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注目会見を斬る

企業はいま、戦争や感染症、地球環境問題、ビジネスと人権など、さまざまな課題に直面しています。経済記者シニアの会は、ベテラン・OBの経済記者が毎週月曜日付のブログを発信するとともに、不祥事対応や記者会見など、広報・企業活動をお手伝いすることを目指しています。

注目会見を斬る(2026年4月) ニデックが不正会計問題の「報告書」を受けて記者会見(3/3)


代表取締役などを辞任した際に発した永守氏のメッセージ・一部
(2025年12月19日付、ニデックのニュースリリースから引用)
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【ニデックが不正会計問題の「報告書」を受けて記者会見(3/3)】
 モーター大手のニデック(旧日本電産)は、2月27日に不正会計問題をめぐる第三者委員会からの報告書を受領したことを受け、3月3日に岸田光哉社長兼CEOらが都内で記者会見した。

 昨年5月に監査の遅れが表ざたになってから9カ月。この間、創業者でカリスマ経営者ともてはやされていた永守重信氏(81歳)は取締役に続いて名誉会長の職も辞し、経営の表舞台から去った。

 コーポレートガバナンスの強化が叫ばれて久しいが、ニデックにとどまらず不正行為が後を絶たない現状について、ベテラン記者がさまざまな角度から意見を出し合った。

●「最も責めを負うべきなのは、永守氏」と断定
A 報告書は昨年9月に発足した第三者委員会(委員長=平尾覚氏)が6カ月間かけてまとめたそうだね。

B 委員長の平尾さんは不祥事問題の第一人者。報告書の内容には期待していたけど、「ニデックは永守氏の会社」であり、「永守氏に絶対的な権限が集中していた」と断じるなど、かなり切り込んでいるとの印象を受けた。

C 退職者も含めグループの役職員319人に延べ536回のヒアリングを行い、2103人を対象にアンケート調査も実施したという。ただ、永守氏の経営責任についての言及はちょっと甘いのではないか。調査は今後も続けられるというから見守りたいね。

B 永守氏がどこまで不正に関与していたのかが焦点だったが、「永守氏が会計不正を主導した事実は発見されなかった」とする一方で、「一部の会計不正を容認したとの評価は免れない」、さらに「最も責めを負うべきなのは、永守氏であると言わざるを得ない」と断じている。

D 業績目標の必達は至上命題だから、売上の先食い(前倒し)や架空計上、売上原価や損失の隠蔽など、子会社も含めて現場や会計責任者は不正に手を染めざるを得なかったんだろうね。粉飾決算は詐欺罪や背任罪に該当する場合があるから、これはもはや組織的な犯罪だね。

A 内部・外部監査、会計監査、リスク・コンプライアンス、内部通報といったガバナンスに問題はなかったのだろうか。

C 社外取締役も含めて社内の監査体制が正常に働いていなかった点は見逃せない。社外取締役の責任は大きいよ。顔ぶれを見ると7人のうち官僚出身者が4人いて、あとは大学教授2人と弁護士。ビジネス経験のない “お飾り”のように思えた。

B 本当に不正を知らなかったのか、社内チェックをしっかりやってきたのか、改めて責任が問われるよ。永守氏の息のかかった人選だったとも伝えられているが、当人たちにとっては不名誉この上ないだろう。ちなみに有価証券報告書などによると報酬額は総額6000万円、一人あたり平均857万円となっている。

D 結局、何も言えないイエスマンを揃えてしまったということかな。カリスマとかワンマンとかいわれる経営者の会社で社外取締役がどう機能するかは、実に悩ましいテーマ。今回の反省を受け会計に関する専門性や倫理観やコンプライアンスなど、新たな選任の基準を設けるとしているけど、各社は他山の石としなければいけないだろうね。

A 監査法人の役割や責任についても触れる必要があると思うけど。

B 昨年9月、ニデックが関東財務局に提出した有価証券報告書について、監査法人のPwCジャパンは「意見不表明」としている。監査のための十分な情報や証拠が入手できず、虚偽表示となる可能性があるということを示したわけだ。

D “くみしやすい相手”である監査法人を使って、強引かつ不正な会計処理を果たしていたのだろうか。いずれ白日のもとにさらされるに違いない。オリンパスや東芝の粉飾決算のケースと同様、金融庁から行政処分を受ける可能性は高いと思うよ。

A 自戒を込めていうけどメディアの取材姿勢も情けない。永守氏を「経営の神様」のように雑誌や新聞で崇め、経営に関する書籍も多数発行してきた事実は消えない。

B 本人もインタビューで「気がつけば稲盛(和夫)さんと同じような道を歩んできた」と自慢げな様子で語っていたし、「油断や驕りによって人は躓く」などとよく強調していた。今となっては「どの口が言う?」と思えてくる。

D 本社ビル(京都市南区)の1階には、1973年創業時のプレハブ小屋を展示しているけど、これは売上高2兆6000億円、従業員10万人の巨大企業になった現在も初志を忘れることがないようにという永守氏の己に対する戒めだとか。それをメディアが礼賛するものだから負の部分が隠蔽されてしまう。

C 今回の会見についてもひと言…。記者側が質問の際に「ありがとうございます」と前置きしたり、ニデック側が「大変重要なご指摘をありがとうございます」などと返したり、まるで掛け合い漫才。記者には巨額不正を糾す精神のかけらもないのかな。

●アクティビストの警告も雲散霧消に
A それにしても、取締役や監査法人、メディアや株主など誰もニデックの不正を見抜けなかったのかねえ。

B いゃ、米国のアクティビスト(物言う投資家)、マディ・ウォーターズ・キャピタルLLCは2016年に「日本電産:巨大なハリボテの広報活動」というリポートを発表している。「永守氏の指導によって、非現実的な経営目標を掲げ、目標達成から大幅に外れた結果を生み出している」などと酷評しているけど、今回の第三者委員会の報告と驚くほど一致している。

D いわゆる“空売り専業ファンド”でしょ。欧米では市場の番人として評価されているけど、日本ではどうかな。このリポート公開後、株価が5%近く下落した日本電産は即座にリポートの内容を否定し、その後は沈静化し翌17年に過去最高益を計上し雲散霧消した格好だね。

C このリポートについては、フジテレビ第三者委員会の元委員で現在は東大医学部不祥事の検証委員会委員長を務めている山口利昭弁護士が自身のブログで、「なぜ、監査役や社外取締役、さらには経済メディアで問題視されなかったのか」と疑問を呈している。外部監査も見抜けないのだから、メディアが調査報道するにしても限界はあるよ。

A ニデックの今後についてはどうみている? 不正を働いたわけだから、過去の決算の訂正で済む話ではないよね。

B まず経営陣の責任が問われそうだ。ソニー出身で2022年入社の岸田社長は永守氏の側近のひとり。果たして本当に経営を刷新し、企業風土を変え、再建できるのか。疑問というか不透明感が漂っているね。

C 外部資本家がどう出てくるか、この点は注目だね。すでにアクティビストがニデックに食指を動かしているとも報じられている。モーター単体にとどまらず、精密工作機械やEV向けの駆動部品まで一貫した開発・生産体制をもっているのは最大の強み。ウミを出し切れば再生は早いと一部のアナリストはみている。

D 上場廃止の可能性も含め、巨額の株主代表訴訟が今後の焦点のひとつになりそうだ。3月末、その第一弾として個人株主の一人から現旧取締役らの責任を追及する訴訟の提起を求める書面が提出されている。永守氏や面従腹背だった役員は、金融商品取引法違反などの疑いで立件される可能性もあるよ。

