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週末だけのグローバル投資  -生き残りの処方箋- 

第398号 約50年ぶりの対中政策大転換 (7)ゴーン会長逮捕で「日産のフランス国有化」を阻止した日米政府

週1回発行
                      ワイルドインベスターズ株式会社

                      関東財務局長(金商)第1173号                                            
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日産のゴーン会長逮捕には驚きました。

しかしここでも、米中冷戦の火花がバチバチと散っています。

細かい論点などは他の記事にお譲りすることにして、ここでは見落とされがちな視点を整理します。

まず各プレイヤーの思惑や大局観から。

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【 中国 】

日産(+三菱)自動車からの1兆円投資を通じて、電気自動車(EV)技術をいただきたい。
ガソリン車やハイブリッド車では先進国にかなわないが、EVなら世界を支配できる可能性がある。
しかし米国の態度が変わって技術流出に厳しくなってきた。
このままでは日産も逃げてしまうかもしれない。
ここでフランスが日産を「接収国有化」してくれたら、日米を迂回して技術・資金をもらうことができる。

【 フランス 】

ルノーは実質的なフランス国営企業。
しかしルノーが技術や競争力で劣るようになり、日産の技術や配当に頼るようになったことに頭を痛めている。
日産が独立して離れないよう、経営統合して「関係を不可逆的なもの」にしたい。


 ↑↑ 対立 ↓↓


【 日本 】

20年前に日産を助けてもらったルノーやフランス政府には感謝している。
立場が逆転して日産の利益でルノーを養うようになった今でも、提携(アライアンス)を続けることは構わない。
しかし経営統合して「フランス国有化」するのはひど過ぎる!
競争に敗れたからといって、高度な技術を持つ日本企業を外国政府が接収することは容認できない。

【 米国 】

ヘイ、ユー! 中国に技術を流すなと言ってるだろ!
フランス国有企業のルノーが日産・三菱自動車を吸収することは許さん!
日産はそのカネでラストベルトを何とかしてくれガッデム!
そういえばマクロン。貴様「欧州軍を創設する」とかほざいていたな。
ノルマンディー上陸作戦もパリ解放も冷戦もNATOも知らないお子ちゃまですか?
不公正貿易で自国の利益ばかり追求してるのはお前のほうだ!恥を知れ!


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この件に関し、「先に仕掛けた」のはフランスでありマクロン大統領です。

2014年4月にフロランジュ法を制定し、「長期保有の株主の議決権を2倍にする」というルールを作りました。

外国人や外国企業が持っている株はどうなるのかわかりませんが、少なくとも日産が持つルノー株式の議決権は無効とされています。

ということはフランス政府と日産がともに15%のルノー株を持っていたとしても、議決権は「30対ゼロ」なわけです。

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フロランジュ法 長期保有の株主、議決権2倍
 2015/11/6 23:49
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H86_W5A101C1EA2000/
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2015年には当時「経済産業デジタル相」だったマクロン仏大統領が、仏政府が影響力を持つ形での経営統合を求めています。

幸いなことに当時のゴーン会長は否定的であり、日産が15%持っているルノー株をさらに買い増して25%以上取得するという力技で対抗しようとしました。

そうなれば日本の会社法上、ルノーが持っている議決権の効力を失わせることができるからです。

結局、ルノーと日産のケンカ別れを恐れたフランス政府は経営統合を断念しました。

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しかしフランス政府は今年2月、経営統合を渋るゴーン会長をCEO再任をネタに寝返らせました。

この時点で、経営統合は時間の問題となってしまいました。

すると日産としては、敵となってしまったゴーン氏の利益や立場を守る理由がなくなってしまったのです。

そこで司法取引を持ち掛けて、これまで秘密にしてきたことを公にしたのでしょう。

日産側からも罪に問われる人が出てくるかもしれませんが、このまま吸収されるより独立を守る道を選んだのです。

苦渋の決断だったのでしょう。

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今回、逮捕したのが東京地検特捜部というのがミソです。

通常であれば、このような形で逮捕できる相手ではありません。

背後に米国の影がちらつきます。

というか、姿が丸見えで隠れる気もなさそうです。

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ルノーが日産・三菱と経営統合するということは、「フランス政府が日産・三菱自動車を接収国有化」するのと同じです。

しかもフランス政府が持つルノー株の議決権は2倍、同じ株数を持つ日産の議決権はゼロというアンフェアなやり方で。

そこから中国に1兆円の投資が行われ、EV技術が流出します。

それは日本にとっても、米国にとっても許せないことでしょう。

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9月の日米共同声明で

「知的財産の収奪,強制的技術移転,貿易歪曲的な産業補助金,
国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため,
日米,また日米欧三極の協力を通じて,緊密に作業していく。」

と釘を刺したとき、私は中国のことを言っているのだとばかり思い込んでいました。

しかし今にして思えば、フランス政府やルノーのことも含まれていたのでしょう。

日本の国益を守った人々の深謀遠慮には頭が下がります。

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日米共同声明2018年9月26日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000402972.pdf
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このように、ルノー日産のゴーン氏逮捕の背景には米中戦争があります。

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フランス政府+ゴーン会長 ←(支援)中国政府

  vs

 日産・三菱自動車    ←(支援)米国政府+日本政府
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中国や親中マスメディアは「日産の横暴なクーデター」「東京地検特捜部の勇み足」と責めるはず。

しかし普通にやっていれば、日米政府にサポートされた日産が引くことはありませんし負けることもありません。

平和な落としどころとしては「ルノーが持つ日産の議決権を減らす。アライアンスは維持するが経営統合はしない」という路線でしょうか。

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ただし不安材料は、マクロン大統領にはこの構図が全く見えていないこと。

それはこの事件に対するフランス政府の第一声が「雇用は守る」だったことからもうかがえます。

ゼニカネや雇用といった極めて狭い視野でこの事件をとらえており、米中の覇権戦略だとは考えていないようです。

この件でマクロン大統領があまりゴネるようであれば、米国から厳しい制裁を受けることになるでしょう。

そして日産は別の提携先を探すことになると考えます。






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