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17世紀から18世紀にかけてフランスで活躍した画家アレクシス・グリムー( Alexis Grimou )が描く「若き巡礼者」。ひょうたんは巡礼のシンボルでした。1726年の作品。( Firenze, Uffizi )



「芋栗南瓜」なんて言われて江戸時代には女性が好む食べ物のベストスリーに入っていたかぼちゃ。
イタリアに来てスーパーで売っているかぼちゃを煮たら、だらだらに煮くずれて日本のかぼちゃのあのほくほく感はまったく皆無でした。
こちらで売っているかぼちゃはアメリカのハロウィーンに登場するオレンジ色のかぼちゃが主流で、日本のかぼちゃよりも水気が多いのでリゾットやスープにするしかないんですね。
時々、姑が青空市場で「日本のかぼちゃがあったわよ」と買ってきてくれると昆布だしなどを使って張り切って煮る私です。

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北方ルネサンスの画家ベルナルト・ファン・オルレイ( Bernard van Orley )が描いた「エジプト逃亡途中での休息」。樫の木の下で休む聖母子の前に置かれたひょうたん。1515年の作品。(サンクトペテルブルク、エルミタージュ美術館蔵)




そのかぼちゃ、西洋の絵の中にも登場するかなあ、と調べたところ「かぼちゃ( zucca )」はすなわちひょうたんとして登場しています。このひょうたんは辞書を引くと「 zucca lunga a pellegrino (巡礼者の細長いかぼちゃ)」と言われていて、食するよりも中をくりぬいてものを運ぶのに使っていたらしいのです。

中に入れていたのはワイン、塩などですがもちろん主流は水。この水筒としての役割からひょうたんは巡礼の象徴となりました。
またスペインの守護聖人である聖ヤコブの象徴のひとつでもあり、旧約聖書の外典「トビト記」に登場するトビアスと天使ラファエルの旅の場面にも時々このひょうたんが登場します。
「旅」の象徴なので、聖家族のエジプトへの逃亡のシーンにも描かれることがあるようです。
旧約聖書の「ヨナ書」では、神がヨナに日陰を与えるために「とうごま」なる植物を成長させていますがこれは現代のかぼちゃかひょうたんであるそうです。このエピソードから復活と救済の象徴として描かれることもありました。

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アンドレア・マンテーニャ( Andrea Mantegna )
作、「羊飼いたちの礼拝」。聖母の右肩に描かれたのは
オレンジの木。その下にひょうたんがひとつ生っています。この作品でのひょうたんが象徴するのは「救済」。1451年ごろの作品。( New York, Metropolitan Museum of Art )






またひょうたんにはネガティブな意味もあり、ルネサンス時代の作家チェーザレ・リーパ( Cesare Ripa )によれば「長く続かぬ幸福( Felicità breve )」のアレゴリーにひょうたんの苗が登場します。女性が片手に宝飾品を持ち、一方の手に持つ棒が指しているのがひょうたんの苗だそうで、あまりに早い成長ゆえその実が地に落ちるのもあっというま、という寓意だそうです。


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チェーザレ・リーパがその著作「イコノロジア( Iconologia )」に著した「長く続かぬ幸福」の挿絵。これがかぼちゃの苗にはとても見えないのですが、象徴辞典によればかぼちゃかひょうたんの苗なんだそうで。