「(開幕戦は)『まずいな』と感じる状況や危機感があった」
 昨季の徳島はGKを含めたビルドアップを軸に攻撃を組み立ててきた。しかし、足もとの技術に定評があり、リーグ41試合に出場した梶川裕嗣が横浜へ移籍。新たなGKの獲得が今オフの補強ポイントのひとつだった。
 
 そこで白羽の矢が立ったのが東京Vに所属していた上福元直人だ。組み立てに貢献できる30歳のGKは、大分在籍時の16年、片野坂知宏監督の就任をきっかけに「GKの技術や判断が求められるサッカースタイルになり、自分の技術も磨かれていったと言いますか、磨いていただいた」とこれまで以上に判断や技術が向上したという。

その後、18年から東京Vでプレー。ロティーナ監督(現C大阪監督)の下で組織的なサッカーを学び、昨季は永井秀樹監督の下で新たな経験を蓄積してきた。
 
 もちろん指揮官によって狙いや道筋は異なるが、ベクトルが同じ攻撃主体のスタイルに上福元は柔軟に適応。徳島でもプレシーズンからすぐさま存在感を示し、二次キャンプで行なわれた練習試合では「攻めて良し、守って良し」の大活躍で信頼を勝ち取った。

 迎えた2月23日の開幕戦。相手は偶然にも古巣の東京Vだった。「サッカーなので相手の狙いが出てしまう時間帯も絶対にある」とペースを握られることはあったが、「そういう時間帯を我慢して、自分たちの時間帯にしっかりスコアを付けられて良かった」と振り返る。

 その流れを作ったのが他でもない、上福元だった。「『まずいな』と感じる状況があり、危機感もあった。ただ、(東京Vに所属していた経験から)相手の特徴も自分の中で理解しているつもりだった。なので、状況を自分なりに分析できた結果として落ち着いて対応できたのかな」とビッグセーブで自分たちの時間を引き寄せた。「カミ」の愛称で慕われる上福元だが、開幕戦の活躍ぶりはまさに“神”だ。

チームとしての成長を第一に…
 しかし、勝利に直結する活躍にも「もっともっと優位に試合運びできるように、完璧を求め、積み上げていく作業をしていかなければいけない」と謙虚に語る。振り返ると加入初日から、「積み上げ」という言葉を繰り返している。開幕戦直前にも「まだまだ完璧ではない。この(J2)リーグは簡単ではなく、シーズン通して積み上げる高い意識を持ってやっていく方がいい」と語る。

 チームとしての成長を大切にしている姿勢がひしひしと伝わってきた。徳島のJ1昇格には、この神懸かり的なセーブを見せるGK上福元の存在が不可欠だ。