【シニア記者が注目した不祥事・トピックス   4/28~ 終のすみか、奪った「押し買い」/リースバックで高齢者トラブル】


千葉 利宏  2025年のゴールデンウィーク(GW)中の記事で目を引いたのが、日本経済新聞の社会面に掲載された「そして続く戦後1945→2025」の「街」5回シリーズである。戦後の街づくり政策を振り返るシリーズの3回目に「国土買収傍観した幽霊法―水資源維持、広がる不安」と題して「外国人土地法」が取り上げられた。

 日経新聞が「外国人土地法」の問題を取り上げたことは、筆者にとって驚きだった。15年前に水源林を対象とした外国資本の土地買収問題が表面化した時、記者会見の席で日経の記者が「外国資本が日本の土地に投資して何が問題なのか?」と批判していたからだ。その発言は記者個人の見解ではなく、日経新聞のスタンスなのだろうと私は理解した。

 その後、北海道・ニセコなどのリゾート地で外国資本による土地買収が広がっていく。東京の高級タワーマンションなどにも投資目的で外国人の購入が増え、マンション価格を押し上げてきた。急激な人手不足と外国人観光客の増加で、移民が増え続ければ、住宅や宿泊施設などの投資は今後も増えていくだろう。日経新聞が「外国人土地法」を取り上げた背景を改めて考えてみたい。

■人口減少時代の都市政策はどうあるべきか?
 今年に入って、日本の都市、とくに東京圏のあり方について議論が活発化してきた。筆者は1年半前に週刊東洋経済で、約20年間に渡って政府が力を入れてきた「都市再生事業」に疑問を呈する記事を書いた。急速に人口減少が進むなかで「都市中心部の容積率を緩和して大量の建物床を供給する」従来の都市政策をそろそろ再検討した方が良いのではないかと思ったからだ。

都心再開発で日本の国際競争力は上がるのか―東京の分譲マンション平均価格は1億円を突破(2023/11/20)(有料)

 もちろん市街地再開発や収益不動産投資を否定しているわけではない。5月10日発売の文藝春秋6月号に掲載されたJR東日本の喜勢陽一社長と東急の堀江正博社長の対談記事「これからの東京改造計画を話そう」では、広域品川圏や渋谷での大規模再開発の構想が語られていて、興味深い内容だった。

 国土交通省都市局では5月16日に、人口減少時代を見据えて新しい「都市再生」の方向性を示す「成熟社会の共感都市再生ビジョン」を公表。それを受けて5月22日に社会資本整備審議会都市計画基本問題小委員会が開催されたが、経団連を代表して三井不動産執行役員の崎山隆央氏は「都市の国際競争力を高めるためヒト・モノ・カネの集積強化を戦略的に進めるべき」と発言した。企業の立場からは、収益拡大が期待できる大規模再開発が可能な都市政策が望ましいという意見が出るのは当然だろう。

 ただ、都市の人口が将来的にどのように推移していくのかを冷静に判断する必要がある。当ブログでも取り上げた京都大学経済研究所の森知也教授が、日本記者クラブで4月23日に講演を行い、最新の研究データを公開した。東京圏の50年後、100年後の人口推計を分かりやすく示した図が冒頭に示した図である。人口が密集した中心部の濃い色が薄くなり、都市の縮小・平坦化が進むと予測している。

■国土の管理は安全保障=セキュリティ政策の基本
 日経新聞のシリーズでは、1回目が「幅100メートルの大動脈計画幻に―災害に強い首都は未完」、2回目が「世界のアキバ露天商が礎―アニメの聖地、熱意息づく」、3回目が「外国人土地法」、4回目は「『水の都』埋めた戦災がれき―河川の価値見直す機運」、5回目の「町内会、求めたつながり―SNS時代、あり方探る」で、タワーマンションが林立する川崎市中原区の武蔵小杉地区で町内会が解散したという話題を取り上げた。戦後の街づくりを振り返った5回のキーワードを並べると、「防災」「カルチャー」「外国人」「水辺」「コミュニティ」となる。