C ヤクルト本社や大和銀行の巨額損失事件など過去の判例をみて分かるように、株主代表訴訟の賠償額は巨額になる。フジ・メディア・ホールディングスを巡る代表訴訟では、現旧経営陣15人に233億円の賠償を求める訴訟が提起されている。そのうちの一人に1月に会ったけど頭を抱えていたよ。

【直球・変化球】
●永守氏は「敗軍の将」として真相を語るべき
A ところで永守氏の所在は…。第三者委員会の報告書がニデックに提出された2月26日に最後の肩書である名誉会長職を辞任しているけど。

B 京都市西京区の豪邸に雲隠れとの情報がある。辞任に至ったのは不正会計の元凶と断罪されることを事前に察したのか、換言すれば敵前逃亡か真相は分からない。

D 2月26日にメッセージを出しているけど、不正問題はまるで他人事。「『経営者としての私の物語』にピリオドが打たれますが、それは私にとって『新たな私の物語』の出発点でもあります。『更なる人生のステージ』に向かって、人材育成という『もう一つの私の夢』に本格的に挑戦していきたいと思います」と逃げ口上そのものだよ。

C 本当に反省しているとは思えない文章だね。「赤字は悪」とし、非現実的な業績目標をトップダウンで決める歪んだ構造に根本的な原因があったことをどう考えているんだろう。永守氏は敗軍の将として、兵ではなく自らを正直に語ってもらいたい。

A ワンマン経営者の末路は寂しいものだね。

C 良く引き合いに出されたのがダイエーの中内功。流通革命の旗手として業界の地位向上に貢献したものの、経営悪化の責任を取り2001年に第一線から退いた。日産自動車の再建に当たったカルロス・ゴーンは金融商品取引法違反で逮捕され、会長職を解任されたあげく特別背任罪で追起訴され、最後は国外逃亡だよ。

D ワンマン経営が必ずしも悪いわけではなく、例えばホンダは本田宗一郎に藤沢武夫、ソニーは盛田昭夫に井深大という、いわばアクセルとブレーキといったように裸の王様や独裁者が生まれない経営スタイルを確立していた。その点が肝心ではないかな。

B 現役の中にも優れたワンマン経営者は少なくない。例えばソフトバンクの孫正義氏。傲慢という声も聞くけど、適材適所を心がけ人材投資も惜しまない。ファーストリテイリングの柳井正氏の真骨頂は抜擢人事にあるといわれているよ。

C そういえば、先日のユニクロとロサンゼルス・ドジャースの契約時に柳井氏は「スポーツと同様、ビジネスもチームでしないと勝てない」とフォア・ザ・チームの重要性を説いていたのが印象深い。優れたリーダーは独裁者ではないということだね。

A ニデックの陰に隠れてしまっているけど、カネに絡む不祥事が各社で噴出している。KDDI子会社ビッグローブと傘下のジー・プランで売上高の架空計上が発覚したり、ソフトバンクグループのネット広告会社イーエムネットジャパンの常務CFOによる不正送金や開示情報の改ざん…。ワンマン経営に限った話ではないけど、ガバナンス強化の契機にしてもらいたいものだ。


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注目会見を斬る(2026年2月) プルデンシャル生保幹部の大規模社員不正を巡る謝罪会見(1/23)


謝罪会見に臨むプルデンシャル生保幹部(YouTube 日テレNEWSより)

【プルデンシャル生保の新旧社長らが詐取31億円で謝罪会見(1/23)】
 外資系生保大手プルデンシャル生命保険の間原寛社長ら経営陣は1月23日記者会見し、同16日に発表した同社社員・元社員107人が約500人の顧客から総額約31億円の金銭詐取などを行っていた不祥事に対して正式に謝罪した。再発防止策とともに、責任を取って間原社長が2月1日付で辞任すると改めて発表、顧客の被害については第三者委員会を設置して精査し、認定額を全額補償するとした。金融庁は不祥事の規模の大きさと悪質さを重視し、近く同社に対して厳しい処分を行う方針。

●後世に残る最悪な謝罪会見
A 異様な記者会見だったね。会見場所は都内の高級ホテル、時間は金曜日の午後3時というメディアが一番嫌う時間帯、そして取材制限。とくに質問は「日銀記者クラブ加盟社と日ごろお世話になっている報道機関などのみなさま」に限定した。あからさまな取材制限に、当の加盟社からも異論が出ていた。

C お詫び会見の悪い見本として、これからも語り継がれるだろう。なぜ16日の不祥事発表の時に会見しなかったのか。それ以前にも昨年10月、それまでの不祥事による引責辞任とささやかれた日本の持ち株会社プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンの濱田元房会長が退任した時や、さらに昨年4月、金融庁から一連の不祥事について同社と持ち株会社に対して報告徴求命令が出た時にだって会見すべきだった。ピントがずれているよ。

D 23日は午後1時過ぎに衆院解散が行われ、同3時半からは日銀総裁の記者会見があった。プルデンシャルの会見は午後3時からで、新聞やテレビは重大ニュースに忙しくて取り上げ方が薄くなるとみていたんじゃないかな。したたかな広報戦略だね

E 感心している場合じゃないよ。同社の閉鎖性は徹底している。会見では質問は日銀記者クラブ加盟社に限るとして、それ以外の取材記者は受け付けなかった。会見は2時間15分続いたが、さすがに記者クラブ側からも異論が出て、最後はFACTAと週刊文春の記者の質問も受け付けたが、後味の悪い会見だった。

B 謝罪会見は、誰に対して謝るのか。一言で言えば被害者だけでなく世間・社会に対してだ。そこのところをプルデンシャル側は全く理解していない。記者側の追及も甘かった。不祥事なら普通は社会部記者が担当する。そうなると厳しく追及されるから、同社はそれをかわすために日銀記者クラブ加盟社に絞ったんじゃないか。

A ところで司会は誰だった? ずいぶん高飛車だった印象だが。

C  日本の持ち株会社の渉外部門、つまり機能・役割・職務と言ったところのシニアオフィサーで、上級管理職とか執行役に相当する幹部だよ。金融や証券業界には精通している人物と言われているが、今回の進行はいただけなかった。同部門の実態は広報なのだから、もっと情報公開に取り組むべきだ。まともな対応ができなければ、メディアだけでなく顧客・国民からもそっぽを向かれてしまうだろう。

●「強欲」が支配する会社
B 改めて不祥事の中身を見てみよう。発表では、「架空の金融商品への投資を持ち掛けて顧客4人から約5300万円を詐取した」とか、「社員しか買えない株がある。絶対利益が出て元本は保証するとして、3人から約720万円詐取した」などが示されている。過去に石川県や新潟県では元社員が詐欺などで逮捕されていた。顧客の方も、大幅な資産増を考えて欲を出したケースもあるだろう。被害はもっと増えるんじゃないか。

D 同社の営業職員は約4400人、ライフプランナーと呼ばれていて顧客と長期にわたって個人的関係を深める。医者や経営者などいわゆる富裕層が多く、詐取以外にも事業・金融商品への投資や借金をして、返さないなどの事例があった。一連の不祥事は1991年から2025年まで続いていたから、生保業界でも前例のない不祥事だ。

E 要するに犯罪会社じゃないか。100人を超える社員が30年以上も不正を働いていたとは、組織的犯罪と言わざるを得ない。いくら営業職員は独立性が高いと言っても、金融機関としての善管注意義務や、社員の行動管理と不正防止のチェック体制はあったはずだ。それが機能していないとすれば、金融業としての存在は認められないよ。

