広報プラスαのガイドブログ「経済記者OBの目」

——あなたの会社の危機管理は大丈夫?
——正しいメディア対応についてアドバイスします。

2017年01月

企業はいま、戦争や感染症、地球環境問題、ビジネスと人権など、さまざまな課題に直面しています。経済記者シニアの会は、ベテラン・OBの経済記者が毎週月曜日付のブログを発信するとともに、不祥事対応や記者会見など、広報・企業活動をお手伝いすることを目指しています。

企業“炎上”のグローバル化

hirose_s 企業不祥事によるネット炎上が、しばらく鳴りをひそめていたと思ったら、お正月明け早々の去る1月17日、北京からの時事電が、日本のホテルが中国のネットやメディアで“炎上”状態になっているというニュースを、ネットに伝えてきた。

 「日本のホテルがなぜ中国で?」と疑問に思い、調べてみると、東京のアパホテルに宿泊した旅行客の米国人と中国人のコンビが、客室に置いてあった南京虐殺を否定する、アパホテルグループ代表の元谷外志雄氏(ペンネームは藤誠志)執筆の社会時評を読んでショックを受け、中国のSNS「微博」に動画で投稿して告発したという次第である。動画は2日間で6800万回再生され、「アパホテルには泊まらない」などのコメント投稿数は2万9000件以上にのぼった。

 中国共産党の機関紙「人民日報」国際版の「Global Times」もこの問題を報道、報道を受けて、中国の旅行会社・黄光グループは、アパホテルの予約受付を停止したため、アパホテルの公式サイトは一時アクセス不能の状態に陥ったという。

 アパホテルの客室に置かれていたのは、「本当の日本の歴史 理論近現代史学」というタイトルの、元谷氏の月刊誌のエッセイをまとめた冊子である。日本語のほか、英語訳もつけられており、宿泊客に広く元谷氏の考えを知ってもらおうという意図である。

 アパホテルグループは問題発生後、ホームページで「客室設置の書籍について」と題する 同グループの見解を掲載した。それによると「この書籍は特定の国や国民を批判することが目的ではなく、あくまで事実に基づき本当の歴史を知ることを目的としている」とし、「異なる立場の方から批判されたことによって、本書籍の客室からの撤去は考えておりません」と述べている。

 今回の炎上問題は、南京虐殺に対するホテルグループ代表の見解、信条を述べた書籍に端を発している。経営者であれ、人々が見解や信条を述べることは全く自由であることは論をまたない。ただ、見解の分かれる問題について、それをビジネスの場に持ち込むことに首をかしげざるを得ないのである。

 広報の立場からこの問題を見ると、社内での議論はともかくとして、経営トップの判断には従わざるを得ないだろう。むしろ、書籍設置の是非よりは、ネット炎上が、こうした形で、よりグローバル化するという点に注意を払いたい。

 企業のグローバル化は、海外での事業はもちろんのこと、近年、増加するインバウンド(訪日外国人)向けの関連事業などを通じてより進展すると思われる。日本人では問題にならないことも、外国人には異なった受け止め方をされることもあり得よう。商品、サービス、言葉、態度などで、企業の信用を失墜させることのないよう、広報マンは気配り、目配りを徹底したい。


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記者への「公平な対応」は正しいか?

和泉田 守  企業広報の担当セクションに初めて異動した時に最初に教えられることのひとつに「マスコミ対応」の仕方、具体的には新聞やテレビ、雑誌の記者との付き合い方があるだろう。おそらく十人が十人、「記者には公平に」「どのメディアにも平等な扱いを心がけること」というレクチャーを受けるのではなかろうか。

 企業広報のポイント、基本を述べている資料を見てみよう。

 「経験が浅い記者、ベテランの記者に関係なく、またメディアによって差をつけることなく公平に接すること。対応が悪いと、その噂は、記者仲間にすぐに広がってしまう。」(「企業広報の基本」経済広報センター・企業広報プラザHP)

 「重大案件のプレス発表で気をつけなければならないことは、すべてのメディアを平等に扱うことである。……日常的に取材熱心な記者や、関係が密接なメディアなど特定のメディアだけを優遇してはならない。」(「【改訂版】広報・PR概論」公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会編)

 本当にそうなのだろうか。かつてこんなことがあった。

 革新技術として脚光を浴びているある先端製品の生産設備を大幅に増強する話をつかんだ。担当者に取材を申し込んでも広報がなかなかその機会をセットしてくれない。漸く実現、すぐに記事に纏めて内容がやや専門的なので日経産業新聞という専門媒体のほうに出稿した。翌日、記者クラブに行き各紙に目を通していると、競合紙の1面トップに大々的に、全く同じ話が載っているではないか。てっきり独自取材と思いこんでいたら違っていたのである。デスクに声高に「特ダネです」と売り込んでいたらとんだ恥をかくところであった。また「独自ネタだから」と、その日すぐに記事にしていなかったら……。

