認証不正で謝罪会見する豊田章男トヨタ会長(You Tube FNNプライムオンラインより)

【トヨタなど3社の認証不正謝罪会見(6月3日)】
 「型式指定」の認証申請に関し、トヨタ自動車、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの5社の内部調査で不正行為が見つかった。5社のうちトヨタ、マツダ、ホンダの3社は6月3日に、それぞれ経営幹部が謝罪の記者会見を開いた。

●波紋広がる「ブルータス、おまえもか」
A 自動車・バイクメーカー5社の認証不正が明らかになり、そのうち3社が謝罪会見を開いた。まず全体の印象から。

B トヨタの豊田彰男会長が話し、波紋が広がった「ブルータス、おまえもか」に象徴されるが、各社とも当事者意識が希薄で、心からおわび・謝罪しているようには見えなかった。きつく言うと、居直ったように受け取れる部分もあった。

C 確かにコンプライアンス(法令遵守)違反を犯したにもかかわらず、その重さが分かっていないように思えたね。「順法性に対する考え方が甘かった」「法令に対する独自解釈を排除できなかった」などとコメントしていたが、そのコメント自体に甘えが感じられた。

D  自動車産業は長く基幹産業として日本の経済を引っ張ってきた。そのおごりや慢心のようなものが、どこかにあるのかもしれない。

●制度の不備を指摘する
E 辛口の評価が多いけど、私の印象は悪くない。各社のトップはいずれも説得力のある話をしたと思う。Cさんが触れた「独自解釈を排除できなかった」がキーワードで、つまり、認証の仕組みに独自解釈の余地があったりするのが、不正が起こる主因。3社の会見では、お上を刺激しないように気を遣いながらも、陰に陽に、制度の不備を指摘していた。

A 豊田会長は、車検制度を引き合いに出して、古い不要なものは整理すべき、と問題提起した。「ここで言うべきではないが」との前置きを何度も口にして、かなり踏み込んだ話をしたのは、さすがトヨタと言えなくもない。

C そうかな。豊田会長の発言は、オウンドメディアのトヨタイムズで話しているような感じで、脇が甘いとしか思えなかったが…。

B 制度に不備があるにしろ、現行制度が在る以上、それをきっちり守るのが各メーカーの務めだよ。

E ダイハツの例にあるように、認証不正で生産ラインが止まるとGDPを大きく引き下げてしまう。デジタル化の流れの中で、型式認証そのものが時代遅れになっていないのか。国交省も会見を開く必要があるのでは。




都知事選共同会見に出席した4人の有力候補(You Tube TBS NEWS DIGより)


【東京都知事選での共同記者会見(6月19日)】
 戦後22回目の東京都知事選挙が今月20日告示され、7月7日の投開票日に向けスタートした。現職の小池百合子知事(71)や元参議院議員の蓮舫氏(56)、元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)、元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)ら56人が立候補した。立候補者数は過去最多で、ポスター掲示板の区画が不足する異例の事態となった。

 小池、蓮舫、石丸、田母神4氏は6月19日、日本記者クラブで共同記者会見し、基本政策や小池都政2期8年の評価などについて語った。

●総花的で突っ込み不足
A いつもなら立候補者の晴れ舞台となるはずだったが、会場は10階大ホールではなく9階会見室という狭いところ。時間も1時間程度だったから、会場内の盛り上がりは乏しく、候補者間の質疑もごくわずかで、印象の薄い会見となったね。
 
B 質問項目が小池都政の評価や少子化対策、学歴詐称問題、原発の利用、神宮外苑の再開発、プロジェクションマップ、政治資金パーティー、知事の給料、朝鮮人犠牲者への追悼など多岐にわたった。結果的に総花的で「聞いてみました」という雰囲気になった。

E 確かに選挙特有の熱気は感じられなかったね。言いたくないけれど、どうも新聞やテレビなど既存メディアの力の低下を象徴していた気がする。記者側が、基本姿勢と主な争点だけに絞って候補者に迫ったら、驚きの答えがあったかもしれない。

