August 28, 2005

「ケッコン」考

スペイン大使館から、先日Sに手紙が届いた。

最近のスペイン本国での動向や、手続きの変化などの詳細が書かれている中に、
「7月○日、民法の一部改定がありました。今後は、同性も結婚が可能になりました」という説明文が。

「わあ、載っているよ。ずごい」と、S。
シンプルで事実のみを伝えたものだけれど、私たちには手紙のどの内容よりも光って見える。日本政府とEUの合意で、スペイン市民と結婚したものはEU諸国での配偶者待遇が得られる、というものもあった。

なんて話から、「ケッコン」よもやま話へ。

私もSも、結婚式にあこがれる年齢でもなし、もともと宗教色のきわめて少ない人間だから、教会結婚も神前結婚も興味が全くない。というか、一般的な「式」には全然興味がない。

だからスペインで同性婚法ができたということを、ゲイの解放運動としては大歓迎なのだけれど、「滞在権の保障」と、そうしたことを「選択できる」ようになったということが一番大きいわけで。

もちろん、ケッコンして、すぐにでも日本での滞在権が得られるのであれば、Sの状況を考えてケッコンを選択すると思う。だけど、今の日本じゃそれは不可能だとすれば、ちょっと冷静にケッコン自体を眺めることができる。

Sにとってのネックは、親。ケッコンするということは、実家のお母さんに知られてしまうことだから、「親へのカムアウト」というもう一つの大きなハードルをくぐり抜けなければならない。

それでも、Sがケッコンしたい理由は、EUでの結婚に伴う種々の権利の保障と同時に、この法律を作った現政府(サパテロ首相)に、この制度が海外でも確かに有効であり、スペイン市民への偉大なる貢献であったということを伝えたいということがある。

うーん。やっぱりpolitically correctな考え方をついついしてしまう私たち。複雑なおバカさん。この世代の特徴でしょうか、ねえ(笑)。

『ゼクシィ』じゃ、ありませんが、ケッコン自体にあこがれて、ただシンプルに喜んで結婚できれば、どんなにラクでありましょう。
  

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August 24, 2005

法的保障はいつになる

尾辻さんの活動日記で紹介されていた記事

『家族』
「法が『家庭』そのものを定義づけ、『家庭』に対して様々な保護を与えているのも、また事実です。そしてその定義に該当しないもの――夫婦別姓を実践している事実婚カップルや、同性婚など――を、その保護の範囲外に置きます。社会保障の分野では男女の事実婚に関する規定もありますが(例えば、労働者災害補償保険法上、事実婚の夫婦は遺族年金等の受給権者となります)、社会生活を営む上でまだまだ不便は多いと聞きます。」

紹介されていた事例が、日本人と外国人のパートナーであったと知り、急に考え込んでしまった。

そーなのだ。
法律は家族を保護するが、家族に該当しないものには保護を与えない。

「罪を犯せば、罰すればいい。税金も納めている。私はまじめなシティズン(市民)で、誰にも何にも迷惑はかけていない。だのに、当たり前の市民権が、私にはないのよね」と、Sはつぶやく。

パートナーの国に滞在するという当たり前の滞在権が、Sにはない。そのために、私はこの記事で紹介された方と同様に、パートナーの滞在権を必死で保証しようとしている。

それだって。
滞在を絶対に保障するものは、何もないわけで。

この記事の方が病気で亡くなり、パートナーと養子縁組した後も、何の保障もなかったという事実を読み、悲しくて胸が痛くなった。

それでも私たちには、スペインの同性婚という法的保証があるから、それを盾に、なんとかケッコンに持ち込んで、万が一、日本で私に何かあった場合もそれを証明する法的根拠を手に入れることができる(多分)。
ある意味それは、本当にラッキーなこと。

しかし、その制度さえない日本国内のカップル、制度のない国の同性カップルの法的な保障は、これから本当に必要になると思う。

はあ、こんな悲しい話は、もう聞きたくないなあ・・・。
  
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July 16, 2005

イギリスから朗報

いいニュースがイギリスから届いた。
このブログで知り合ったkikiさん。イギリス人の彼女との“事実婚”ビザを取得できたというのだ。

イギリスのシビル・パートナーシップ法は、今年の12月から施行されるそうだが、その前にも、すでに“unmarried partnership visa”というビザが存在しているらしい。日本でいうなら「事実婚ビザ」。そのビザを申請したkikiさんカップル、今週の水曜日にビザを獲得したという。

