広報プラスαのガイドブログ「経済記者 シニアの眼」

——あなたの会社の危機管理は大丈夫?
——正しいメディア対応についてアドバイスします。

会見感想文-ここが良かった、課題はそこ

企業はいま、戦争や感染症、地球環境問題、ビジネスと人権など、さまざまな課題に直面しています。経済記者シニアの会は、ベテラン・OBの経済記者が毎週月曜日付のブログを発信するとともに、不祥事対応や記者会見など、広報・企業活動をお手伝いすることを目指しています。

会見感想文(2025年11月)組込みシステム技術協会:「EdgeTech+2025」のみどころを発表


見どころを説明する鴨林理事(右)と大嶋社長


展示会の全体像を表したコンセプト図

山下 郁雄 【アウトライン】
●目玉は生成AI-19日、横浜で組込み・エッジテクノロジー総合展が開幕
 19日に横浜で開幕する「EdgeTech+2025」のプレス発表会が11月5日、オンライン形式で行われた。同展の主催・企画に携わる大嶋康彰ナノオプト・メディア社長、鴨林英雄組込みシステム技術協会理事、山田敏行同専務理事の3人が見どころを紹介し、ご多分に漏れず、生成AIに関する展示・実演やセミナーが目玉になると解説した。

 同展は19-21日の3日間、横浜市みなとみらいのパシフィコ横浜アネックスホールで開催される。「日本最大級の組込み・エッジテクノロジー総合展」を謳い、AI×IoT×セキュリティに関わる最新技術の数々の展示・実演と講演が行われる。テーマは「生成AIで進化する開発現場。ものづくりは『AIと創る』新時代へ」。329社・団体が参加し、自動車開発のソフトウエア展「オートモーティブ ソフトウエア エキスポ」も併催される。オンライン登録制(https://www.jasa.or.jp/expo/)で参加無料。

 基調講演は「生成AIが創る新しいIoTの世界」(坂村健東洋大学情報連携学学術実業連携機構長)、「進化が止まらない生成AIの最新状況、見えてきた成果と課題」(西脇資哲日本マイクロソフト業務執行役員)、「モビリティにおける新たな価値の創造~クラウドとソフトウエアが果たす役割」(高倉大樹ソニー・ホンダモビリティ・ネットワークサービス開発部ゼネラルマネジャー)、「フィジカルAIが加速させるロボットの進化」(澤井理紀エヌビディア・シニアテクニカルマーケティングマネージャー)など。

 プレス発表会に登壇した3人は「展示会の“設計図”となる、生成AIやフィジカルAIを取り込んだコンセプト図(添付写真)が全体像を示している」(大嶋社長)、「ほかにはない複合型展示会」(鴨林理事)、「基調講演はもちろん、分科会のメンバーも基調講演でもいける方たちばかりが揃った」(山田専務理事)と説明し、来場を呼びかけた。



【グッド・ポイント】
●40年の歴史に興味津々
  • 40年ほど前(1986年)のMST(Microcomputer System & Tool Fair)が始まりで、以後、組込み総合技術展(2002年~)、IoT総合展(2015年~)、Edge Tech+(2022年~)と変遷を辿ってきたと、これまでの歩みを紹介したのが興味深く勉強になった。

  • コンセプト図をはじめとする各プレゼン資料が、いずれも要点をコンパクトにまとめていて、理解が進んだ。

  • 3人の話しぶりがいずれも明快で、聞きやすく分かりやすかった。


【要チェック箇所】
●質問を事前受付の手も
  • プレゼンに続く質疑応答では、質問が出ず、質疑応答ナシで終わった。記者サイドからすると、この種の発表会では質問内容がすぐには頭に浮かびづらいので、事前に質問を受け付ける手もあったのでは。

  • 出展各社の技術・ソリューションを対象とする「EdgeTech+ AWARD」の受賞案件の説明が少しくどいと感じた。関連顕彰事業をPRしたいという事情は分るが、ホームページに詳しく載っているのだから、説明は最小限にとどめ、詳細はホームページへとした方がスマートだったように思う。


pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫

会見感想文(2025年11月)シンキングス:人材配置の最適化を支援する人事システムを発表


トークセッションの森田新規事業開発責任者(左)と曽和組織再考ラボフェロー


採用・社内公募統合のフローチャート

山下 郁雄 【アウトライン】
●採用と社内公募のシームレス結合で、人材配置を最適化
 人材ビジネスのThinkings(シンキングス、東京都中央区、瀧澤暁社長)は10月28日、都内でプレス説明会を開き、採用と社内公募・異動とを統合し人材配置の最適化に繋げる新人事システムを発表した。人材獲得が多くの企業にとって最優先のテーマとなっている折、外部人材の獲得と社内人材の発掘・配置換えをシームレスで行い、適材適所の人事政策を後押しする。

