拳銃も警棒も持たず、武器は己の生身の肉体のみ。チームで腕を
差し出して腕時計を見せ合い、「誤差なし」と言うキメ台詞が
流行った・・・と言う話は特に聞きませんが、木村拓哉さんが
ボディガードを演じた、’18年1月期木曜9時の連続ドラマです。

島崎章は警備会社で道路工事の交通整理をしていましたが、
新設された身辺警護課へボディガードとして抜擢されます。体術も
周囲への目の光らせ方もやたらと心得ており、初体験ではないと
思わせるのに、どういう訳か、周囲にはその経歴を隠しています。

島崎は、過去に警護対象者に怪我をさせた事があり、それ以来、
現場を遠ざかっていたのでした。妻とは離婚し、息子が一人。
妻は既に再婚しており、再婚相手の家に居づらいのか、息子は
島崎の部屋に転がり込み、居候のような顔をして暮らしています。

課長の田村は常に穏やかな笑みを絶やさず信頼感抜群。
同僚には凛々しい女性やいかにも今時の若い男性もいますが、
高梨という有能なBGは、過去を隠す島崎に不信感を抱き、
同時にライバル心を燃やし、ストーカーじみた執着を見せます。

要人警護を引き受ける中で、島崎は女子アナから転身した大臣の
立原愛子に気に入られます。立原はどういうつもりか島崎と
何くれと無く顔を合わせ、接近し、果ては食事に誘いさえします。

必然的に、しばしば顔を合わせる事になるのが大臣の正式な
警護担当者であるSPの落合です。落合は立原が自分達SPより
島崎を信用しているように見えるのが気に食わず、島崎を
目の敵にし、意識的に見下げるような言葉を繰り返します。

爆破事件や発砲事件などもあるのですが、題材的にいくらでも
派手にしようと思えばできるのに、派手なアクションを
売り物にするでもなく、どちらかと言えば静かで、落ち着いた
演出になっていました。それが却って良く、格闘シーンでは
木村さんの体さばきも映え、じっくり見させて貰えました。

島崎は前のめりな熱血タイプではなく、常に一歩引いて、皮肉な
目で物を見るような表情をしています。反抗期に入りかけの
息子も父親に似たのか、自ら押しかけて来て同居しているにも
拘らず、いつも島崎には冷ややかな、ツンデレタイプです。
どちらも素直じゃなく、距離感を図りかね、伺っている様子です。

その母親で、島崎の元妻役は、何と山口智子さんでした。月9の
ロングバケーション以来の共演、それも元夫婦役として
話題になり、二人が揃い踏みしている終盤だけ、視聴率が
跳ね上がっていました。回想のプロポーズのラブラブも、
元夫婦となった現在の余所余所しさも、どちらも変な感じでした。

愛子役は、最近奇跡の50歳としてブレイク中の石田ゆり子さん。
女子アナ上がりの美人代議士として色物扱いされてきた愛子は
ちゃらちゃらしているだけかと思いきや、信念と野心を抱き、
権力が物を言う男社会の政治の世界に食い込む為に、その刃を
柔らかい布で覆い隠すように、何を考えているのか読めません。

愛子は何かにつけて島崎に接近してきます。やたら遭遇するのが
不自然でしたが、それは恋愛的な意味だったのでしょうか。
島崎はデートの約束さえさせられますが、結局実現しません。
島崎の方も気付いていたでしょう。意識しない筈がありません。

互いに独身で、本来後ろめたい事など何一つ無いのですが、
方や(元)大臣、方やBGの身分の差は、厳然として存在します。
露見したらスキャンダルになる事必至です。大人同士だから
空気を読み合って、表向きの言葉の裏で会話しているようです。

身辺警護課の仲間達に島崎の経歴が露になると、隠していた事
そのものへの反発が起きますが、その時期が過ぎると、結束は
高まります。その矢先、田村は銃で撃たれ殉死してしまいます。

田村は嘗て落ち合いの同僚で、彼を庇い、彼のミスを自分の
ミスとして報告し、警察官を辞めました。島崎が田村の下で
BGをしていると知って、そして田村の死によって、落合は
何を思ったのでしょうか。頑なで冷徹な態度は変わらないように
見えましたが、彼は最終回で漢気ある意外な行動を取りました。

落合は、官と民という立場は違えど内心は同業との思いがあり、
危険な仕事と知っているからこそ、銃も持たず何の法的な
後ろ盾も無い民間が、SPの真似事をする事は控えて欲しいと
思っていたのではないでしょうか。──好意的に見れば。

それなりに視聴率は取れていたし、役者陣のチームワークも
良さそうだったし、木村さんも意欲的だったように聞いています。
きっと続編はあるでしょう。それどころか、ドクターX
相棒のように、シリーズ化していってもいい作品だと思います。