 都市問題は、経済的な視点だけでなく、様々な観点から論じる必要がある。なかでも、移民問題と、それに繋がる外国資本による土地買収はいずれ重要なテーマになるだろうと筆者は考えてきた。

 外国資本による水源林の買収が最初に注目されたのは、2009年1月に東京財団の研究員だった平野秀樹氏が政策提言「日本の水源林の危機?―グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには?」を公表したのがキッカケである。平野氏は、元・農林水産省の官僚で、国立研究開発法人森林総合研究所に在籍していた時に、外国資本による水源林買収に気付いて研究に着手。その後、日本の土地制度そのものに不備があるのではないか?との問題認識を持つようになり、日本不動産ジャーナリスト会議に所属していた筆者と交流するようになった。

 私も、国土の管理・保全は「安全保障」=セキュリティ政策の基本と考えてきた。石油・ガスなどの鉱物資源だけでなく、水源林や農地などの土地も重要な資源であり、この時に「外国人土地法」についても調べた。ちょうど太陽光発電の固定価格買取制度の導入が始まるタイミングだったので、メガソーラー施設用の土地でも外国資本による土地取引が活発化することを懸念して、下記のようなブログ記事を書いた。

「資源」としての土地問題―再生可能エネルギーで土地投機が起きる懸念はないのか?(2012-02-02)

 GW明けに兵庫県に住む平野さんに会う機会があったが、日経新聞が外国人土地法を取り上げたことにやはり驚いた様子だった。当時は、外国資本による土地取得を問題視する声は小さかったが、日経新聞でも「その副作用を懸念する声が近年になって目立ち始める」と書いており、変化の兆しが出てきたのかもしれない。

 平野さんは、地道に外国資本による土地買収の調査を続けており、最近では離島に上陸して何らかの調査を行っている人間を見たといった報告が寄せられているという。以前は自民党にも外国資本による土地買収に関心を持つ議員がいたが、めっきり少なくなったという。ただ、最近になって国民民主党の榛葉賀津也幹事長が強い危機感を示して、外国人の土地買収を問題視する発言をしているので期待していた。

■広がる移民コミュニティにどう対応するべきか
 外国資本による土地買収は、安全保障問題だけでなく、国民の暮らしにも様々な影響を及ぼすことが予想された。まず心配したのは、外国の不動産投資マネーが入ってくることでマンションなどの価格高騰が起きるのではないかということだった。7年前に週刊東洋経済で、中国系外国人のマンション購入の実態をよく知る税理士事務所を取材して動向を紹介した。

高級物件狙う外国人投資家の事情―観光兼ねた投資ツアーが人気(2018/04/14)(有料)

将来的に移民が増えると、地域社会との摩擦が生じることも懸念された。かつて日本から海外に移民が出ていって、多くの日本人街が形成されたように、日本でも同じ民族でコミュニティが形成されることは容易に想像できたからだ。そんなわけで、6年ほど前に「移民問題と不動産業の未来」と題する短いコラムを書いた。

移民問題と不動産業の未来(2019-10-04)

 最近では埼玉県川口市や蕨市にクルド人が多く住むようになり、日本人とトラブルが起きているという情報がSNSなどで流れている。私の妻は、2年前まで川口市の小学校で外国人生徒に日本語を教える仕事をしていたが、中国、トルコ、ネパールなど国によって対応の難しさがあったようだ。

 読売新聞出身ジャーナリストの三好範英氏が2025年2月にクルド人問題に揺れる川口市を取材して「移民リスク」(新潮新書)を出した。4月にはNHKが「フェイクとリアル 川口クルド人真相」を放送したが、日本人がやりたがらない建物などの解体工事業で、日本社会に根付き始めていることを知って驚いた。

 人口約60万人の川口市に住むクルド人は2000―3000人と言われる。東京・江戸川区の西葛西地区にはインド国籍の人が8000人以上住んでいるという。すでに様々なエリアで移民のコミュニティが形成され、人口が少ない地方でも、そうしたコミュニティが広がっていくことが予想される。日本における土地に対する所有権は、外国と比べて非常に強いと言われる。日本人と同じ権利を外国人にも認めるのか。外国人参政権も含めて議論されるべき問題だろう。


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