 「sonar Connecter」と名付けた新システムは、同社の既存製品「採用管理システムsonar ATS」の付加機能として開発した。新システムは、企業の事業部門と人事部門を密接に連携し、所定のポストにふさわしい人材の充足を素早く高精度で行えるようにする。充足率や社内公募の応募数・異動実績数などの可視化を通して、企業が働く人に選ばれる時代にふさわしい組織づくりを支援する。

 説明会ではビジネスパーソンの就業意識や社内公募制度に関する独自アンケート調査(対象は社員1000人以上の企業の一般職1069人)の結果を紹介した。あらましは①自分の能力が活かされていないと思っている“埋もれた人材”が44%に達する②社内公募制度を導入している企業の比率は43%③“埋もれた人材”が、公募制度があっても応募しない理由のトップ3は「希望するポジションの公募がない」「応募条件に該当しない」「応募すると悪く思われる懸念がある」-など。

 アンケート結果を踏まえたトークセッションでは、森田徹新規事業開発責任者と曽和利光・組織再考ラボフェロー(人材研究所社長)が登壇した。二人は、“埋もれた人材”および“静かな退職・予備軍”と名付けた「期待される以上の努力や関与は極力、避けるようにしている」と回答した人たちをどう活性化させるかを話し合った。

 同社は採用管理システムの提供を主力事業とするHRテック(人事×技術)企業で、今年10月、ビズリーチ100%子会社になった。2012年から今日までに、NTTデータ、全日空、ダイキン工業、トヨタ、法務省、文科省、LINEヤフーなど累計2300を超える企業・官公庁に採用管理システムを納入している。



【グッド・ポイント】
●興味深く勉強になったトークセション
  • トークセッションの企画が面白かった。とくに「人事部長、営業部長にはどういう能力が求められるか、ハイパフォーマーは何を備えているのか-の研究がほとんど行われていない」という曽和氏の話が興味深く勉強になった。

  • 人材不足が恒常化するなか、社内の人材をいかに活性化させるか、有効活用するかという今日的・普遍的なテーマに向き合っている。

  • 司会者の仕切りが良かった。


【要チェック箇所】
●欲しかった、経営トップのひと言
  • 社長が登壇しなかったのはいただけない。大企業ならいざ知らず、知る人ぞ知るベンチャー企業なのだから、経営トップかそれに準ずる人が出てきて一言でも話すべき。

  • プレスリリースの書き出し部分に、組織づくりのくプラットフォーム「sonor HRテクノロジー」、「採用管理システム sonor ATS」、新機能「sonor Connecter」と固有名詞を列挙したのは、うまくない。何が何だか区別がつかないからで、書き出しは極力、固有名詞を排し一般名詞だけにする方がいい。


pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫

会見感想文(2025年11月)電算と「dsnあとふる」:ふるさと納税の新方式を発表


会見する河野電算社長(中央)ら


従来のふるさと納税と「あとふる」の違い

岩辺 卓浩【アウトライン】
●体験や消費の「後に寄付する」後納型ふるさと納税を考案
 従来、ふるさと納税は地方の名産品などを購入することで自治体に寄付が行われ、利用者が節税になる仕組みだったが、今回は地域での体験や消費の「後に寄付する」という「後納型」ふるさと納税の記者発表会が10月20日、東京・茅場町で開かれた。説明したのは電算(東京都中央区)の河野純社長と、電算子会社「dsnあとふる」の伊藤穀社長および次松武大・事業開発責任者。

 「あとふる」の利用イメージはこうだ。旅先で寄った料理屋が美味しく楽しかったため、東京に帰った後、この地域を応援したいと考えた。「あとふる」対象店舗という事が分かり、食事代(3万円)のレシートを専用アプリでアップロードし、さらに7万円を「寄付」として払い込む。これで総額10万円の寄付をしたことになり、「ふるさと納税」が成立し、税金の控除につながる仕組み。

 「カタログギフト」のようになっている現在のふるさと納税を、「現地での体験や消費」という新しい仕組みに変えようというのが狙い。飲食だけでなく現地での宿泊やイベント参加も対象。自治体や事業者は返礼品発送などが不要になるため、大幅なコスト削減につながる。


