【シニア記者が注目した不祥事・トピックス  9/13~ EUがデータ法でIoTデータ開放/大手の独占防ぎ、技術革新を促す 】

千葉 利宏 お盆休みとなる8月は、国内ではニュースの閑散期だが、今年は戦後80年を振り返る企画記事が目立った。世界では8月16日(日本時間)に、ロシアのウクライナ侵攻後、初の米ロ首脳の直接会談がアラスカで行われ、9月3日には中国・北京で開催された抗日戦争勝利80周年記念式典に中ロ朝3首脳が揃って出席するなどパワーゲームが展開された。

 経済関連ニュースで筆者が注目したのは下記の5つ。

 ①8月27日 三菱商事が洋上風力撤退 国の再エネ戦略岐路
 ②9月5日 車関税下げ大統領令 トランプ氏日本向け15% 対米投資で覚書
 ③9月10日 STEM人材育成に遅れ OECD平均下回る 大学の対応追いつかず
 ④9月12日 国産AI開発体制整備 政府戦略本部年内に計画策定
 ⑤9月13日 EU、IoTデータ開放 大手独占防ぎ技術革新促す 企業は戦略・設計再考も

 ①については、すでにシニアの会のブログ「注目会見を斬る 三菱商事が洋上風力発電撤退で記者会見(8/27)」で取り上げている。筆者も、大規模建設プロジェクトにおけるインフレリスクにどう対処すべきか?という視点で、東洋経済オンラインに記事「人手不足の深刻化でインフレが止まらない…建設業は日本独特の商慣習を見直しできるか(2025/09/04)」を掲載したのでご覧いただきたい。

■「既存住宅の省エネ化」を実現するデータ活用法は
 上記5つの中で筆者が最も注目したのは、⑤のEUが9月12日から「データ法」の適用を開始したというニュースだ。インターネットに接続された製品からデータを収集・保有する企業などに対して、製品の利用者や他の事業者もデータにアクセスできるようにすることが義務付られる。

 最近の経済ニュースを言えば、AI(人工知能)関連の話題が多い。④は政府がAI戦略を年内に策定する記事だし、AI開発に不可欠なデータセンター、それによって需要拡大が見込まれる電力インフラのニュースも多い。しかし、最も重要なのはAIに必要な大量のデータをどのように収集・活用するかだろう。その肝心かなめ議論が日本ではあまり進んでいないのではないかと危惧している。

 筆者は2年半前に、東洋経済オンラインで記事「日本の既存住宅「省エネ対策」が遅れる残念な事情―データスペースエコノミー時代のデータ戦略(2023/02/11)」を掲載した。「既存住宅の省エネ化」という具体的な社会課題を解決するために、家庭での電気使用量のデータを住宅の居住者や他の事業者もアクセスして利用できるようにする必要があると書いた。

 この記事では、EV(電気自動車)バッテリーのデータを共有するための仕組みを、日本自動車工業会で検討を進めていることを紹介した。EU域内でのEV販売にも影響するため、1年後の2024年4月に「一般社団法人 自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(ABtC)」が設立され、活動を開始している。しかし、自動車以外の分野で、データ共有に向けた具体的な動きは聞いていない。

■日本にもEUのデータ法は必要か
 EUでは、2022年12月に「デジタルの10年政策プログラム2030」を採択し、デジタル法制度の整備を進めてきた。オンライン上の違法コンテンツ対策を強化する「デジタルサービス法(DSA)」を22年11月に施行し、24年2月から全面適用を開始した。

 公正な競争環境整備のためにデジタルゲートキーパーへの規律を盛り込んだ「デジタルマーケット法(DMA)」も22年11月に施行し、ゲートキーパーにはGAFAM(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)を含めた7社を指定して、24年3月から適用している。

 AI規則は24年8月に施行され、人間中心の信頼できるAIの導入促進、AIシステムの有害な影響に対して健康、安全、民主主義、法の支配、環境保護など基本的権利保護の確保、イノベーションの支援を目的として、リスクに応じた規制を行っている。

 「データ法」は24年1月に施行され、今年9月に適用された。データ共有の促進、公的機関によるデータへのアクセス、データ処理サービスの乗り換え促進、非個人データの越境移転からの保護措置などの規定を定めている。日経新聞の記事では「保守サービスなどを製造企業に独占させず、他企業がアフターマーケットに参入しやすくする競争政策的な側面が強い」との指摘を紹介している。

 今後の成長戦略として、半導体や国産AIの開発、データセンターの整備を進めることも必要だが、それ以上にデータを活用して、あらゆる分野においてイノベーションを起こすことが重要だろう。日本でもEUのデータ法のような制度が必要かどうかを含めて、産業育成のための競争環境のあり方を議論する必要があるのではないだろうか。


pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