本当に、すごい。

ビザ申請の朝には私もなんだかそわそわして、遠い彼女たちにに思いをはせていた。

「絶対大丈夫だよね」と、Sとも電話で話をした矢先の朗報。
「ばんざーい!kikiさん、ビザをゲットしたって!」
「やったね!」

日本人と外国人との同性パートーナーに、滞在の保障が法律上で確保されるということは、本当に希望だ。
私たちも決して夢ではないぞと、勇気百倍になる。

現実の小さな変化が、大きな希望を運んでくれる。
ゆっくりではあるけれど、世界は確実に動いていることを、ヨーロッパと日本の片隅でじっくりとかみしめています。

お二人に乾杯!
  
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July 14, 2005

不眠とケッコンの夜

私は普段はとても寝つきのいい人間で、ベッドにもぐりこんで「おやすみ」と電気を消したら、5秒後くらいにはもう寝ている。ぐっすり眠って朝5時前にはパッチリ目が覚める。

ところが、Sが出かけて一人たたみの部屋で寝るようになってから、寝つきが極端に悪くなった。昨夜はめずらしく何時間も眠りにつくことができなかった。

寝る場所が変わったからか、Sがいないからなのか。いやいや、この部屋はSが普段勉強部屋に使っているから、“目覚めの気”で満ちているんだとか。そんな支離滅裂なことを考えながら、何度も寝返りを打って眠れない夜を過ごした。

年に何回か、眠れなくて苦しむ夜がある。
昨夜はきっとそんな夜の一つだったんだろうか。
大体はPMSの夜。決まって、生理が近くてイライラしている日が多い。

私より一足先にPMSを脱出して生理になったというSは、電話口で超元気な声。くそー、悔しい、こっちはこんなにドロドロな気分だというのに、どーしてそんなに元気なのよ!と、意味もなく腹が立って、つっけんどんな口調になる私。

そんな私にお構いなく、Sはちょっと興奮しながら、市役所で調べた国際同性結婚の手続きについての報告を聞かせてくれた。大量の資料をそろえ、私の戸籍やらなにやらを翻訳したものと合わせて、まずは市役所に提出し、婚姻可能かどうか審査してもらう。2,3ヵ月後に「審査合格」となれば、そこで初めて、ケッコン予定日の予約を入れることができるという。

同性婚であるために、スペインで婚姻届は出すけれど、日本に出すことはない。日本では婚姻関係にはならないから、手続きはスペインでやるのがベストらしい。

「あせらないでね、時間がかかるよ」
「そうね、大体これから半年から1年くらい先だわね」

とにかく、いろんなことがわかって動き始めたことにほっとして。

眠れない夜はつらいけど、朝になってSの声を聞くとちょっと元気になって、今日も一日がんばろうと思える。外は小雨の曇り空。早く梅雨が終わらないかなあ・・・。
  
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July 02, 2005

お祝いディナー

昨日は前から約束していた友人AとNちゃんと4人でご飯を食べにいった。本当は、スペインに一時帰国する前に、Aと久しぶりに話ができればという感じだったのだけれど、急きょ同性婚法成立のお祝いディナーとなった。

仕事帰りに4人で落ち合って、行った先はとんかつ屋。もともと肉を食べないし油ものが苦手な私にとっては珍しかったのだけど、「あそこはおいしいよ」と勧められていたのもあって、和風の内装の美しいレストランへ。

「はい、おめでとう!」
と、二人から花束をわたされて、思わず涙ぐみそうになっているS。
「よかったね。法律ができて」
「ありがとう。私たちもとっても嬉しい」

おいしいご飯を食べて、Sに優しく接してくれる二人と、なごやかな時間を過ごすことができた。二人に心から感謝。

「ところで、同性婚はいつからできるようになるの?」と、Aが尋ねる。
「14日間の公示期間の後、約40日後から。でも、8月のスペインは何もかも止まっているから、実際にできるのは秋以降かな」
と説明したSだけど、帰ってみたら友人からのメールで、首相をはじめ、政府が全力をあげて早い時期の実施を約束しているとのニュースが入った。