【グッド・ポイント】
●原点回帰の着目点が秀逸
  • 年末が近づくと連日「ふるさと納税をすればこんなに得をする」というテレビCMが繰り返される。「生まれ育ったふるさとに貢献」「自分の意志で応援したい自治体を選ぶ」(総務省HPより)という当初の目的とはかけ離れた制度になっており、税金が流出する都市部を中心に批判的の声が高まっている。「あとふる」は現地に行かなければできない仕組みで、本来の姿に回帰しているのは間違いなく、着目点は秀逸だと感じた。

  • 参加自治体がまだ、静岡県東伊豆町だけだが、売れる「モノ」がない地域でも、「コト」があれば成立するので、自治体や事業者は関心を持つだろう。

  • 虚偽の領収書や、同じ領収書の使い回しが懸念される点について、次松武大・事業開発責任者は「AIを活用して不正チェックを図る」とした上で、様々な問題が起きることを覚悟してまずはスタートしたというベンチャー企業の姿勢を強調したのには好感を持てた。

【要チェック箇所】
●消費者目線になっていない
  • 新サービス「あとふる」で最大のメリットを受けるのは、返礼品の発送事業コストが削減される自治体や事業者で、「利用者が参加しやすいか、楽しめるか」の詰めが甘く感じた。一般的にふるさと納税は「出金」が1回だが、「あとふる」は2回の「出金」が必要で、負担感が否めない。今回の仕組みは「メーカー目線」で「消費者目線」になっていない。そこをどうやって乗り超えようとしているのか、説得力が弱かった。

  • 「dsnあとふる」は電算の子会社で、「あとふる」の登録商標も電算が保有しているという。事業主体がどちらなのか、曖昧な印象となった。

  • 現時点で参加している唯一の自治体である東伊豆町の関係者が会見に参加して、現地の取り組みなどを聞かせてもらいたかった。

  • 会見場では発表資料が準備されておらず、夜にメールで送られてきた。難しい仕組みのサービスなので、パワーポイントで見せられるだけではなく手元に資料が欲しかった。アプリを開いて確認したかったが、QRコードも資料にしかなかった。



pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫

会見感想文(2025年10月)ダークパターン対策協会:NDD認定制度の運用開始を発表


会見するダークパターン対策協会の小川代表理事(右)と石村事務局長


NDD認定マーク

山下 郁雄 【アウトライン】
●増加一途の詐欺サイトに対応
 EC(電子商取引)サイトの悪質な誘導・勧誘による被害を防ぐための新制度がスタートした。一般社団法人ダークパターン対策協会(https://www.ndda.net/)は10月15日、都内で記者会見を開き、「NDD認定制度」の運用を開始したと発表した。NDDはNon-Deceptive(欺瞞的)Designの略で、NDD=「欺瞞的なデザインではないサイト」の認定を広めることを通して、悪質サイトの被害を無くしていく。

 ECの普及拡大に伴い、ネット上では詐欺めいたウェブサイトが増加の一途を辿っている。一回きりの購入のはずが定期購入になっていた、解約画面が見当たらない、選んでいない商品が自動的にカートに追加された…等々、思い当たる向きは少なくないだろう。ダークパターン対策協会では、これらサイトを「ダークパターン(消費者を意図的に誤認・誘導させる不適切デザイン)=DDを用いた悪質サイト」と捉え、NDD認定の普及を通して悪質サイトの排除を目指す。

 15日に運用を開始した認定制度は①事業者が自己診断チェックシートを使って自社サイトが、協会が策定したガイドラインに適合しているかを審査する②認定審査機関が1次審査を行う③協会が最終審査するーの3段階を経て、審査をパスした〝誠実なウェブサイト〟に認定マーク(写真)を付与する仕組み。事業者は審査費用や年会費を支払う。大企業と中小企業に分類し、各料金を設定。サンプルとして、初回審査料と登録料を合わせた額が数十万円になる中小企業の事例を示している。

 会見で、小川晋平同協会代表理事(IIJビジネスリスクコンサルティング本部長)は「日本は行政が縦割りのため、欧米と比べ、ダークパターンの包括的な規制ができていないのが実情。現行法では対応が難しいので、民間レベルで新制度を立ち上げた。今後、独禁法などの実効的な法整備を協会として求めていく」と、背景や方針を語った。

