアでは米国内外に様々な「混乱」をもたらしているとの批判も目立つが、その間の金価格は総じて堅調に推移した。国際指標となるCOMEX金先物相場の場合だと、大統領就任当日の1オンス=1,204.90ドルに対して、今年1月22日時点(※20日と21日は週末)では1,331.90ドルとなっており、実に10.5%もの値上がりになっている。最安値は大統領就任直後の17年1月27日に付けた1,179.70ドルである一方、最高値は17年9月8日の1,362.40ドルとなっている。

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■トランプ政権下で金が買われた理由
トランプ大統領誕生前の時点では、経済政策に混乱が生じ、米経済は停滞するといった論調もあったが、振り返ってみれば米経済は良好だった。17年通期の国内総生産(GDP)は2.3%成長となり、16年の1.5%成長を上回っている。国際通貨基金(IMF)は「税制改革が経済活動を刺激する」ことが見込まれるとして、18年には更に2.7%までの成長加速を見込んでいる。株式市場に目を向ければ、ダウ工業平均株価は17年1月20日の1万9,827.25ドルから今年1月22日の2万6,214.60ドルまで、32.2%もの上昇率を記録している。トランプ政権下でダウ工業平均株価が下落した月は17年3月のみであり、それ以外の11カ月は全て上昇している。

一般的には「安全資産」の金が注目される余地はない状況とも言えたが、実際には金市場に対しては断続的に投機資金が流入する状況が作られた。皮肉にも株価の急騰が、金市場に対する投資ニーズを喚起したのである。ビジネスフレンドリーなトランプ政権の経済政策は、株式相場にバブル的な高騰をもたらした。この結果、投資家の観点からは株価高騰を歓迎しつつも、このままの状況が続くのか不安感も高まり、「万が一の事態」に対応するための保険として、金が購入されたのだ。これが顕著に表れたのが金上場投資信託(ETF)であり、トランプ大統領就任時の1,655トンに対して、1年後には1,746トンまで拡大している。株高局面において、株式の保有資産が増える動きと連動して、金保有量も拡大したのである。

そして、もう一つの要因がドル安だった。大統領選直後はトランプ大統領の拡張的な財政政策に対する期待・警戒感から米長期金利が急伸し、ドル高圧力が発生していた。しかし実際に大統領に就任した後のドルインデックスをみてみると、100.74ポイントから90.12ポイントまで10.5%下落している。1月に入ってから米政府の「強いドル」と「弱いドル」政策を巡る議論も活発化しているが、実績としてトランプ政権下のドルは弱含みに推移している。これがアメリカファースト政策の影響かは議論があるものの、米金融政策が緩和から正常化に向かう過程においても、国際基軸通貨であるドルが軟化したことが、代替通貨としての金に対する資金流入を促した。

そして最も金価格に対する刺激が大きかったのは、地政学リスクの高まりだった。シリア情勢なども注目されたが、トランプ政権1年目で金価格が最高値を付けたのは、米朝軍事衝突のリスクが高まった17年8~9月にかけて、米朝の間で批判合戦が繰り広げられ、北朝鮮が核実験を実施し(9月3日)、米原子力空母が朝鮮半島付近に展開された時だった。その後、北朝鮮情勢のリスクを積極的に織り込むような動きはみられなくなり、ボラティリティ指数(恐怖指数)は歴史的低水準に回帰したが、これもマーケットに漠然とした不安心理をもたらし、「安全資産」の金を保有する動きにつながった。すなわち、リスクを十分に織り込んでいないのではないかとの疑念が高まったのである。

■金を持ちたい漠然とした不安心理
ドル安に関しては必ずしもトランプ政権の影響とは言えず、マーケット環境全体でみればトランプ政権は投資家に歓迎される政策を矢継ぎ早に繰り出している。しかし、こうしたリスクオン環境でも金価格が上昇していることは、良好な実体経済環境や株高の恩恵を享受しつつも、漠然とした先行き不透明感を抱いている向きが多い証拠と言えるのかもしれない。

なお、東京商品取引所(TOCOM)の円建て金価格をみても1グラム=4,385円から4,734円まで、8.0%の上昇率が記録されている。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努】

(出所)トランプ米大統領1年目の金価格は10%上昇(Yahoo!ニュース)

CMEビットコイン先物市況(NY 01/22~01/26)

NY 2018/01/22
CMEビットコイン先物 前日比1,005ドル安の1万0,355ドル。政府機関閉鎖を受けてアジアタイムに1万1,830ドルまで上昇するも、つなぎ予算の目途が立つと急落地合に転じている。退避ニーズの受け皿として機能するも、リスクオンの地合回帰で売り優勢の地合に回帰した。ノルデア銀行は行員の取引禁止方針。

NY 2018/01/23
CMEビットコイン先物 前日比740ドル高の1万1,095ドル。1万ドル割れからの安値是正の動きが優勢になり、高値は1万1,350ドルに達した。1万ドル割れには抵抗があることを再確認。韓国は、無記名口座の利用禁止方針を示すも、新規投資は許容したことも買い安心感につながる。

NY 2018/01/24
CMEビットコイン先物 前日比20ドル高の1万1,115ドル。アジア・欧州タイムは前日の戻り歩調を引き継ぎ、前日高値を上抜く1万1,455ドルに達した。ただ、米時間は調整売りが上値を抑え、大きな値動きには発展しなかった。中国人民銀行は、仮想通貨取引関連サービス提供禁止を命じた。

NY 2018/01/25
CMEビットコイン先物 前日比130ドル高の1万1,210ドル。ダボス会議で米国の自国第一主義が改めてクローズアップされているが、ビットコイン相場は1万1,000ドル水準での小動きに終始した。ドルが不安定な値動きを見せる一方、方向性を欠いた。ロシア財務省は取引規制を準備中と発表している。