F 実は昔、プルデンシャルと契約したことがある。老後資金を増やそうとしたもので、コロナ禍で会社の業績が悪化したため高額な保険料が苦しくなった。そこで解約したが、当初は世界一の金融グループの生命保険会社としてきちんとした対応だった。営業職員はかなりの高給で、車もベンツなど高級外車。会社とプルデンシャル共催のゴルフ大会に出たことがあるが、優勝した営業職員はハーフ30台で回っていたよ。

D 国内生保業界の話をすると、昔の営業職員は歩合給だった。女性職員が多く、成績を上げるため「枕営業」したなどと批判されたこともある。今は固定給制度に切り替わったが、プルデンシャルはいまだ2年間だけ固定給で、あとは出来高払いという非常識な体系を取っている。ある大手生保の元役員は、「国内の生保職員は20万人以上いるが、こんなひどい事件は聞いたことがない」と怒っていた。

B 再発防止策として、営業職員の報酬体系であるフルコミッション(完全歩合給)の見直しを上げている。入社2年までは固定給だが、それ以後は契約が取れなければ最低賃金ベースの年収200万円台にとどまる。こうした過度な業績連動型報酬制度が、不祥事を誘発する要因なっていた、と見ている。だが本当にそれだけだろうか。

A はっきり言えば、この会社は強い金銭欲つまり強欲に支配されている。映画『ウオール街』でマイケル・ダグラス演じる資産家が「強欲は善だ!」と叫んでいたが、まさに映画そのものだ。どんな手段を使っても金もうけ最優先。顧客の損失は眼中にない。この際、徹底的に社内改革をしなければ不祥事は続くだろう。営業職員の不正は個人レベルではなく、組織的に行われていたと言われても仕方がないのではないか。

B 再建は大変だね。今も情報開示に積極的ではないから、社会や顧客からの信用回復はかなり難しい。過去の不正の原因をきちんと究明するなら、日弁連ベースの第三者委員会を立ち上げて正面から取り組むのが肝だ。23日の記者会見で「全容が解明されたらもう一度会見するか」と問われだが、明確な回答はなかった。

E  経営陣の責任があいまいのままだ。間原社長は「私が辞することで経営責任を果たす」と言い切ったが、退職金や7月までの顧問報酬などは「開示していないので控える」と口を閉ざした。株主や従業員、顧客、金融機関、取引先などステークホルダーに対する責任感が薄い。このままでは経営再建はおぼつかないように思えるね。

【直球・変化球】
●金融庁は業務停止命令を出すか
A 今回の不祥事で改めて気が付くのは、生保に限らず金融機関の情報公開に対する無理解というか、ひどい閉鎖性だ。不祥事は人も企業も隠しておきたい心理が働くが、社会活動をしている企業の場合は、人々の暮らしや生命・財産に影響を与える。不祥事の原因究明と責任の明確化、第三者の視点を入れた再発防止は最低限のルールだ。不祥事会見を見ていて、いつも対応の遅れや会見のお粗末さにあきれる。

C  金融界では金銭詐取だけでなく、貸金庫からの窃盗や個人情報の不正な持ち出しもある。貸金庫窃盗では24年に三菱UFJ銀行の元行員が10数億円、翌年にはみずほ銀行元行員が数千万円盗んでいたことが発覚した。みずほの場合、19年に起きた事件を5年間隠していた。また顧客企業の未公開情報をグループ内で無断共有し、さらに個人情報も勝手に持ち出すなどもあり、いずれも金融庁などから処分を受けている。

D 三菱UFJ銀行の場合は24年11月に事件が発覚したが、半沢淳一頭取が会見したのは3週間遅れの12月中旬。業界内には早い会見だったとする声があったが、世間からは追い詰められての会見という印象が強かった。

B 今回のプルデンシャル生保も、16日の社長辞任の発表時に記者会見しなかったことが失敗だった。再発防止策も不十分と受け止められ、コールセンターに批判の声が殺到したことから、記者会見を開かざるを得なくなったのではないか。

E 金融庁は「大変遺憾」とコメントしたが、世間では金融庁は不正を見逃がしていたのではないか-と推測する声がある。プルデンシャルへの立ち入り検査を踏まえて業務改善命令か業務停止命令を出すとの報道もある。前代未聞の不祥事を起こしたこの会社をどうするのか、金融庁の出方が注目されるね。


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注目会見を斬る(2025年12月) 花角英世新潟県知事の原発再稼働容認会見(11/21)


会見で質問する記者を当てる花角新潟県知事(YouTube KYODO NEWSより)

【新潟県知事 が柏崎刈羽原発の再稼働容認会見(11/21)】
 花角(はなずみ)英世・新潟県知事は11月21日に臨時記者会見を開き、懸案となっていた東京電力柏崎刈羽(かりわ)原子力発電所の再稼働を容認すると表明した。昨年3月に国から再稼働要請の文書を受け取り、これまで県民や首長らの理解促進を進めてきたこと、今後国が緊急時対応など7項目について確約することを前提に「再稼働を了承する」とした。

今回の判断について知事は「県民の信を問う」として、12月2日開会予定の県議会に「県知事の信任」を諮り、信任されれば6、7号機の再稼働容認を政府に伝えると語った。実現すれば、東電は福島第一原発事故以来初の再稼働となる。

●賛否両論の中の「見切り発車」
A 今回のテーマは賛否両論に分かれるだろう。そこで再稼働賛成と、反対ないし時期尚早の両方の立場の意見を取り上げていきたい。1時間余りの会見の印象は、全体として万全の態勢で臨んだことをうかがわせた。質疑応答も矛盾や論理の破綻はほとんどなかった。

B そうだね。再稼働容認に至る経緯を淡々と語っていた。知事は海上保安庁次長から自民党県連に推されて出馬し、2018年6月に初当選。22年に再選され現在2期目の最終年で、来年の知事選を控えている。就任以来この問題にかかわってきたから、再稼働は自分の在任中にと考えていたはずだ。今回の決定は既定路線だったのではないか。

D いや、今回の決定は時期尚早だ。県が10月に公表した県民の意識調査では「どのような対策を行ったとしても再稼働すべきでない」に賛成する声が合計48%、「そうは思わない」が50%と賛否が分かれていた。若い人には再稼働容認の声が高いが、県庁内にも再稼働の理解は進んでいないとする声もある。知事は結論を急ぎ過ぎた。

E その通り。同じ調査で「再稼働の条件は現状で整っている」としたのは37%、「そうは思わない」は60%もある。東電に対する信頼度も低く「東電が柏崎刈羽原発を運転することは心配だ」が69%と高かった。原発に隣接する長岡市長も安全・防災対策を推進すべきで、再稼働容認は時期尚早と知事に伝えていた。県民の分断が進むのではないか。

C  ただ、原発は日本のエネルギ―安定供給には欠かせない存在だ。国連が推進している地球温暖化対策・脱炭素社会の実現には、再生エネルギーの活用とともに原発も必要とされている。東電は東日本大震災時に重大事故を起こしたが、その反省と知見を反映した安全・防災対策をとってきた。柏崎刈羽の再稼働はやむをえないのではないか。

A もう一つのポイントは、なぜこのタイミングなのか。知事は国の要請後1年半余り検討したと語ったが、実は来年の知事選をにらんでの決定だったのではないか。現在の県議会53議席のうち自民は32、公明2で、問題なく信任される。だが昨年10月の衆院選では、新潟小選挙区5区すべて原発慎重派の立憲民主党が勝っている。早めに手を打って、知事選の争点にしたくないとの思いが見える。

