199X年、世界は核の炎に包まれた。世界は荒廃し、
暴力が支配する時代となった。そんな時代に救世主が現れた。
一子相伝の拳法・北斗神拳の正当後継者、ケンシロウである――。
とそれっぽく紹介してみましたが、そんな説明いらないくらい有名です。
’83〜’88年に、週刊少年ジャンプで連載されていたコミックです。
尚、ここでの巻数の表記は、ジャンプコミックスでのものです。
原作/武論尊、作画/原哲夫。

この作品は、ずっと前に廃刊になった「フレッシュジャンプ」という
ジャンプの月刊増刊誌に載った読み切りが下敷きになっています。
話の内容は忘れましたが、その時の舞台は現代(と言っても’80年代)の
日本で、ケンシロウは霞拳四郎というフルネームで出ていました。
連載の設定は、映画「マッド・マックス」の影響が強いそうです。
現在は、他社で続編やスピンオフ作品が多数描かれています。

この記事のタイトルが21巻までになっているのは、
家にそこまでしか無いからです。実際の巻数は、全27巻です。
買ったのは私じゃなくて兄なんですが、全巻あると思い込んでいたので、
途中で終わっていてショックでした。第二部はつまんなかったからなー。
きっと飽きて、集めるのをやめてしまったのでしょう。

20年ぶりくらいに一気読みしたのですが、
驚くほど細部を覚えていなかったので、新鮮な気持ちで読めました。
印象の強かったシン編が実際は短かったのにはびっくりしました。
改めて読むとケンシロウ口悪っ!そしてめちゃめちゃ人死んでます。
脳も腸も出して死にまくりです。良くこんなマンガを
週刊少年ジャンプで連載していたなと、つくづく感心させられました。

劇画的な話の中に、くすっとさせられるシーンも意外と見られました。
首や肩をコキッコキッと鳴らして指でチョイチョイとか、
ケンが雑魚キャラを露骨に挑発してるシーンも面白いです。
ケンのポーズとか、敵の死に際の叫び声などを見ると、作者もネタとして
割り切って、楽しんで描いていたんだろうなと見受けられます。

北斗の拳は、ケンシロウよりも、むしろ周りの漢達が魅力的です。
私は存在をすっかり忘れていたんですが、特にレイは良かったです。
最初は小物の嫌な奴っぽく登場したけど、実は漢気のあるいい奴で、
ピンチの時には頼りになり、やがてはケンシロウの親友のようになり、
どんどん重要なキャラクターに成長していきました。
壮絶な死に様は、物語前半のクライマックスだと思います。

トキはもっとすぐ死んじゃったイメージを持っていたんですが、
かなり後まで生きていて、ケンと周辺の人々を助けたり、
アドバイスを送ったりしていたんですね。ラオウとの関係は、
全く忘れていましたよ。まさか血の繋がった、実の兄弟だったとは!
トキが柔の拳を捨て敢えて剛の拳を用いてラオウと戦うところは、
聖人のようだったトキが最期に見せた我儘であり、人間的な一面であり、
慕っていた兄・ラオウへの甘えのようにも見えました。

ラオウは始めは単なる暴君という印象で描かれていますが、
話が進むに連れ、実は恐怖により秩序を齎そうとしていたのだと
彼の真意が判ってきます。しかし、ラオウが見ていない陰では、
手下は好き放題殺戮と略奪をしていたのだから、それは恒久的な
秩序にはなり得ない、あまり効果的と言えない方法だったようです。

トキとの絆や、サウザーとの戦いに挑むケンを心配している様子からは、
ラオウが弟たちへの優しさと愛を持っていたのだと判りました。
聖帝サウザーも、師への愛が強過ぎた故に愛を憎みました。
北斗の拳は単なるバトルマンガではなく、実は人物の内面まで深く
掘り下げられた、人間愛の物語という側面もあったのでした。

原さんの絵は描き込む線の量が凄くて、画面が真っ黒です。
毎週インクをかなりたくさん使っていただろうと思います。
男臭い話も、こういう劇画調の絵柄も受け入れられない時代です。
もし21世紀の今のジャンプでこれが連載されていたとしたら、
きっとすぐに打ち切りでしょう。劇画が当たり前のように載っていた
当時のジャンプだからこそ生まれ、受け入れられた作品だと思います。

10年後の話である第二部は、完全に蛇足だと思いました。
バットリンを成長させたのはアリだと思うけど、
リンが実は運命の子だったというのはちょっと・・・。
それ以外にも、設定の後付けと矛盾が甚だしいです。

アインはレイの焼き直しのキャラだし、一子相伝の北斗神拳に
流派出しちゃうし、ケンが大して強くない扱いになるし、
拳法どころか超能力みたいに岩が飛び回るし、今までの世界観が
台無しになってしまっていました。完全にジャンプの引き伸ばし方式の
弊害です。第一部で潔く終わりにすべき作品だったと思います。

北斗の拳―完全版 (2)

北斗の拳―完全版 (3)

北斗の拳―完全版 (4)