D なぜ4人なのかの説明もなかった。56人全員を登場させるわけにはいかないだろうが、52人を無視するのはどうかな。個人的には清水国明氏(73)の話を聞きたかった。

B 最初に基本政策を披露したのは良かった。小池氏が「首都防衛」、蓮舫氏が「若者の手取り増、都ガラス張り」、石丸氏が「政治屋一掃」、田母神氏は「結果を出す政治」と、それぞれ思いを込めた主張を示し違いをはっきりさせていた。

C  別の問題だが、都知事選は1400万都民の選択だが、都内で活動する埼玉、千葉、神奈川“都民”にも0.5票の投票権が欲しい。都知事選は3500万人以上が暮らす東京圏の将来を左右する選挙でもある。ただ、実現は難しいだろうが…。

●「神宮外苑」など争点は多い
A 驚いたのは神宮外苑の再開発で、小池さんが「内苑は原生林、外苑は人工林」と発言し、「争点にはならない」と言い切ったことだ。内苑の森は全国からの寄贈樹木で作られた人工林で、外苑の銀杏並木なども100年の歴史がある。嘘をついてはいけないね。

C あの程度の認識で再開発を進めようとしていることに、正直驚いた。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)日本国内委員会が、外苑の再開発を問題視していることも理解していないんじゃないかな。

B 小池さんは、別の記者会見で「内苑も人工林」と訂正したが、触れられたくない本音が浮き彫りになったね。蓮舫さんが「いったん立ち止まる」、石丸さんが「自然との調和が大切」、田母神さんは「神聖な場所。残した方がいい」と語ったから、争点の一つになる。

E  もう一つ、経費が47~48億円かかる都庁ビルに映像を投射するプロジェクトマッピングが取り上げられた。小池さんは「いろいろ議論あるが、あれは日本の技術であり、休日には1万人以上も集まる」と胸を張っていた。

D  しかし、田母神さんは「必要ない。少子化対策に充てるべきだ」、石丸さんも「即刻中止する」など厳しかった。蓮舫さんは「観光政策としては効果がある。でも48億円は子供支援に使いたい」と批判していた。

A 知事の学歴詐称問題では、小池さんは「何度も説明している。カイロ大学が認めている。すでに証明されていることであり、選挙の妨害だ」と強く反論した。それで終わり。

E メディア側がきちんと調査していないから、追及できない弱さがあらわになった。

B 小池都政2期8年の評価では、23年の東京都の出生率0.99と全国最低だったことが取り上げられた。小池さんは「いろいろやってきたが、コロナ禍の影響が大きかった」と説明した。人口問題は政府の責任が大きいから、小池さんへの追及はちょっと酷だね。

E ただ、国内最大の自治体としてやれることはある。蓮舫さんは「非婚が進んでいる。若い人の手取り収入が少ないからだ」、田母神さんが「結婚して第一子には100万円、第二子には200万円など大胆な施策が必要」とし、石丸さんは「大都市集中が問題」とした。

A 関東大震災の混乱時に虐殺された朝鮮人犠牲者への追悼文問題も質問が出たね。歴代都知事は毎年9月の慰霊法要で朝鮮人犠牲者にも追悼文を送っていたが、小池さんは会見では「大震災と東京大空襲の被災者の慰霊大法要に送っている」とかわしていた。

C 蓮舫さんは「追悼文を出さないのは歴史修正主義になる」、石丸さんは「出席するし追悼文も出します」としたが、「伝統保守」を自任する田母神さんは「出席しない。日本が悪いことをしたことになる。追悼文も出さない」と、こちらもはっきりしていた。

D この問題は、墨田区の都立横網町公園に行ってみればはっきりする。大きな東京都慰霊堂と復興記念館の間には、「朝鮮人犠牲者追悼碑」も「東京空襲犠牲者を追悼し平和を祈念する碑」もある。追悼碑の前に立てば、過去の過ちを認めるのは自然なことだ。