NY 2018/01/26
CMEビットコイン先物 前日比320ドル安の1万0,925.37ドル。コインチェックのNEM喪失、サービス停止を受けて、一時1万0,300ドルまで軟化したが、NYタイムは押し目買いが膨らんで下げ幅を縮小した。引き続き1万ドルの節目水準にサポートができている。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)@kosuge_tsutomuから1週間分をまとめた転載です。

米国の天然ガス価格が、年初から20%超の急騰

米国の天然ガス価格が高騰している。NYMEX天然ガス先物相場は1月22日の取引で1mmBtu=0.220ドル(6.8%)高の3.444ドルとなったが、これは1日の上昇率としては2016年10月以来で最大であり、価格水準としては16年12月30日以来の高値を更新している。23日の取引でも更に3%前後の上昇率が記録されており、冬の需要期に入った後も2.5~3.2ドル前後の価格水準で伸び悩んでいた相場が、3.5ドル台まで一気に価格水準を切り上げた格好になる。
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理由は単純であり、寒波による需要上振れ、それに伴う在庫タイト化リスクに対する警戒感が、天然ガス市場に対する投機マネー流入を加速させていることだ。今季は暖冬スタートになった結果、暖房用エネルギー需要に対する在庫手当には余裕があるとの評価から、昨年12月21日には2.568ドルまで値下がりしていた。しかし、日本にも強烈な寒波をもたらしている北極振動は米国でも東部地区を中心に急激な気温低下をもたらしており、暖房用エネルギー需要の上振れリスクを高めている。

その影響が顕在化した一つは原油相場の高騰であるが、ここにきて天然ガス市場でも需要の上振れから在庫の「余剰感」が「タイト感」に転換しつつあり、それがリスクプレミアムとして天然ガス相場に加算され始めている。

米エネルギー情報局(EIA)の週間統計によると、今季は昨年10月10日の週から米国内在庫の取り崩しが始まったが、全米の天然ガス在庫は10月3日時点の3兆7,900億立方フィートに対して、12月8日時点ではまだ3兆6,260億立方フィートまでの小幅減少に留まっていた。その時点での過去5年のレンジは(3兆3,320億~3兆8,610億立方フィート)であり、5年レンジ上限付近の在庫水準には、まだ一定の余裕がみられた。暖冬でそのまま需要の伸びが鈍ければ、春の需要の端境期に向けて必要以上の在庫を繰り越す可能性さえ想定されていた。

しかし、年末・年始の寒波と連動して在庫減少ペースは一気に加速しており、直近の1月12日時点では2兆5,840億立方フィートまで減少している。これは前年同期比12.5%減、5年平均比で12.3%減であり、一気に在庫水準のタイト感が強くなっている。

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日本で寒波が深刻化する一方、米国の寒波は緩み始めており、2月に向けてパニック的な高騰相場が続く可能性は低い。過去の傾向からみても、在庫タイト感が残されていても気温上昇傾向が強まれば、天然ガス相場は下押しされる傾向が強い。このため、急騰はしているものの短期上昇圧力との評価が基本になる。

ただ、投機筋はシーズン初めに暖冬予想から暖房用エネルギー需要期を売り越し状態で迎えた反動から、需要期終盤の寒波に慌ててショートカバー(買い戻し)を迫られると同時に新規買いポジションを構築する動きが、必要以上の値動きの荒さをもたらしている。昨年末からの上昇率は最大で22.8%にも達しているが、「暖冬→寒波」へと急激な気象環境の変化が、天然ガス相場に対してもパニック的な高騰を促している。急激な気温の変化は人の体調不良をもたらすことが多いが、天然ガス相場も突然の気温変化には大きなショックを受けることになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)米国の天然ガス価格が、年初から20%超の急騰(Yahoo!ニュース)

需給緩和で上値重い穀物

需給緩和で上値重い穀物
商品市況高の例外に

CBOTトウモロコシ先物相場は、1Bu=350セント水準で上値の重い展開になっている。新規手掛かりに乏しい相場環境だが、米国内外の需給緩和状態に対して根強い警戒感があり、戻り売り優勢の展開が続いている。1月12日には米農務省(USDA)が最新の需給報告を公表したが、米期末在庫見通しは前月の24.37億Buから24.77億Buまで引き上げられている。イールドが1エーカー当たりで175.4Buから176.6Buまで引き上げられており、豊作評価が一段と強くなっている影響が大きい。トレンドイールドの170.7Buからは3.5%の上振れであり、過去最高のイールド環境が実現している。しかも、ここにきて飼料需要見通しが小麦と同時に引き下げられており、供給過剰感に対する警戒感が改めて強くなっている。深刻な供給過剰状態に陥った前年度の期末在庫22.93億Buを大きく上回るのは確実な情勢であり、農家の売り渋りなどで自律反発的な動きがみられても、戻りは売られる展開が続いている。在庫率ベースでは2005/06年度以来の需給緩和状態であり、350セント水準に値ごろ感を見出すことは難しい。320セント水準を打診する可能性も想定しておきたい。

一方、大豆はアルゼンチンの干ばつ懸念が下値を支えているが、昨年12月前半の1000セント台に対して950~970セント水準までコアレンジを切り下げている。11月には深刻なホット・アンド・ドライ(高温乾燥)状態に陥ったことで、特にアルゼンチンに対する依存度の高い大豆ミール相場が高騰したが、12月にまとまった降雨が観測されたことで、不作に対する警戒感は後退している。

年明け後も乾燥予報が伝わると大豆相場は刺激を受ける傾向にあるが、11月にみられたように本格的にリスクプレミアムを加算していくような動きはみられない。USDA需給報告をみても、アルゼンチン産は前月から100万トン下方修正の5600万トンとなったが、ブラジル産は逆に200万トン上方修正の1億1000万トンとなっており、南米産全体では逆に増産圧力が強くなっている。

