2005年08月23日

この世の外へ クラブ進駐軍

主演萩原聖人、オダギリジョー、松岡俊介、MITCH、村上淳、ピーター・ミュラン、シェー・ウィガム、前田亜季
監督・脚本阪本順治
製作2003年、日本

武器より楽器なんだよ
占領下の日本を舞台に、米軍基地内のクラブで演奏する日本人ジャズメンの青春を描いた作品。
第二次世界大戦の終結からニ年が経った頃。復員してきた陸軍軍楽隊出身のサックス奏者広岡健太郎(萩原聖人)は、軍楽隊時代の先輩平山一城(松岡俊介)、ブラスバンド上がりのピアニスト大野明(村上淳)、ウェスタンバンドのトランペッター浅川広行(MITCH)、和太鼓しか叩いたことがないドラマー志願の池島昌三(オダギリジョー)の五人で、米軍基地内のEMクラブで演奏するジャズバンド、ラッキーストライカーズを結成する。五人はみんなジャズが大好きだったが、ラッキーストライカーズには、広岡のように兵士としてアメリカと戦った者もいるし、池島のように長崎で家族全員が被爆した者もいて、アメリカ人には決して良い感情を持っていない。当然、アメリカ人の方もジャップに良い感情を持っているはずもなく、日本人のやるジャズを馬鹿にする者もいた。米軍基地内のクラブでは摩擦が起こることもしばしばだった。そんな時、ジャズプレイヤーのラッセル・リード(シェー・ウィガム)という白人が基地に赴任してきた。弟が戦死したリードは日本人に激しい憎しみを抱いていた…。
アメリカに負けた日本人が、アメリカの音楽をやる。昨日まで鬼畜米英だ、玉砕だ、特攻だといっていた日本人が、しかも辛うじて生き残った兵士や被爆者が、米軍基地内のクラブで仕事をもらい、その金で生計を立てる。男は闇屋になり、女はパンパンになる、という堕落論の世界。最初、広岡が戦場にいる場面から始まるのだが、そのあとのオキュパイド・ジャパンの状況が生きてくる見事な導入部だ。
戦災孤児も登場する。朝鮮人も登場する。米兵相手の売春婦も、共産党員も、手や足を失って乞食生活を送っている復員軍人も登場する。米軍の中には白人と黒人の葛藤もある。
与えられたものとはいえ民主主義の時代が到来し、自立した女になろうという意識を持った女性も登場する。池島の恋人になるお嬢様育ちのジャズシンガーの依田涼子(前田亜季)がそうだ。涼子は米兵相手の売春婦英子(高橋かおり)たちとトラックに同乗することになった時、彼女たちへの軽蔑の念を隠さず、パンパンとは口も聞きたくないと思う。だが、米兵に強姦されそうになった時に、英子たちに助けられる。助けるというのは米兵と戦うわけではない。自分たちと遊ぼうと米兵を誘って、堅気の娘の貞操を守ってやったのだ。
俺は米兵相手に何をやっているんだと自問する池島に、長崎の家族に仕送りするために働いてるんだろ、ドラムスティックは飯を食うための箸だと仲間がいう。この映画には、そういう矛盾を忍ばなければならなかった時代のエピソードが色々描かれている。矛盾に耐えながら生きているのはアメリカ人も同じだ。広岡を音楽仲間と認めるようになったリードは、徴兵忌避をして収監されている時に弟が戦死したことに負い目を持ち、改めて志願して戦争に行った男だ。そして朝鮮戦争が始まると、黒人から送り込まれるといわれる前線に志願して日本を去っていく。「この世の外へ」とは、リードがラッキーストライカーズに残した曲のタイトルである。
日本人もアメリカ人も、迷いながら生きる人々の心理が手に取るように伝わるように描かれている。この辺りの丁寧な演出は阪本順治監督の身上だろう。昨日の敵は今日の友、飲み屋で広岡たちとリードが軍歌を歌う場面も阪本監督はさりげなく挟み込んでいる。
広岡をはじめとして、登場する青年たちが自分の胸のうちをストレートに表現していて、言語明瞭なのがとてもいい。ジャズもこの映画の魅力だ。
特筆すべきは再現された焼け跡の情景。これが唸るほど素晴らしい。
(☆☆☆☆)

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この世の外へ クラブ進駐軍 萩原聖人 オダギリジョー 松岡俊介 前田亜季 阪本順治

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「この世の外へ クラブ進駐軍」★★★(DVD) 2003年日
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『亡国のイージス』(2005 / 松竹)も始まったことだし(まだ観てないけど)、坂本順治の男の描き方について。 最初に知ったのは『ビリケン』(1996 / シネカノン)だった。良質なコメディを撮る監督
KT【連々】at 2005年08月24日 23:29
 この世の外へ クラブ進駐軍 「この世の外へ クラブ進駐軍」 ★★★☆ (2003年日本) 監督:阪本順治 キャスト: 萩原聖人、オダギリジョー 、松岡俊介、MITCH、村上淳、ピーター・ミュラン、シェー・ウィガム、前田亜季、高橋かおり、真木蔵人、池内万作、...
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この記事へのコメント
はじめまして!
Rayさんの映画の批評、鋭く、優しく、聡明で、とても面白いです。
自分のつたないページですが、TBさせていただきました。

自分は、ものすごい映画マニアでもなんでもありませんが、
これから映画を見る時は、こちらのblogから面白そうなものを
探させてもらおうと思います!

新しい映画批評の雑誌を見つけた気分でうれしいです。
Posted by ren at 2005年08月24日 23:39
renさん、どうもありがとうございます。こちらこそこれからもよろしくお願いします。
Posted by Ray at 2005年08月26日 00:06
こんばんは、はじめまして、TBからお邪魔しました。
サイト引越したので新ブログからTBさせて頂きました。戦後日本の情景が嘘っぽくなくて良かったと思います。
またよろしくお願いしますw。
Posted by lin at 2005年08月30日 23:38
linさん、戦後日本の情景はかなりリアルでした、直接見たことがあるわけではないですが(笑)。
Posted by Ray at 2005年08月31日 00:01
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Posted by 玉の輿度チェッカー at 2011年03月22日 10:55
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Posted by 神待ち at 2011年07月07日 13:26