Love Me Do最近ビートルズネタが多くて申し訳ない。
って謝ることもないか。

これはいつか書こうとおもっていた。
デビューシングル"Love Me Do"だ。
1962年の出来事について、まだ
新鮮にわくわくして書ける自分がうれしい。
少しだけマニアックな感じがするかもだけど、
僕はビートルズマニアじゃないですよ。(笑)
ただの音楽ファンです。

さて、しかし、ことは『ビートルズ』であるからして、
これはずいぶん昔からおおごとだとおもっていたんだが
誰にも言えずに今までいた。
って大げさだな。
ただ、たまたま忘れちゃって機会を逸していただけなんだけど。

とりあえず言いたいことを先に書くと、
"Love Me Do"って、

へんだろ。

へん、でしょ?

え?なにが?いや、とにかく、何かわからないけど

この曲って、へん。

じゃない?



当時は、いくら勘の良かったジョージ・マーティンでも
ブライアン・エプスタインでも誰でも、おそらくメンバーですら
数年後にあんな風な『ビートルス』に大化けするとは
思ってもみなかった時期なはずだ。
なにしろオーディションは落ちまくっていたのだ。

the beatles 19621962年初頭、ビートルズはまだ
若者たちを普通に熱狂させる
ライブハウスまわりのR&Rバンドだった。
演奏がそうとうワイルドなものだったことは
いろんな音源から想像できる。
ドラマーは写真のピート・ベストだ。
ハンブルグでめちゃくちゃやってた頃だ。 

さて、紆余曲折ありながら6月6日にビートルズは
初めてジョージ・マーティンの前で"Love Me Do"を含む
4曲を録音するのだが、このときの音はアンソロジーで聴ける。

1962 decca調べによると(笑)"Love Me Do"は、
1958-59年頃にポールとジョンによって
書かれたそうだ。
当時のビートルズの他のオリジナル曲や、
世間でラジオに乗って流行っていた音、
そしてアンソロジーのピート・ベストDr.の
音源などを聴くと、何か「迷い」のような
ものを感じる。

「迷い」あるいは、「上っ面を魅力的に聴かせよう」という風な企てだ。
ドラムの音使いやリズムに変化を付けて単調な曲に聴こえないように
工夫しているような、あるいは腕のあるR&Rバンドという面を
強調しているような、そんな感じがする。 

しかし、もっと突っ込んでよく聴くと、この曲には、
どう考えても、上っ面のところではない、
もっと根っこのところで、「どっか・おかしい」何かが、ある。

最も良い言葉でいうと、「個性的」であり、「他に類をみない」
そういう、出処(でどころ)のわからない、ズシンと来る「何か」である。
そう思えてしかたがない。


ガツンガツンと来る8ビートのR&Rナンバーをやらせたら
すごいビートを出せるグループだったわけだし、
メロディアスなオリジナル曲はティン・パン・アレイの職業作家に
対抗しうる作詞作曲コンビを目指したジョンとポールの意気込みを
じゅうぶんに感じさせるすぐれたコードチェンジやアイデア、
見事なコーラスワークがすでに見え始めている。

the beatles 1962-08同年8月、ドラマーがリンゴに変わり、
いよいよ『ザ・ビートルズ』として
最初のレコーディングに、同時に
プロとしてのマーケティングの対象に
なっていくわけだが、
"Love Me Do"はあと2日、録音される。
9月4日と9月11日だ。


興味深く思えるのは、なぜ"Love Me Do"だったのか、ってことだ。
新規アーティストを売り出す『ファーストシングル』が、である。

正規メンバーであるリンゴをドラマーから外してタンバリンをやらせてまで
この曲をファースト・シングルにしたマーケティング側の目論見、
その意図はなんだったのか、そしてまだ若かったビートルズたちは
それについてどう思い、また、なにをたくらんだのか。


騙されてはいけない。
この映像に写っているような光景は、"Please Please Me"が
大ヒットしてからずっと後の話なのだ。
『その時』つまり、新規アーティスト『ザ・ビートルズ』の
ファースト・シングル"Love Me Do"が世に出たその時の状況が
どんな風だったのか。
実は1962年10月5日に発売されてからしばらくのあいだは
リヴァプール界隈でしか売れていなかったのだ。

それでも、ファースト・シングルは"Love Me Do"だった。
いや、"Love Me Do"でなくてはならなかった。
それはなぜなのか。

それを解く鍵を、僕は、1963年1月収録の
このライブテイクなんかに感じるのだ。
そこには、ビートルズが、あるいはジョンとポールが、
59年から62年というこの時期に、
"Love Me Do"という風変わりな曲に込めた、
孤高を目指した志の高さがうかがえる。
そんな気がしてならない。



なんだかわからないけれど、とにかくこの曲の
ドッシリしたビートの感じと、和声感、つまり歌のハーモニーと
演奏の混ざり具合は、ただごとじゃない。
単なるR&Rのバンドサウンドじゃない。
アメリカ製のR&BやBluesの焼き直しでもない。
ジョンのハーモニーの低い音程の効果や、
ハーモニカとの入れ替わりなど
やってることを考えると、とんでもないことだ。
これほどに際立った個性を全面にだしながらも、
しかし見事に自然に流れていく。
そして、リンゴのドラムを筆頭に、ものすごくロックしている。

これは、やがて彼らが"Please Please Me"から始まる
快進撃の『可能性』を、ジョージ・マーティン以下EMIのスタッフと
ブライアン・エプスタインが、すでに62年初頭の時点で
『嗅ぎとっていた』としかおもえない。
売れるために期待して出したファースト・シングルでは
なかったんじゃないか、とさえ思えてくる。

歌詞だって俳句みたいな繰り返しで、よくよく聴いてみると、
後にも先にもないような、実にへんてこりんな曲だ。

"Love Me Do"

へんな曲! 


あーすっきりした。(笑)