2013年01月

2013年01月25日

平成25年度税制改正大綱(1.基本的考え方)

昨日24日に公表された与党税制改正大綱は、
第一 平成25年度税制改正の基本的考え方
第二 平成25年度税制改正の具体的内容
第三 検討事項
に大別されるが、まずは第一の基本的考え方について検討したい。

安倍内閣の税制改正は「大胆な金融政策、機動的な財政政策、
民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」によって、これまでの
いわば「縮小均衡の分配政策」から、「成長と富の創出の好循環」へと
転換させ「強い経済」を取り戻す」ための政策税制となっている。

基本的考え方は大きく
1.成長による富の創出に向けた税制措置
2.社会保障・税一体改革の着実な実施
3.復興支援のための税制上の対応
4.円滑・適正な納税のための環境整備
の4つに分かれるが、民主党鳩山政権時の対応と明確に異なるのは、
前政権の功績も評価した上での政権交代を意識した対応でしょうか。

社会保障・税一体改革は民主党政権により実現に向けた歩みを始めた
税制抜本改革の方向性ですが、先送りされてきた相続税増税が、
民主党案の基礎控除3000万+600万×相続人数への切り下げや
最高税率55%に引き上げで答申されている点には驚きました。
また、車体課税の見直しや環境対応も民主党らしさとして
全面に出た政策だけに民主党案に近い形で答申されています。

また、公明党が強く要請してきた消費税軽減税率の導入については、
今回の大綱では見送られたが、年度末に予定される平成26年度の
税制改正大綱までに結論を得るものと明記された点は注目すべきだ。

自民党らしさは1.の随所に見られる。
(1)民間投資の喚起による成長力強化では、国内での設備投資のために
生産等設備投資促進税制を創設し、研究開発投資の拡充が盛り込まれた。
(2)人材育成・雇用対策では、所得拡大促進税制の創設、
子や孫に対する教育資金の贈与に対する非課税措置が盛り込まれた。
(3)中小企業対策・農林水産業対策では、
店舗改修等の設備投資の特別償却・税額控除制度の創設、
600万円まで90%損金算入とされている中小企業の交際費について
800万円まで全額が損金算入可能にすること等が盛り込まれた。
また、いわゆる事業承継税制について、5年間8割雇用維持を要件とする
雇用確保要件を5年平均で8割雇用維持に緩和し、使い勝手をよくする
措置が盛り込まれた。

また、今年度末を期限としていた住宅ローン減税を延長するとともに、
自己資金で長期優良住宅や低炭素住宅を取得した場合の住宅投資減税や
住宅リフォームに対する減税措置の拡充等、
消費増税に伴い需要の減少が見込まれる時期に向けた措置を講じる。
被災者が再建住宅を取得等する場合の最大控除額の拡充も図っている。

税の滞納が深刻化している現状を踏まえて、
延滞税、利子税の引き下げも行われる。
税の滞納が事業の継続を不可能にしているケースが増えているだけに、
払いたくても払えない零細事業者が救われるかもしれません。


cpta_taira at 20:31コメント(0)トラックバック(0)税制改正 

2013年01月18日

現代税法研究会で研究発表、補助税理士の専門家責任について

明日、1月19日土曜日15時〜18時、日本大学法学部で開催する
現代税法研究会・経営法学研究会(共催)において、
「税理士事務所内で不正行為を発見した補助税理士の専門家責任」
をテーマに研究発表をする機会を頂きました。
若干、報告タイトルは変わっていますが・・・
http://www.law.nihon-u.ac.jp/about/research/information.html

このテーマに取り組むきっかけは、
後輩がある税理士事務所から不当解雇されたことでした。
ちょっとやりすぎているのは事実ですが、
税理士の専門家責任について研究を進めてきたところでしたし、
給与所得の性質を労働法の立場から紐解くことはできないか、
ということにチャレンジしていたところでもありましたので、
結果的に最高裁まで上告された事件に首を突っ込んできました。

