2021年06月25日

戦友を売る行為

戦争に関してカトケンが罪悪感を持ってしまったのは、
遠くの他人の国の戦争を、自分の立身出世のために売り続けて
きたこと、という点の話になったので、以下、
めるまが「異種会議」2016年5月3日号から抜粋・・

【戦友売りで穴埋め】

 10年以上前までつき合いの濃かった出版社編集者と再会し
「カトケンはなぜ、あの頃から、軍事専門雑誌だけに売り込むように
なって、一般雑誌から逃げたのか、という話題になった。
たしかに、お声がかかれば喜んで仕事をしていたが、一般雑誌には
自分から売り込みに行かなくなっていて、それにはキッカケがあった。
 1995年2月のチェチェン戦争の取材では、戦争写真として重要と
されるほぼ全ての写真を撮れて、売り込みにまわっていた。重要とされる
写真とは、戦闘中と明白にわかる戦闘シーン写真、至近の兵士が戦死する
瞬間の写真、細部まで克明な兵器の写真、大統領や野戦司令官
など有名指導者の写真とかだ。チェチェン人独立派部隊だったので、
ドダエフ大統領、シャミール・バサエフ野戦司令官をはじめ、その後、
ロシア側へ寝返るチェチェン側大物の写真もあった。
 で、売り込みにまわっていた一般総合雑誌編集部で、一通り、全ての
写真(スライドフィルム)をルーペで興味深く観ていただいた結果
「うちの雑誌、最近、こういう戦争モノやらないことになったんですよ」
と言われ売り込みは断られた。このとき、カトケンとしては、自分は
やってはいけないことをしていたんだということを悟った。
 チェチェン取材では、8日間の戦闘で同行部隊の戦友が4人戦死し
7人が負傷していた。戦友の死と引き換えに撮らせてもらった写真を
たかが商売のために持ちまわってしまった。しかも、戦争写真なんか
掲載する気がないのに興味だけで写真を見たがる編集部へ持って行ったこ
と、死んだ戦友に対して申しわけなさすぎる。あのチェチェンの戦場を
一緒に過ごした戦友士として、カトケンはやっていけない「戦友売り」
をやってしまっていたことに気づかされた。
 最初は、写真だけ見たいけどやる気ない編集部の姿勢にちょっと
ムカついたが、すぐに、自分の「戦友売り」に対する警告かもしれない、
と気づいた。もともと、カトケンは、報道写真家になりたくて戦場へ行った
わけではない。軍人になって戦場へ行こうと、外国の軍隊に志願したものの、
近眼や国籍の問題で不採用とされ、しかたなく報道という手段を採っていた
のだった。つまり、戦友を売るために戦場へ行ったのではない。その自分の
本意を瞬時で再認識させられたのだった。
 以後、1誌の例外を除いて、一般雑誌へ自分から売り込みを辞めることに
した。その1誌の例外とは、写真週刊誌「フォーカス」。フォーカスだけは、
不採用という結果になるとしても、見せた写真に対して、編集部が敬意を
払っている姿勢が明確だったからである。
 とはいっても、一般雑誌ではなく、軍事専門雑誌に対しては売り込みは継続
していた。軍事専門雑誌なら「戦争モノはやらない」という理由で断ってくる
ことはないからだ。自分の取材の内容不足で掲載されないのは仕方ない。
といっても、じょじょに、軍事雑誌に対する売り込みに対しても「戦友売り」
の後ろめたさは感じるようになってゆく。
 そして、2003年イラク戦争の写真を一通り売り込んだあとは、自分
からの売り込みは、馴染みの軍事雑誌に対しても一切やめた。もう、戦友売り
では、じゅうぶんすぎるほど稼いだから。ホントなら、出版社側から依頼
されても、戦友売りは断ったほうがカッコイイのかもだが、カトケンもまだ
そこまでカッコよくは生きられない。戦友売りをしたからといって、戦友たち
に直接の実害や損失を与えるわげではないし、もしかしたら、異国の雑誌に
自分の雄姿が掲載されていることに喜ぶ戦士もいるだろう。まあ、つまりは、
カトケン自身の自分の心の問題だ。
 そんな中で、1つ感じたことは、ガンガン売り込んでは自分の戦場体験を
多くの人に拡散しようとしていた頃は、なにか満ち足りないものがあり、
自己アピールすることでなにかを埋め合せようとする焦りがあっのかもしれ
ない、ということ。かといって、ガンガン売り込んでたときに足りてなかった
穴が埋まるほどの経験をしたわけではなく、年数とともに自分が変わった
ということなのだろう。
 そして、そのキッカケとなったのが、前述の、やる気のない編集部の対応
だった。今思えば、あのやる気ない態度で、イケイケガンガンなカトケンを
戒めてくれた編集部に感謝だね。ただ、満ち足りない隙間があるほうが人間は
向上心をキープできるものだということも感じてる。ガンガン自己アピール
してる煩い人には、強い向上心を感じる。

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cpiblog00048 at 15:59│Comments(0) 超音波計画 

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