
SOMPO HD・損保ジャパンが会見(TBS NEWS DIGより)
【SOMPOホールディングス】
A 今月は、本来ならば自民党議員の政治資金パーティー裏金事件での記者会見だが、肝心な議員は誰も正式に会見していない。残念だが別の機会としたい。
C まあ裏金事件は政治記者に任せよう。ザル法と呼ばれる政治資金規正法だが、それすら守らないのは完全にアウト。受け取った議員は即刻辞職ものだよ。
B そこで今回は、中古車販売のビッグモーター(BM)による保険金不正請求問題で揺れる損害保険ジャパンと、親会社SOMPOホールディングス(HD)の記者会見(1/26)を取り上げよう。昨年9月の会見では白川儀一損保ジャパン社長が辞任表明したが、今回はHDの桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者(CEO)が退任することになった。
●会見の司会と応答は合格点
D 今回も会見時間は3時間15分と長時間だったが、会場の設営やSOMPO HD広報部長の質問者指名や内容の確認、回答者の差配など司会進行は見事だったね。不祥事会見としては合格点を付けられる。
E 登壇した桜田氏や次期CEOの奥村幹夫SOMPO社長、損保ジャパンの石川耕治副社長(2/1付で社長就任)、そして社外取締役で指名委員会委員長のスコット・デイヴィス氏ら6人は、しっかりと質問者の目を見て答えていた。これもさすが、と思わせた。
D スコット氏は大学で教鞭を取っているだけあって、丁寧な日本語と筋道立てた説明で、質問者を納得させていたね。
A いやいや一流企業なら、こんなお粗末な事態にはならないよ。2021年11月にBMの不正請求が発覚し、損保各社が取引停止していたにもかかわらず、損保ジャパンは22年7月に取引再開を決めた。白川前社長が業績確保で焦った結果とされるが、目に見えない圧力に押されたためだ。
C その圧力とは?
B ハッキリ言えば桜田氏の存在だ。2019年から4年間、経済同友会の代表幹事を務め、業界内ではドンと呼ばれた。社内でも剛腕で知られ、業績は向上し株価も上がった。だが14年近く経営トップにいたから、尊大で傲慢になっていたんだ。
C 会見は面白かったね。保険ジャーナリストから一般紙、経済誌、評論誌など色々なメディアが集まっていた。中には質問なのか褒めているのかわからないものもあつたが、桜田氏に対して「嘘をつくな」などと詰め寄る場面もあった。
D 重要な情報がダダ漏れしている、内部統制が利いていないという指摘もあった。聴いていて、現体制に不満を持つ社員・幹部が結構いることがわかった。
●桜田氏の本音は「なぜ辞めなければ…」
E その桜田氏は3月末で退任し、今後一切経営に関わらないと表明した。会見では「私に責任がないはずがない」と殊勝に語っていたが、ずっと不機嫌な様子だったね。
D 本音は「なぜ辞めなければならないんだ」だよ。責任はあると語りながら、明らかに納得していない。昨年9月の会見では「私は知らなかった」と語り、全責任は子会社にあると印象付けていたからね。引責辞任という言葉にも「皆さんの判断に任せる」と不満だった。
A 桜田氏は外堀を埋められ、追い込まれたんだ。HDの最終報告書が1月16日に公表され、「コンプライアンス(法令遵守)体制は機能不全。顧客重視の経営理念もうわべだけ」と厳しかった。そして25日の金融庁の業務改善命令が決定打となった。
C そうだね。業務改善命令は冒頭で「経営責任の明確化」を明記した。金融庁としては保険持株会社が子会社をしっかり管理していなかったことや、不祥事を「知らなかったから問題無しではない」と厳しく指摘していた。ここまで追及されては、もう逃げ場はない。
B 要するに桜田体制のもとでは、不都合な情報が上がらなかった。でもそれを許していたのは当人だね。“桜田ファミリア”と呼ばれるお気に入りの人間だけ配置していれば、いやな情報は無視される。長期政権は必ず腐るという箴言が、ここでも見られたね。
●「業務改善計画」に桜田氏も関与?
A SOMPO HDと損保ジャパンは3月15日までに金融庁へ業務改善計画を提出しなければならない。中身は「顧客の利益を重視する健全な組織風土づくり」や「損保ジャパンの適切な運営管理体制の確立」などになるだろう。
C 石川新社長は、新しい企業風土を確立するため専門部署と役員を設置すると語っていた。奥村新CEOも、一朝一夕に変えるのは難しいが不退転の覚悟で取り組むと言う。新体制でぜひ、実現してほしいね。
D ただ気になるのが、ここでも桜田氏だ。同氏の退任は3月末だから、それまではやるべきことはやるという趣旨の発言をしていた。本人にすれば「グループ全体に欠陥があるとは思わないし、思いたくない」のだから、再建策に関与したいのだろう。
E だが、今回金融庁は厳しいよ。2005年に自動車保険の不払い問題が発覚した時、金融庁は損保各社に保険金支払い部門と営業部門との分離を求めた。しかしその後曖昧になり、今回のBM問題に繋がったという危機感がある。だから改善計画には厳しくチェックを入れるはずだ。信頼回復に向けて、SOMPOはしばらく茨の道を歩くことになろう。
【直球・変化球】
●不祥事企業に共通する「風土」
D 新年になっても、不祥事は後を絶たないね。豊田自動織機では昨年3月にフォークリフトの排出ガス基準で不正があったのに続き、今月29日にはランドクルーザーなどに使われる自動車用エンジンでも不正が判明した。
C 豊田章男会長は30日に記者会見して、「お客さまはじめステークホルダーの皆様にご迷惑、ご心配をおかけしていますことを深くお詫びします」と謝罪していたね。販売台数世界1の自動車メーカーは、この先大丈夫かな?
A 2016年以降、三菱自動車や日産、スバル、マツダ、スズキ、日野自動車、そしてダイハツ工業など自動車メーカーのほぼ全社で不祥事が起きている。燃費性能や排出ガス測定データの改ざんなど、要は現場力の低下が大きいのだが、背景にはトップからの圧力がある。無責任体制が広がって、おかしな社内風土ができているのではないか。
B それはあるね。かつて三菱電機の品質不正問題では、「言ったもん負け」という風土があった。現場で「これはおかしい」と声を上げると、職場に居づらくなったり、冷や飯を食わされたという。だから不正があっても、黙っている。損保ジャパンでも、BMはおかしいぞと指摘されていたのに、自社利益優先で立ち止まれなかった。
E きちんとした再発防止策の策定には、やはり外部の目を入れることが欠かせないね。

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