米国産の期末在庫も前月の4.45億Buから4.70億Buまで上方修正されている。大豆ミール輸出の拡大で圧砕需要は堅調だが、大豆輸出そのものは減速しており、豊作に伴う供給プレッシャーを吸収できない状況に変化はない。このまま南米産に大きな天候障害が発生しなければ、需給緩和評価が修正されることはないだろう。

このため、17/18年度需給要因で穀物相場がリバウンドするのは難しく、仮に大規模な反発があるとすれば18/19年度の需給要因になる可能性が高い。しかし、18/19年度の作付面積に関しては小麦の削減が優先される見通しであり、トウモロコシと大豆の大幅な面積削減は想定されていない。作付け期の天候相場が開始されるまでは、需給緩和を背景とした低迷相場が続く可能性が高い。

(2018/01/17執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月22日「私の相場観」

原油市場に過去最大の投機資金が流入中

原油市場で投機買いの規模が過去最高を更新した。米商品先物取引委員会(CFTC)が1月19日に発表した最新データ(1月16日時点)によると、WTI原油先物・オプション市場における投機筋(Money managed)の買い越し枚数(=買いポジション-売りポジション)は、NYMEXとICEの二つの市場を合計して前週比4万0,855枚の54万1,990枚(1枚=1,000バレル)に達している。

昨年末の46万0,836枚からは8万1,154枚(17.6%)の急増であり、年初から原油市場に大量の投機資金が流入したことが確認できる。この期間のWTI原油先物相場は1バレル=60.40ドルから63.70ドルまで3.30ドル(5.5%)の急伸となっているが、昨年中盤以降の強気スタンスが維持されている。

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底流にあるのは、シェールオイルの増産拡大などで大きく過剰供給方向に歪んだ国際原油需給が、需要拡大と昨年1月から始まった協調減産の成果によって正常化し始めていることがある。過剰供給解消が実現するのか不透明感が強かった昨年7月2日時点では、投機筋は僅か15万7,291枚の買い越しに留まっていたが、その後の約6カ月半で原油市場に滞留する強気の投機資金の規模は3.4倍にまで急増している。原油安の時代が終わった可能性が高いことを強く印象付けられる。

しかも年末年始を挟んでは、1)イランの地政学リスク、2)米原油在庫の急減、3)北半球の寒波、4)ドルの急落、5)世界的な株高など、マクロ需給環境以外の要因からも、原油市場に対する投機資金流入が加速し易い環境が整った。

ただ、こうした急激な投機資金の流入は原油高を加速させる一方で、急反落のリスクを高めることになる。

例えば、昨年1~2月には石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどの協調減産がスタートしたことで投機筋の買い越し枚数は2月26日に44万3,703枚に達したが、その後は上述のように7月2日の15万7,291枚まで急減している。投機資金の流入で原油相場が50~55ドル水準まで値上がりしたことで米国のシェールオイル生産活動が一気に活発化した結果である。原油市場における投機資金の流入が過熱化したことが、需給見通しを悪化させたのだ。そして、現在の投機資金の規模はその当時を大きく上回っている。原油相場も2014年12月以来の高値圏となる60~65ドル水準まで値上がりしている。
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需給バランスが供給超過から均衡、そして供給不足に転換するにつれて、原油市場に対して投機資金が流入し、原油価格が上昇する展開には、何ら大きな問題はない。しかし、投機主導で必要以上の値上がりが実現すると、実際の需給環境よりも需給がタイト化しているシグナルが需要家と生産者の双方に発せられ、本来は必要がなかった需給緩和圧力が発生することになる。

国際エネルギー機関(IEA)は19日に発表した最近の月報において、原油高に伴う需要減退、更には天然ガスへの需要シフトが発生していることを報告している。また、米国、カナダ、ブラジルなどの産油量見通しが上振れしていることも報告している。まだ18年の国際原油需給バランスは均衡化見通しが基本になっているが、「原油高→需要抑制」、「原油高→供給拡大」のフローが発生し始める中、投機資金の流れが逆転し始めると思わぬ急落リスクも浮上することになる。

原油相場は緩やかにコアレンジを切り上げていく可能性が高いものの、年初からの原油相場急伸と投機資金の流入状況は、強気派にとっても不安を抱かせる状況になり始めている。特に、シェールオイルは中東産油国とは異なり、投資開始から生産開始までのタイムスパンが短縮されているため、原油価格変動の影響は数カ月程度で実際の産油量に反映される傾向にある。ここ最近の原油高がシェールオイルの増産加速を促すのは必至であり、それはリグ稼働数や米エネルギー情報局(EIA)の生産予測調査などにも明確に見て取れる。投機資金の流入による原油高は分かり易い現象だが、需給正常化の流れを阻害するか否かの議論の行方によっては、急反落のリスクを抱えることになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油市場に過去最大の投機資金が流入中(Yahoo!ニュース)

CMEビットコイン先物市況(NY 01/16~01/19)

NY 2018/01/16
CMEビットコイン先物 前日比2,785ドル安の1万1,160ドル。中国や韓国の規制を巡る動きが警戒され、売り優勢の展開になった。主に15日に急落したが、16日も自律反発をこなしながら更に下値を切り下げる展開になっている。上場来安値を更新している。

NY 2018/01/17
CMEビットコイン先物 前日比215ドル安の1万0,945ドル。前日の軟調地合いを引き継ぎ、一時1万ドルを割り込む。安値9,225ドルから自律反発の動きが強まるも、改めて買い進むような動きも鈍く、前日比では小幅安。1万ドル割れでは出来高急増で買いが膨らんだが、その後はじり高傾向に留まっている。