B その県民投票か県議会かの二者択一の問題だが、県議会つまり県民が選んだ議員たちの決定は十分、民意を反映するという知事の説明には説得力があった。それを覆すのは容易ではないと思わせる受け答えだったね。

D 高市早苗首相の登場も背景にあるのではないか。政府は3年前の岸田政権の時、エネルギー政策を「原発依存度を低減する」から、「原発の60年運転や建て替えも推進」に大転換した。その路線は高市首相も引き継いでいて、先日発足した日本成長戦略本部では重点投資17分野で、GX(グリーン・トランスフォーメーション)を取り上げている。この動きを意識したのではないか。

B ひと足早く原発再稼働に踏み切った関西電力は7月、美浜原発(福井県美浜町)の敷地内に原発新設を表明した。福島第一原発事故以来、電力会社が原発新設に動くのは初めてのことだ。さらに北海道電力が泊(とまり)原発3号機の再稼働を進めているが、11月28日、鈴木直道北海道知事が容認する考えを表明した。高市政権の下で原発再稼働が進みそうだ。

C 今回も「地元同意の原則」が強調された。再稼働問題が全国の知事の判断にゆだねられている現在の姿は、責任を過度に地方に負わせている。原発は国の重要なエネルギー政策なのだから、もっと国が前面に出て、責任をもって判断すべきではないか。

●東電に対する根強い不信感
E それにしても東電に対する不信感は強いね。東日本大震災で全国の原発54基が運転を停止したが、東電柏崎刈羽1~7号機すべてが停止したのは1年後。13年から6、7号機の新規制基準での審査を原子力規制委員会に申請し、17年に新基準適合の判断を得ていた。ところがテロ対策で不備が見つかり、規制委は21年に事実上の運転禁止命令を出した。

D その措置は23年に解除されたが、24年になってまた不備が発覚した。本社社員がテロ対策の機密文書を持ち出してコピーし、自分の机の中に保管していたというものだが、管理体制が杜撰なことと、社員に危機管理意識が薄い点が、規制委員会と県民双方に不信感を増幅させている。

C ただ、東電も地元の理解と信頼回復に真剣な努力を続けている。今回の再稼働に向け、小早川智明社長は県議会で、営業運転開始から40年経つ1号機と同35年の2号機について廃炉を検討すると表明したほか、地域振興のため10年間に約1千億円の資金提供も行うとした。”アメとムチ”の声もあるが、「地元合意」に社運をかけている姿勢は認めたい。

B 県民の不安の根底には、福島第一原発事故で地域住民ら20万人以上が避難したことがある。14年経った現在でも数万人が避難生活を余儀なくされている。柏崎刈羽で重大事故が起きれば同じような悲惨な状況になることは必至だと警戒するのは当然だ。

A 東電に必要なことは安全・防災対策を十分に進めるとともに、県民にきちんと説明して理解してもらうことだろう。避難路の整備などは遅れている。新潟県は豪雪地帯であり冬季に事故が起きた場合、除雪とともに迅速・確実に避難できるのか問われている。

C 付け加えれば、東電は福島第一原発事故で廃炉、賠償、復旧・復興の3重苦を背負っている。すでに福島第一の原発6基はすべて廃炉にすることが決まっていて、今回の柏崎6号機が再稼働しても年間1千億円程度の収支改善効果しかない。それでも経営を続けなくてはならない。引き続き国の支援は欠かせないことを知ってほしい。


【直球・変化球】
●『両論併記』の社説も読みたい
B 原発再稼働の動きは強まっているが、不思議なのは昨年も今年も、記録的猛暑の中で停電騒ぎが起きていないことだ。今や原発ゼロで電力需給は大丈夫ではないかな?
 
D 新聞の受け売りだが、東電管内では今年8月6日、午後1~2時にかけてのピーク時の電力需要は5754万キロワットだったが、供給力は6742万キロワットで、使用率は85%と余裕があったという。柏崎刈羽6号機135万キロワットが稼働しても、効果は小さいという見方がある。

E とはいえ今後はAI(人工知能)やロボット、半導体工場の新増設などが進み、それに伴う巨大なデータセンターが各地に展開される見通しだ。少子高齢化という課題はあるが、経済活動で電力需要は大幅に増える見通しだから、原発再稼働は不可欠とする声もあるよ。

C もう一つ。現状はLNG(液化天然ガス)や石炭などの火力発電に頼り過ぎていて、戦争や不測の事態発生で、燃料費が高騰するリスクがある。原発は建前上「国産エネルギー」だから、当面は使い続けていかざるを得ない。

A 政府が今年2月に改訂した「エネルギー基本計画」では、原発の建て替えと「次世代革新炉の開発・設置」を打ち出している。特に安全対策を格段に高めた「革新軽水炉」の導入に焦点という。国民にとって原発は本当に必要なのかという問題とともに、廃炉から最終処分地の選定、そしてどのような立場であっても欠かせない原子力人材の育成について、真剣に考える必要がある。

B 最後に、今回の会見ではメディアの取り上げ方も分かれた。新聞の社説を比べると、読売、産経、日経新聞が「前向きの決断を評価する」と肯定的なのに対して、朝日、毎日、東京新聞は「住民の不安置き去り」などと否定的だった。

D 現場を取材している記者個人の思いはマチマチだろうけど、社説に何を書くかとなると、どうしても新聞社の色が出るよね。

C 古巣の新聞社は福島第一原発事故後もずっと原発推進だったが、社内には反原発の記者が少なくなかった。逆に会社は反原発だが、記者には原発推進論者がいるケースもあった。評価が分かれる原発のようなテーマではこの際、両論併記の社説があってもいいのではないか。その方が「一番読まれない記事=社説」が注目されるはずだ。凋落が目立つ新聞メディアとしては、そのくらいの大胆な”新手”を打って見てはどうかな。

A 面白いアイデアだけど、新聞が立場を鮮明にしなければ読者はついてこないのが実情だ。読者が減っている現状からは何らかの打開策が必要だが、読者が「どっちなんだ」と迷ってしまってはその新聞の存在価値が薄れる。慣行を変えるのは難しいところだね。


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注目会見を斬る(2025年11月)


高市総理の就任会見(YouTube TBS NEWS DIGより)

【高市早苗首相の就任記者会見(10/21)】
 自民党初の女性総裁に就任(10/4)した高市早苗氏(64)は公明党の連立離脱(10/10)、日本維新の会との連立合意(10/20)を経て、10月21日召集の臨時国会で第104代内閣総理大臣(首相)に選出された。女性首相は憲政史上初めて。総裁任期は石破茂前首相が務める予定だった2027年9月まで。高市首相は同日夜、就任後初の記者会見に臨んだ。

●世間の評価は高いが「右旋回」目立つ
A 初の女性首相の誕生という画期的な出来事だった。記者会見をテレビで見たが、力強い言葉で自分がやりたいことを語り、内閣記者会の質問にも丁寧に答えていた。最初の会見としては上出来だったのでは。

B そうだね。彼女は世襲議員ではなく、努力家だよ。「ガラスの天井」を破ったとはやす向きもあるが、2世、3世議員と違って地盤、看板、カバンのないところからここまで来た。地方党員の支持をバックに上り詰めたのだから、立派なものだ。

