もういちど、1998年末のバークシャー社のB/Sをみてみましょう。

(単位:百万ドル)
のれん18,446負債64,834
その他の資産103,791純資産57,403
122,237 122,237

http://www.berkshirehathaway.com/1998ar/1998ar.pdf


あらためてみると、「のれん」は純資産(ここでは自己資本のことです)の1/3程度を占めていることがわかります。

18,446÷57,403=0.321...

そして、「のれん」は日本の会計基準では5年~20年の期間で、償却していきます。

簡単にいうと、5年~20年後には、「のれん」はゼロになるのです。



これは強烈なインパクトです。



「のれん」には、税効果会計は適用しません。

たとえば「有形固定資産」100を減損しても、税効果会計が適用されるので、「繰延税金資産」は35くらい計上できます。

ですので、純資産に与える影響は100-35=65ですみます。

有形固定資産を100減損しても、純資産は65しか減らないのです。

しかし、「のれん」には税効果会計を適用しません。

「のれん」を償却あるいは減損してゼロとなったとき、つまり、「のれん」が18,446百万ドルからゼロになったとき、それはそのまま純資産が18,446百万円減少することを意味するのです。



いってみれば、このときのバークシャー社の純資産は、こんな意味不明な資産で1/3が吹き飛ぶ可能性のある状態だったのです。



しかも、バフェット氏は、かなり昔から「のれん」の償却には否定的でした。

1983年のアニュアル・レポートには、こんなことまで書いています。

Another reality is that annual amortization charges in the future will not correspond to economic costs. It is possible, of course, that See’s economic Goodwill will disappear. But it won’t shrink in even decrements or anything remotely resembling them. What is more likely is that the Goodwill will increase – in current, if not in constant, dollars – because of inflation.

In analysis of operating results – that is, in evaluating the underlying economics of a business unit – amortization charges should be ignored. What a business can be expected to earn on unleveraged net tangible assets, excluding any charges against earnings for amortization of Goodwill, is the best guide to the economic attractiveness of the operation. It is also the best guide to the current value of the operation’s economic Goodwill.
http://www.berkshirehathaway.com/letters/1983.html



「だるい・・・・・・」
20150920-1



そうおっしゃらずに、英語を読んでみましょう。



この英語を読みますと、要するにバフェット氏は、のれんを償却する会計処理はおかしいと言っているのです。

1983年から20年近くにわたって、のれんを償却する会計処理はおかしいおかしいおかしいー!!!と言い続けてきたのです。



そして、1983年からの20年間とは、バフェット氏の知名度と影響力がアメリカ中に広まった時期でもあります。

念願かなって、アメリカの会計基準では、2001年から、「のれん」の償却をやめることになりました。

ちなみに、以下の企業会計基準委員会のプレスリリースのp.8に記載されています。
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/press_release/domestic/sme21/sme21.pdf



日本の会計基準はおおむねアメリカの会計基準を参考にしています。

IFRSではなく、アメリカの会計基準にかなり近い会計基準になっています。

しかし、この「のれん」の償却だけは、アメリカとは違い、もちろんIFRSとも違い、日本基準では償却することとされ続けているのです。


もし、バークシャー社が日本にあり、日本の会計基準を適用していたら、バークシャー社の純資産は「のれん」の分だけ小さくなっていたことでしょう。

なにしろそのインパクトは、純資産の1/3に及ぶのですから。



「なるほど、バフェットにとってはアメリカの会計基準が都合がよくなったってわけか」
「つーか、バフェットがアメリカの会計基準を自分に都合がよくなるように変えたってことだろ」
「バフェットこええ。。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」


まあ、そういう見方もできます。

あるいは逆に、バークシャー社からみると、買収した会社の企業価値は間違いなく増加しているのに、それは年々純利益を計上することでしか、バークシャー社のBPSには反映されないともいえます。

ですので、バークシャー社のBPSは、過小評価されているとも考えられます。



この論点は、別の話にもつながります。

かつて当ブログのこのシリーズで、バークシャー社の後期(1995年~2014年)のリターンは落ちていないことを紹介したことがあります。

その理由の一つには、2001年の買収以降は、「のれん」の償却がされなくなったことも影響しているのです



いかがでしたでしょうか?

会計と英語はとても重要です。

会計と英語の理解なくては、バフェット氏の行動は、いや、リターンですら、あまり理解できないことでしょう。

今回の内容は難しかったかもしれませんが、長かったシリーズの最終回として、ちょっとだけ本気を出してみました