2005年08月30日

2決算が締まらない(9)

会社は急成長しています。経理体制は追いついていきません。

 書類が増えていきます。書類の山の中に机が埋もれている感じです。
なにがどこにあるか、さっぱりわからなくなってきます。

私「もっちゃん!この仮払金の仮払精算書と領収書どこ?」
森本さん「はっ、はい。たしか、この辺ですが・・。」

うずたかく積まれた書類をごそごそ捜しています。
さっぱりでてきません。
ファイリングが追いつかないのです。

 経理の実務は、ファイリングに始まりファイリングに終わります。

領収書や契約書を確認できないのでは仕事になりません。

書類を整理するには書棚や梱包用の箱も必要です。

 ライズ社は仕入代金以外の出金は郷原会長の承認がないと出金できません。

社員は会長が怖いので、支払承認申請書を書くのを嫌がります。

なるほど無駄なお金を使わないので、利益が出る筈です。

(このブログは毎週、火曜日と木曜日に更新予定です。)
  

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2005年08月25日

2決算が締まらない(8)

 決算作業を進めている間にもライズ社の業容はどんどん拡大していきます。

 拠点が次から次と全国に増えていきます。
直営店がない地域ではフランチャイズ店ができています。

 直営店とは、ライズ社が自ら出店する店舗をいいます。
フランチャイズ店とは、地場の同業者とフランチャイズ契約を結んで直営店と同じイメージで出店してもらう店舗をいいます。

 資金の動きも日増しに大きくなっていきます。
経理に持ち込まれる書類の量も鰻登りです。

あたらしい拠点の経理や在庫管理などの書類も整備しなければなりません。
管理用のコンピューターシステムはありません。

すべて手書き資料になります。
拠点からは手書きの資料を毎日ファックスしてもらいます。

 日常の仕事がボリュームアップしていきます。
あわせて去年1年分の経理処理も進めます。
毎日遅くまで残業しても、さっぱりはかどりません。

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2005年08月23日

2決算が締まらない(7)

 現金出納帳の残高と実際にある金庫の現金があっているのに、須原さんは現金出納帳の出金合計額が違っているといいます。

なにしろ、簿記の勉強もしたことのない、新人です。ここは、丁寧に説明する必要がありそうです。

私「須原さん、経理ではいったん帳簿の残高を出して、実際の残高と合っていることを確認しているんです。帳簿で出金の合計を計算間違いしたら帳簿と実際の現金残高があわないはずだよ。
だから須原さんの計算が違っているんだろうね。」

 話を聞いていた三浦課長が、何故かニコニコして話しに入ってきます。

少し、嫌な予感がします。

三浦課長「先生、それでいいんですよ。」

課長は金庫を開けて、なんだかビニール袋を引っ張り出しています。

三浦課長「ほら、合わない現金は、ここにちゃ〜んとありますから!」

私「み、みうら課長、合わなかったら、調べなきゃ、だ・・駄目ですよ・・」

な、なんと課長は帳簿残高を出して、金庫の残高を無理矢理、帳簿に合わせていた訳です。


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2005年08月18日

2決算が締まらない(6)

 さて翌日です。朝、経理に顔を出します。

森本さんの姿がありません。机の上に仕訳帳が真っ白なまま置いてあります。

須原さんが、鼻から抜ける声でぼそぼそと話しかけてきます。

須原さん「せんせ〜、もっちゃんにあんな難しいことやらせちゃ駄目ですよ〜。あのあと、“う〜ん”って唸ったまま6時間腕組みしてましたよ〜。」

須原さん「ところで、せんせ〜、手書きの現金出納帳の出金の合計額が合わないんですよ〜。」

ライズ社では、支払依頼書で入出金をした後、入金と出金の内容を現金出納帳に記載しています。

1日の現金出納業務が終わったら入金と出金の合計額を出して、帳簿上の残高を計算します。

前日の残高に当日の入金を足して当日の出金を控除した帳簿残高と実際の現金残高が一致させて業務終了のはずです。

普通は、出金合計額の計算を間違えると、計算した現金残高と金庫にある現金残高が合いません。

須原さんは、この理屈が分かっていないようです。

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2005年08月16日

2決算が締まらない(5)

