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インフルエンザの語源を調べたら、イタリア語の「influenza=影響(する)」16世紀のイタリアで、冬に流行し春には終息する熱病が流行り、占星術師は天体の影響と考え、この病気を「影響」=インフルエンザと呼んだ、とのこと。(語源由来辞典 http://gogen-allguide.com/i/influenza.html)

いやいや、それは「その語の語源の由来」じゃなくて「その病気がインフルエンザと呼ばれるようになった由来」の解説じゃんか(笑)そうじゃなくて、"influenza" って言葉が元々どっから来てるのか、それが知りたいんだよ。

もう少し調べてみましょう。16世紀イタリアの言葉ならラテン語由来かな。と、当たりをつけると、はいそうでした。英語の「flu」は「流行性感冒」つまりインフルエンザのことだが、その由来はラテン語の「
fluere(流れる)」で、おおかた「水」や「水の流れ」に関係する。fluid(液体)、flow(流れ)、flood(大水、洪水)などは、みんな "flu" グループだ。派生して、fluent(よどみのない、流暢な)とか、fluctuate(変動する、上下に揺れる)、influence(影響する)等、いろいろ出てくる。"in"(中に)+ "flu"(流れる)だから、(外から中に)流れ込んでくる、的なイメージかな。

流れ込ませないように、しっかりと堰き止めましょう。

さて、ラテン語源を眺めていて、ギリシャ神話の「イカロスの翼」っていうのを思い出した。前後はとりあえず置いといて、すっ飛ばして筋を抜き出すと、海を支配した王が島に圧政を敷いており、その島にいた名工で知恵者のダイダロスっておっさんが「ほんなら空から逃げたるわ」と、背中に取り付ける翼を作って(無理)自分と息子のイカロスに取り付けて空を飛んで島を脱出するんだけど、若い息子のイカロスは「真ん中へんを飛ぶんだぞ、高く飛びすぎると翼を取り付けたロウが太陽の熱で溶けるからね、低すぎると海の潮で重くなって落ちるからね」と父親のダイダロスに言われていたのに、わーい飛べたー!と嬉しくなっちゃって空高く飛んでしまい、太陽に翼を焼かれて海に落ちて死んでしまった、って話。

この話は、メインストリーム的には「調子に乗ってはいけませんよ」という、つまり「傲慢」「自信過剰」「浮かれていきすぎた行動をする」ことに対する戒め、というテーマで扱われるんだけど、ここで注目したいのは、「イカロスの翼」のタイトルが示すとおり、メインキャラとして良く知られているのは落ちて死んだ息子のイカロスの方で、うまいこと空を飛んで島から(つまり為政者の支配から)脱出することに成功した大発明者、すごい才能と技術の持ち主、そして目の前で愛する息子が焼け焦げて海に落ちて行くのを見ることになる悲劇の父親ダイダロスの方は、さして話題にならないってところ。
Icarus2
こういう絵画作品なんか見ても、若く美しい息子イカロスはいかにも主役の美青年として描かれてますよね。黒々と日焼けしてたくましい父親と対象的に、ちょっと中性的な描かれ方にも何かピンと来るものがあります。背中に取り付けた手作りの翼で空を飛ぶなんて、前人未到の離れ業を見事やってのけた人なのに、なぜ、父親の助言を聞かず浮かれてしまった親不孝な愚息が主役で、知恵も才能も技術もあって、脱出にも成功した父親は脇役なのか。

神話は、「危険を冒して王の圧政から脱出する」つまり「生き残る道を見つけ出す冒険」というメインテーマを、「果実(成果、生き残ること)は、常に犠牲(この場合は愛する息子の死)と並走している」というモチーフを使って描いていると考えます。ここらへんは深い話になるのでまた今度。

ここで話題にしたいのは、並走している「死」の側、つまり「ネガティブ側」「闇の側」の方が、「生」の側、つまり「ポジティブ側」「光、明るさの側」よりも大きく人に影響する。そのことに気をつけていなさいね、という、大昔の知恵のこと。

クレタ島文明なんてのがあった大昔から伝わる話に、現代にもしっかり当てはまるお題が出てくる。芸能やアートがどんな風に人に影響を与えるかを考えてみても、神秘的で美しく影響力の強い表現には、どこか奇妙にブルーな闇があるのが常だ。

闇の時間は「並走」しているだけで、実は光の時間とバランスを保ちながら支え合っている関係にあるから、過度に引きずられない限り、怖がる必要はない。こういうモチーフの扱われ方が、時代も国境も人種も超えて常に普遍的だ、という点を考えると安心する。

ただ、現代は、特にメインストリームにおいては、ものごとは極端に「ポジティブ側」に支配されていて、とてもバランスが取りにくい状況になっている。本当に気をつけていないと影響されていることにも気づけないぐらい、世の中のバランスは、乱れているように思う。

気をつけよう。