もしかして、と、ワクワクし始めた私たち。

Sの一時帰国、なんだか急に忙しくなってきたぞ。友人たちに会うのももちろんのこと、車の免許更新やらに加えて、国際同性婚の手続きのための準備もしなければならない。国際結婚となると一体どんなものが必要なのかも含めて、Sは色々と調べてくるつもりみたいだ。

9月末にとる予定の私の休暇、今回はあきらめかけていたのだけれど、もしかするとスペインに行けるかもと希望がムクムク。はやる気持ちを抑えて、抑えて。

この間、落ち込んだり喜んだりのジェットコースターのような日々だったけど、Sのことを、来週は希望を持って送り出すことができそう。
  
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July 01, 2005

自由と平等と

カナダでの下院議決に続き、スペインでついに同性婚が合法化された。

すごい、の一言に尽きます。

サパテロ首相の言葉もかっこいい(BBCニュースより)。
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“We were not the first, but I am sure we will not be the last. After us will come many other countries, driven, ladies and gentlemen, by two unstoppable forces: freedom and equality.”

“We are not legislating, ladies and gentleman, for remote unknown people. We are expanding opportunities for the happiness of our neighbours, our work colleagues, our friends, our relatives.”
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「私たちは最初の国ではありません。しかし、最後の国には絶対にならないでしょう。私たちのこの決断の後に、二つのとどめようのない流れによって多くの国が続くでしょう。<自由>、そして<平等>という流れの後に」

「みなさん、私たちは、遠くの知らない人たちのための法律を制定しているのではありません。私たちは、私たちの隣人、同僚、友人、そして私たちの親戚たちが幸せになるための機会を広げているのです」
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サパテロ首相は、イラクへの派兵を撤退した首相でもある。

心が震えるほど、感動した。

自由と、平等と。
自由と、平等と。

人類の歴史は、数限りない殺し合いや憎しみもあったけれど、やっぱり人々の自由と平等への願いによって、少しずつ変わりつつある。それを、ここまで明言してくれたスペイン首相に、惜しみない拍手を送りたい。
  
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June 30, 2005

スペイン同性婚合法へ

夕方、仕事先にSから連絡があった。
「スペインで同性婚、合法になったよ!」

取り急ぎ、ニュースです。

BBCニュース
日本語ニュース

嬉しくて二人で抱き合って喜んだ。
嬉しいです。本当に。
思わず泣いてしまいました。
  
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カナダで同性婚成立

カナダで同性婚が成立したというニュースが飛び込んできた。
やったあ。オランダとベルギーに続いての第3番目の国。さすが移民の国、カナダ。マイノリティを含めた人権擁護の姿勢を明確に打ち出したのね。

お隣の同じ移民国アメリカは、11州で同性婚を禁じる法律ができているし、ブッシュは同性婚禁止を連邦憲法に盛り込もうとしているというのに。

アメリカからカナダへの同性婚移民が多数発生するだろうな。私たちだって、アメリカ人だったら多分そうしただろう。こちらはヨーロッパだから、ヨーロッパ移住をまじめに考えているけれど。

カナダでも1969年までは同性愛者は犯罪者の烙印を押されていたという(HODGE'S PARROT 6/29)。社会的なスティグマを負わされたところから、ここまで来たという人類の歴史になんだか感動してしまった。人権擁護の波は、確かに世界を変えている。

スペインでも今週には下院の同性婚議決が行われるから、今年のゲイパレードでは、希望の花が世界各国で咲きそうだ。

私たちはといえば、来週の今日からSがスペイン一時帰国するので、その前に色々とやることがあって、ちょっとばたばたしている。

新しいビザの申請にあたっての基礎資料の作成、新しい会社のコンセプトやロゴ作り、それから、ドナー選択の方法についての話。

ドナーについては、最近海外のあるドナー会社をあたってみた。すごいですなあ。現在ではfrozen spermを海外に送ってくれるシステムもあるそうな。日本で行うのか、それとも海外でドナーを選ぶか。Frozen sperm がここまで簡単に手に入る時代になったのには、ちょっと違和感があるけれど、正直のところ今の私たちにとってはこれも選択肢の一つになりつつある。