 同協会は1年ほど前の2024年9月に発足。今回の取り組みが本格的協会活動の第一弾となる。年内には認定マークを付けたサイトがお目見えする見通し。



【グッド・ポイント】
●被害の大きさを数字で語る
  • ダークデザイン関連の被害額について、「ECの市場規模25兆円の4%、1兆円に達する」とざっくりとした数字を語ったのが、ダークデザインがいかに広がっているかの理解を深めた。

  • 消費者庁、総務省、経産省、文科省など霞が関各省庁をまたぐ領域であるため、現行の法律・制度ではどうにも対応できないとの話に説得力があった。

  • 小川晋平代表理事、石村卓也事務局長のプレゼンがどちらも分かりやすく、パワポ資料の出来も良かった。


【要チェック箇所】
●グレーンゾーンをどれだけ減らせるか…
  • 時代が求める有意義な取り組みだと思った半面、何をもってダークデザインあるいは欺瞞的と規定するのか、黒と白、アウトとセーフの線引きが極めて難しい案件とも思えた。今後、ダーク度合いをスコアリングするAIツールを開発し、線引きを容易にするとのことだが、グレーゾーンをどれだけ減らせるかが大きな課題だ。

  • 会見時間1時間のなかに、説明内容を盛り込み過ぎた。そのため、時間が押して質疑応答はすぐに打ち切られ、消化不良の感が否めない。


pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫

会見感想文(2025年10月)日本総研など3社:農業AIエージェントの実証実験スタートを発表


農業AIエージェント実証実験に取り組む関係者

高橋 成知【アウトライン】
●「儲かる農業」へ、栽培から経営まで支援
 日本総合研究所が食料安全保障と農業への危機意識から以前より取り組んでいた、農業AIエージェント「V-farmers」の実証実験がスタートした。9月29日、東京・丸の内の新丸ビルにある同社「社会価値共創スタジオ」で、その記者発表会が行われた。

 AIエージェント「V-farmers」は、日本総研とJSOL、未来共創ファーム秋田(MKFA)の3社が取り組み、「儲かる農業」を目指していく。栽培から経営管理まで多種多様なデータを統合し、農業現場に関連する業務を幅広く支援する。

 1999年には300万人いた農業従事者が2023年に181万人と、約40%減少している。加えて、平均年齢も69.2歳(2024年)という状態で、日本の独特の農業ノウハウが無くなってしまうリスクが出てきた。

 日本総研の木下輝彦取締役専務執行役員は「我々は食料安全保障と農業人口減や気候変動などのリスクに以前より危機意識を持って取り組んできた。この実証ベースに、より生産性の高い、付加価値の高い『儲かる農業』を政策展開していきたい」と語った。

 日本総研など3社は、若手の農業者の育成、ベテラン農業者の知見・ノウハウの伝承、経営の効率化などに対するソリューションとして、今回、農業AIエージェント「V-farmers」の実証実験に着手。実施期間は2025年9月25日から2026年9月30日までの1年間。「V-farmers」プロトタイプの機能検証のほか、経営管理支援サービス、栽培支援サービスの有効性、農業用生成AIの精度、既存スマート農機との連携などを検討する。

 実証サイトは秋田県大潟村の6ヘクタールの農地で、対象作物は「タマネギ」。タマネギは指定野菜であるものの、端境期が生じ、輸入品に頼らざるを得ない。その解消に向けて、従来栽培されてこなかった東北地方で本格的なタマネギ生産が始まってきており、スマート農業の活用により栽培経験の補完や作業・経営の効率化が求められている。

 今回の検証結果は、経験の乏しい新規就農者の支援や、気候変動適応として新品種の栽培に取り組む地域支援などに応用可能。対象品目としてコメなどの品目拡大が計画されている。

農業AIエージェント「V-farmers」とは?
 栽培から経営管理まで多種多様なデータを統合し、農業現場の関連する業務を幅広く支援する農業AIエージェント。従来、アナログで管理していた作業マニュアル、日誌、受発注書や、温度・湿度、土壌のセンシングデータなどを一元管理し、経営と生産の効率化と高度化を実現する。作業計画・在庫管理・病害リスク分析などの業務をサポート代行して大幅な効率化を図り、新規就農者でも早期に安定した収穫量を確保できるようにする。

【グッド・ポイント】
●盛りだくさんのテーマをわかり易く解説
  • 1時間半という時間の中で、農業人口の急減や気候変動リスクなど盛りだくさんのテーマを解説。関係者を交えたパネルディスカッションはモデレータの仕切りがよく、わかり易かった。