【直球・変化球】
A 認証不正問題の各メディアの取り上げ方を、新聞の見出しに見ると「車不正拡大 信頼揺らぐ」「不正 日本車の信頼に傷」「不正横行 車業界全体に」「基幹産業 大きな汚点」など、信頼失墜のけしからん出来事だとのトーンがほとんど。半面、認証制度の問題点に触れるコメントも散見されるようになってきた。

●官民で認証制度を改善すべき
D 確かに「時代に合致した、認証制度のあるべき姿を議論すべき」「官民で制度の改善や将来に向けたあり方を検討することが求められる」といった論調が少なからず出てきている。

E 例えば、制度が定める基準値以上の、よりシビアな条件で安全性を確認したが、制度と整合するため、実際のデータを基準値に書き換え申請したら不正扱いになる、という話は、やはりおかしいよね。

B この機に、オープンな場で議論を深めて、あるべき認証制度を確立してほしい。

C ユニークなのが、自動車に詳しいジャーナリストの井上久男さんが週刊現代に書いていた「認証制度が問題視されてこなかったのは、複雑怪奇な制度が新規参入を阻む障壁になっていたから」との指摘。なるほど、そういう見方もあるのかと感心した。

●神宮外苑再開発事業者とパーティー券
B ところで、都知事選の方は、投票まであと1週間の中盤戦に差し掛かったけど、どんな感じなのだろう。

A 情勢分析はさておいて、会見や報道に関しては、いろいろ面白い話が出てきている。一例が、東京青年会議所主催の候補者討論会で、蓮舫さんが、神宮外苑再開発事業者がパーティー券を購入しているのかと小池知事に尋ねたら、知事は答えをはぐらかした。すると、石丸候補が「イエスかノーかで答えて」と追及したが、再び、はぐらかして答えたという話。

D 知事の返答は「法に則って、さまざまな方に協力いただいている」というもの。つまり、実質的に「イエス」と答えたわけだけど、このいきさつを報じたのはネットメディアだけ。ほとんどの新聞・テレビは伝えていなくて、既存メディアとネットメディアの違いがくっきり示された。

C 都知事選はそれなりに盛り上がっていると思うが、投票率はどうなるのだろう。

B 一番高かったのは1971年の美濃部亮吉氏が再選した時の72%。その後は40~60%台で、最低は鈴木俊一氏が3選を決めた87年の43%。前回2020年は55%。今回は“隠れ自民”の支援を受けた小池氏が優位とされるから、投票率は高くないかもしれない。

●若者の投票率は…
E 蓮舫候補は、若者のための政治をアピールしているけど、投票率の観点から、あまりうまくない戦術なのでは…。

D 確かにそう思えるね。直近4年前の都知事選では、70~74歳が65%を超えているのに対し、20~24歳は40%弱。もちろん蓮舫陣営は、こうしたデータを百も承知で、あえて、未開拓の票を掘り起こそうとしたのだろうけどね。その心意気やよしだが、やはり大票田である年寄り向けのキャッチコピーもほしかった。

C 若者の投票率を高めるには、スマホやインターネットを活用する電子投票がベストなのでは。電子投票は日本でも新見市(岡山県)で実績があり、やる気になればやれるはず。国のDX推進の観点からも、筋悪のマイナ保険証よりずっといい。

A つくば市(茨城県)では24年の実現を目指しているという。本人確認や投票の秘密保持、通信障害、データの改ざん防止など課題はたくさんあるが、実現すれば投票率と政治への関心の両方が高まる一石二鳥となるかもしれない。

E 今回の都知事選では56人も立候補したため、ポスター掲示板のスペースが足りなくなった。一つの党が大量の候補者を立てたためだが、こんな事態は公職選挙法などで想定していなかった。多くの選挙民が「馬鹿にしている」と憤りの声を上げるのは当然だ。

D そうだね。選挙ポスターなどほとんど見ないという人もいるが、民主主義の原点が選挙であり、ポスターは候補者の政治信条や政策を見極める大事な情報源。そこに裸の女性や動物、風俗店の広告などが掲載されとは、あきれてものが言えない。

B これを機に法令の改正で基準が決められることになるのでは。表現の自由をはき違えたポスターには、都民だけでなく日本人の政治レベルはこの程度かと、いやになる。


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