いやはや、日常生活に埋もれていると見えないけれど、世界の変化のうねりには驚くことばかり。

このドナーシステムについても賛否両論あることでしょう。これについては、私ももう少しじっくり考えてみなくっちゃ。
  
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June 29, 2005

法律は成立なるか

今週は、毎日のように早朝出勤の日が続き、のんびり事務所で仕事をしている時間がない。週末までこの忙しさが続くので、夜はとりわけSとの時間を大切にしようと、仕事が終わったら猛ダッシュで帰宅の日々。

昨日は猛暑だったらしいけれど、私は都心のビルで1日中冷房に当たっていたので、夕方の熱い空気が嬉しいくらいだった。梅雨時の湿気200%という空気は、私には「ああ、これ、これ」って感じだけど、Sにとってはものすごくつらいことらしい。

ま、スペインは40度を超えるといっても乾燥しているから、暑くてもこんなにきつくはないのだろう。私がいないとき、Sは家でガンガン冷房をかけているらしい。私はクーラーが嫌いなので、二人の時は扇風機でと約束をしてはいるけれど。

さて、仕事が終わったら携帯にSからメッセージ。
「例の、バイオテクノロジーの翻訳記事をスペインに送ったよ。私たちの初仕事だぁ」

よかった、よかった。

「スペインの首相が新聞で、今回の同性婚法案は必ず通すと述べた記事が載っていたよ。もしかしたら、本当に大丈夫かも」

上院で否決された同性婚法、今週末には下院で再度議決が行われる。養子縁組の保障をめぐって首相が譲歩するかもという懸念もあったので、これはすごいニュースだった。

7月2日はマドリッドでのゲイパレード。その時には、スペインのゲイコミュニティ、喜びもひとしおになるだろうか。

「ゲイパレードの時にスペインに帰国できてなくて残念だね。私も行きたかったわ」
「そうねえ。でも、この日にあるなんて知らなかったし。いいよ。こっちで二人でお祝いしよう」

真夏のスペイン。
ああ・・・。梅雨空の日本の空を見ると、ちょっと悲しい気分になる。日本の夏は高温多湿なのよね。ヨーロッパの空ほど晴れてはいないけれど、夏間近の日本で今週お祝いできるといいな。
  
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June 24, 2005

スペイン同性婚 上院否決

やっぱり、というか、懸念が現実になった。スペインの同性婚法案は、上院で否決され、下院に差し戻されたという(6月23日“EL MUNDO”記事

6月30日に下院で再度議決が行われる。下院で可決されれば、法律は成立するけれど、これだけの反対のあったために、実際の運用に至るまでには長い時間がかかりそう。

“結婚”という枠組みを変えるのは、カトリック教国では至難の業なのね。
これまでの「当たり前」がひっくり返る時、変化に対する保守の攻撃が厳しくなるのは当然とはいえ、こんなに大きな反響を起こすとは。教会関係者は、法律反対の署名を百万の単位で集めているという。

「それでも」と、Sは言う。
「フランコが死んだときも、世の中が自由になりすぎるのではとみんな怖れた。中絶を合法化した時も、離婚を合法化した時も、社会が大混乱するのではという人々の予想は当たらなかった。

これが政府側の戦略だとしたらすごいことよ。だって、“養子縁組問題”に保守派の目を向けさせておけば、“同性結婚”それ自体は何の問題もなくなる。それくらい政府側が考えていたとしたら、ものすごく頭のいい戦略だわ」

さてさて、真実はともかくも、こえから一体どうなることやら。

その後、夕方にSがグッドニュースを持ってきた。バルセロナでバイオテクノロジーの研究をしているSの友人が、日本語の記事を送ってきたのだ。
さっぱり読めないし、わからないという友人に、Sは、「私たちの新しい会社の初仕事よ!」と早速翻訳し会社印を押して翻訳文を送ろうと息巻く。

1ページ程度の日本語のニュース(ちなみに、私にはちんぷんかんぷんのバイオテクノロジー関係記事)を、何とか英語に直し、もとジャーナリストだったSがスペイン語に訳して。完全なものにしたら、新しい会社のロゴを入れて、PRとして送り返すのだそうだ。

こんな風に“何かができる”という事実は、いい。
たとえ小さな希望でも、無力感にさいなまれるよりもずっといい。こんな小さな現実の一つひとつが、前に進む力を与えてくれるから。
  
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