D 世間の評価が高いのは、内閣発足と同時に共同通信社が行った全国緊急電話調査で内閣支持率が64・4%と高く、発足時では石破内閣50・7%、岸田内閣55・7%を上回ったことが裏付ける。各新聞社の世論調査も同じだ。停滞した現状を変えてくれるのではという期待があるのではないか。

E いや、言葉は力強かったが、中身が薄いことをとうとうとしゃべっているスタイルには共感が持てなかった。冒頭、北海道で鳥インフルエンザ発生を取り上げたが、わざとらしくて不要な言葉だった。また維新の会にも感謝していたが、脆弱な与党体制の中で本当に政策を進めていく力があるのか、不安を感じた。

C  無理に笑顔を作り、好印象を与えようとする。目がきょろきょろしていて、落ち着かない。政治家は結果責任だから、直面する課題をどう解決していくのかが問われる。会見を見ていて、信頼感が持てないなと思った。

A 短時間の会見だから仕方がないが、この国をどうするかという国家観が見えなかったのは残念だった。「決断と前進の内閣」だと言い切り、「国家国民のため」と何度も語っていたが、その前に国民との信頼関係をどう作っていくか、具体的な言葉が欲しかった。

C  経済政策の一丁目一番地がガソリンの暫定税率廃止や「103万円の壁」引き上げとしていたが、あれは野党が主張した政策だ。また財源についても触れていなかった。

B はっきり言えば、この内閣は右翼的体制回帰だ。経済政策では責任ある積極財政などアベノミクスを彷彿させるし、外交・安全保障では日米関係の強化や防衛費増額は当然。維新の会と一緒に憲法改正やスパイ罪制定などを進めようとする、右旋回が目白押しだ。

E それにしてもメディア側の態度はどうなっているのかな。質問者10人のうち6人が「ご就任おめでとうございます」などと語っている。こんな光景を見た国民は「なんと緊張感のない会見か」とあきれたのではないか。記者教育がなっていない。

C  その通り。「権力の監視者」として適度な緊張感をもって会見に臨むべきなのに、それが欠けていた。世界的に見ても日本のメディアの政権監視力は最低クラスだ。日本のメディアの価値を貶める会見だった、と言わざるを得ない。

●「安倍回帰」では行き詰まる
A 会見の中身を見よう。石破前首相、岸田元首相の就任時に見られた政治改革の決意はどこにもなかった。民主主義の尊重とか、女性・子供を守るなどの弱者への配慮も薄かった。「国家国民」を連発するスタイルは、上から目線だった安倍首相とよく似ている。

E 政治資金規制強化の代わりに登場したのが国会議員の定数削減だが、会見では触れなかったね。その代わりに首相を含む全閣僚の給与について、議員歳費を超える給与は受け取らない法改正をすると語った。目くらましではないか。

B ちょっと視線を国会の外に向けると、東京株式市場の日経平均株価は高市総理誕生からほぼ連日、高値更新を続けている。8月中旬の4万2千円台が10月6日4万7千円台、同27日には史上初めて5万円台に乗せ、31日には5万2千円台となった。財政出動と金融緩和を期待した「高市トレード」は、バブルの様相を見せている。

D 為替の円安も進んでいるね。この夏ごろは1ドル=140円台だったが、最近は150円台が続いている。円安は輸出企業やインバウンド(訪日客)の利益にはなるが、物価上昇の大きな要因だ。政府が検討中の物価高対策では追いつかない恐れがあるから要注意だよ。

A 金融政策では日銀に手法をゆだねるとしつつ、マクロ経済政策の最終責任は政府が持つと語り、政府主導の下に行うことを明言した。早期の利上げはない、ということだろう。2013年に政府と日銀が結んだ協定も、直ちに見直すことは考えていないとした。

C 外交面でも高市首相はラッキーだね。マレーシアで東南アジア諸国連合(ASEAN)の会議に出席した(10/27)後、来日したトランプ大統領と日米首脳会談(10/28)、そして韓国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で各国首脳と顔合わせができた。就任10日間で外交デビューがうまく果たせた。

E さらに日中首脳会談と日韓首脳会談もできた。これは良かった。

B 課題は、やはり政策の実行力だ。ガソリン税の暫定税率廃止は与野党で一致して、ようやく年内実施が決まったが、随分遅れた。給付付き税額控除にしても、どう実施していくのか本気度が見えない。物価高対策は迅速に実行できるのかな。

A 野党が対立姿勢を強めているから、国会審議は並大抵ではないよ。特に公明党は裏金事件の解明や企業・団体献金の規制強化を訴えてきたが、高市首相は決着済みの姿勢。連立26年間の“うらみ”があるから、政治とカネ問題以外でも厳しく追及するはずだ。

D 当面の焦点は、25年度補正予算の編成と成立の行方だね。物価高対策では電気・ガス料金の補助も今国会で決めることになっているが、ほかの対策と同様に財源をどうするか、実施時期はいつかなど不明だ。野党の要求を取り入れないと法案は成立しない。

C 少数与党にに転落した石破内閣のように、法案ごとに立ち往生する可能性がある。立憲民主党や国民民主党、共産党など野党には、政権与党だけで物事を決めていいのか、横暴は許さないといった反感がある。国対はじめ党・内閣がしっかりしないと暗礁に乗り上げる。

E 会見と所信表明演説(10/24)でわかったのは、高市首相は経済対策で成果を上げ、そのあと憲法や皇室典範の改正、安全保障関連3文書の改定、防衛装備移転3原則の運用指針撤廃など安全保障強化を考えていることだ。これは安倍首相のやり方とよく似ている。

A 「安倍回帰」は、安倍首相の首席秘書官だった経産省出身の今井尚哉氏が内閣官房参与として再登場するほか、首相秘書官に元経産事務次官の飯田祐二氏、内閣官房副長官に前警察庁長官の露木康浩氏を起用するなど、経産省と警察庁出身者で固めたことでも明らかだ。だが政策も人事も安倍スタイルでは、新鮮さが感じられない政権になるだろう。

B 半導体やロボット、そして今や産業の重要基盤であるITについて、どのように育成していくのか。GAFA依存度が高まれば国内産業はあっという間に米国企業に支配されてしまう。国家国民の情報をどう守るのか、この政権がどんなことをするのか見極めたい。

【直球・変化球】
●来春までに政権は正念場迎える
A 高市政権は短命か、あるいは安倍政権のように長期になるか、大胆に予想してみたい。一番心配なのが、超多忙な日程が続く高市首相の健康だろう。首相の激務に耐えられるか。第一次の安倍首相は体調を崩して1年で辞任した。

D 当面は心配ないのでは。ただ、高い熱量に任せて突っ張り過ぎると各方面からの抵抗による軋轢が生じて壁にぶつかり、頓挫してしまう恐れはある。硬軟、緩急をつけて焦らず、時には立ち止まりながら進んでいけば、任期まで務めることはできるのではないか。

C 突然、連立が壊れる可能性もある。高市政権と維新の会との政策協定で明記した憲法改正などは、長期政権でなければ達成できないテーマだ。まずは来春まで様子を見たい。ひょっとすると26年度予算の成立と引き換えに、解散・総選挙があるかもしれない。

E 政治とカネの問題を、衆議院議員の定数削減に堂々とすり替えた政権に明日はない。維新が閣僚を出していないのも無責任だ。最初はご祝儀相場があるが、やがて逆風が強まれば相場も支持率も奈落の底に落ちる。短命政権で終わるのではないか。

