「こ、このブログ記事はまさか・・・!!」
「なんだこのブログ主。また過去記事の再掲か」
「少しはオリジナルの記事書けよ」


・・・・・・。

まあいいです。続けます。



この記事はそもそも、「日本人投資家は何パーセントまで投資収益率を出せるのか」という論点からスタートしました。

その際に、ウォーレン・バフェット氏の生涯投資収益率を算定し、日本人投資家がその収益率を超えることは現実的に困難であろうから、それを参考にしようとしました。

しかし、バフェット氏の投資収益率の算定だけでも、かなり論点が残っているのです。

そこで、あらためてバフェット氏の生涯投資収益率をシリーズ化することにしました。

それでは皆様、しばし「オマハの賢人」の生涯投資収益率に思いを馳せてください。



投資家の実績を測定するには、投資リターンをみなければなりません。

たとえば、10年間で運用資産を10倍にした投資家がいたとしましょう。

このときのリターン(以下、リターンといえば年率をさすこととします)は、10^(1/10)=1.259…ですから、およそ25.9%ということになります。


「はは、俺は凄腕トレーダーだぜ!」
「へー。どんだけ?」
「なにしろ、俺のこれまでの実績は999勝1敗だ!! どうだ、すごいだろー!!!」

いえいえ、たとえ1,000勝0敗でもリターンが何パーセントなのかはわかりませんので、勝敗はリターンを計測する上では無意味だということがわかります。

たとえば、このトレーダーさんとやらが運用資産を全て普通預金で運用していたとしましょう。すごい仮定ですが。

この方は、どういう期間で普通預金を解約しても全戦全勝になります。

しかしそれでは、リターンは0.1%に満たないはずです。

こんな投資家を優秀な投資家とは呼べないでしょう。



さて、ここで参考とすべきは、著名投資家のウォーレン・バフェット氏です。

なぜ参考になるかといえば、理由は以下の通りです。



① バフェット氏はForbesのランキング(世界長者番付)で常に上位に位置しており、偶然による実績とは言いがたいこと。
 (1990年代以降20数年間にわたって、バフェット氏はおおむね1位~4位に位置しています)(※1)

② 自分のリターンを公開していること。
 (バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ社のアニュアル・レポートにおいて公開されています)

③ バークシャー社は上場会社であるため、②のリターン算定の元資料である連結財務諸表は監査法人の外部監査を受けていること。



これだけの条件を兼ね備えた投資家は他にいません。

ジョージ・ソロス氏、ジョン・ポールソン氏、レイ・ダリオ氏、ジェームズ・シモンズ氏も著名投資家ですが、彼ら自身のファンドは上場会社ではありませんので、透明性という観点ではバークシャー社に見劣りします。

ジム・ロジャーズ氏に至っては、Forbesにランクインしておらず、会計監査も受けておらず、リターンの公開すらしていません。


そう、この③の論点は非常に重要なのです。

なぜなら、「自分はこんだけすごい成績をたたき出した」と言っている方のほとんどが、公認会計士による外部監査など受けていないからです。

たとえば、その方が法人成りしていて、資産運用会社を設立していたとしましょう。

しかし、株式会社の場合、資本金5億円以上(または負債総額200億円以上)でなければ、会社法上会計監査を受ける義務はありません。

資本金5億円以上あるということは、法人成りする時点で自己資本で5億円調達できているということです。

そんな方は、ほとんどいないことでしょう。

世帯金融資産が5億円以上ある世帯は、日本には0.1%(=5.4万世帯÷5,250.3万世帯)程度しかないのです。

http://www.nri.com/jp/news/2014/141118.aspx

それだけではありません。

会社法上会計監査を受ける義務があってもこっそり隠れて会計監査を受けていない会社すらあるのに、そんな義務すらない会社が自ら進んで会計監査を受けるとは、きわめて考えにくいでしょう。

http://president.jp/articles/-/933

しかも、たとえ東証一部上場会社のように高品質(※2)の会計監査を受けていたとしても、東芝やオリンパスや日興コーディアル証券やカネボウや西武鉄道のような「粉飾決算」は起きうるのです。

何の会計監査も受けていない個人投資家の自己申告リターンなど、何の信用性もありません

「でもさ、投資事業有限責任組合なら法定監査マストだよね」

おお、詳しいですね。あなたは公認会計士ですか?

投資事業有限責任組合は、組合では税金を負担しません。個人にリターンが分配されたときに、初めて、個人で課税されるのです。

つまり、投資事業有限責任組合のリターンは税前利益なのです。

これでは比較対象になりません。

同じように、バフェット氏の組合(ヘッジファンド)だったバフェット・パートナーシップ・リミテッド(組成期間:1956年5月~1969年12月)も比較対象にはなりません。

ですので、次回以降、バフェット氏のバークシャー社での実績を検討していきたいと思います。




(※1)バフェット氏の直近15年の世界ランクは、Wikipediaで確認できます。これによれば、バフェット氏の資産は727億ドルです。
http://en.wikipedia.org/wiki/The_World%27s_Billionaires

が、一方で以下のサイトによればバフェット氏はこれまでに(現在の時価で換算して)230億ドル相当のバークシャー株の寄付をおこなっています。ですので、もしまったく寄付をおこなっていなければ、727+230=957億ドル(1ドル=125円で換算すれば、12兆円です)になっていたことになります。いいですかね、資産12兆円の大富豪ですよ。
http://blog.livedoor.jp/cpa_capitalist-index/archives/1010805481.html


(※2)監査業界をご存じでない読者のために解説しますと、監査業界は、普通の業界と同じで、大手に優秀な人間が集まります。そして、普通の業界と同じで、大手の中の大口得意先――会計監査を受ける上場会社――に優秀な人間があてがわれます。

東芝の粉飾問題で監査法人の責任を問う声もありますが、間違いなく、東芝を担当している公認会計士は、平均レベルの公認会計士より優秀なのです。

そんな彼らですら検出できなかった粉飾は、誰が会計監査をやっても検出できません――たとえ、今回の事件で嬉しそうに監査法人の責任を指摘するような人がやっても――。
http://jp.reuters.com/article/2015/07/29/interview-toshiba-gouhara-idJPKCN0Q309Y20150729?pageNumber=4&sp=true