江口務 コロナの感染拡大に歯止めがかからないまま新年を迎えた。コロナはいつになったら収束するのか。ワクチンは本当に効果が期待できるのか。東京五輪・パラリンピックは開催されるのか。バイデン米大統領の誕生で世界はどう変わるのか。そして景気の行方は…。今年ほど不安と不確定要素に満ちた年明けはないだろう。これから世界はどう動くのか、それを探る上で、元日の新聞各紙(在京6紙)を読み比べてみた。

 まず、新聞の顔である1面トップの記事で最も目を引いたのは毎日新聞。「中国から闇ワクチン流入」のタイトルで、日本を代表する企業の経営者など一部の富裕層が未承認の中国製コロナワクチンをすでに接種していた、と報じた。正月の紙面でコロナに関心が集まることは容易に想像できたが、こうした切り口のスクープもあるのかと感心させられた。

 朝日新聞の1面トップはストレートニュース。吉川元農水相が鶏卵業者から500万円の現金を受領していたとする問題で、実は受け取っていたのはそれよりもさらに多い1800万円だったと報じた。コロナ騒ぎでつい忘れがちになりそうな疑惑をあらためて国民の前に引き戻したと言えよう。

 日経新聞の1面は「カーボンゼロ」に関する特集だったが、それよりも読みごたえがあったのは中面でのぶち抜き8ページにわたる「展望2021」と題する解説記事。当面の重要課題である「デジタル化」「働き方改革」「ワクチン開発」「金融再編」などをテーマごとに分かりやすく伝えていたのが印象的だった。

 読売新聞と産経新聞はともに中国関連の記事が目立った。読売は第1面で、海外から優秀な研究者を集める中国の人材プロジェクト「千人計画」に44人の日本人が関与していたことが明らかになり、政府が情報流出を防ぐため規制強化に乗り出すことになった、と報じている。産経は中国の権威主義、強権的な振る舞いが民主主義を脅かしているとして監視強化を主張する記事を掲載していた。

 東京新聞は、戦前の東京の風景や人々を写した貴重な記録フィルムを「本社が入手、デジタル化した」と、やや変わった記事を1面に据えた。ネガティブな記事が多かった中でそのほのぼのとした内容は、少しばかり読者の気持ちを和ませるのに役立ったものと思われる。

 一方、「社説」「論説」に目を転じると、こちらは各紙とも予想通りコロナ1色。「国際協調」「民主主義」「経済再生」を共通のキーワードに、コロナがもたらしたピンチをチャンスに変えよう、とそれぞれに檄を飛ばしていた。

 毎年、正月の紙面は希望に満ちた明るい話題を中心に構成するのが通例だが、今年の場合は事情が事情だけに編集者は大いに戸惑ったことだろう。来年の紙面ではせめてコロナの3文字だけは目にすることがないよう祈りたい。


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