B それにしても野党第一党の立憲民主党の存在感のなさは、情けないね。政権交代を掲げながら、国民民主党の玉木代表を首相候補にしてもいいなどと、みっともない振る舞いだった。立憲も、党首を交代したらどうかな。


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注目会見を斬る(2025年10月)


辞任会見する新浪剛史氏(YouTube ANNnewsCHより)

【新浪代表幹事が「サプリ問題」で辞任会見(9/30)】
 大麻成分が入ったサプリメント(機能性表示食品)購入をめぐり警察の捜査を受けた新浪剛史(にいなみ・たけし)経済同友会代表幹事は9月30日都内のホテルで記者会見し、「(代表幹事続投で)合意形成を目指したが、理事会での意見が(辞任との)二つに分かれた。このままでは同友会にとっても日本にとってもまずい。そこで辞任すべきと判断した」と語り、同日の臨時理事会で辞任を表明、受理されたことを明らかにした。

●見苦しかった「プロ経営者」とメディア
A 記者会見の感想はどうだった? 新浪氏はサントリーホールディングの会長を辞任した翌日の同友会代表幹事の定例会見(9/3)で、サプリは適法なものだと主張し、同友会の代表幹事は継続、ただし活動は当面自粛すると語っていた。

B 冒頭発言から質疑応答、締めくくりまでざっと1時間半。新浪氏はサプリ問題では捜査中をタテに口を閉ざし、最後まで反省の言葉はなかった。また辞任を決断したことについて、最後に代表幹事らしい仕事ができたと語るなど、いわば個人商店のトップのような振る舞いだった。現代のプロ経営者とは、こんなものなのかとあきれたよ。

D そうだね。この約1か月、同友会や財界に対する信用が低下している中、周囲のことを考えたのか疑問だ。本人はやり残したことが多く残念だと語っていたが、見苦しいの一言に尽きる。経済界からは、経営者には教養だけでなく奥深さが必要だ、彼には品性・品格が欠けているなどの声が出ている。同情する人が少ないのも当然だろう

E そもそもサントリーホールディング会長を辞任した時に、自ら代表幹事から身を引くべきだった。それを同友会の判断にゆだねるとした。新浪氏は続投は容認されると考えていたが、会員倫理審査会での議論は「辞任勧告が相当」となり、これを受けた理事会は二分してしまった。結局、自ら退場せざるを得なくなったというのが実情だ。

C  隣に座っていた筆頭副代表幹事の岩井さん(睦雄・日本たばこ産業(JT)会長)の冷静な対応が目立ったね。岩井さんは「新浪さんはシロだと思っている」と語ったが、理事会のメンバーが賛否半々に分かれていたことを淡々と説明した。その発言自体に重みがあった。

E ちょっと彼を弁護する形になるが、ローソン社長時代に取材した時の印象からは、彼の実力は相当高かった。当時、IT経営者の一人としてインタビューを申し込んだが、彼は即座に「わが社にとって肝心なところだから、駄目だ」と断ってきた。ITを活用した経営のの重要性がわかっていたからこそ、外には見せないとの判断だった。

A 毎度のことだが、メディアの詰めが甘かった。会見が財界クラブ中心だったせいだろうが、質問するときに「2年半お疲れさまでした」などと、身内をかばうような雰囲気があった。いつも厳しい東京新聞の望月衣塑子記者でさえ「クロではないのになぜ辞めるのか」などと、質問者は突っ込み不足だった。

●サントリーが“解任”した理由
B そもそもの出発点を考えると、発端は大麻成分由来のサプリを米国から輸入し、睡眠不足対策、安価だったなどと説明していることだ。麻薬取締法違反(輸入)の疑いで福岡県警が都内の新浪氏自宅を家宅捜索したのが8月22日。サントリーはその直後の28日に新浪氏を除く全取締役・監査役が協議し、新浪氏に辞任を申し出るよう決定している。

D つまりサントリーはサプリ問題で、かなり確度の高い情報を持っていたんだね。あれほど迅速に“解任”したのは、重大なマイナス情報をつかんでいなければできない。サントリーの情報収集力には定評があるから、まだ表に出ていないものがあるだろう。

E いやサプリだけではないよ。2年前ほど前に週刊誌で新浪氏のローソン社長時代のパワハラ、セクハラが取り上げられていた。部下などへの乱暴は関係者の間では有名な話だ。表ざたになったことで新浪氏は名誉棄損で訴えると息巻いたが、めだった動きはない。今回も本人は雑誌を名誉棄損で訴えると語っているが、本当に告訴するのかどうか。

C 新浪氏の過剰な自信がどこからきているのかを考えると、警察の捜査力を見下しているからではないか。本人の弁ではサプリは適法なものであり、違法な大麻成分が出ていない以上、推定無罪だ。むりやり立件すれば、大川原化工機のような冤罪になる可能性があると、踏んでいるフシもある。

A まあ福岡県警の家宅捜索では何も出なかったことは確かだが、すでに警視庁が動き出しているとの情報もある。警察をなめたらいかんぜよーと言うつもりはないが、事態は流動的だ。まだ何かが起こる可能性があるね。

【直球・変化球】
●経済同友会はどこへ行く
B 新浪さんの発信力の強さは国際感覚や先見性、統率力などにあるという。三菱商事からコンビニのローソンに転じて業績を伸ばし、請われてサントリーに入ってからは同社の国際化を進めた。本人は安倍政権からずっと政府の経済財政諮問会議委員を務め、企業不祥事には厳しく批判するなど、発言は目立った。敵も多かったが、退任を惜しむ声もある。
 
C 今回の辞任劇を見て、NHK大河ドラマ『べらぼう』が描く江戸時代のコメ不足騒動や、経済改革を主導した老中田沼意次の失脚などを連想した。新浪氏とサントリーのオーナー家との確執はなかったのか、財界・財界の中で反新浪の動きはなかったのかな。

D 経済3団体のうち、同友会は企業経営者が個人として参加する公益法人で、政府に対して提言も行っている。経団連が大企業、日本商工会議所が全国の中小・中堅企業を中心に組織されているが、同友会は経営者個人が主役。それだけに発信力だけでなく、人格の高潔さが欠かせないのが特徴だ。新浪氏の後任が誰になるのか注目されている。

E ただ、この間のガバナンス不足の表面化で、同友会はまさに存亡の淵に立たされているよ。前代表幹事だった櫻田謙悟SOMPOホールディング会長は、ビッグモーター(現ウイカーズ)の保険金不正請求問題で発信力を落とし、今回は新浪氏自身のサプリ疑惑で辞任した。今度の政権交代を機に、政府も同友会はじめ経済界の評価を下げるかもしれない。

D ちょっと厳しい言い方になるが、最近は真の経営者がいなくなった気がする。昔はと言うと昭和の時代になってしまうが、経済人の多くは国家国民の暮らしを向上させ、日本国の安泰を図ろうとそれこそ身を粉にして働いていた。そして出所進退もきちんとしていた。

A 1988年のリクルート事件で、同友会では牛尾治朗、諸井虔両副代表幹事が辞任した。ただし両氏とも5年以上の謹慎を経て、牛尾氏は同友会代表幹事に、諸井氏は日経連(現経団連)副会長として復帰した。諸井氏は政府の地方分権推進委員長なども歴任した。かつては「行動する同友会」という評価もあったほどだ。さて、これからどこへ行くのかな。


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注目会見を斬る(2025年9月)  三菱商事が洋上風力発電撤退で記者会見(8/27)


洋上風力撤退で会見する中西勝也三菱商事社長(YouTube 共同通信KYODO NEWSより)