NY 2018/01/18
CMEビットコイン先物 前日比870ドル高の1万1,815ドル。1万ドル割れからのリバウンド局面が続く。一時1万2,000ドル台回復も、同水準では戻り売りを仕掛ける動きも強かった。韓国規制当局トップは、全ての取引所の閉鎖を検討中と発言。シティは5,600ドルまで下落する可能性を指摘。

NY 2018/01/19
CMEビットコイン先物 前日比455ドル安の1万1,360ドル。前日のリバウンド基調を引き継げず、調整売りが先行した。一時1万ドル割れから下げ一服となっているが、戻りは鈍く上値の重い展開が続く。SECは仮想通貨の安全性、投資家保護に懸念表明。ビットコインETFの早期上場は困難との見方が強まる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)@kosuge_tsutomuから1週間分をまとめた転載です。

年初の原油価格が高騰

年初の原油価格が高騰
上昇余地は限定的か

2018年の原油相場は、年初の取引開始と同時に急伸地合を形成した。NY原油先物相場は、昨年末の1バレル=60.42ドルに対して、1月第二週には早くも63ドル台まで値位置を切り上げている。これ14年12月以来となる約3年ぶりの高値を更新したことを意味し、昨年6月の42.05ドルをボトムとした原油高のトレンドが維持されていることが確認できる。

年末・年始の原油相場で材料視されたのは、イラン情勢の緊迫化だった。イラン国内では、高インフレや失業率上昇などに不満を強めた市民が大規模な反政府デモを展開し、同国からの原油供給に不確実性が高まったことが、原油価格に対してリスクプレミアムの加算を促した。イランは石油輸出国機構(OPEC)内で第三位の産油国であり、反政府デモが原油供給に影響を及ぼすと、不測の需給ひっ迫状態が実現する可能性もあるためだ。

しかし、その後は反政府デモが収束に向かったにもかかわらず、原油相場は更に上値を切り上げる展開になっている。今回の反政府デモでは原油一滴も供給障害は発生しない見通しだが、原油相場は積み上がったリスクプレミアムの剥落を進めることなく、逆に上昇ペースを加速させている。

極めて投機色の強い値動きと評価しているが、今回のデモをきっかけに米国=イラン関係が一段と悪化していることもあり、イラン核合意の見直し議論の活発化などが本格化すると、イラン産原油が長期にわたって落ち込むリスクも浮上することになる。現実問題として、イラン核合意は米国単独で破棄が可能なものではなく、直ちにイラン産原油を取り巻く環境が大きく変わる可能性は低い。ただ、昨年に協調減産の需要拡大の効果で在庫環境の正常化が進んでいることもあり、マーケットはこの種の供給不安に敏感に反応する「通常の相場環境」に回帰しつつある。

もっとも供給「障害」ではなく供給「不安」に留まる限りは、原油高には限界がある。原油相場の高騰は需給ひっ迫リスクのシグナルとなり、本来であれば必要ではない需要抑制や増産圧力が、必要以上の需給緩和状態をもたらすリスクを高めるためだ。特に、シェールオイル産業は既に昨年後半の油価上昇に反応し始めているだけに、近く増産ペースが加速する可能性は国際エネルギー機関(IEA)などからも指摘されている。

18年の世界石油需要は前年比で日量130万バレルの伸びが想定されているが、米産油量は既に97万バレルの増産が予想されている。しかも、米エネルギー情報局(EIA)は過去5か月連続で米産油量見通しを引き上げており、このまま原油高を放置しておくと、需要拡大幅をシェールオイル増産幅が上回り、在庫調整の動きが巻き戻される可能性も浮上する。実際にイラン産原油に供給障害が発生すれば60ドル台定着も可能になるが、現状では投機色の強い高値水準であり、持続可能性は乏しいと評価している。
(2018/01/10執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月15日「私の相場観」

原油価格が高騰している5つの理由

国際原油価格が高騰している。NYMEX原油先物相場は、昨年末の1バレル=60.42ドルに対して、1月11日の取引では一時64.77ドルまで上値を切り上げている。これは2014年12月以来の高値であり、16年2月の26.05ドルからは約2.5倍の値上がりになる。ICEブレント原油先物相場に至っては、1月11日に一時70ドルの大台に乗せており、原油価格の復調が強く印象付けられる状況になっている。
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ではなぜ原油価格は高騰しているのだろうか。ここではマーケットが注目している5つの理由を紹介したい。

■理由1:地政学リスク
2017年末から18年にかけて急浮上したテーマが、地政学リスクである。昨年は専ら北朝鮮情勢が注目されていたが、原油市場における関心が高まっているのはイラン情勢である。イランでは年末・年始に大規模な反政府デモが発生したことは国内メディアでも大きく報じられたが、それに伴う供給障害は発生しなかった。しかし、トランプ米大統領はイランとの核合意見直し、追加制裁に意欲を示しており、米国=イラン関係の悪化が不測の供給障害を招くリスクが警戒されている。

■理由2:在庫減少圧力
よりマクロな視点だと、世界的な原油在庫の減少圧力も原油高に寄与している。世界経済の好調さを背景に需要が堅調に推移する一方、石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどが協調減産を実施する中、原油需給バランスの指標となる在庫は急激に落ち込んでいる。米国の場合だと、昨年3月時点では5億3,000万バレルを超えていた原油在庫が、直近では4億1,950万バレルまで減少している。しかも、11月中旬以降は8週連続で減少中であり、需給環境の正常化が強く印象付けられる状況になっている。
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■理由3:シェール生産統計の悪化
一方、原油高を抑制する要因としてシェールオイルの生産動向が注目されていたが、昨年12月以降はやや低調な指標が目立つことも、原油高に安心感をもたらしている。こちらは積極的な相場の押し上げ要因というよりも、下落圧力を阻止する要因になる。米国の石油リグ稼働数は昨年12月8日の751基をピークに、1月5日時点では742基まで落ち込んでいる。また米産油量は昨年12月15日時点の日量979万バレルに対して、1月5日時点では949万バレルまで減少している。「原油価格高騰→シェールオイル増産」のフローが確認できないことも、投機買いに安心感をもたらしている。

