広報プラスαのガイドブログ「経済記者 シニアの眼」

——あなたの会社の危機管理は大丈夫?
——正しいメディア対応についてアドバイスします。

2020年09月

企業はいま、戦争や感染症、地球環境問題、ビジネスと人権など、さまざまな課題に直面しています。経済記者シニアの会は、ベテラン・OBの経済記者が毎週月曜日付のブログを発信するとともに、不祥事対応や記者会見など、広報・企業活動をお手伝いすることを目指しています。

大きいことはいいことか?

江口務 何十年も前のこと。「大きいことはいいことだ~」というCMのフレーズがテレビから盛んに流れていた。チョコレートの宣伝だったと記憶しているが、高度経済成長期だったこの頃、「大きいこと」は豊かさの象徴であり、成功の証でもあった。しかし、最近では「大きいこと」が必ずしもいいことではなくなったようだ。

 巨大IT企業のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど、いわゆる「GAFA」は急速に肥大化したがゆえに、世界中から風当たりが強まっている。ライバル企業を次々に買収して圧倒的なシェアを得たり、優位的な地位を利用して強引な取引を迫ったりするなど、公正な競争をゆがめているのではないかとの批判が各地で沸き起こっている。例えば米国議会は7月末、4社のトップを公聴会に呼んで経営実態を厳しく糾問するなど、従来とは打って変わり大手ハイテク企業との対決姿勢を強めている。また、グーグルとフェイスブックについては、報道機関が制作するニュースコンテンツをタダで利用しているとして、新聞社などが対価の支払いを求める動きが世界各国で表面化している。さらに、日本でも独禁法違反(優越的地位の乱用)の疑いで公正取引委員会がアマゾンの日本法人を立ち入り検査し、最終的に同社に納入業者への資金返還を促す「改善策」を出させるということも起きている。

 GAFAの肥大化を象徴するものの1つに株式時価総額がある。アップルの2兆ドル(約210兆円)を筆頭に、4社合計の時価総額は今や5兆ドル(約520兆円)近くに達している。この額は日本の国内総生産(GDP)にほぼ匹敵するというから驚きだ。コロナ禍で多くの企業が苦しむ中、GAFA は人々のネット利用の拡大を背景に収益を順調に伸ばしている。グーグルは世界のネット検索でシェア90%、アマゾンは米ネット通販で40%以上のシェアを握っている。肥大化することで公正な競争が妨げられているとすればこの先、規制の強化もやむを得ないだろう。

 最近、経営者の間で「SDGs」「ESG」という言葉が盛んに飛び交っている。企業の持続的な成長は拡大志向によってのみ得られるのではなく、環境や格差、安全、健康など解決すべき社会的課題に主体的に取り組んでこそ実現できるとの考え方が急速に広がりつつある。GAFAはこうしたビジネス界の潮流をどう見ているのだろうか。GAFAはこのまま拡大路線を突っ走るのか、それとも規制強化によって事業分割に追い込まれるのか、あるいは社会との調和を重視した経営へと舵を切るのか。巨大ハイテク企業の今後に目が離せない。


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新政権誕生で北方4島返還交渉はどうなる

山田 功  新政権誕生で北方4島の返還交渉は進展するかー。「北方領土問題は私の手で解決する」と明言した安倍前首相はプーチン大統領と通算27回にわたる会談を行ったものの、成果をあげることなく任期を1年残して辞任した。後を受け継いだ菅新政権に領土問題解決が委ねられた。多くのメディアは「交渉進展は期待できない」という。ロシアは7月に「領土の割譲を禁止する」条項を盛り込んだ改正憲法を成立させた。領土交渉は難航し、日露首脳会談も減少すると見ている。北方4島返還は期待とは逆に後退しそうだ。

 ソ連(現ロシア)が北方4島(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)に侵攻してきたのは1945年8月28日(内閣府資料)。天皇陛下の玉音放送で国民に終戦が伝えられた同年8月15日の13日後となる。ソ連軍は日本の終戦に関係なく武力で4島を占領した。不法占拠されて今年で75年になるが、ソ連軍侵攻の日と安倍首相辞任表明の8月28日が一致するのは単なる偶然か。

 日本人が開拓した北方4島には戦前約1万7000人が住んでいた。武力侵攻してきたソ連軍の略奪、暴力行為を恐れた島民の半数以上は家財を棄て、また若い女性は頭を刈り上げ男の恰好をして北海道に脱出した。今でも道北、道東の住民の間でロシア人を軽蔑の意をこめて「ロスケ(露助)」という。ソビエト連邦が1991年12月に崩壊した時、筆者(旭川市出身)は東京の記者クラブで「ロスケにとって大試練」というと隣席の記者から「ロスケと言うな」と睨まれた。「4島を不法占拠した相手に敬語は使わない」と言い返すことは思いとどまった。

