2008年01月29日23:31合格者増員

また最近,合格者増員を見直そうという動きが出ていますね。

その理由として,「弁護士の受け入れ先がない」という理由なら,理解できます。やはり依然として都市部志向の強い合格者が多いようですから。

ただ,地方においては,まだまだ弁護士が足りない地域があることも事実でしょう。日経か何かの記事に島根県弁護士会の話が載っていましたが,弁護士増員とともに,地裁支部への裁判官や検察官の常駐という課題が残されているようです。

それに,地方でも,都市部に近いところから徐々に埋まっているのが現状だと思います。私の所属する弁護士会は,都市部ではないもののその近隣であり,現修習生の話を伺う限り,昨年とは比べ物にならないほど状況がかなりひっ迫した状況になっています。特に新と旧とが併存している現状では,なおさらのようです。ボス弁曰く,「62期からはもう保証できない」そうです。

もっとも,ロースクールを経た新試験組は,旧試験組と異なる点として,ロースクールでのつながりがあります。ここでいう「つながり」というのは,もちろん同期生もそうですし,何より,ロー時代の先生とのつながりのことです。あくまで私の主観ですが,人格の問題を別にするとw,就職に苦労していた同期には,都市部のいわゆる大規模ローの人が多かったです。つまり,「つながり」がないんですね。そういう人は,なかなか苦労するかなと思います。

で,話を最初に戻しますが,増員反対の理由として,他に,「2回試験不合格者の増員は合格者増員が理由だ」みたいなのがあります。

これは,ちょっと賛同しかねます。

59期までは,2回試験に「追試」という制度がありました。これは,1科目のみ不合格の場合,「合格留保」となり,その科目のみ再試験を認め,そこで合格すればOKという制度です。

この追試制度は,新旧60期から廃止されました。60期からは,1科目でも不合格の科目があればそれで即不合格となります。そして,2回試験終了と同時に研修所から追い出され,合格発表も郵送あるいは研修所の掲示板(登庁印を押す場所にある掲示板です)にて発表,という形になっています。

で,ここからがポイントなのですが,従来の追試があったときと,追試が廃止されて以降の評価の仕方が,違うらしいのです。どういうことかというと,追試があった時代なら「このくらいは合格にしよう」というレベルだったものが,現在では不合格になるらしいのです。根拠としては,私が2回試験発表後のクラス懇親会に出席した際,ある教官が,「○○さんは,追試があるときだったら救済されたんだけどねぇ。」と話をされていたことなどにあります。

これに加えて,別の観点からの話があります。

59期では,刑弁での合格留保者が多くいました。これ自体は,そもそも59期刑弁の問題がかなりの難問だったことがあるようです。

で,新旧60期を見ますと,59期の反省が生かされたのか,刑弁の不合格者はそれほど多くありませんでした。

ただ,新60期刑弁では,過去の日記に書いたとおり,「無罪+一部情状」の問題が出題されたところ,過去の即日起案でそういう問題は皆無でした。ですので,そもそもそういう出題があり得るのかという技術的な面で考えすぎた人もいると思います。実際,私もそうでしたから。教官からは「刑弁は無罪だ!」としか教わっていなかったので,無罪主張を延々と(50頁くらい)書いた上で,残り1時間で迷った上で「やっぱ記録上は空気を読んで道交法違反は情状弁護だろ」と決断して書いただけです。

それはともかく,60期では,民弁の不合格者が多くいました。その理由として,聞くところによると,大多数の人が弁護士になるという現状を考慮し,弁護科目で厳しく判定すべき,という考慮がなされているようです。

新60期の民弁科目は,問題自体,相当難問だったと思います。我々は,集合修習において民弁即日起案を3回行いましたが,1回目は59期2回試験問題(不動産の即時取得w),3回目は58期2回試験問題(レーモン)でした(2回目は不明。年月日からおそらく56期か57期2回試験問題。賃貸借の増改築禁止特約の問題です。)。それらと比較しても,相当難しい問題でした。過去の日記でも書いたとおり,債務不履行責任と瑕疵担保責任の相違を問う問題であり,しかも,「空気」を読んで起案の書き方についても考慮しないといけない問題でした。実際,私の同期で知り合いの優秀な方で,即日起案では民弁でAを2回とった人が民弁で不合格になっています。また,とある資料を読む限り,旧60期も「空気」を読む必要がある問題だったようです。

以上を要するに,

合格者増→2回試験不合格者増,という因果関係が本当にあるのか,全く調査せずになされた安易な発言を鵜呑みにしていろいろ戯言をほざく人は,政治家ならともかく,同じ法曹実務家であれば,事実認定能力に欠けたアホ実務家である,といわざるを得ないということです。

 



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この記事へのコメント

1. Posted by ダルク   2008年01月30日 01:18
5 ほんと同感です。
弁護士になるためにこれほどいろいろハードルを課す必要性を感じません。
いま変な政治家が一人発言してますが、ズレてることを気づいてないしまったく有害無益なことに思います。
既得権打破は大変ですね。
それにしても、医師不足とか報道されてますが誰一人からも医師を増やしていけばいいという発言を聞かないことにもはや笑うしかありません。
2. Posted by クロウ   2008年01月30日 21:54
>> ダルク様
コメントありがとうございます。
既得権との関係でいえば,先輩の弁護士先生でも,優秀で尊敬できるような先生ほど,ロースクール等の新制度に理解を示そうと努力してくれているように思います。「旧組しか採用しない」とか言ってる先生の中には対した人はいないなーというのが現時点での感想ですね。
3. Posted by 名無し   2008年02月06日 20:35
初めて訪問させていただきました。
確かに弁護士過疎と世間的に言われている地域がありますが
実際には既に開業しているその地域の弁護士が
自分たちの既得権を手放したくないがために
新規弁護士を受け入れようとしないというのが実態です。
逆に都市部の弁護士過密地域では今まさに食うか食われるかの状態であり
税金を支払うだけで精一杯の収入しかなく
60期同志で顔を合わせれば先行き不安の話題ばかりという感じです。
どこで弁護士増員が求められているのでしょうね?

4. Posted by クロウ   2008年02月07日 19:57
>名無し様
ご訪問&コメントありがとうございます。
新規弁護士を受け入れないという弁護士会は,本当にあるようですね。
もちろん公にそんなこと言いませんが,例えば入会金を値上げしたりして。
そんな弁護士会に入るのはこっちから願い下げだと思うんですけどね。
でも自分の地元で仕事したいと考えている人にとっては腹立つことですよね。

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