
記者会見する全銀ネット幹部=TBS NEWS DIGより
『注目会見を斬る』は、毎月の月初め月曜に、直近1か月ほどの間に開かれた記者会見の中から一つまたは二つをピックアップし、ベテラン記者、企業広報関係者、危機管理専門家が論評します。会見の評価やまずかった点、どうすれば良かったのかなど、広報およびビジネスパーソンの参考となるよう、わかりやすくボイントを指摘します。
今月は10月18日に開かれた、全銀ネットのシステム障害に関わる謝罪会見を取り上げます。会見では、辻松雄全銀ネット理事長ら幹部3人が登壇し、10月10、11の2日に亘って生じた、全銀システムとしては初の大規模障害について釈明しました。果たしてベテラン記者らはどう評価したか…。記事後段の【直球・変化球】では、会見後の情報発信の乏しさなどに苦言を呈しています。
【全銀ネット】
●解明能力の低さ浮き彫りに
A 稼働半世紀で初の大規模障害を起こした全銀ネット。さて、謝罪会見をどう捉える?
B 丁寧な説明、真摯な対応に終始したように思える。ただ、障害発生から1週間以上経っての会見であるにもかかわらず、「原因不明」、「調査中」、「答えられない」が多すぎた。原因究明の遅さ、解明能力の低さが浮き彫りになって、情けないと言わざるを得ない会見内容だった。
C 確かに、この手のトラブルは、普通、かかっても2、3日で真因に辿り着けるはず。真因は分かっているが、何か不都合があって隠していると勘ぐりたくもなる。
D 登壇者3人は辻理事長以下、全員が全銀ネット幹部。トラブったシステムの詳細設計はNTTデータが担当し、一番詳しいのはNTTデータなのだから、データの誰かにも登壇して欲しかった。公的機関の、この種トラブルの会見で、ITベンダー側が出席する例はほとんどないが、包み隠さずオープンにするという原則に立てば、ベンダーが出てきてしかるべきだ。
A 多くの人が関心を持つ補償に関しては、各銀行の窓口で個別対応すると説明したが…。
C 各行任せのバラバラの対応ではなく、統一的な補償が欠かせないのでは。会見日の10月18日に「補償の対象は手数料、延滞金・遅延損害金、貸出金利/貸越金利など」というあっさりしたプレスリリースをウェブサイトに載せている。まぁ、詳細を記述するのは難しいだろうけど、もう少し肉付けがほしい、物足りない説明文となっている。
●失敗学の教科書に載る?
B 記者会見の印象としては、各記者がよく勉強していて、ポイントを突く質問を繰り返したので、犯人捜しの推理小説を読んでいるような面白さが感じられた。
C そうかな。ちょっと評価が甘いのでは。UNIXに詳しい技術者に聞くと、そもそもCOBOLプログラムをUNIXで使われるC言語やJAVAで置き換えるのは技術的に難度が高いとのこと。その辺りを深掘りするような質問が欲しかった。
D 本来ならバックアップし合う東阪(東京・大阪)を同時一斉に切り替えるという立て付けそのものがBCP(事業継続計画)の原則からはずれていたのでは。これまで大丈夫だったから、という経験則が裏目に出た典型。失敗学の教科書に載るような事例になってしまったね。
B 会見で、その点を聞かれたら「保守期間が同じだから一緒に移行した」と答えていたが、これは全くナンセンス。バックアップやBCPの観点が消失しており、屁理屈にもならない珍答だった。
A 本筋とは違うが、登壇者が使ったマイクが不調となり、取り替えるシーンが数回あったのがいただけない。IT系組織の謝罪会見なので、キホンの「キ」が出来ていないと言われても仕方がない。
C 会見後の状況や情報発信の問題点は次の「直球・変化球」で。
【直球・変化球】
●情報発信が途絶える
A 記者会見から、かなり日にちが経ったが、状況はどうなっているのか。
B 全銀ネットの新着情報やプレスリリースを見ると、障害発生の10月10日から会見日の10月18日までは関連情報を盛んに発信しているが、その後はバッタリ途絶えている。弥縫(びほう)策として講じたゼロ円入力(手数料をゼロとした暫定的な手立て)が解除され平常に戻ったかどうかも分からない。
D 情報発信が全く不十分で、状況が少しでも変わったら逐一、公表すべきだろう。
C 18日の会見では、「障害発生の対応に追われたため、ウェブサイトで不具合が生じたと伝えたのは昼前になってしまった」と、顧客への情報提供の遅れを釈明するくだりがあった。障害発生時を検証し、反省すべき点を拾い上げると説明していたが、検証や反省が、まだ全くできていない。
B 障害発生時と言えば、10日は銀行の窓口もかなり混乱し、対応がまずかったよう。知り合いが、取引先から「振り込んだ」との連絡を受け確認したら入金されていないので、三菱銀行の某支店に出向いて説明を求めたら、「原因は全銀ネットのシステム障害」と答えるだけ。行内は何やら他人事のような雰囲気で嫌な感じしかなかったと憤っていた。
●日々、進捗状況を発信すべき
A メディア側には、全銀ネットが公表しないのなら、独自取材で、その後の経過報告に力を入れて欲しいよね。事故や事件は大きければ大きいほど影響が広がり続報の価値が高まるのに、一般論として、日本のメディアはその辺りがかなり物足りない。今回も「ご多分に漏れず」で、記者会見を報じて以降、どのメディアにもニュースらしいニュースは載っていない。
D 補償の実態、実績がどの程度なのかもほとんど伝えられていない。トータルでは相当の金額になるとの見方もあるようだが。
C 来年1月予定の移行第2弾がどうなるか、その先の第3弾、第4弾はどうか。さらに中長期的には次期全銀システムにどういう影響が出るのか、分からないことだらけ。分からないと疑心暗鬼になり、変な噂も広がるので、何でもオープンを基本スタンスに、交換日記のように日々の進捗状況を開示してもらいたい。

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脱メインフレーム大作戦、最初の一歩でつまずいた全銀システム
稼働50年、デジタル通貨を見据えてゼロから再設計する選択はないのか?https://it.impress.co.jp/articles/-/25568