ミステリー・医療小説など多彩な作品を白血病と闘いながら世に送り続けている作者の山本周五郎賞受賞作品。

物語は、深い事情のありそうな女子中学生の中絶にいたるシーンから暗い雰囲気のなか幕を開け、主要な登場人物である梶木秀丸・昭八の育ちを語りながら病院の場面へ読者を誘い込んでいく。

入院患者の一人一人が紹介され、病院の空気や音そして臭いまでが伝わってくるような文章が綴られて行く。
昭八を初めとする登場人物の生い立ち、性格はそれぞれ異なっていて多少個性的な言動はあるにしてもそれほど違和感がなく読み進めることができる。

冒頭の少女が、外来患者として登場し入院患者との人間関係ができ病気が良くなってきた時に起きた悲惨で衝撃的な事件。
それを、我がこととして強く受け止めほとばしった感情による秀丸の驚くべき行動。

そして、最終章での昭八の強い秀丸にたいする思い、人間性あふれる陳述・・・
久しぶりに流れる涙を止めることができなかった。

ストーリーは、読む物に深い感動を与える普通の物語なのだがこれが精神病院のなかでの出来事という点が別の衝撃を与える。
個性的な人々が登場するが、普通に会話し生活し人間として純粋に動く姿からは入院の必要性を感じることができなく、むしろ犯罪者が精神病であることを理由に、弱い立場の人々を守る力の弱い人の生活している場に投げ込まれる理不尽さを感じる。

国際的に見て、我が国の精神病の病床数の多さ、入院日数の長さは異常なことであることが想起される。
多岐にわたる病名があることに注意が必要だが、精神病患者が社会的な支援をうけて社会にでていくことを強く意識させられる。
精神保健福祉行政のあり方をかんがえさせられる、是非一読願いたい一冊。



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