 領土返還交渉を振り返ると、1956年の「日ソ共同宣言」で平和条約締結後に色丹島、歯舞群島の2島を日本に引き渡すことで同意。その後1991年4月にゴルバチョフ大統領が来日し海部首相と会談後、北方4島が平和条約において解決される領土問題の対象であることを確認した「日ソ共同声明」に署名した。この「宣言と署名」を見ても北方4島が日本の領土であることを認めた証といえる。

 だがロシアは改正憲法で他国から占領した領土返還の扉を閉ざしてしまった。ロシア事情に詳しい佐藤優・元外務省主任分析官は「領土の割譲禁止条項には国境の画定作業は除くとの例外規定があり、交渉の余地は残されている」と。交渉余地があっても外交戦略に長けたプーチン大統領から4島返還の同意を得ることは容易ではない。いまプーチン政権は北方4島のロシア化を着々と進めている。

 新政権はこのロシア化を止めることが対ロ外交の出発点となる。そのためには「日ソ共同宣言」の実行を強く求めなければならない。また平和条約を締結し、両国関係を正常化することでエリツィン大統領と細川護熙首相が1993年に署名した「東京宣言」、2001年プーチン大統領と森喜朗首相が署名した「イルクーツク声明」(日ソ共同宣言が法的文書であることを確認)など過去の交渉経緯の再確認を促しつつ、粘り強く北方4島返還交渉に努力してもらいたい。



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菅・自民党総裁で日本は大丈夫なのか?

阿部 和義  このところのいろいろな動きに不満がたまっているマスコミOBは多いのではないか?経済も政治に大きく左右される。それだけに政治の動きには目を離せない。私が現役の時代に担当していた財界は政治に対して物を申していた。当時は今と違って政治に対して金を直接出していた。「金庫番」といわれた経団連の花村仁八郎・事務総長が自民党の幹事長のところに札束を持ってゆくこともあった。それだけに政治に対していろいろな注文を出してきた。こうした関係も今やなくなり政治資金は税金で賄われるようになって、経済界の声も政界に届かなくなった。

自民党総裁選に注文する
 安倍総理が持病の潰瘍性大腸炎で辞任して後任選びが始まり官房長官の菅義偉(すが・よしひで)氏が石破茂・元幹事長、岸田文雄・政調会長を引き離し断然有利になっている。9月14日に正式に決まる。

 安倍総理の辞任の記者会見が終わるやすぐに長老の二階幹事長が菅氏に「あなたしかいない」と話して、流れが決まった。それに乗るように自民党の7つの派閥の5つが菅氏に乗った。あっという間のことで挙句の果てに細田派、麻生派、竹下派のトップが記者会見までした。こんなことは今までなかったことである。

 コロナで政治空白は許されないということなのだろうが、菅氏のところにポスト欲しさに挨拶に行く議員が多いことが報じられるたびに「勝ち馬に乗る議員がなんと多いことか」と嘆かわしい思いがする。

 7年8か月という日本の首相として最長記録を作ったとはいえ何をやり遂げたといえば「拉致問題」「北方領土問題」「憲法改正」など積み残しばかりである。その割に海外には出て各国の首脳と仲良し外交をしてきた。その間に日本の世界に占める地位はどんどん下がってきている。こうした安倍政権の中枢にいた菅官房長官がすんなりと選ばれるということは「誰が考えてもおかしなこと。沈滞した安倍政権から新しい政権を」と思う人は多い。

横浜びいきが過ぎる心配
 菅氏は秋田から出てきて政治に目覚めて横浜を地盤とするの小此木彦三郎氏の秘書となり、横浜市議2期を務めて衆議院議員になり現在8期である。横浜2区選出で何もない中で地盤看板を作り上げてきた。そのためには横浜にある企業の人たちにお世話になっている。こうした人に対して恩返しをしている。私の知っている三井不動産の岩崎芳史氏(元三井不動産リアリティ社長)が突然にNHK経営委員に就任した。三井不動産の人に聞いたところ「岩崎さんは三井不動産の横浜支店長をして菅さんと親しいから経営委員になった。菅さんに頼まれた」と話していた。当時、菅氏は電波を取り締まる総務大臣であった。菅氏は徒手空拳で今の地位を築いただけに「鶴の恩返し」ということが露骨に行われる心配がある。金権政治で悪名をながした田中角栄のようなことにならないことを祈るだけだ。

