地球の裏側の蝶の羽ばたきが嵐を起こす事もある。
自分には失った過去に戻れる能力があると発見した彼は、
過去を修正する事で、現在の絶望的な状況を変えようと試みる。
数年前に見たのですが、凄く面白くて保存版にすれば
良かったと後悔していたので、改めて録画しました。

エヴァンには3人の幼馴染がいました。初恋の人のケイリー
その兄でキレると手が付けられないトミー。プラモ好きで
引っ込み思案だけど溜め込むタイプのレニー。4人は
エヴァンが街を離れるまで、いつも一緒に遊んでいました。
少年のエヴァンは頻繁に記憶喪失に陥っていましたが、
別れる時、ケリーに約束しました。いつか必ず、迎えに行くと。

記憶喪失の治療の為に日記を付けるよう勧められたエヴァンは、
その頃から大人になった今も、ずっと日記を付け続けていました。
ある悪質な悪戯をした日の日記を読んだエヴァンは、意識だけが
過去に戻るという体験をしました。その日何が起きたかを
確かめに、エヴァンは思い切ってケリーに会いに行きました。

が、その晩、彼女は命を断ちました。ショックを受けたエヴァンは
もう一度日記を開きました。そして失っていた過去に戻り、
今度は明確に自分の意志で、過去の出来事を書き換えました。
現在に戻ったエヴァンの隣には、ケリーがいました。歴史を
書き換え、夢のような現在が訪れたかに見えましたが──。

あの時ああしていれば、未来は違うものになっていたかも
知れない。過去に戻ってやり直したい。誰でも一度は
夢想する事を、かなり皮肉な姿勢で形にしてみせた作品です。

エヴァンとケイリーらの仲間には、いくつかのトラウマに
なり得る出来事がありましたが、重要な部分については、
決まってエヴァンの記憶が欠落していました。日記によって
記憶を失った時点に戻れると知ったエヴァンは、現在の悲劇の
遠因はあれだと、その出来事を一つ一つ上書きしようとします。

が、更新された現在には、悉く、別の過酷な未来が待っています。
結局何をやっても失敗し、寧ろ自体は悪化の一途を辿り、
過去の修正によって次にどういう現在が訪れるのか、
毎回思わぬ方向に転がって、ショッキングで、引き込まれました。

自他共に危害を加える恐れのある犯罪者として閉鎖病棟にいる
父親も、エヴァンと同じ能力の持ち主でした。父は息子に
警告します。その能力は、人格を変えてしまう。能力は使うなと。

その通りに、過去のほんの一点を修正しただけで、ケイリーの、
トミーの、レイリーの人格や現状ががらりと変わります。彼らと
エヴァン自身との関係も、過去を行き来する毎に変わります。
たった一つの台詞が、彼の人生を全て変えてしまうのです。

それも大袈裟でも不自然でもなく、こんな事があれば
こういう人間になるよなと納得できるものでした。
脚本の上手さを思いました。その脚本はかなり意地悪です。
主人公のエヴァンをなかなか素直に幸せにしてあげません。

偶然と言うべきか必然と言うべきか、一つが成功すると
必ず別の何かを失います。あの時ああしていれば今頃きっと
バラ色だったのになんて、人生そんな上手くは行かないよ、
現実はきっとこうだよと、皮肉に北叟笑まれているようです。

パラレルワールドのように色んな人生の可能性が描かれる中、
一貫していたのは、エヴァンのケリーへの想いでした。これは
幼い頃の初恋を貫いた、切ない恋の物語でもあります。
エヴァンの一番の望みは、ケイリーの幸せでした。最後の
歴史改変は、エヴァンのその覚悟の深さが判るものでした。