 三菱商事の最大のアキレス腱と言われていた大型案件がついに“断裂”した。同社グループが秋田県沖と千葉県沖の3海域で進めていた洋上風力発電プロジェクトについて、三菱商事は8月27日、記者会見を開き、中西勝也社長が、事業継続は困難と判断し撤退すると表明した。

●ボタンの掛け違え&下手な博打
A かなり前から「暗礁に乗り上げた」と見られていたプロジェクトが、とうとう継続断念で決着した。

B 入札を行い三菱商事グループを選定した経産省サイドでは、最後まで、継続に一縷の望みを持っていたようだけど、大方の見方通り、落ち着くところに落ち着いた格好だよね。

C 会見で中西社長は、想定外のコストアップを撤退の理由に挙げたけど、見通しの甘さを指摘せざるを得ない。そもそも、入札時、経産省が設定した上限価格の3分の1という超安値で受注したのが無理筋だったのが、今となっては明らか。最初からボタンを掛け違えたというか、極細のナローパスを駆け抜けようと下手な博打を打ったというか、はなから成功確率が低いプロジェクトだった。

D 洋上風力発電は、電力畑を歩んできた中西社長自らが手がけてきたプロジェクト。しかも、エネルギー分野の実績で社長になったお方だけに、当然、責任問題が問われるわけだけど、社長の経営責任に関するやりとりが何とも微妙だった。

●社長の責任に答えず
E 社長としての責任をどう考えているかの質問に、「社長の責務を全うし、三菱商事を牽引していきたい」と答えたくだりだね。確かに、責任をどう考えるかの問いかけに、ちゃんと答えてはいないよね。想定問答に則って、はぐらかした感じ。

B ちゃんと答えていないのは、外部環境の変化以外にも断念した要因はあるのかとの質問に対してもで、他の要因があるのかないのか、分からずじまいの答えだった。

C 全体の印象として、他人ごとのような会見で、陳謝・反省の気持ちが伝わってこなかった。

A 記者会見は一人一問に限定し、1時間ほどで終了したけど、この仕切りはどう評価する?

D 記者が何人も手を挙げているのに打ち切ったのは残念。記者側では、更(さら)問い、関連質問がほとんどなかったのが物足りない。社長の責任問題がいい例だけど、曖昧な返答に対しては二の矢を放って欲しかった。

E 参加者は、行儀のいいメディア所属の記者ばかりだったようで、会社側としては無難に乗り切った格好。ただ、公共性が極めて高い案件だけに説明責任を尽くすという観点からは合格点は上げられない。

B 今回、記者の机に番号を振って、質問者を当てるのに、Bの3番、Aの1番とか指名していたけど、悪くない試みで、今後、大人数の会見ではこの方式が普及するのでは。

【直球・変化球】
●三菱グループのイメージダウン
C 会見の中でも出てきたけど、三菱三綱領に照らすと撤退をどう評価すべきなのか…。

E 「所期奉公 処事光明 立業貿易」が三綱領。最初の所期奉公は、社会や国に貢献する、公益を目指すといった意味合いだから、その観点からは、残念な決断と言うしかない。しかし営利企業が、30年経っても回収できない投資を断行するのはありえない話で、まぁ、仕方がない撤退と追認するしかないのかなぁ。

D 撤退の背景として、このところ業績が良く、違約金を払っても損失を補える体力があったからと指摘する向きがある。

B 社外取締役が増え、ステークホルダーを納得させる結論を出さざるを得なかったのも影響しているのでは。

A 三菱グループで重工、銀行と並ぶ中核会社の商事だけに、グループ内での評価低落は避けられない。もっとも、銀行の貸金庫窃盗事件をはじめ、各社でトラブル、不祥事が起こっているので、グループ内でどうこうと言うより、グループ全体のイメージダウンがより深刻な問題なのかも知れない。

C 某ゼネコン幹部が、我々のような請負会社は工事が始まれば「参りました。この金額ではできません」とは言えず、発注者に“値増し交渉”をお願いしたりする。昔は、次回の発注で採算を合わせてもらこともあった、と教えてくれた。

D しかし、最近は中野サンプラザ建て替えや津田沼駅前再開発のように建設費高騰で中断する大型プロジェクトが枚挙にいとまがない。中野サンプラザと洋上風力を同列に扱うのはどうかとも思うけど、根っ子は同じ。日本の今を象徴する出来事だよ。

B 広報のドタバタ劇としては記者会見のあった8月27日午前、「撤退する方向で調整との一部報道について、現時点で決定している事実はない」と、撤退否定のコメントを出している。で、そのすぐあとに、記者会見の案内を出し、実際に会見で撤退を発表しているわけだから、社内の混乱ぶりがうかがえる。

●チャットGPTに聞いてみたら…
E 今回の三菱商事、洋上風力撤退をどう思うか。チャットGPTに感想を聞いたら「企業としては当然とも言える冷静な判断。ただ地域の期待を裏切る悲痛な結論でもある」と返してきた。

A 今の生成AIはそこまで答えられるんだね。

E 三菱商事、経産省のそれぞれの問題点も挙げてくれた。商事については、採算性を精緻に見極めず、「異常に低い」と言われた価格で応札したのはリスク管理不足。リスクシナリオをどう想定したか、説明責任がある。一方、経産には技術的、経済的に実現可能かを精査する能力・姿勢が不十分で、公募時に「極端な低価格入札」をチェックする、アンチ・ダンピング的なセーフガードを設けなかったのが迂闊だと指摘した。

C チャットGPT恐るべし。我々の出る幕はなくなり、全部、生成AIがやってしまう時代が近いのかもしれないね。


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注目会見を斬る(2025年7月)


二審も勝訴受けた大川原化工機の記者会見 (YouTube 時事通信映像センターより)

大川原化工機が「冤罪」で記者会見(6/11)
 軍事転用可能な噴霧乾燥機を不正輸出したとして逮捕・起訴され、公判直前に起訴が取り消された大川原化工機(横浜市)の冤罪(えんざい)事件をめぐる国家賠償訴訟で、違法捜査と認定した2審東京高等裁判所の判決(5/28)について、警視庁(東京都)と東京地検(国)は6月11日上告を断念。高裁判決は同12日確定し、都と国は賠償額計1億6600万円を支払うこととなった。

 上告断念の発表を受けて同社の大川原正明社長らが11日に記者会見し、誠意ある謝罪と内部告発者の保護、人質司法の改革、第三者主導による検証と再発防止策などを求めた。

●「やっと終わった」が怒りは収まらず
A ひどい事件だったね。会見には大川原正明社長と元取締役の島田順司さん、拘留中に亡くなった元顧問の相嶋静夫さんの長男、そして弁護士の高田剛氏の4人。司会進行は高田弁護士が行ったが、経過説明から質疑応答まで約1時間、淡々と進めていたね。

B いや、本当にけしからん話だ。4人は冷静に語っていただけに怒りがよく分かった。大川原社長は、「やっと終わった。やっと謝罪の言葉が出てきた」と語り、起訴を取り下げた検事や会社を守ってくれた社員、内部告発した警察官、冤罪報道を続けたメディアに「感謝したい」と述べていた。聞いていて、冤罪に巻き込まれた悔しさと怒りが感じられた。

D そうだね。島田さんも「上告断念を聞いて、心の雲がやっと晴れた」と明るく語ったが、内心の憤りは隠せなかった。警視庁と東京地検に対する6項目の要望をきちんと実行することとか、とくに内部告発した現職警察官には「組織から排除しない」、「警視総監賞をあげてほしい」などと、語気を強めていた。