■理由4:ドル安
また、為替市場でドル安圧力が発生していることも、ドル建て原油価格の押し上げ要因になっている。米経済は好調であり、金融政策も段階的な利上げが行われるなど、ドルを取り巻く環境が大きく悪化している訳ではない。ただ、最近は日欧など米国以外の国の金融緩和政策も是正されるとの見方が、ドル相場を押し下げている。ドルインデックスは昨年10月27日の95.15ポイントをピークに、1月12日時点では91.68ポイントまで下落し、昨年9月20日以来の安値を更新している。最大で3.6%ものドル安圧力が発生していることは、それに相当する原油価格の上昇率を正当化することになる。
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■理由5:投機マネーの動き
そして意外と大きな影響があるのが、投機マネーの動向である。国際原油需給が緩和から正常化に向かう過程において、投機筋はこれまでの売りポジションを急ピッチで解消している。それと同時に買いポジションを積み増しており、原油市場では投機主導の価格押し上げ圧力が急激に高まっている。NYMEX原油先物市場における大口投機筋の買い越し枚数は、昨年6月27日時点の32万7,188枚に対して、1月2日時点では62万4,213枚まで拡大している。世界的な株高の影響もあって投資家のリスク選好性は強くなっており、必要以上の投機資金が原油市場にも流れ込んでいる。
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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)原油価格が高騰している5つの理由(Yahoo!ニュース)

ガソリンが2年5ヵ月ぶり高値、トランプの中東政策を警戒か

資源エネルギー庁が1月11日に発表した「石油製品価格調査」によると、レギュラーガソリンの全国平均価格(1月9日時点)は1リットル当たりで前週比0.2円高の141.9円となった。これで3週連続の上昇となる。昨年の7月3日時点の130.3円をボトムに過去半年で累計11.6円(8.9%)の値上がりになった計算だ。これは2015年7月27日以来となる、約29カ月(2年5ヵ月)ぶりの高値を更新していることを意味する。

国際原油価格の上昇が続く中、日本の原油調達コストは着実に値上がりしており、それがそのまま国内ガソリン相場にも波及した格好である。国際原油相場が急落する以前となる14年前半から中盤にかけての160円台後半は大きく下回っているが、16年3月7日の112.0円を最安値としたガソリン価格上昇のトレンドは維持されており、安いガソリン価格時代の終わりが強く印象付けられる状況になっている。

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■トランプ大統領がガソリン価格を押し上げる可能性
国際指標となるNYMEX原油先物相場の動向をみてみると、昨年前半は年初の1バレル=50~55ドル水準に対して6月21日の42.05ドルまで急落していたが、年末にかけては60.42ドルまでの急激な切り返しをみせた。石油輸出国機構(OPEC)やロシアの協調減産体制が維持されている一方、世界の石油需要は堅調な伸びを示しており、余剰在庫が一掃とまでは言えないが解消方向に向かっていることが高く評価されている結果である。

その流れは年明け後も維持されており、直近の高値は63.67ドル(1月10日)にも達しており、14年12月以来の高値が更新されている。年末・年始を挟んでイランの反政府デモが供給不安を高めたが、その後は反政府デモが収束に向かったにもかかわらず、原油価格の高騰が続いている。

米国でイランとの核合意を見直す議論が活発化する中、一種の「トランプ・リスク」が強く警戒されている結果である。金融大手シティ・グループなどは1月9日付の最新レポートにおいて、中東や北朝鮮の地政学リスクが顕在化すれば、70~80ドルまで原油価格が更に高騰する可能性を警告している。

14年や15年の段階では過剰在庫を抱えていたことで、国際原油市場は各種の供給リスクを無視することができ、マーケットは寧ろ供給トラブルを原油需給・価格正常化のきっかけとして歓迎するムードさえみられた。しかし、在庫過剰の解消が進んでいることは、供給ショックに脆弱な通常の原油需給・価格環境に回帰し始めていることを意味し、トランプ大統領の対イラン政策の行方によっては、ガソリン価格の160円台乗せといった事態が予想以上に早く実現する可能性も浮上することになる。

仮にこうした中東や北朝鮮情勢を巡る大きな混乱状況が派生しなければ、シェールオイルの増産圧力が原油価格の上昇余地を限定することになる。米エネルギー情報局(EIA)は今年の原油価格の平均値として、現在の値位置を大きく下回る55.33ドル(昨年は50.79ドル)を想定している。このため、必要以上の原油高は逆に将来の需給緩和・価格低下リスクを高めることには注意が必要である。ただ、原油市場では余り材料視されていなかった「トランプ・リスク」について、今後はドライバーも関心を払う必要がありそうだ。米国=イラン関係の行方によっては、国内ガソリン価格は更に急騰することになる。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役社長 小菅努】

(出所)ガソリンが2年5ヵ月ぶり高値、トランプの中東政策を警戒か(Yahoo!ニュース)

2017年の金ETF市場を検証する

2017年の金上場投資信託(ETF)市場は、前年比で198トンの投資残高増加になった。16年の547トンからは64%の大幅な減少になったものの、2年連続で金ETFは投資残高を拡大することに成功している。

金ETFは金投資需要を喚起する目的で2003年に初めて設定され、ピークとなる2009年には年間645トンもの投資需要を創出している。同年の金鉱山生産量は2,589トンであり、新産金の四分の一が金ETF市場に吸収され、金需給の引き締めに寄与していた。

