サウジアラビアの原油高への取組、どうやら本気のようです。2017年1月からの石油輸出国機構(OPEC)とロシアとの協調減産という歴史的な合意形成を主導したのに続き、その後も他の産油国の先陣を切る形で積極的な減産政策を展開していますが、Reuters発で新しい情報が入ってきました。それが、サウジアラビアは80ドル、更には100ドルを望んでいるとの報道です。

Reuters=Exclusive: OPEC's new price hawk Saudi Arabia seeks oil as high as $100 - sources
 
もちろん、サウジアラビアが公式に目標価格を設定するのはあり得ませんが、今回の報道の元になっているのは「three industry sources(業界筋3人)」の発言とされているため、誰か一人のお調子者がメディアにリップサービスを行ったという訳ではなさそうです。

もともと、サウジアラビアがブレント原油価格ベースで65~70ドル水準の原油価格に不満を抱いているのは推測されていました。ブレント原油価格が1月に70ドル台に乗せた際にも、国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)を考えると、更に10ドル程度は値上がりして欲しいとのメッセージが発せられていたためです。下は2月の報道ですが、サウジ当局者の発言として1~2年先の原油価格が70ドル前後まで上昇することが、IPOに踏み切る要素と紹介しています。

Reuters=For timing of Aramco IPO, watch forward oil price curve

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その意味では80ドルだとまだ違和感はありませんが、100ドルとなると、かなり印象が変わってきます。ブレント原油の100ドルがいつ頃の価格水準かというと、2014年後半に原油相場が急落し始める前の2012~14年中盤が概ね100~120ドルのレンジでした。この価格水準を回復しようとすると、「供給過剰の解消」ではなく「需給ひっ迫状態の創出」が求められそうです。

となれば、サウジアラビアとして取るべき選択肢は一つであり、2018年中は当然として、19年も何からかの形で政策調整を続けることになるでしょう。OPECとロシアとの恒久的な協調体制構築の動きも、この文脈の中に位置づけられるのかもしれません。

サウジアラムコのIPOですが、18年下期と言われていましたが、3月には英紙Financial Timesが2019年まで延期される可能性を報じています。原油価格が十分に上がらない中、IPO価格の低迷によって期待される資金が調達できないリスクがサウジ王族の間で懸念されていました。


従来であれば多少の妥協を行ってもサウジアラムコのIPO時期は近いとみられていましたが、協調減産の目標としていた在庫の5年平均回帰がいよいよ今後数カ月で達成できる現実味を増す中、サウジが更なる原油高を実現する誘惑に傾いている可能性が高そうです。もちろん、サウジアラムコIPOはサウジの政治経済改革「Vision 2030」の起点になるものとあって、いつまでも先送りできるものではありません。しかし、多少の先送りで原油高のメリットを享受できるのであれば、100ドル水準の原油高を待つ(作り出す)までの時間は許容範囲となっているのかもしれません。6月22日にはいよいよOPEC総会が開催されますが、サウジの動向から目が離せそうにありません。

【マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努】

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