C 高田弁護士が説明した6項目とは、警視庁と検察の誠意ある謝罪、内部告発者の保護、第三者主導の検証委員会と再発防止策の実施、「虚偽の報告書」作成者の起訴、経済産業省は省令・通達の改正を、裁判所は「人質司法」の見直しだ。それぞれが今回の問題点を指摘しているから、当局はきちんと受け止めざるを得ない。問題は、本気でやるかだが…。

E  今回は大川原側の全面勝利だったが、相嶋さんの長男は終始硬い表情のまま。本来なら、3年10か月前に起訴を取消したときに謝罪すべきだったことや、拘留中にわかった父の胃がんと病院探しに苦労したことを語った後、「時間が経っても怒りは消えない。時間をもとに戻してもらいたい」と声を絞りながら叫んでいた。

●原因は警察・検察の「出世欲と権力欲」
B なぜ、こんな冤罪がまかり通ったのかな? 警視庁公安部は逮捕前に300回近く、大川原社長らから聴取していた。そして外為法違反容疑で逮捕したのは2020年3月。同月に東京地検は起訴したが、翌年7月には起訴を取り下げた。「犯罪に当たるか疑義が生じた」としたためだが、要はこんな証拠では裁判は持たないと判断したためだった。

D 捜査が杜撰(ずさん)だったんだ。大川原の噴霧乾燥機の性能は、外為法と輸出貿易管理令で定めた規制要件よりも低かった。大川原も経済産業省も繰り返し説明したが、耳を貸さなかった。逆に公安部は、ヒーターの熱で1種類でも細菌を死滅させることができれば規制対象になる、と強引に解釈していた。まずストーリーありきだった。

E 21年9月に大川原は国賠訴訟したが、当局はそれでも「捜査と起訴は間違っていなかった」と主張した。そんな折、1審東京地裁で現職警察官から「事件は捏造(ねつぞう)」という証言が飛び出した。正直警察官が登場して、これが冤罪の決定打になった。

A 底流には、公権力を行使する官僚が陥りやすい無謬(むびゅう)性があるんじゃないか。自分たちは公益のために働いている、間違ったことはしていないというプライド、言い換えればうぬぼれだ。これにエリート意識が重なるから始末が悪い。さらに役所の常として、先輩がかかわった案件を否定しないという習性もある。

C もう少し掘り下げると、官僚の出世欲と権力乱用欲にあると思う。1審では裁判長が「捜査員の個人的な欲とは何か」と質問したが、答えた警察官は「出世欲」と証言した。さらに2審では別の警察官が「(立件は)日本の安全を考えたものではなかった。決定権を持つ人の欲だと思う」と証言して世間を驚かせた。どの証言も事件の本質を言い当てている。

B その背景にあるのが、第2次安倍政権の安全保障政策の強化だろう。2014年1月に国家安全保障局が設置され、19年には警視庁に経済安全保障対策の専従班が置かれた。政権への阿りとか、公安捜査官が「手柄取りに行ったのでは」と指摘する検察OBもいるよ。

A そんな状態では、最高裁に上告しても勝ち目はなかったね。それにしてもひどいものだ。相嶋さんは起訴が取り消される前に亡くなっているから、被告のままだ。相嶋さんの長男が「腐りきった組織の内部改革を早急にやって、真の意味の警察になってほしい」と語っていた。遺族の怒りは強く、通り一遍の謝罪ではぬぐい切れないだろう。

D その謝罪だが、6月20日に警視庁から鎌田徹郎副総監、東京地検から森博英公安部長が大川原化工機を訪ねて謝罪した。しかし島田さんをヤマモトさん、大川原化工機株式会社を大川原化工機工業と言い間違えるなど、なぜか誠心誠意を疑わせるものだった。

B こんな言い方はしたくないが、当局は今回の事件を軽く見ているのではないか。上告断念後に警察庁長官は謝っていたが、これほどひどい冤罪なのだから、法務大臣が直接出向いて謝罪すべきだよ。横浜の中小企業だからと、どうも甘く見ている気がする。

【直球・変化球】
●メディアを含めた徹底検証が必要だ
C 再発防止には、徹底的な検証が必要だ、警視庁はナンバー2の副総監をトップに幹部10数人によるチームを設置し、検察も最高検が中心となって内部メンバーで調べるという。これで大丈夫かな?

E 大川原側が指摘するように、外部の専門家や有識者を入れた第三者委員会でやるのが筋だよ。繰り返すが、当初の公安捜査官も検事も、噴霧乾燥機の性能試験をきちんとやっていれば、すぐに間違いに気づいたはずだ。裁判で2度も捜査と起訴の違法性が認定されたのだから、身内でやるのではなく潔く第三者の目で調べるべきだ。

A その通り。今回の冤罪は、警察・検察に対する国民の信頼を揺るがすものだ。身内だけの検証で終わらせたら、国民は不信感と不安感を抱えたままになる。捜査官がどうして追加試験を行わなかったのか、経産省の説明を聞いた後でもなぜ判断を変えなかったのかなど、外部の眼で調べることが一番重要だ。

D その経済産業省は輸出規制の国際取り決めと、国内の政省令などとの整合性が問われている。大川原社長は「中小企業は法律のプロではない。今回は法律の解釈をねじ曲げられた」と語り、経産省に対して法令解釈の明確化に取り組んでほしいと訴えている。

B 正直に言って、今回のケースにはコメントしたくなかった。最初は警察発表丸のみ、不正がわかると手のひら返しするメディアの姿勢も検証すべきだね。かつてのライブドア事件では、ストーリーを作って捜査する検察、他紙に抜かれまいとして当局に追従する社会部記者という姿をいやというほど見た。今回の冤罪事件でもよく似た構図があった。

C とはいえ、毎日新聞とNHKが早くからこの問題を取り上げ、スクープしていた。どちらも警視庁記者クラブ詰め記者ではなく、毎日は司法担当記者、NHKはドキュメンタリー番組のディレクターだった。直近の『サンデー毎日』は記者にインタビューして、社の幹部に当局から圧力がかかったことなどを暴露していた。そんな圧力を突っぱねた毎日新聞には「あっぱれ」をあげたいね。

A 最後に人質司法の問題点を指摘しておこう。被告が起訴内容を否認していると裁判所はすぐに釈放を認めない。釈放すれば証拠隠滅を図る恐れがあるーと検察が反対し、裁判所もその主張を認めるためだ。逮捕された瞬間に拘束され、事実上の処罰が始まる。そして無実を主張すればずっと拘留される。こんな司法制度はもう変えるべきではないか。

E そう、重大な人権侵害だよ。長期拘留を事実上容認している刑事訴訟法は個人の自由を保障する憲法に違反し、さらに国際人権法にも反するとの指摘がある。東京五輪・パラリンピック贈収賄事件で逮捕・起訴され、無罪を主張しているKADOKAWA元会長も長期拘留されたため、24年6月国賠訴訟に踏み切った。同じようなケースはたくさんある。

D 大川原社長ら3人は20年3月に逮捕後、約11か月間拘留された。相嶋さんは拘留中に病気が判明し8回も釈放請求したが地裁は認めなかった。そして病気悪化で同年11月に拘留停止となり、翌21年2月に亡くなった。相嶋さんの長男は「取り返しのつかないことを警視庁はやった。裁判所もそれを追認した」と激しく怒っていた。こうした悲劇を繰り返してはならない。


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