  • 「アナログからデジタルへ」により、人手不足を補い、スマホで使える農業AIエージェントの可能性がつかめた。。

【要チェック箇所】
●3社の民間プロジェクトと勘違い
  • このプロジェクトは農業・食品産技術総合研究機構の「農業用生成AI」のプロトタイプを使うことのアナウンスがなく、3社の民間プロジェクトだと勘違いした。但し、資料には掲載されていました。

  • 農業法人の若手から現場の声をもっと聞きたかった。

  • オープニング時に司会者が当日とは違うイベントのお知らせをされたが、これは最後に持ってくるべき。実証実験スタートとはっきり伝えるべき。



pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫

会見感想文(2025年10月)ドイツ機械工業連盟:会長が来日し世界的な貿易問題に言及


会見するカヴラートVDMA会長(中央)

大澤 賢【アウトライン】
●日独は共通の貿易課題で結束を
 ドイツ機械工業連盟(VDMA)のベルトラム・カヴラート会長は9月22日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見した。同団体は130年以上の歴史を誇り、工作機械やロボット、建設機械など36の工業会が加盟、ドイツ国内外3600社以上の会員企業を擁する欧州最大の産業団体。カヴラート会長は2024年10月に会長に就任し、VDMA会長としては11年ぶりの来日となった。

 冒頭、カヴラート会長は輸出主導型である日本とドイツの機械産業は「自由な市場と開かれた国境」が必要だが、米国トランプ大統領の高関税政策による「国際ルールよりも取引(ディール)」が行われ、また中国企業による「ダンピング輸出などの市場歪曲行為」もあり、世界貿易は大きな脅威にさらされていると指摘。今回の来日は、自由貿易体制を推進する日独両国のパートナーシップの確認と協力拡大が目的であるとした。

 この後の質疑応答では、日本側との協力関係について、インダストリー4.0(第4次産業革命)における技術協力を取り上げ、欧州企業が進んでいるデジタル化、特に機械同士のデジタル通信技術での「標準化」協力を取り上げた。また機械工業全体では自動化や人工知能、IoT分野などで日本との相乗効果を高め、パートナーシップを深化させて、更なる高みを目指したいと強調した。

 一方、中国についてカヴラート会長は「VDMA加盟企業にとって依然として重要な市場」としつつ、最近は政府支援を背景とした電気自動車はじめ格安な製品が供給されて「市場が歪曲されている」と指摘。こうした行為に対しては「相殺関税などの措置が必要」と、日本側に同調を求めた。さらに中国は欧州にレアアース(希土類)や磁石の輸出制限を行っていて、これはモーターを製造する企業に深刻な影響を与えているとした。

 このレアアース調達問題については、「日本は15年前からグローバル・サプライチェーンを活用して乗り切っており、その経験を学びたい」と語った。同時に磁石のリサイクルでも、日本の協力を求めた。

【グッド・ポイント】
●見識の高さ&若さをいかんなく発揮
  • 1時間という短時間の記者会見だったが、カヴラート会長の見識の高さと若い経営者(1970年生まれ)の特質がいかんなく発揮された。トランプ関税に対して「馬鹿げたやり方」と切り捨て、中国のダンピング輸出にも「相殺関税は妥当な措置だ」と明快だった。

  • 日独の機械貿易はドイツ側の入超となっているが、日EU経済連携協定(EPA)がまだうまく機能していないとしつつ、声高に日本市場の閉鎖性を批判せず、技術協力の推進など交流促進に意欲的な姿勢を示していた。またレアアースでは「日本の経験に学びたい」と語るなど、謙虚な姿勢は好印象を与えた。

【要チェック箇所】
●通訳付き会見の時間設定に「?」
  • 3連休の間の月曜日、会見時間が午後3時から1時間―という短さは如何なものか。記者も人間。連休明けにすればもう少し集まったかもしれない(とはいえ今回、メディア側出席者が27人と多かったのは驚き)。通訳が入る会見は、最低でも1時間半必要である。

  • カヴラート会長の発言は明快だったからこそ、今回の訪日でちょっとしたエピソードが欲しかった。機械メーカーとの交流や経済産業省幹部とのやりとりなどを通じて、日本の印象とか、戦前から密接だった日本・ドイツ機械工業の交流の歴史などを語ってもらいたかった。これも時間が短かったため、表明の機会がなかった。