開業税理士・社員税理士であると補助税理士であるとを問わず、
税理士業務を行う税理士としての責任があることに変わりはない。
補助税理士は、雇用するボス税理士の指揮命令下における
補助的な責任が課されるといえるでしょう。
しかし、税理士資格を有する者が、税理士業務を行わない
業務補助者として勤務する場合には、
雇用された税理士事務所内に税理士登録を移すことなく、
一般の被雇用者として税理士業務以外の会計業務等を行い、
その者の責任は雇用者である税理士等が負うことになろう。
ただ、業務補助者が税理士資格を有する者である場合、
税理士としての専門家責任を完全に否定することは
税理士法1条の趣旨に反することになるため、
税理士としての専門家責任を何らかの形で負うことも否定できない。
そうすると、勤務する事務所内で、税理士法違反行為その他
不正行為が行われていることを発見した場合には、
雇用者たる税理士等に是正を求めなければ自己の専門家責任を
解除することはできず、雇用者が是正せずに放置する場合には、
内部告発が許されると解さざるを得ないであろう。

実際の事件は、色々な問題が生じており、非常に複雑ですが、
報告では、税理士の専門家責任の立場から検討させて頂きます。


cpta_taira at 15:30コメント(0)トラックバック(0)発表 

2013年01月11日

安倍政権の経済政策、各種会議始動。補正予算は20兆円規模に。

安倍内閣は11日、20.2兆円にも上る超大型補正予算を閣議決定した。
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/TKY201301110091.html
財源が枯渇している中、公共工事を中心に景気回復を狙っている。

経済政策を指揮する日本経済再生本部は全閣僚による政治主導ですが、
連携する経済財政諮問会議は、安倍首相を議長とし、
麻生副総理兼財務相、菅官房長官、甘利経済財政相兼経済再生相、
新藤総務相、茂木経産相の政府委員に加え、白川日銀総裁、
学者から伊藤元重東大教授、シンクタンクから高橋進日本総研理事長、
財界から小林喜光三菱ケミカル社長、佐々木則夫東芝社長で構成される。

さらに、再生本部の下にわが国産業の競争力強化や国際展開に向けた
成長戦略の具現化と推進について調査審議する産業競争力会議を設置した。
ここには、小泉経済政策の司令塔だった竹中慶大教授(元経済財政相)、
のほか、自社の再生に功績のあった榊原東レ会長、坂根コマツ会長、
金融機関から佐藤みずほフィナンシャルグループCEO、
アメリカやヨーロッパで合弁企業の社長を歴任した長谷川武田薬品社長、
ベンチャー企業から、新浪ローソン社長、三木谷楽天社長、
05年勇気ある経営対象を受賞した秋山咲恵サキコーポレーション社長、
光エネルギーの研究者である橋本和仁東大教授で構成されている。

苦しい経済状況からの脱却を目指すために、構造改革による事業再生や、
新規事業の成功による成長を企図した人選のように感じます。
従来型の経済成長戦略が通用しなくなっているだけに、
ベンチャーが動きやすい政策が実現されることに期待したいです。

8日の日本経済再生本部、9日の経済財政諮問会議において、
日本経済再生に向けた緊急経済対策(仮称)(骨子案)が検討されたが、
具体的な施策として、
1.復興・防災対策
(1)東日本大震災からの復興加速
(2)台風、豪雨災害等の災害からの復旧等
(3)事前防災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化
2.成長による富の創出
(1)民間投資の喚起による成長力強化
・成長力強化、省エネ・再エネ促進等のための設備投資等の促進
・研究開発、イノベーション創出促進
・国際競争力強化等に資するインフラ整備等
・資源・海洋開発
(2)中小企業・小規模事業者対策・農林水産業対策
・新たなビジネスへのチャレンジの支援、ものづくり支援、商店街の活性化等
・経営改善・事業再生支援、資金繰り支援
(3)企業の海外展開支援等
(4)金融資本市場の活性化等
(5)人材育成・雇用対策
3.暮らしの安心・地域活性化
4.潜在力の発揮を可能とする規制改革
5.為替市場の安定に資する施策

日本経済を現状のまま成長させようという意図ではなく、
省エネ・再エネ促進や、新ビジネスチャレンジ支援等を見る限り、
時代の変化への対応を要求する代わりに、チャレンジを支援する
という姿勢を感じるところです。
単純に公共事業中心政策に戻るのではなく、
構造改革路線への復帰が意識されているのであれば、
チャレンジする若者にとっては希望が持てる時代が来るように思います。
期待倒れで借金だけが残った、ことにならないことを願いたいですね。


cpta_taira at 14:27コメント(0)トラックバック(0)雑感 
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