 ライバル紙の記者も、私と同じようなタイミングで同程度の情報をつかんでおり、やはり熱心に取材を申し込んでいたのかもしれない。まさか『また日経だけを優遇したのか』と責められたくなくてやった訳ではなかろうな、とは思いつつも、今更ことの経緯を質すのも野暮と思い件の広報担当者には何も言わなかった。向こうも次に私と顔を合わせた時には特にこの話題に触れなかった。ただ、心なしかばつの悪そうな顔つきをしていたことは覚えている。

 「機会の平等」と「結果の平等」という言葉がある。業界や企業動向をしっかりと勉強し熱心に取材している記者と記者クラブで油を売ってばかりでレクを待っているだけの記者ともに「公平な対応」の原則を教科書的、杓子定規に受け止めて対応していては、いつまでたっても信頼される広報にはなれないのではないかと思う。


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キーワードを見つけ、旬を逃すな

eguchi_s 今年の産業界のキーワードは何だろうか?と考えながら、正月の新聞各紙をめくって見た。目立ったのは、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、トランプノミクス、次世代型VR(バーチャル・リアリティ)、シェアエコ(シェアリング・エコノミー)、プレミアムフライデー、ガス小売り自由化、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの言葉。中でも際立っていたのが、互いに関連するAIとIoTという2つのワード。ほとんどの新聞がこれに関する話題を取り上げていた。

 新年早々、北米で開催された家電見本市(ラスベガス)やモーターショー(デトロイト)でも、AIとIoT技術を使った試作品が多数出品され、そのもようを多くのメディアが華々しく伝えている。自動車分野では究極の自動運転といわれる「無人運転システム」の進化が著しく、今年は「AI・IoTの実用化元年」「第4次産業革命の幕開け」などと囃されている。

 筆者の勝手な予想だが、今年は「シェアエコ」が様々な分野で活発に動き出すと見ている。余っているもの、使っていないものを他人に貸したり、1つのものを共同で使ったりすることは昔から普通に行われてきたが、スマホやSNSの発達で仲介サービスという新たなビジネスが生まれた。今年はあらゆるサービス分野にこのビジネスモデルが浸透していくと見ている。むろん、これにAIやIoT技術が結びついていくことも想像に難くない。

 ところで、企業の広報担当者はその時代のキーワードや社会のトレンドに常に敏感であることが求められる。ただ漫然と情報を発信するのではなく、社会でいま注目されている事象に関連付けてタイムリーに情報を出していく、すなわち旬を逃さないことが大事だ。

 ニュースバリューを持たせるための条件に「新規性」と「特異性」がある。まだ人に知られていない情報、あっと驚くサプライズ性にメディアの記者や編集者は興味を覚える。これに時代を象徴する社会性、すなわちキーワードが加われば鬼に金棒、発信する情報は間違いなく多くのメディアに取り上げられ、ニュースは拡散していく。

 社会の動きに感覚を研ぎ澄ませ、キーワードを見逃さない、聞き逃さないという姿勢は広報担当者にも記者にも変わりなく求められるものだ。


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2017年の不透明な経済環境下におけるメディア対応

yamada_s  「2017年の日本経済はどうなる。株価・為替の見通しは」-TPPの離脱宣言、「米国第一」を前面に保護主義を掲げるトランプ米新大統領の就任(20日)で、わが国経済は揺れ動く年になる、との見方が少なくない。高関税の適用示唆などで先行きが懸念される対米輸出、英のEU離脱(3月)を機に、共同歩調に不協和音が聞かれるユーロ圏向け輸出も楽観視できない。不透明な2017年の経済環境見通しにあって、企業広報はメディアにどのように備えていけばよいのか。ここでいくつか対策を挙げてみた。

 まず、企業にとって業績に直結する為替動向は気になるところ。米の雇用改善やFBR(米連邦準備制度理事会)の利上げ政策で、ドル高基調にあり、円安は続きそう。ことし前半に1ドル=130円に接近する可能性は否定できない。マスコミはその時、必ず経営トップのコメントが欲しい、と広報部に連絡してくる。輸出にプラスだが、原材料輸入費アップ分を価格にどのように転嫁していくのか、新聞社からコメントを求められる。今から130円を想定した答えを用意しておきたい。逆に円高(80円台)の場合も同じことが言える。

 次に、自社の2017年の重点事業をしっかり把握し、メディアにPRしていく手段、方法を常に考えて行動すること。また、あらゆるものがネットに接続するIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)に関連した新技術やシステム開発が活発化し、新聞紙上でも各社の開発状況の記事をよく目にするようになった。広報マンとして、これらに関連したシステム、部品、機器などが社内で開発されていないかを調べ、関係するものがあれば積極的にマスコミに発表していく意識を持ちたい。

 もう一つは、米国の記者との交流を活発化する方策を考えよう。進出している多くの日系企業は大なり小なり地元メディアと接触しているはずである。トランプ氏は自国の雇用、産業を守るため、米企業がメキシコなど賃金の安い国に新工場を建設したり、工場移転することを規制していく構えだ。日系企業が工場の新・増設を打ち出せば、雇用機会を増やすことになる。地元記者との連携を密にして、雇用改善への貢献度を地域メディアに積極的にアピールしていきたい。


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