しかし、米国で金融緩和縮小の議論が活発化し始めた13年には912トンの投資残高減少となり、その後は14年が184トン減少、15年が125トン減少と、金投資需要環境の悪化が金ETF残高の減少を招き、それが金需給の緩和から更に金相場を押し下げる悪循環に陥っていた。

だが、イギリスの欧州連合(EU)離脱問題が浮上した16年には547トン増と4年ぶりに投資残高が増加し、その流れが勢いこそ鈍化したものの、17年にも引き継がれたことが確認できる。
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■金ETF購入の主役は欧州勢
地域別では、北米が63トン増(17年は226トン増)、欧州が149トン増(同281トン増)、アジアが13トン減(同35トン増)、その他が1トン減(同5トン増)になっている。北米と欧州は二年連続で投資残高を増やしているが、その規模は大幅に縮小している。前年比では北米が72%減、欧州が47%減となっており、特に北米地区の減少率が大きくなっている。

金ETF需要拡大に占める欧州の比率は、16年の51%から17年は75%まで上昇しており、欧州の機関投資家が金ETF市場の主役になっていることは明らかである。

では、なぜ欧州の機関投資家は金ETFを購入しているのだろうか。この点に関しては、欧州地区の政治リスクが強く影響した可能性が高い。移民問題、更には債務危機をきっかけに欧州にはこれまでの求心力が遠心力に転換しており、政治的な不満の高まりから投資環境の不確実性が増している。昨年の場合だとブレグジットが大きなテーマになったが、今年もフランス大統領選、ドイツ議会選挙などの政治リスクが、欧州機関投資家に対して金ETF購入を促したことが強く窺える。

そして欧州政治リスクの危機レベルとしては、金ETF購入量が47%もの大幅な減少になったことからは、「ブレグジット>フランス大統領選」だったことが窺える。欧州政治リスクへの退避ニーズは維持されたものの、18年の政治リスクは17年のブレグジット時ほどのレベルではないというのが、欧州の機関投資家による投資評価だった模様だ。

18年も3月にイタリア総選挙、更にはブレグジットの実行手続きが本格化するなど幾つかの政治リスクを抱えているが、改めて金ETF買いが膨らむか否かは金価格動向を考える際のみならず、欧州政治リスクを計る上での指標としても注目しておく必要がありそうだ。

■意外と動かなかった米投資家
一方、米国ではトランプ大統領の政治リスクが連日のように報じられていたが、米国の機関投資家は大きな動きを見せなかった。すなわち、トランプ米大統領に起因する政治リスクに関しては、必ずしも真剣に捉えられていなかったことが窺える。これは昨年の株価高騰とも整合性が取れる動きである。

二年連続の投資残高増加となったことからは、株高局面でもヘッジとして金ETFを購入しておきたいというトレンドは形成されていたことが確認できる。ただ、その規模としては前年比で72%の減少であり、ブレグジットと比べると大きな問題ではないとの評価が優勢だった模様だ。

唯一の例外とも言えるのが、8~9月にかけての投資残高急増である。8月は31トン増、9月は59トン増となっており、年間需要の大部分がこの時期に集中している。北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って朝鮮半島有事、更には北朝鮮による米本土攻撃が警戒された時期であり、北朝鮮情勢は米国の機関投資家に強い危機感をもたらしたと言えよう。

ただ、その後の10~12月期は12トンの減少に転じており、この問題はピークを脱したと評価した向きが多かった模様だ。

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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)2017年の金ETF市場を検証する(Yahoo!ニュース)

データでみるビットコイン先物のプレイヤー

昨年12月17日に米CMEグループでビットコイン先物の取引が開始されてから3週間が経過した。米国では米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週火曜日時点のデリバティブ取引の建玉状況を金曜日に公表しているが、ビットコイン先物に関してもデータが集計されており、売買状況が徐々にではあるが、明らかになり始めている。

下の表は過去3週間の建玉状況を一覧にしたものだが、まず注目されるのは「ディーラー」と「アセットマネジメント」区分の建玉は殆ど存在しないことである。「ディーラー」は金融機関のプレイヤー、「アセットマネジメント」は年金基金や投資信託などが含まれるが、この分野の売買は殆ど行われていない。すなわち、金融機関のリスク管理に伴う売買、機関投資家の売買はほぼ無視できる程度の規模に留まっている。

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一方、ある程度の規模を持った建玉が報告されているのが「レバレッジ投資家」になる。ここにはヘッジファンドや商品投資顧問業者(CTA)が含まれ、短期の値幅取りを狙った投機筋の参入は確認できる。

直近で最も建玉が多いのは「その他(報告義務あり)」であり、企業や小規模銀行などが主にヘッジ目的で売買を行っているものになる。そして、これに相当する建玉が存在するのが「その他(報告義務なし)」であり、いわゆる小口投資家になる。

つまり、スタートから3週間のビットコイン先物のメインプレーヤーと言えるのは、ヘッジ目的の売買と小口投資家であり、銀行や年金基金といった機関投資家の動きは殆ど存在せず、ファンドが僅かに打診的な売買を行うレベルに留まっている。

■大口の売りvs小口の買い
では、各プレイヤーがどのような売買を行っているかというと、「レバレッジ投資家」は3週間連続で売り越しており、ビットコイン先物が上場すればヘッジファンドは売りで参戦するとの強気派の懸念が裏付けられた格好になる。ただ、その規模は必ずしも大きくはなかった。

一方、「その他(報告義務あり)」も一貫して売り越しているが、ヘッジ目的の売買であれば納得のいく動きである。しかも、取組高は徐々にではあるが増加傾向にあり、ビットコイン価格が乱高下する中でビットコイン先物がその機能を果たし始めたと言える。

