
質問に答える山川阪大准教授(右から2人目)と日本総研の研究員"
【アウトライン】●認知症患者の社会参加を、どう進める
日本総合研究所は7月9日、東京・丸の内の同社社会価値共創スタジオで「認知症患者の社会参加」をテーマとする記者発表会を開いた。同社研究員と老年看護学を研究・実践する大阪大学准教授が講師を務め、国が打ち出した「新しい認知症観」をたたき台に、現状を分析し、在るべき姿を描いた。
「新しい認知症観」とは、国が2024年に策定した認知症施策推進基本計画に盛り込んだコンセプト。認知症の人を「支えられる存在」ではなく「役割や希望をもって暮らす存在」と捉え直し、その上で ① 理解促進 ② 生活のバリアフリー化 ③ 社会参加の機会確保-に取り組むというのが同基本計画となる。
ただ、「新しい認知症観」は、「知る人ぞ知る」で、社会にまだそれほど浸透していない。紀伊信之高齢社会イノベーショングループ部長は「講演会や啓発イベントなど、これまでの施策で知る機会は増えたが、重要なのは、日常生活の中で認知症の人と自然に接し、共に時間を過ごすこと。残念ながら、まだまた“共に過ごす機会”が少なく、認知症の人と一般社会の空間が分かれている」と、理念と実態の乖離を説いた。
同社では乖離を埋める取り組みとして、阪大や岡山市と共に「通所介護施設における社会参加活動」をテーマとする共同研究を実施した。同研究に参画した山川みやえ阪大大学院老年看護学研究室准教授は「これまでは認知症当事者の楽しみや余暇の充実に主眼が置かれていたが、これからは、誰かの役に立つ、必要とされるといった社会的役割に重きを置くべき。介護施設は『ケアを受ける場所』から『社会とつながる場所』へと変わっていってほしい」と共同研究の成果を踏まえ、在るべき方向性を語った。
【グッド・ポイント】
●時宜にかなった問題提起
- 高齢化が進み、必然的に増加する認知症罹患者にどう対応すべきかー。この今日的課題に対する一つの解として「社会参加」を取り上げ、問題提起したのは時宜にかなっている。
- 94歳の、もと保健師の女性が、幼児の面倒を見ることによって、低下した認知機能・身体機能が、要介護4から要介護1のレベルにまで回復した話が印象深い。
【要チェック箇所】
●欲しかった、認知症を巡る最新データ
- 大前提として、認知症罹患者の数はどのくらいで、これから先、どういうカーブで増えていくかについて、全く触れなかったのが残念。65歳以上で5人に1人が認知症になると言われて久しいが、最新のデータから何が読み取れるのか、若年性認知症の動向はどうなのか-など、多くの人の身近な問題「認知症」の昨日・今日・明日を概説して欲しかった。

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