スクリーンに映像が映し出されている。廊下を歩く男性の足。
歯車。それらの映像に被せて、順番に文字が大写しになる。
“NO WAR”“NO AIDS”“SEX”“BOΦWY”。
そしてLIAR GIRL のイントロとステージに溢れる光線と共に、
画面に“Φ BOΦWY 1224”のタイトルが浮かび上がりました。

時は 1987 年 12 月 24 日。場所は渋谷公会堂。これは新アルバム
PSYCHOPATH 発売を受けてこの年行われたツアー
Dr. FEELMAN'S PSYCHOPATHIC HEARTS CLUB BAND
最終公演であり、一つの伝説が刻まれた日でもありました。

氷室の衣装はパンクロックです。鋲付き革ジャン、髪は逆立てて、
目にはキツいアイライン。ソロで言うと SHAKE THE FAKE の頃の
イメージです。決意が漲っている、険しい顔で歌っています。

布袋さんの足を交互に高く上げるシルエットに乗せて 2 曲目は
ANGEL PASSED CHILDREN。アルバムと同じ流れ。
手を額に当ててみせる「♪意識が千切れて アッ!」のとこいいね。

「良く来てくれたな!
今夜は特別な夜だぜ!騒ごうぜ!愛し合おうぜ!」と挨拶して、
BLUE VACATION。ギターソロがジングルベルの歌で、
クリスマス仕様!上手いなぁ。合ってるもん、音の流れが。

突っ走るようにハイウェイに乗る前にへ。この頃のお客さんは
あんまり拳上げないね。大人しく見える。前の方女の子多いし。
ぴょんぴょん頭は動いててサビも歌うけど、ノリ方が今と違う。

暗転。ステージ再開を待つ暫時、黄色い声援が飛ぶ。
「オーライ、目いっぱいオシャレして集まってくれたジゴロと、
それからジゴレットに贈ります。」

曲は勿論 GIGOLO&GIGOLET。この曲紹介、好きだわぁ。
ステージにマイクスタンドが登場しました。数少ない松井さんの
見せ場が来て、初めてアップに。しかし大きくネックを振って
弾く布袋のギターソロにすぐに主役を奪われてしまいます。

アルバムタイトル曲の PSYCHOPATH。イントロ、青い照明が
ステージに投げられ、眩しさに手を翳すような仕草をしてみせる
氷室。ドラムアレンジがアルバムと全然違いますね。間奏は
まこっちゃんにドラムソロの見せ場があります。カッコいいです。

何の曲だろうと聴いた、青いスポットライトの中で弾く布袋さんの
ギターに続いたのは、CLOUDY HEART のイントロでした。
この曲を、氷室はどういう気持ちで歌っていたんだろう。
目をきゅっと瞑って、泣くのを堪えているようにも見えます。

布袋さんのギターソロからカメラはそのまま横に動き、
歌い始めた氷室に向く。その部分の歌詞は「♪そうね終わりは〜」
意図したのか、並び立つ布袋と氷室を印象付けるカメラワーク。
「お前らが日本で一番にしてくれた最高のロックンロールを
贈ります。」
MARIONETTE で氷室の後ろに布袋が重なって映る画もいい。

わがままジュリエットの後、少し間があって、灰色の豹柄の
ジャケットに着替えた氷室が出てきました。メンバー紹介の後、
「今のオレ達とオマエ達の関係にぴったりの曲を贈ります。」
LONGER THAN FOREVER。マイクのコードをたくし上げ、
マイクと一緒に握ってます。ワイヤレスじゃないんだよね。

「ダンスが苦手な奴でも簡単に踊れる奴を贈りたいと思います。
タテノリだぜ!」と入った曲は WORKING MAN
水の入ったコップを右手に、水を撒き散らしながら歌い、
そのコップを客席に放り投げる。布袋はステージの右端に行って、
スピーカーの前のステージの狭いスペースで、手が届きそうな
客の目の前で弾く。氷室はステージに寝っ転がるし、暴れてます。

そのまま B・BLUE に繋がるのは CASE OF BOΦWY
と同じ。やっと調子が出てノって来た。氷室はジャケットの
襟が立っちゃってるのに、ずっとそのままで、直しもしません。

おお、RENDEZ-VOUS!布袋が体を大きく左右に揺らしながら
弾く。間奏じゃステージの前面に座り込んで足をぶらぶら。
氷室は右手でマイクを逆手に持ち、左手でコップを持っています。
その左手にマイクを持ち替えました。あれ、コップどこ行った?
曲の最後にリズムに合わせ、ジャケットを振るシーンが楽しい。

くるりと振り向いて、
ホンキー・トンキー・クレイジー!」と叫んで、投げた!
マイクで手の中に握り潰したコップ、ずっと持ってたのか!!