こうして大口投機筋はほぼ完全な売り越し状態にあるが、これに対抗しているのが小口投資家になり、こちらは3週連続で買い越している。ビットコイン価格動向にかかわらず一貫して強気スタンスが維持されている。

比率としては、買いポジションの63%が小口投資家、売りポジションの72%がその他(報告義務あり)となっており、「大口投資家の売りvs小口投資家の買い」の構図が明らかになっている。
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■取組高は漸増傾向も、低レベル
取組高全体は増加傾向にあるものの、直近の1月2日時点でも4,065枚に留まっており、注目度の高さの割には活発な売買が行われているとは言い難い。ビットコインは週末や祭日なども関係なく24時間取引されているが、ビットコイン先物には取引所の定める売買時間が存在しており、投機の場としてもヘッジの場としても限界がある。

また、取引証拠金がビットコインではなくドルであること、レバレッジの高さなども、ビットコイン投資家の関心を集めきれていない背景として指摘されている。ただ、今後の市場の拡大、更にはビットコイン上場投資信託(ETF)など新たな金融商品の開発を見据えれば、ビットコイン先物は必要不可欠な経済インフラになる見通しであり、これから市場をどのように育てるのか、投資家と取引所は手探りで最適解を模索することになる。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)データでみるビットコイン先物のプレイヤー(Yahoo!ニュース)

ペトロダラーの終焉か、人民元建て原油先物の取引開始迫る

中国で人民元建て原油先物取引が間もなく開始される。昨年12月に中国政府は取引開始の最終承認を行っているが、ポータル・ニュースサイト界面(Jiemian.com)は匿名の先物業者の話として、「1月18日」の取引開始で決まったと報じている。上場される上海期貨交易所の上海国際エネルギー取引所(INE)からの正式発表は行われていないが、12月中にシステムテストも終わっており、昨年から何度も延長が繰り返されていた人民元建て原油先物取引の開始が間近に迫っている。

国際原油価格については、米国のNYMEXで取引されているWTI原油先物、欧州のICEで取引されているブレント原油先物、そして中東(ドバイ)原油の三つが国際指標になるが、いずれもドル建てで取引されている。1バレル(約159kl)を何ドルにするのかを市場で決定し、これを指標価格に油種などに応じて各国が取引価格を決定していく流れになる。

一方、日本では東京商品取引所(TOCOM)がドバイ原油先物取引を上場しており、これは1klを何円にするのかを決定している。国内ではリットル単位の方が利便性が高く、自国通貨である円建ての指標価格を決定している。

その意味では、中国で人民元建て原油先物取引が開始されても、何ら議論に値しないとみることもできる。実際に、中国には上海期貨交易所の他に大連商品取引所、鄭州商品取引所などの大型の商品取引所が存在しており、工業用素材から農産物まで幅広いコモディティ(商品)の人民元建て指標価格が決定されている。

しかし、マーケットでは人民元建て原油先物取引の開始は、銅や大豆といった他のコモディティ先物取引とは異なる意味がある動きとの評価が存在している。すなわち、単純に人民元建て原油の指標価格を決定するのみならず、中国のより大きな国家戦略の中に位置づけられる動きとみられているのだ。具体的には、国際基軸通貨ドルに人民元が挑戦する通貨戦略がいよいよ佳境に入ったとみられている。

■ペトロダラーに挑戦する中国
この議論を理解するためには、「ペトロダラー(Petrodollar)」の話から始めなければならない。あまり聞きなれない言葉かもしれないが、「petroleum(=石油)」と「dollar(=ドル)」を合成した用語であり、国際原油取引では米ドルが国際決済通貨の殆どを占めることで、このような呼ばれ方をする。もっと踏み込むと、国際基軸通貨としてのドルの地位を維持するために、あらゆる国が必要としている石油をドルのみで取引する体制を創出・維持することを通じて、ドルの地位を守るアメリカの国家戦略システムと言える。

ペトロダラーの役割を重視する人達は、このペトロダラーの再循環(リサイクル)体制こそが、米国が世界最大の超大国としての地位を守るために、重要な役割を果たしていると考える。アメリカは「双子の赤字」と言われる巨額の貿易赤字と財政赤字を抱えており、通常であればインフレや通貨価値の低下、国際通貨としての地位低下といったアメリカにとって歓迎できない動きが想定される。それにもかかわらず、一貫して巨額の軍事支出が可能であり、中国に次ぐ世界第二位の経済規模を維持できているのは、ペトロダラーの再循環体制の恩恵と言える訳だ。

ロジックとしては、あらゆる国家は石油を必要としており、その国際決済をドルで行う限りは、産油国に巨額のドルが流れ込むことになる。そして、産油国はこのドルを米国債購入などを通じて米経済に還流させることで、アメリカの経済・財政を支援することになる。そしてアメリカはこうした流れを維持するために原油価格を高値誘導する必要があり、国際通貨基金(IMF)などを通じて新興国に資金援助(ドル)を行い、そのドルが原油購入を通じて再び米国に帰ってくる流れになる。

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こうした視点からは、米経済とドルはペトロダラーの再循環体制によって支えられていると言え、今回の中国による人民元建て原油先物取引の開始は、このポスト金本位制のアメリカ経済とドルを支えてきた体制への挑戦ではないかとみられているのだ。

この辺の議論は陰謀論のようなものも数多く、例えばブッシュ政権がイラク攻撃で湾岸戦争に踏み切った背景としては、その当時のフセイン大統領が原油取引の決済をドル建てからユーロ建てに移行すると表明したことが、アメリカの「レッドライン」を超えたとの見方がある。イラクがペトロダラー体制に明確な反旗を翻したことで、他産油国がこうした動きに同調することを阻止するための見せしめとして、アメリカはイラク攻撃に踏み切ったという訳だ。

