2008年05月13日

サッカーを通じて覗いた世界

学期が終わったので、買い込んでいた本をちょこちょこ読んでいるんだけど、今日はその中でも面白かった本をご紹介。「ゴール裏で日向ぼっこ」という、サッカーが専門の記者が書いた本だ。私はサッカーには全然興味がないんだけど、書評で「サッカーを通して世界を知る」という趣旨のことが書いてあったので、面白そうだと思って選んだ本だ。

ゴール裏で日向ぼっこ―熊さんの世界フットボール探検隊


アメリカではサッカーは全く人気がないけれど、ヨーロッパ、南米、アフリカ(全ての国ではないけど)ではとにかく人気だ。2006年のワールドカップのとき、留学生は顔を合わせる度にワールドカップの話ばかりしていた。自分の国のチームのユニフォームを着ている人も沢山いたし、それを見て「昨日はあなたの国、すごかったね!」と声をかける人も沢山いた。一方、アメリカ人はワールドカップが開催されていることすら知らない人がほとんど。留学生は「どうしてサッカーの面白さが分からないのか理解できない!」と、アメリカ人を揶揄しつつ、結束を固めていた。その対比がなんとも不思議だったのを覚えている。
この本は、Numberや週刊文春など、雑誌に連載された原稿がまとめられたオムニバス形式になっている。特に週刊文春では、サッカーに興味がない人にも向けて書いたからだと思うけれど、サッカー好きじゃなくても面白く読める。様々な国のファンの行動を通して見えてくる国民性、サッカーの試合時にしか自分の国(当時は地域)を大っぴらに応援できなかったというラトビアの政治的事情、チームがその地域に与える影響など、興味深いエピソードばかりだ。

私が特に考えさせられたのは、アルゼンチンを始め、南米のサッカー場では監督を含め、傘をさしているひとが多いという記述。どうして傘か、というと、なんと上の方の席からおしっこをかける人が沢山いるからだと言う。それだけ読むと、「なんて過激な国民性!」と思うだけで終わってしまうけれど、本当はそれだけじゃないみたいだ。経済格差の大きい南米の国々で、下の方、つまりフィールドに近い席に座れるのはお金持ち。上の方、あるいはゴール裏など、フィールドを眺めにくい場所に座るのは貧しい人たちだという。サッカー場は、「試合でエキサイトした」という理由の下に、彼らが社会に怒りをぶつけられる数少ない場でもあるわけだ。

そして、著者を含めた取材チームはフランスのジダンの故郷、カステラーヌという団地で強盗に逢っている。ジダンの父親はアルジェリアから渡ってきた移民で、ジダンの生まれ育った団地は、現地では「悪の巣窟」と同義語として使われているという治安の悪い地域。そんな環境で、成功して団地を出て行くには、サッカーが唯一の手段だったという。それは、アメリカでアフリカンアメリカンがバスケの選手か歌手になるしか成功の道はない、と言われていたのと似ているけれど、恥ずかしながら、フランスでもそのような現状があるとは私は知らなかった。

また、人種問題という意味で、南アフリカのサッカー事情についての章も初めて知ることばかりだった。アパルトヘイトが長く続いていたこの国で、サッカーは黒人のもの、白人はラグビー、というのが長い間の決まりだったようだ。そして、この章で取り上げられているナショナルチームのメンバーは混血。白人と黒人のどちらにも属せず、居場所のなかった混血の人たちの中で、彼らはサッカーで成功した最初の人たちだという。その一方で、抜きん出たサッカーの技術という切り札を持たなかった人、持っていたけれど白人に虐げられてそれを失った人、大多数の人たちが現在も住む地域の現状も描かれている。「希望を持てるのは子供のうちだけ」という、その地域に住む人の言葉が心に重く残った。

もちろん、こういうシリアスな話だけじゃなく、読んでいて楽しい話も沢山ある。超能力者(?)、ユリ・ゲラーがオーナーで、マイケル・ジャクソンもチェアマンだというイギリスのサッカークラブの話、犬におしっこをかけられたスパイクを履いたらものすごく調子が良かったから、それ以来毎回験を担いで犬を連れてきたという話、そして、なんと言ってもサッカーに興味がない私でさえ知っている、有名なサッカー選手たちの様々なエピソードは(ペレがナイジェリアに遠征に行ったとき、ペレ見たさのあまり、国内紛争が4日間停戦になったという。また、暴言を吐いたペレを退場させたレフェリーが観客の怒りを買い、逆に退場させられたこともあったらしい)とても面白い。それに、各国のファンの様子を描写するなかで、その地域で普通に暮らす人たちの素朴で魅力的な人柄が垣間見えてくるのがとても良かった。

サッカー好きの人だけじゃなく、海外の国の様子に興味のある全ての人にお勧めしたい本です。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/cosme/51506790
この記事へのコメント
早速興味が沸いてしまいました!読んでみます
Posted by そば七 at 2008年05月15日 22:56
そば七ちゃん、

コメントありがとう!
うん、面白いのでお勧めです♪ 結構分厚い本なんだけど、私は一気に読みきっちゃったよ。読んだら今度感想も聞かせてね。
Posted by Fumi at 2008年05月15日 23:19