「♪曇るガラス オレの名前〜」で手をガラスを拭うように振り、
カメラ目線で近付いて来る氷室。本当ノリノリ。氷室と布袋は
微笑しながらぴょんぴょん飛ぶ。客席もぴょんぴょん。
氷室はメンバー一人一人の唇に指を当て、演奏中の彼らの
代わりに客席に投げキッスをしてあげました。ここは最高です。

ホンキートンキーの後に映像が途切れた。PLASTIC BOMB
始まりました。氷室手を前に突き出して、かめはめ波みたいに
手首を捻る。こういう変な動きしてる時は、ホントにノってる時。

BEAT SWEET では、ステージの一段高い所に設置された
ドラムセットの前に作られた階段に、軽い感じで腰掛けて歌う。
その腰掛け方がめっちゃカッコいい!!果ては背を倒して
足をパタパタさせながら歌う。「♪作り笑いも身に付けた」で
顔を作るように指でなぞる仕草。もう、何をやってもハマってる。

「こんなイカしたクリスマスはネェぜ!
渋谷公会堂を選んで良かったと思います。」
IMAGE DOWN のサビ、客席に、バックにマイクを突き出すと、

「お前らこのやろう覚悟して聴けよ!」
布袋に口元にマイクを向けると、布袋は裏声のふざけた感じで
歌いました。見ているこっちだけじゃなく氷室も笑ってました。
色々あった筈なのに、やはりステージは特別な空間なんですね。

NO. NEW YORK、まこっちゃんはスティックを投げ、布袋は
ぐるんぐるん腕を回して弾く。その頃、渋谷公会堂の外には
人だかりができていて、閉ざされた入り口のガラス扉の前で、
集まったファンとスタッフが押し問答をしていました。

本編が終わって退場し、楽屋に引き上げる BOΦWY。氷室は
ぐったりしたようにパイプ椅子に座り、布袋は(ダイエーの?)
スプレーで立てた髪を固め直す。松っちゃんとまこっちゃんの
あられもない着替えシーンが見られるというオプション付きです。

アンコールに応えメンバー登場。氷室はマイクスタンドに腕を
乗せ待つ。MEMORY が始まる。このシチュエーションには
この曲も、キツいね。サビが終わったら氷室後ろ向いて背中
見せちゃった。ギターを弾く布袋をじっと見つめる。

何かを噛み締めるように、曲の終わり際、マイクスタンドから
マイクを引っこ抜き、
「愛してる皆に心から贈ります、ONLY YOU

これが、問題のフィルムが消失していた曲です。Aメロの一部が
歪んで消えて、元に戻ってそのまま進んだけど、久々に見たら、
欠損これだけだっけ?という気がしました。大した事無いじゃん。

EN1 が終了し、再び楽屋へ。氷室がタオルを羽織りながら
真っ先に戻っていきました。これから、言わなければならない。
ステージに灯が点って、メンバー登場。布袋が中央に立つ氷室に
花束を渡す。そして氷室は、決定的な言葉を語り始めました。

「 6 年間。」布袋を見る。続けて、
「 6 年間 BOΦWY をやってきました。誰が何と言おうと
日本で一番カッコいいバンドだったと思います。」

氷室が布袋を見る。布袋は背中を向けてしまいました。じっと見る
氷室。氷室は涙を堪えるようにファンに向けて喋りました。
「フォークのバンドじゃネェんだから、じめっとすんのは
似合わないと思うから、最後にビシッと贈るぜ!DREAMIN'!」

袖で涙を拭いながら、でもソロになってからの HTH
LAST GIGS 東京ドーム 1 日目のように、詰まらずに
歌えました。最後にまた一人一人の名前を呼んで、

「We are BOΦWY!」

クリスマス・イブの夜。どうして知ったのか、渋谷公会堂の
外にはファンが押し寄せ、騒然としている。対照的に、
渋谷の街は煌びやかに、何事も無いように人が歩いている。

群がるファンにスピーカーで何かを言っているスタッフ、画面が
場内に戻ると、客席は泣いている。アンコールの声は鳴り止まず、
「終わりました」と言うアナウンスの声で、ビデオは終了しました。

VHS と聞いても、平成生まれには何の事だか判らないでしょう。
要はビデオテープの規格なのですが、もうビデオテープ自体
見た事が無い若い世代も恐らく多くなっているでしょう。

見終わったら時間を掛けて巻き戻ししなきゃいけないし、
早送りしないと曲を飛ばしたり好きな曲から見る事もできないし、
繰り返し見ると映像が劣化するし、カビが生える事もあります。

後に DVD プレーヤー一体型のビデオデッキに買い換えて、それを
Blu-ray レコーダーに買い換えた後も、一体型ビデオデッキは
捨てずに取ってあります。6 年近く電源を入れていないので、
いざ使おうとしても、もう動かないかも知れません。

しかしそんな扱いが面倒で、再生機器も使えないかも知れない
ビデオテープを、捨てようという気にはなりません。
見られるのは Blu-ray BOX の映像だけですが、VHSも
このまま、コレクションとして取っておく事になるのでしょう。