本稿ではこうした分析の是非については評価しないが、いずれにしても金、ドル、原油市場などには、ペトロダラーの再循環体制が崩壊した場合には、経済・政治・軍事などの面で大きな混乱が生じるとの見方が存在していることは間違いない。中国の人民元国際化への歩みが新たなステージに突入し、ペトロダラー再循環体制に危機が生じるとの見方が存在することが、人民元建て原油先物取引開始の動きが、マーケットで注目されている理由である。

従来は、ペトロダラーに挑戦する通貨があるとすればユーロだとみられていたが、欧州債務危機でユーロは自滅してドルに挑戦する当面の権利を失った。こうした中、世界最大の経済規模を確立し、軍事・政治の点でもプレゼンスを増す中国の通貨人民元が、いよいよドルに本格挑戦を開始する一里塚になるかもしれない動きになっている。

■結論が出るまでは長い時間が必要
仮に世界最大の原油輸入国である中国が、原油取引を順次人民元建てに移行することができれば、原油市場のみならずドルや金市場、更には国際政治・軍事にも大きな影響が生じる可能性がある。中国は既に「一帯一路(シルクロード経済圏)」構想において、資金提供を人民元建てで行うと同時に、地域の資源調達においても人民元決済を広げるなど、中国国外にも人民元建て決済圏を広げる努力を行っている。

その最終段階ともいえる国際基軸通貨ドルへの挑戦は1年や2年で結論が出るものではないが、少なくとも中国の原油取引決済でドルから人民元へのシフトが進めば、ペトロダラー再循環体制の議論を無視するとしても、ドルを取り巻く環境には大きな変化が生じる可能性がある。

ここ数年の通貨市場では法定通貨と仮想通貨との共存が可能かを巡る議論が活発化しているが、その法定通貨内では人民元のドルに対する挑戦が着実にレベルを引き上げている。TOCOMのドバイ原油先物上場などと、中国の原油先物上場の議論は、全く別次元のものである可能性が高いのだ。中国の人民元建て原油先物価格のスタートで、世界の政治経済環境に大きな変革が生じるか否かが注目される局面になっている。
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【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)ペトロダラーの終焉か、人民元建て原油先物の取引開始迫る(Yahoo!ニュース)


2018年の金相場展望

2018年の金相場展望
方向性を打ち出しづらい

2018年の金相場は、16~17年の延長線上での展開になりそうだ。すなわち、政治リスクと地政学リスクに下値をサポートされる一方、良好な実体経済や金融政策の正常化圧力が上値を圧迫し、明確な方向性を打ち出すのが難しい相場環境が続く可能性が高い。

米国でトランプ大統領が誕生してから2年目に突入することになるが、世界情勢は依然として不安定化している。「アメリカ・ファースト」政策は着実に実行に移されており、今後も排他的な政策スタンスが世界各地で混乱をもたらす可能性が高い。メキシコ国境の壁建設、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し、貿易相手国に対する貿易収支均衡プレッシャー、軍事的な強硬姿勢などは、現段階で想定されていないリスクを顕在化させる可能性がある。あくまでも漠然とした不安心理に留まることで、投資家のリスク選好性が大きく損なわれることはない。ただ、先行き不透明感は安全資産としての再評価に直結しており、株価動向などに関係なく金が買われ易い地合が続く可能性が高い。

2017年を振り返ってみると、リスク資産を買う攻めの投資が行われる一方で、金や米国債などの安全資産を購入する守りの投資も同時に行われる傾向が見られた。すなわち、「株を買って金も買う」がメガトレンドになっていたが、そのトレンドは18年もそのまま維持される可能性が高い。

北朝鮮情勢に関しては材料として陳腐化が進んでおり、ミサイル発射実験程度であれば、特に材料視されない可能性が高まっている。ただ、今後の展開次第では朝鮮半島有事のシナリオも消滅した訳ではなく、金価格の急伸リスクとして引き続き注意が要求される。

ただ、金融経済環境からは、金を購入する必要性が乏しい時間帯が続くことになる。米連邦準備制度理事会(FRB)は17年中に3度の利上げに踏み切ったが、18年もほぼ同ペースでの利上げサイクルが想定されている。インフレ率の急伸がなければ実質金利に対して上昇圧力が強まり易く、金相場は断続的に下向きの刺激を受ける可能性が高い。既に量的緩和の規模縮小も始まっており、代替通貨としての金の役割は着実に低下することになる。

米経済成長率に関しては若干の鈍化が想定されるが、2%台中盤から後半の安定した成長率を確保できる見通し。仮にインフレの底打ちが確認できれば、利上げペースが加速する可能性も十分に想定でき、その際は金価格に対して強力な逆風が吹くことが想定される。

政治リスク、地政学リスクの暴走が見られないのであれば、1200ドル割れの方向性が基本になる。一方、何か不測の政治リスクや地政学リスクへの対処を迫られる事態になれば、1400~1500ドル水準まで値上がりする可能性が浮上する。政治・地政学リスクへのヘッジニーズがどの程度のレベルにあるのか、短期の相場テーマを見定める必要性がある不安定な相場展開が続き易い。
(2018/01/04執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年1月8日「私の相場観」

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小菅 努(こすげ つとむ)

1976年千葉県松戸市生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業部、営業本部、ニューヨーク事務所、調査部門責任者等を経て、現在はマーケットエッジ(株)代表取締役。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)。貴金属、金属、エネルギー、ゴム、農産物などの商品先物市場全般が主なカバー対象です。商社、事業法人、金融機関向けに分析レポートを配信しています。仮想通貨、為替、株価指数などもカバーしています。

【URL】
マーケットエッジ株式会社

【E-mail】
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