今年から新たにスタートする制度はいくつかあるが、その中で企業の活動に大きな影響を与えそうなのが「パワハラ防止法」である。政府は近く、なにがパワハラに該当するのか具体例を「指針」として発表、6月から施行する。防止義務をしっかり果たさなければブラック企業の烙印を押されかねず、経営者や担当部署は緊張を強いられよう。
パワハラ防止法。正確には「女性活躍・ハラスメント規制法」という。セクハラやマタハラ対策はすでに企業に義務付けられているが、パワハラ防止を含めての法制化は初めてことだ。パワハラを就業規則で禁止することや、相談窓口の設置を企業ごとに義務付けるもので、指導しても従わなかった場合は企業名が公表される。大企業は6月から、中小企業は準備期間を置いて2022年4月から適用される。目的は言うまでもなく、職場から「いじめ・嫌がらせ」をなくし、働きやすい環境を整えるためだ。パワハラをめぐっては、どのような行為がパワハラに当たるのか、業務上の指導・注意とどう異なるのか、線引きが難しいとされてきたが、今度の法律では「優越的な関係を背景にした業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」と、その定義を明確化した。
このところ、パワハラが重大な結果をもたらす事例が相次いでいる。三菱電機では昨年、教育主任の男性社員が新入社員に「できなければ死んでしまえ」「やらなければ殺す」などと発言したことで新入社員は自殺に追い込まれ、上司である男性社員が自殺教唆容疑で書類送検されるという事件が起きた。同社では過去にも長時間労働などが原因で自殺者2人を含む5人の社員が労災認定されている。また、社会問題化したかんぽ生命による不適切契約も過剰ノルマというパワハラが原因だと指摘されている。
これまでの事例を振り返ると、パワハラは日本の企業風土と密接な関係にあることが分かる。上司の命令は絶対で、部下はそれに黙って従うという古くからある図式。世間で言うところの「体育会系」体質が多くのパワハラを生み出してきた。とくに営業の目標ハードルを常に高めに設定することで成長を勝ち取ってきた企業ほどそうした傾向が顕著だ。成功体験をひけらかし「競争に勝つにはパワハラなどに構ってはいられない」などとうそぶく経営者もいるほどだ。
しかし、パワハラ撲滅は時代の要請。もはや看過は許されない。社内にパワハラを醸成する土壌は存在しないか、隠れた被害はないか、法施行の前に今一度総点検する必要がある。防止には企業トップの固い決意のほか、全社員に向けてルールの周知徹底、研修・教育など啓発活動が欠かせない。そして、パワハラの撲滅は企業価値の向上につながるという意識を全員で持つことがなによりも重要であろう。
経済記者OBの目を配信する
「広報ソリューション懇話会」
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パワハラ防止法。正確には「女性活躍・ハラスメント規制法」という。セクハラやマタハラ対策はすでに企業に義務付けられているが、パワハラ防止を含めての法制化は初めてことだ。パワハラを就業規則で禁止することや、相談窓口の設置を企業ごとに義務付けるもので、指導しても従わなかった場合は企業名が公表される。大企業は6月から、中小企業は準備期間を置いて2022年4月から適用される。目的は言うまでもなく、職場から「いじめ・嫌がらせ」をなくし、働きやすい環境を整えるためだ。パワハラをめぐっては、どのような行為がパワハラに当たるのか、業務上の指導・注意とどう異なるのか、線引きが難しいとされてきたが、今度の法律では「優越的な関係を背景にした業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」と、その定義を明確化した。
このところ、パワハラが重大な結果をもたらす事例が相次いでいる。三菱電機では昨年、教育主任の男性社員が新入社員に「できなければ死んでしまえ」「やらなければ殺す」などと発言したことで新入社員は自殺に追い込まれ、上司である男性社員が自殺教唆容疑で書類送検されるという事件が起きた。同社では過去にも長時間労働などが原因で自殺者2人を含む5人の社員が労災認定されている。また、社会問題化したかんぽ生命による不適切契約も過剰ノルマというパワハラが原因だと指摘されている。
これまでの事例を振り返ると、パワハラは日本の企業風土と密接な関係にあることが分かる。上司の命令は絶対で、部下はそれに黙って従うという古くからある図式。世間で言うところの「体育会系」体質が多くのパワハラを生み出してきた。とくに営業の目標ハードルを常に高めに設定することで成長を勝ち取ってきた企業ほどそうした傾向が顕著だ。成功体験をひけらかし「競争に勝つにはパワハラなどに構ってはいられない」などとうそぶく経営者もいるほどだ。
しかし、パワハラ撲滅は時代の要請。もはや看過は許されない。社内にパワハラを醸成する土壌は存在しないか、隠れた被害はないか、法施行の前に今一度総点検する必要がある。防止には企業トップの固い決意のほか、全社員に向けてルールの周知徹底、研修・教育など啓発活動が欠かせない。そして、パワハラの撲滅は企業価値の向上につながるという意識を全員で持つことがなによりも重要であろう。
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