時事の心理学 バナー原図

アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩労働党委員長のチキンゲームが続いています。
報道によれば、北朝鮮はグアム周辺の海域にミサイルを4発発射する計画を立案中で、トランプ大統領はそれに対して「北朝鮮がグアムに対して何かすれば、誰も見たことのないような事態が北朝鮮で起きるだろう」と警告しています。

チキンゲームとは、どちらが先に譲歩するかを競い合うゲームです。
どちらも譲歩しないと、やがてお互いにとって本意ではない結果を招きます。

冷静に考えると、どちらかが譲歩すればお互いに不本意な結果を招かないで済むのですが、渦中にいる場合はそうたやすくそれができません。
なぜならば、譲歩は敗北と感じるからです。
心理学ではこの状態を”パワーストラグル”と表現します。
パワーストラグルを生じる根底には、関係者の怖れに基づいた心理や行動があります。
米朝間でのパワーストラグルは、国と国との怖れというよりは、指導者同士、即ちトランプ大統領と金正恩委員長それぞれの個人的な怖れがこの状態を作り出しているように見えます。

トランプ大統領の怖れは、彼の劣等感に起因しています。
事業で成功したり、強硬な発言や、行動を見ているとそう見えないかもしれませんが、彼にはどうやら凄い劣等感があることが窺えます。
劣等感があると自己攻撃をするので、自信がない状態になります。
自信がない人は、自身が否定されることに対して著しい反発を起したり、負けるということを嫌います。
それは、自分で自分を否定しているところに更に否定される感じとなり、まるで傷口に塩を塗られるような耐えられない状態になるからです。これがトランプ大統領の怖れの原因の一つです。
それでトランプ大統領は自分を否定するニュースを「フェイクニュース」と呼び無かったことにしようとしたり、オバマ前大統領の政策をとことん否定することで自身の価値を上げようとしているのです。
トランプ大統領にとってオバマ前大統領は、少年が父親を乗り越える精神的な儀式“父親殺し”に似ているかもしれません。

一方、金正恩委員長の怖れもトランプ大統領と似たところがあります。
あの若さで、偉大な祖父や父の跡を引き継ぐということはかなりのプレッシャーがあったのではないかと思います。
若い自分では至らなくて、側近に離反される怖れ、側近から馬鹿にされる怖れ、兄にとって代わられる怖れなど自分の存在が否定される怖れが強く、失敗できない、弱いところを見せられないという気持ちが強く働いているように思います。
これらが、叔父である張成沢氏の処刑やその他側近の処刑、兄の金正男氏のマレーシアでの殺害に結びつき、また、祖父である故金日成国家主席を真似る“虎の威を借る”形で自己価値を高めようとする行動に結びついていると思われます。
そういった意味では、金正恩委員長の場合、乗り越えるべき目標は父親である故金正日朝鮮労働党総書記ではなく、更に偉大な祖父故金日成国家主席をいしきしているのではないでしょうか。
トランプ大統領は“父親殺し”、金正恩労働党委員長は“祖父殺し”といった少年が乗り越えるべき精神的課題と向き合っているのかもしれませんね。

パワーストラグルでは、自分の正しさの主張を行います。
それは普遍的ではない一方的な思い込みであることもありますし、逆にガチガチの論理的な場合もあります。
そして、お互いに「相手が悪い」と言い、相手をコントロールしようとします。
それがまた、相手を刺激します。
このパワーストラグルの状態から脱出する為には、相手の立場や主張を相手の立場に立って理解し、共感をしていくことです。
共感は、決して敗北ではありません。むしろ成熟さを持った“大人”の振る舞いです。
そのことを理解することが必要かと思います。

国際間のパワーストラグルについても同様です。
そのために、話し合いがもたれることを期待したいものです。