2010年05月11日

【CDレビュー】GARNET CROW/first soundscope〜水のない晴れた海へ〜

いびつなバランスの砂の楼閣
4人のアーティストが持てる全てを出し切った、最初にしてコアとなるアルバム
【ジャンル:アコースティック・プログレ・ポップス・ソフトロック】
インディーズでのミニアルバム一枚を通して各々の実力の見極めが定まったのか、このメジャー1stではガチンコ勝負で伸び伸びとした仕上がりになっている。全体的にどんよりとした雰囲気が通奏低音としてあるんだけど、万華鏡をもじって付けたタイトルに恥じないバリエーションで飽きないです。
「水のない晴れた海へ」というアルバムタイトルの副題も、一筋縄ではいかないような彼らのひねた姿勢が現れていてわかりやすい。
アニメ「名探偵コナン」ゲーム「テイルズオブエターニア」のタイアップ先行シングルが収録されつつも、うまくアルバムの流れに溶け込んでいる。

収録曲の半分はシングルであるにも関わらず、キャッチーとは程遠くまたABメロサビというJ-POPの方程式からはみ出た曲が多い。それというのも、不安定な展開のメロディーと、平易な言葉で淡い世界観を綴る歌詞で、タイアップに関係なく突き放した作品に仕上げているからだ。さらに不明瞭で不安定で暗さが滲み出た歌唱によって、アルバムに一本芯が通った。
特に「水のない晴れた海へ」は全体のアンニュイな雰囲気を体現してて、聴くものを一気に引き込んで沈める。
ただ、良くも悪くも灰汁が強くて洗練されているとは言い難いので、これ以降のどのALよりも聴き手を選ぶみたい。適度な距離感のリスナーからは「オリジナリティはあるけど好きじゃない」とか、初期からの少なくないファンから絶賛されてるのはそのためだろう。一番彼ららしい部分を抽出しているけど、滲み出すぎているために顔見せとしては適切かと言うと疑問が残るかも。デビュー後なのに、ある意味プロになりきる前を切り取った作品と言える。
タイトル曲から突き放しつつも、耳馴染みのいい曲で徐々に盛り上げながらも「巡り来る春も」で落とす。後半は憂鬱な雰囲気を引きずって「flying」で綺麗に散る。最後は淡々と終わるというバランスの良い配置で繰り返しに耐えうる。サウンドや曲展開が地味な「君の家着くまで走ってゆく」「千以上の言葉を並べても...」なども通して聴いていくうちに味になるのもポイント。

聴けば聴くほど馴染んでいく、じわじわと染み渡る作品。

単曲ヒト口レビュー
水のない晴れた海へ…ピアノとコーラスの印象的な大作。特に重層的なコーラスワークは最初おどろおどろしくさえ感じた。
夏の幻…アコギ+打ち込みで構成された初期の彼らによく見られる方向性です。ポップスなのに爽快感がないのが特徴。
巡り来る春に…構成に全く無駄がなくて、声に浸れる。唯一歌謡曲っぽいルーツを感じる曲です。
flying…一番ドラマチックな展開だけど、サビのメロディーは意外と淡々としている。コーラスとサウンドの妙ですね。当て字も印象的。
wonder land…爽やかなサビで終わると見せかけてマイナーコード展開になるという、どこまでも食えない終わり方ですね。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/cool_k/52045011