 もう5月も終わりに近づいています。7月までに1年分の取引について仕訳を起こして、会計システムに入力します。

猶予はありません。分担を決めて作業を進めます。須原さんには現金や出納帳を、森本さんには振替仕訳を担当してもらうことにします。

 振替仕訳とは、物は引き渡して売上はあがったけどまだ入金されない取引や仕入をして物は届いたが支払をしていないなど現金や預金が動いていない取引を仕訳にすることをいいます。

 早速説明です。須原さんはとりあえず理解してくれました。
次は森本さんです。
私「例えばこの取引なんだけど、出金100万円のうち30万円が入金しているよね。

仮払金の残高は70万円、その払った先の領収書を確認すると70万円で仕入れ関係の書類も揃っているよね。

こういう場合の仕訳は仕入70万円、仮払金70万円と仕訳します。」

森本さん「う〜ん。そうですか。う〜ん。」

私「明日までにできるところまで進めておいて下さい。」

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2005年08月11日

2決算が締まらない(4)

 社長に直訴した甲斐あって(?)とにもかくにも人は手配してもらえたようです。現金を数えている三浦課長に話しかけます。
私「おはようございます。部屋が少し、広くなりましたね。後ろの机は社長の席ですか?」
課長「ああ先生、いつもお世話様です。お待ちしてました。コンピューターとプリンター届いてますよ。この机ですか?先生、先生の机ですよ。」

 えっ・・。私の机?またやられた・・。私が逃げ出さないように高価な机とイスを準備されたように思えてしまいます。
 まずは財務ソフトの立ち上げです。実は私はコンピューター音痴です。誰にやってもらおうかと見回します。

 経理のメンバーは、みんな私がやるものと興味深々のまなざしです。仕方ありません。事務所で業者の人が組み立ててた記憶を頼りにセッテイングを始めます。(先生とはお馬鹿さんに対する呼称である・・なんて呟いて・・。)

 作業半ばで女性職員が話しかけてきます。名前は須原さんというそうです。小柄で華奢な感じです。のんびりした感じで、声が鼻に抜けるような話し方をします。ついさっきまで高校生だったような雰囲気です。

須原さん「せんせ〜い、私、須原です。ビジネス専門学校でウインドウズって勉強しましたよ〜。でも経理はわかんないですよ〜。社長がお前は経理だって〜。ところで先生はお酒は飲みますか〜。」
私「よろしくお願いします。たのんますよ。色々勉強してくださいね。お酒は好きで毎日飲みますね〜」
須原さん「まあ、嬉しい。私も家で毎日飲んでるんですよ。一升くらいすぐ飲んじゃいますよね〜。」

 この子は未成年のような気がするのですが・・。これが仕事じゃなければ楽しいのですが・・・。森本さんと須原さんには、まず預金出納帳の記帳の仕方と振替仕訳を教えて、会計ソフトに入力してもらいます。三浦課長は現金で手一杯ですし、パソコンが使えません。まさしく金庫番です。
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2005年08月04日

2決算が締まらない(3)

 ライズ社の申告期限は7月です。できているのは現金出納帳だけです。しかもそこに記載されている勘定科目はすべて『仮払金』です。上場しようとしている会社です。売上は急成長しているようです。早速、津島社長に直訴です。

私「経理の現状を見てきました。とても上場を目指している会社とは思えません。パソコン1台ありません。使えそうな人もいません。回収できそうにない仮払金がかなりありそうです。」

社長「えっ!仮払金が回収できないのですか!(一瞬まずいなという表情です。動揺を隠すように続けます。)経理体制はばっちり立ち上げます。人も採用しました。必要なものはすべて買います。先生、大丈夫です。安心して下さい」

私「もう人は手当していただけたのですか?実務経験はある方でしょうか?」

社長「とりあえず、この中から選んでください。」

 社長が4、5通の履歴書を私の前に並べていきます。すべて新卒の社員です。
簿記の有資格者もいません。目の前が暗くなってきます。

 数日後、連絡をいただいて新しい経理の部屋に伺います。5坪くらいの広さでしょうか。以前よりは広くなっています。

 机が3っつ島になっていて正面に三浦課長、手前に向かい合わせで机が置かれており、新入社員と思われる男性が右側、女性が左側に座っています。奥に大きな机と革張りの高そうないすが置かれています。その机の上には大きな段ボール箱がいくつか積まれています。

 ひょろっとした感じの新入の男性社員が話しかけてきます。
新入社員「はじめまして、森本と申します。社長から先生のお話は聞いております。経験はありませんが、ご指導よろしくお願いします。」

 いかにも、人がよさそうで、にくめない感じです。

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