eldorado canyon

ようやく、全容がつかめて来た。
"Chris Daniels" って、
言ってみれば、わりと、「よくある名前」なもんで、
けっこう情報をひっぱり出すのに
時間がかかった。
検索すると格闘家の話題ばっかり出てきた。

magic band

その母体は1969年頃から出来て行ったらしい、
コロラド初のアコースティック系ジャムバンド
"Magic Music"
70年代初期から活動を始め、
当初は、エルドラド・キャニオンという場所に
住み着いていたらしい。
2台のスクールバスで暮らしていたというので、
ちょうど、上の写真のかんじだろうか。(笑)

コロラドのジャムバンド、ってことは、
String Cheese Incident の、大先輩ってことだな。

地図を見ると、エルドラド・キャニオンは国定公園で、
デンバーの北西20キロほどの場所だ。
コロラド・スプリングに住んでいた友人がいて、
たまに家族の写真を送ってくれていたのだが、
よく、背景に広大な山脈が見えた。
あれがそうなんだな。
Google Earthで見ると、
ニュー・メキシコまで連なっている、
その山系の北端にあるのが、エルドラド・キャニオンだ。

Magic Music リユニオンの紹介ビデオがあった。


もういっこ。これすごく良いよ。ちょい長いけど。
Magic Music Movie


クリス・ダニエルズという人を知ったのは、ほんの最近のことだ。
5月10日公開の "eTown Webisode #992" が
新着動画のお知らせに入っていて、
ここで演奏されている "Eldorado Canyon" という曲が、
歌詞、メロディー、歌声と演奏、そのぜんぶが、
やけに、「ストン」と、心地いい場所に入ってきて、
その入ってき方が、妙に、自然だったくせに
後に残るものがあって、
「あれ?これって誰だろう?」
と、思い、いくつか他の曲も
聴いてみたりしたのだ。

eTown をチャンネル登録してて良かった。


そして、決定的に気になったのは、
"Sister Delores"
という、この歌を聴いたときだった。
これが、なぜか、そうとう、こころに触った。
この時点では、なぜそうだったのか
まったく、深く考えていない。
兎に角、"Better Days" というアルバムがあって、
アマゾンを覗いたら、¥1,789円という安価で
「新品」の取り扱いがあったので、
早速、注文したのだ。

普通に、ペラっとしたジャケのやつが届くと思っていた。


数日後にCDが届き、梱包を開けるや、
これがタダ事でないブツであることがわかった。
こんなものが、この値段で買えるはずがない。
見るからにそうだった。
直感的に、むむ、これは何かあるな、と
音を聴きながら、慎重に分厚いページをめくった。

そして、最初のページで、闘病からの生還を知り、
最後のページで、これが1000枚限定で作られ、
50枚は家族と仲間の分として別のシリアルナンバーが入り、
残りの950枚に本人の直筆サインが入れられている、
そういうアルバムだと知った。

better days 8


そこに書いてあったことのうち、
ふたつをエントリーに書いた。

chris daniels

モノが届くまでは、ベテランの
カントリー系シンガー・ソングライターだと思っていた。
違った。

クリス・ダニエルズは、「バンドマン」だった。

トラッド・フォーク・ルーツの "Magic Music" の後、
いくつかのバンドを経て、1984年に
自らのリーダーバンド "Chris Daniels & The R&B Kings" を立ち上げる。
後に "Chris Daniels & The Kings" となる。
いかにもハッピー・ゴー・ラッキーなかんじの、
ファンキーなアメリカン・バンドだ。
ここには、黒人のリードシンガーがいて、
腰に来るリズム隊と、
グッド・オールド・R&Bなホーン・セクションが入っている。
ニュー・オーリンズ・スタイルのスウィングから
メンフィス・ソウル、ブルース、ポップなロックナンバー、
なんでも来いのイカしたバンドだ。
このバンドなら、一晩中でもダンスフロアを踊らせるだろう。
アル・クーパーや、サザン・パシフィック、
リトル・フィートのビル・ペインなどが関わっている。

