◎新日鉄、価格交渉で優位=アナリスト
◎価格決定権が自動車メーカーから鉄鋼メーカーへ=アナリスト
◎日産、今回の操業停止めぐる憶測報道に対し近く何らかの対応示す可能性大きい=アナリスト
[ライブドア・ファイナンシャル・ニュース 25日 東京] 日産自動車<7201>は25日、自動車製造に使用する鋼材の調達見通しが困難になったとして、国内3工場を5日間、操業停止することを明らかにしたが、市場の一部には、鋼材は調達可能だが、鋼材供給元の新日鉄との価格交渉が難航しているのが本当の理由との憶測がくすぶっている。
こうした憶測について、ライブドア証券の自動車担当アナリストの田部井美彦氏は、「この時期には、半年か一年先の鋼材価格の交渉が決着しているのが普通だが、日産と新日鉄との交渉はまだ決着していない」ことに疑問を呈した。その上で、同氏は「新日鉄側が優位に交渉を進めようとしているからではないか思う」とした。
同氏は、新日鉄の優位性について、「鋼材需要が高いことに加え、自動車向けには良質の鋼材が必要で、中国や韓国よりも日本の鋼材が良質なため、自動車メーカーは日本の鋼材を買わざるを得ない状況にあるからだ」という。
また、市場には新日鉄は余剰生産能力がありながら、交渉を有利に進めるため、需給逼迫を交渉の材料にしているのではないかという穿った見方があるが、新光証券の自動車担当のシニアアナリストの北山信次氏は、「実際、新日鉄はフル生産活動で余剰生産能力はない」と否定的な見方だ。
同氏は「日産は中期経営計画(NISSAN 180)の期間中に、全世界で100万台の販売増を目標として掲げていることに加え、新型6車種を一度に投入するなど、現在は大量の鋼材が必要で、このため、新日鉄優位となっている。かつては、自動車メーカーが価格の決定権を持っていたが、(今では)鉄鋼メーカーの方に移ってきている」と述べた。
ただ、田部井氏は、操業停止をめぐっては市場にさまざまな憶測が飛び交っていることから、「日産は近く、何らかの対応を示すのではないか」と述べた。しかし、「価格交渉の途中であり、新日鉄に足元を見られるのを避けるため、今回の一時操業停止の理由をはっきりさせることはしないだろう」と話した。
今後の日産自動車の株価への影響について、同氏は「最近の円高によって、同社の株はすでに売られており、この報道によって、さらに同社の株価が下がる、ということはないだろう」と指摘した。
日産は3工場の操業を5日間停止することで2万5000台の生産に遅れが生じる見込みだが、今回の操業停止が当初の5日間の発表からさらに延期する可能性があるかどうかについて、日産自動車の広報担当者はライブドア・ニュースに対し、「報道内容に間違いはない。操業停止期間は5日間と見ており、それ以上の操業停止はないと考えている」と操業停止は一時的とした。
同担当者は「顧客に迷惑がかかるが、2万5000台の生産の遅れは、来年1月以降の工場の臨時稼動で取り戻したい。収益に対する影響は軽微だ」と述べた。 (了)
岩城伸也記者
(参照:http://blog.livedoor.jp/cowboymstn/)