今日は新シリーズ、セミリタイアシリーズです。





世の中、セミリタイア(ここでは、プチリタイア、アーリーリタイアと同義とします)を考えているサラリーマンは結構多いものです。

もちろん、マス層やアッパーマス層のサラリーマンは独立するだけの高度な能力を有するわけではないので、なかなかセミリタイアには踏み切れません。

そのため、セミリタイアのブログを見るとほぼ必ず出てくるのが、「お金を貯める」という発想です。

投資で増やす能力――投資能力――が欠如しているため、金融資産を運用しようにも「銀行への貸付金」=「預貯金」しか思いつかないのです。



そうではなく、投資能力を有する準富裕層以上の人々だったら、いつセミリタイアに踏み切るのが妥当でしょうか?

今回は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏の実例をとりあげてみます。

バフェット氏のセミリタイアについては意外と――というより、ほとんど――知られていません。

今回はそんなレアなトピックをとりあげます。



「スノーボール(上巻)」のp321によれば、バフェット氏は26歳の時(1956年)、セミリタイアしています。




それまではバフェット氏は、ニューヨークのヘッジファンド「グレアム・ニューマン」でサラリーマンとして働いていました。グレアムとニューマンは、当時のパートナー(監査法人でいう「社員」です)の名字です。

いかにも将来大人物になるバフェット氏らしく、有名大企業ではなく、当時きわめてまれな職種だった「ヘッジファンド」で働いていました(「ヘッジファンド」という言葉すらなかった時代です)。

26歳という若さでニューヨークでのサラリーマン生活を終え、出身地であるネブラスカ州のオマハ――人口40万人の片田舎の地方都市――に戻ってきたバフェット氏は、そこでセミリタイア生活を始めました。

それは、自分のヘッジファンド「バフェット・パートナーシップ・リミテッド」を経営することです。





セミリタイアブログでは、投資能力に乏しいサラリーマンと思しき方々がブログを書いていたりします。

ですので、大半のセミリタイア者は、著名投資家であるウォーレン・バフェット氏やジョージ・ソロス氏の実例などまったく知らないと思われるのです。

おそらくは、バフェット氏やソロス氏がサラリーマンをやっていたことすら、知らないことでしょう。

ちなみにソロス氏の場合、セミリタイア=独立に踏み切ったのは39歳(1969年)のときです。

ソロス氏はセミリタイア後、テニスにはまり込み、こんな「名言」を残しています。

「億万長者になって得られた一番はっきりわかるメリットは、テニスがとてもうまくなったということだ」



さて、上記の「スノーボール(上巻)」によれば、当時26歳のバフェット氏はこんな状況でした。

「手元におよそ174,000ドルの金があったので、引退しようと思った。オマハのアンダーウッド通り5202番地の一軒家を月175ドルで借りた。わが家の生活費は年12,000ドル。私の資本は増え続けるはずだった。」

実際その後増え続けたのは、万人の知るところです。



さて、この記載から以下の2つのことがわかります。

①バフェット氏のセミリタイア時の金融資産は、年間生活費の14.5倍あった(174,000÷12,000=14.5)。

②バフェット氏のセミリタイア時の金融資産は、家賃の994倍あった(174,000÷175≒994)。







したがって、投資能力のある方がセミリタイアを実行に移そうと思ったとき、以上の2条件を満たしている必要があります。

なぜなら事実上ほとんどの方は、バフェット氏ほどの投資能力を有していないからです。


ここで、こんなふうに考える方がいたとします。

「174,000ドルといえば、1ドル=100円だとして、1,740万円だよな」
「それくらいだったら、俺だって持ってるぜ!」





いえいえ、違います。

丁寧に解説してみましょう。

当時の1ドルの価値は、今の1ドルと同じ価値ではありません。

以下のサイトを使って、消費者物価指数で換算してみます。

http://www.usinflationcalculator.com/inflation/consumer-price-index-and-annual-percent-changes-from-1913-to-2008/

1956年5月、バフェット氏がネブラスカ州オマハで自らのヘッジファンドを立ち上げたとき、消費者物価指数は27.0でした(1982年~1984年を100としているようです)。

そして現在――2014年3月とします――、消費者物価指数は236です。

したがってバフェット氏のセミリタイア時の金融資産の現在の価値は、
 174,000ドル×(236÷27.0)≒1,520,000ドル

となります。

1ドル=100円で換算するなら、1億5,000万円です。

これは当ブログで紹介した野村総研の記事の区分にあてはめると、金融資産1億円以上5億円未満の「富裕層」に相当します。



さすがにここまで金融資産を有するサラリーマンはまれでしょう。この当ブログの記事でも紹介しているように、富裕層(及び超富裕層)は、5.0+76.0=81.0万世帯(全世帯の1.6%)しかいないのです。

しかも、その81.0万世帯のうち、80%は55歳以上です。55歳ではとても「アーリー」リタイアとはいえません。



セミリタイアに心を動かされているサラリーマンのみなさん、ご自身の状況をバフェット氏のセミリタイアの実例に当てはめてみましょう。

上記の条件を満たさずにセミリタイアを考えるのは、安易な現実逃避にすぎないのです。