日本経済新聞 2019年11月18日 2:00配信記事より
急速な技術革新とグローバル化に向き合う企業が法務機能の変革を迫られている。法令順守(コンプライアンス)を中心とした「守り」の法務から、世界の主要拠点の法務機能を集約して問題解決にあたったり、新しい市場の成長を妨げないルールづくりを政府や当局に働きかけたりする「攻め」の法務への転換を探っている。
法的リスクを勘案した経営判断が求められているのに、日本企業の法務部門の存在感は大きいとはいいにくい。経済産業省がまとめた報告書によると、法務部門が経営陣から意見や判断を求められる頻度は、主要な米国企業の7割が「毎日」「週数回」と答えたのに対し、日本は半分の企業が「月数回」と答えた。
経産省は近く、企業の法務部門の人材がどんな能力を求められているかという指針を公表する。国際競争力を引き上げるために、CLOから管理職、一般社員と階層別に分け、国内外の法的なリスクをどう分析し、対応するかといった事例を示す。経産省の桝口豊・競争環境整備室長は「法務の人材はイノベーションの推進役になるように経営に関わっていく必要がある」と話している。
企業の法務部門が注目を集めています。記事では大企業、スタートアップなどの事例が紹介されていますが、旧来のある意味過度な守りの法務ではなく、積極的に「やりたい事を実現する」「企業価値を向上させる」ことを使命としている様子が伺えます。また、CLOなど役員クラスの責任者を設置し、法務をただの社内機能ではなく、経営の武器にしようという企業も増えてきました。

他方、一部の企業では、法務がただのチェック部署になっていたり、法務にやる気があっても、経営陣が活かし切れていない、といったケースを伺いますが、双方の意識改革が重要だとも感じます。決められた事をレスポンスするだけの部署と、積極的に企業価値向上に繋がる動きをする部署では、中長期的な価値に大きな差が生まれるのではないでしょうか。

また、法務部門は監査役も一次的な、また身近な相談相手として活用できるはずですが、十分に活かし切れている方はさほど多くないように見えます。もちろん法務部門は執行側ですのでその点は留意する必要がありますが、監査役側に法的知識がなく空中戦になってしまうような際には、法務部門の見解があるだけでも論点整理など役立つのではないでしょうか。

ちなみに、法務人材は多くの企業で人手不足とも聞きます。優秀な人材獲得のためにも、早いうちから優先度を上げて採用することも必要かと思います。