、最低気温9℃、

昨日降り出した雨が今日もなお降り続き、地獄谷は濃い霧に包まれた。五月最後の日曜日。どうしたものか、サルたちが来ない。降り続く雨に動くのが嫌で森で身を縮めているのだろうか。雨脚は相変わらず強いが捜索に出ねばなるまい。まぁそのうちに現れるだろうが、ここは若さに任せ職員Tに行って貰う。ところが職員Tから一向にサルたちを見つけたとの報が入らない。降りしきる雨と霧で難航しているようだ。こんなときは雨と霧に阻まれサルたちも我々もお互いに声も届かなければ視界も効かず、気配が分からない。私も捜索に向かう。

捜索し始めしばらくすると職員Tから連絡が入る「サルたちを見つけた」と。やれやれ、これでなんとかなる。状況を聞いた様子から判断してサルたちが通るであろう方向に先回りして呼ぶことにする。霧の奥から微かにサルの声がした。よしよし!、と思い近づいたら、群のサルたちと違うハナレザルだった。いくら呼べども群のサルたちの来る気配が無い。職員Tと連絡を取ると途中まではサルたちと一緒だったのだが見失ってしまい、自分のいる位置も見失ってしまったという。まぁこの天候では致し方ない、数メートル先が雨と霧でかすんで見えない。分かるルートに戻るよう指示して、気持ちを切り替え、情報からサルたちの居そうな方向に向かう。既にお昼近い。

延々山を登り、目指す場所に近づくと霧の彼方から微かにサルの声がする。今度こそは、声のする方向に進むと確信に変わった。群のサルたちだ。結局、居た場所はこの群の行動範囲の最深部、こんなところまで来ることは年に何度も無い。クマザサの芽を食べていた。既にお昼を過ぎている、急がねばならない。職員Tと交代した職員がこちらに向かっている。群の周囲を歩きサルたちを誘導する、サルたちは霧の中に姿を消した。渋々公苑方向に向かっているようだ。群の後を追って山を下る。上って来た職員と合流し、私が先頭を引き、殿を頼み、誘導を試みる。ところが途中間で下ったがサルたちが付いてこない。群は動きを止め、中には来た方向に戻って行く者も居る。霧でお互い仲間の位置がつかめず、動くに動けないのか。再び山を登って先頭と殿を交代し、群の後方に回る。前と後ろで脅したり、すかしたり、しても一向に公苑に向かう気配が無い。既に3時を過ぎた。もうあきらめるより無い。

ついにサルたちを公苑に連れてくることができなかった。こんな予定ではなかったので飲み水も食料ももたず、飲まず食わずで一日中、雨の降りしきる山の中を歩き回り、事務所に戻ったのは4時。疲労困憊、全身ずぶ濡れ、散々な一日だった。この時期こんなに手こずる事は無いのだが…