金利上昇でも高止まりする金
米金利上昇とドル安が共存

ドル建て金相場は、1オンス=1300ドル台の高値圏での推移が続いている。米金融政策に対しては正常化圧力が強くなっており、1月30~31日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、「更なる緩やかなFF金利引き上げを正当化する」との見通しが示され、従来よりも強いトーンで利上げ政策の継続に意欲を示した。

米連邦準備制度理事会(FRB)は2015年12月の初回利上げから既に累計5回の利上げに踏み切っているが、景気回復が進む一方で低インフレ環境の改善に遅れが目立つ中、FOMC内でも本当に利上げ政策が妥当なのかは疑問の声もあった。しかし、着実な経済成長、更には大型減税による景気の過熱感期待、労働需給の引き締まりに伴う賃金上昇圧力、原油など資源価格の高騰は、緩やかにではあるがインフレ見通しの改善を促しており、従来想定されたよりも利上げペースが加速する可能性が高まっている。

3月のFOMCはパウエル新議長の下での最初の会合とあって、従来は同会合での政策変更の可能性はあまり真剣には議論されていなかった。しかし、年間利上げ回数を昨年12月時点の当局者コンセンサスである3回から4回に引き上げるべきといった議論も活発化する中、もはや3月利上げは規定路線になりつつあり、これまで低迷が続いていた米長期金利に対しても漸く上昇圧力が強まり始めている。
一般的に無金利資産である金にとって、金利上昇圧力はネガティブ材料になる。特に米金利上昇とドル高が同時進行する展開になると、無金利資産としてもドルの代替通貨としても、金相場は売られる可能性が高まることになる。しかし、今年は米金利上昇とドル安が共存する相場環境になっており、金相場は金利上昇のネガティブ効果よりも、ドル安のポジティブ効果を重視する形で、強含みの展開を続けている。

なぜ金融政策に強力な正常化圧力が発生し、しかも米金利上昇圧力が強まる中でもドルは上値が重い展開になり、ドル建て金相場を支援しているのだろうか。答えは単純であり、ドルよりもユーロや円の方が強さを増している結果である。為替相場はあくまでも通貨間のパワーバランスに基づくものであり、ドルが強気のメッセージを打ち出しても、それ以上にユーロや円の強気材料が目立てば、相対的にドルは押し下げられる。米国に関しては利上げペース加速の議論が展開されているに過ぎないが、欧州中央銀行(ECB)に関しては資産購入の停止、更には利上げという金融政策の転換期を迎えている。日本銀行に関しても、異次元金融緩和の限界から緩和政策の「出口」を巡る議論が活発化している。すなわち、世界の金融政策が同時に正常化圧力を強める中で、相対的にユーロ高や円高圧力が強まり易く、ドルは力強さを確立できていないのである。米国が利上げに踏み切った際には、そのⅠ年半前からドル高圧力が強くなっていた。それと同じパターンをユーロや円も辿るのであれば、米金融政策引き締めでもドル建て金相場は高止まりすることになる。(2018/02/14執筆)

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

(出所)中部経済新聞2018年2月19日「私の相場観」