一柳・元朝日新聞社長の追想録
 朝日新聞が起こしたサンゴ事件(写真部員が自らサンゴに傷をつけた)で辞任した政治部長など歴任した一柳東一郎氏の追想録が今年6月に出版された。その中で一柳が政治部担当の論説委員として当時のことを書いている。東京オリンピックの後の池田勇人首相がやめて首相公選になり札束が乱れ飛んで池田が再選された。ところがそのあと、池田はがんになり引退して佐藤栄作、河野一郎、藤山愛一郎の3氏が候補者となったが、最終的に当時の川島正次郎・副総裁と三木武夫幹事長の采配で佐藤氏が首相に選ばれた。佐藤は安倍と同じように7年以上務めて沖縄返還を実現した。この辺のことを一柳氏は「川島、三木がしばしば手をつないで出てきて佐藤に決めた」と書いている。今回の安倍後任を決めたのもこうした自民党の歴史があるからだろう。

 菅氏に安倍とは違って在任中にこれという実績を残してもらいたいものである。



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TikTok騒動の本質

山下 郁雄  日米のリーダーを決める自民党総裁選、大統領選が共に佳境に入り、各メディアには関連情報があふれている。同様に、連日のように動静が伝えられ、あれこれ取り沙汰される政治&企業ネタに「TikTok(ティックトック)米国事業の行方」がある。TikTok=ティーンエージャーらの他愛のない動画が大半を占める中国発ショート動画アプリが、なぜ、かくも大騒ぎされているのか…。

 TikTokは中国ITベンチャー、バイトダンスが開発し運営する動画共有アプリ。長尺ものが主体のYouTubeに対し、1本が15秒程度という短さが売り物で、ダンスやおどけた動画、ペットものなどが多数アップされ、若年層の間ではYouTubeに勝るとも劣らない人気を博しいる。創業者はシリアルアントレプレナー(連続起業家)として知られる張一鳴氏(37歳)。2017年春のサービス開始から3年半で、世界の7億人が利用するグローバルプラットフォームに成長発展させた。日本で1000万人、米国では1億人が利用しており、膨大なユーザーを抱える米国で、この1か月間、TikTokを巡る事態が目まぐるしく動いた。

 米国企業などがTikTok運営会社と取引することを禁じる大統領令にトランプが署名(8月6日)→米政府が中国バイトダンスに対し、TikTok米国事業の売却を命令(14日)→バイトダンスが、取引禁止を求めた大統領令は米国憲法違反だと、その差し止めを求め米連邦地裁に提訴(24日)→TikTok米国法人CEOが辞任(26日)→ マイクロソフト、オラクルに続き、ウォルマートがTikTok米国事業の買収に名乗り(27日)→中国政府がハイテク輸出規制を強化し、規制対象リストにAI(人工知能)やデータ解析を追加(28日)…。

 TikTok排除に乗りだしたトランプ政権の言い分は「国家安全保障上の脅威」というもの。しかし、11月の大統領選をにらんだ“中国たたき”の一つで、選挙を有利にする政治的キャンペーンだとの見方が少なくない。一方、マイクロソフトをはじめビッグネームが相次いで買収に名乗りを上げたことで、TikTok米国事業の価値の高さが改めて示された。ちなみに、中国バイトダンスは世界一のユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の未上場企業)で、直近(8月末の米CBインサイツ調べ)では1400億ドル(約15兆円)と、日本の株式市場にあてはめると、トヨタ(約23兆円)に次ぐ2番手に位置するほどの評価を得ている。

 「すごい数のデータサイエンティストたちやAIの博士たちが動いている。生成されるアルゴリズムを最適化し実装するスピードには目を見張る」。電通・中国統括マネージャーからバイトダンスに転身した西田真樹氏は、転身先の神髄をそう語っている。今回、中国政府が、このタイミングで輸出規制を強化したのは、利用履歴からお勧め動画を選ぶアルゴリズムなど、バイトダンスのAI関連技術を念頭に置いた措置であるのは明らか。そのため、TikTok米国事業の先行きはますます不透明になっている。

 「21世紀の最も重要な資産はデータで、政治はデータの流れを支配するための戦いと化すだろう。データの獲得競争はすでに始まっており、厖大な量のデータの蓄積は、これまでとは根本的に異なるビジネスモデルへの道を拓く」。歴史家&ベストセラー作家のユヴァル・ノア・ハラリは近著『21レッスンズ』の中でそう説いている。米中の国家と企業が入り乱れるTikTok騒動は、ハラリが指摘する「戦い」「競争」の最たるものとなろうか。アフターコロナ時代のグローバルビジネスの潮流を知る上でも、その行方から目が離せない。


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