Chris Daniels & The Kings は、
その後25年に渡り、アメリカ、ヨーロパなどで
年間40週ものツアーを敢行し続ける。

あとでわかったことだが、
前回のエントリーに書いた、妻の他界。
おそらく時期的に、そのあと、
トラッド・フォーク・ルーツの "Magic Music" から、
しばらくのブランクを経て、
ファンキーでダンサブルな "& The Kings" 立ち上げへと
移行したのだと思う。

そんなバンドを率いていた人が、
活動停止を余儀なくされた闘病生活を送った後、
「初めての」ソロ・アルバムを作った。
それが、"Better Days" だった。
ふたつ前のエントリーに書いたとおり、
自らの、悪性腫瘍の闘病からの生還後、2011年の製作だ。

1970年代初期からプロの世界に居た人が、
初めてゆっくりと人生を振り返り、
フォーク・ルーツに戻ったソロアルバムを作った、
というわけだ。

アルバムには、
2010年〜2011年の新しい曲と並行して、
"Magic Music" 時代に書かれた古い曲、
1980年代や90年代の "& The Kings" 時代のものが
バランスよく収録されている。
アップな時期の曲、ダウンな時期の曲、
双方、素晴らしい仕上がりだ。
音質にバラつきがないので、
すべて2011年に録音されたのだろうと思う。

すべての曲にクレジットと本人の解説、
そして歌詞が載せてある。
"Sister Delores" は、
ほんとうの、シスターの名前だそうだ。
死ぬかもしれないな、と
そう思って沈んでいたときに、
"I'm standing in the gap for you." と
そう言って、祈ってくれたシスターだそうだ。
「おれの頭が考えられるような事と、
彼女を導く信仰とのあいだにあるギャップ、
そこに居て祈ってくれている、と
そういう意味に受け取った。」
と、書いている。
 
録音メンバーは曲のタイプによって違う。
アップなブルーグラス、ディキシーランド、
ポップでノリの良いロック、
ダウンなトラッドフォークや
アコースティックなギターインスト、
そしてシンプルでミニマルな弾き語り。
すべてにおいてバランスが良くエレガントだ。
「オールタイム・ベスト」的な性質のアルバムでない事は、
その作りの丁寧さからもわかる。

曲の並び、パッケージングやアートワーク、
ページの一枚一枚に綴られている言葉、
ひとつひとつの曲、すべてに、想いが込められている。

better days 9

これほど人の良心に満ちあふれている「品物」には、
めったにお目にかかれない。
間違いなく、一生モノになると思う。

感涙の三連投である。
出逢いに感謝だ。 
 


BETTER DAYS 


恋に落ちるとき 人は考えてる暇なんてない
いったい どうしようっていうんだい
まるで これから旅に出ようってときに
手に持ったチケットをそこに置き去りにして
くるっと向きをかえて 違う人生へ
歩き出そうとしてるような
そんなかんじだよ

*
でも 良いときはまたやって来るんだ
このギターの音に はっきりとそれが聴こえてる
雪が舞う中 涙は乾いていくよ
冬が 生まれ変わるための その場所に
君を連れて行くから
いろんなことが がらりと良くなっているだろう
春が来る頃には きっとね


長いこと 働きっぱなしだった
考えなきゃならないことだらけだった
ぎすぎすして 怒りっぽくなったりもしていた
友だちがおれのことを 気にかけてくれていた


* Repeat


(Dobro and Mandolin solo)


おひさまの光が窓から 部屋いっぱいに
もうそろそろ 出かけるときだな
おれが行っても 君はもう大丈夫
そしておれは 君が必要だと
素直にそう言えるようになれた
前にもこういう時は あったじゃないか


* Repeat

ずっと良くなっているよ
春になる頃には
きっとね




*雰囲気訳は、ブログ主が音から拾った気分で書いています。歌詞対訳として正確ではありません。