  • 「(日独の技術交流が成功すれば)11年後に来る後継会長はシャンペンでも持ってくるでしょう」という会長の話は面白いが、むしろもっと早く来日するかもしれないーと言う方がよかったのでは。



pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫

会見感想文(2025年9月)機械システム振興協会:デジタル尾州繊維プロジェクトの成果をオンラインで発表


デジタル尾州繊維プロジェクトのオンライン説明会


尾州産地のデジタル化に関わる問題点

山下 郁雄 【アウトライン】
●毛織物産地のDX現在進行形を紹介
 機械システム振興協会は9月9日、「デジタル尾州繊維プロジェクト~地域の担い手としての新たな胎動」の成果発表会をオンラインで開催した。毛織物産地として知られる尾州地域(愛知県西部と岐阜県西部)の地場企業・経営者らがDX(デジタルによる変革)に関わるあれこれを紹介した。

 デジタル尾州繊維プロジェクトとは、尾州地域の繊維産業に関わる有志らが2023年度に取り組んだ経産省・地域DX促進活動支援事業を土台にして、機械システム振興協会の支援のもと、尾州地域における中小企業集積DX化を推進する試み。5回のDXフォーラムを開催し、現在は地元企業2社による生産管理システムのクラウド化が進展中。今後、クラウド生産管理システムへの参加を地域各社に呼びかけ、先行きは産地を超えた連携も視野に入れている。

 発表会ではプロジェクトの経緯やクラウド生産管理システムの概要が報告された。原点となる2023年度地域DX促進事業から深く関わってきている岩田真吾三星毛糸社長は「参加各社が、恥ずかしくて外には出したくないデジタル化の遅れを“我が社のアナログ自慢”として公開し、課題を共有するなどで前に進めてきた」と振り返る。クラウド生産管理システムは、三星毛糸(岐阜県羽島市)と渡六毛織(同)が、両社連携のもと現在開発中で今年末の稼働を目指している。クラウドを活用し、システムを共有することで、開発コストを一社単独の場合と比べ大幅に引き下げるなど種々のメリットを実現させる。

 引き続き行われたパネルディスカッションでは、艶清興業(愛知県一宮市)の大島清司社長が「デジタル化は仕事の進め方を見直すきっかけになる」とデジタル化の意義を説明し、「(自社の仕事の流れなどを)言語化して外に伝えるのは難しいので、できれば内製化したい」と方向性を語った。併せて、生成AIをはじめとする最新テクノロジーの革新性に触れ「外注すれば何千万円もかかるのが、(生成AIの活用などで)数十万円でできてしまうかもしれない。(進化が速いので)しばらくは様子見でいいのでは」との現状認識を明らかにした。  

 一方、岩田三星毛糸社長は「他社との連携・共有システムには、もちろんメリットとデメリットがあり、メリットがデメリットを上回るようにすることが必須」とした上で、システム開発に伴う他社との交流の重要性を説いた。同パネルでは、データの標準化問題も取り上げられ「標準化の取り組みは、FAXも使われデータの持ち方は各社バラバラという現状を見直すいいきっかけになる」「標準化はおそろしく個別具体的なので、まず勉強会を開いて問題点を共有することが大切」などの意見が各パネラーから示された。



【グッド・ポイント】
●個性溢れる岩田/大島両社長
  • プロジェクトの中核メンバーとなる岩田三星毛糸社長と大島艶清興業社長の話が、それぞれの個性が反映され、どちらも面白かった。

  • 尾州は全国各地に点在する地場産業の典型といえ、そのDXプロジェクトは普遍的取り組みとなるので、大きな成果を収め各地場産業のお手本になっていただきたい。


【要チェック箇所】
●自社システムをいつ、どう構築する?
  • 生成AIやAIエージェントが進化・普及するなかで、自社システムをどう構築すべきか。「しばらくは様子見し、内製化したい」(大島社長)は一案であろうが、どこまでも進化するとしたら、どのタイミングで踏み切るべきか。また、内製化とアウトソーシングのどちらがベターなのか…。この今日的で普遍的なテーマを深掘りして欲しかった。

  • ブランドに関して、尾州は最終消費財(アパレル)ではなく中間財(毛織物などの素材)を扱っているのでブランド力が弱い。では、どんなブランディングが有効か-の義論が中途半端で終わってしまった感がある。


pr-konwakai02
経済記者 シニアの眼を配信する
「経済記者シニアの会」
ホームページはこちらから≫
記事検索
月別アーカイブ
プロフィール

corporate_pr

QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