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ヴォイニッチ手稿のなかでは「薬理学」と名付けられている部分。裸の女性たちが描かれているものの内容は不明。文字も未解読でまさに謎だらけの本なのです。


ここのところ、昼間もまったく時間が取れなくなってきました。
娘のお昼寝は30分きざみ。
最近は「相手にしてくれ~」とうったえられて、日がな一日歌を歌ったり即席のぬいぐるみ人形劇を演じたりとハイテンションの私です。

そのお昼寝中に急いで読んだ記事です。
今月の歴史雑誌「Medioevo」には、ある不可思議な本についての記事が乗っていました。以前にもこの本についてどこかで読んだ気もしたのですが思い出せず、今回改めて読んでみました。
その本に書かれた文字は現在も解読されておらず、描かれた挿絵の植物もこの世に存在しないものばかり、というシロモノであります。
その本の歴史は確認されるところでは500年前から始まっていたようですが、20世紀にこの本を購入したアメリカ人の名前がそのまま本の呼び名となりました。
その本の名は「ヴォイニッチ手稿( Manoscritto Voynich )」。

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「天文学」と名付けられた項に登場する天文図。



本はまさに謎だらけです。
見たこともない文字に正体不明の植物、奇妙な占星図。そして裸の女性たち。
この本の歴史は少なくとも500年前、あるいは800年前までさかのぼるとも言われています。まるで、別の世界から届いたようなこの本は現代の言語学者、科学者、暗号解読者たちの頭を悩ませてきました。しかしいまだに解読の手がかりは見つかっていないそうです。

本の大きさは16センチ×22センチ。200ページほどで構成される小型の本で、紙質も上質とはいいがたいそう。
1666年、プラハ大学の学長がある暗号専門者にこの本の解読を依頼した手紙が残っています。その手紙の中には、ボヘミア王で神聖ローマ皇帝であったルドルフ二世( 在位1576 - 1612 )が600ドゥカーティ、つまり3,5キロの金と同様の値で購入したと記されています。ルドルフ二世は、プラハ大学にこの本の解読を依頼したようですがその後本は行方不明となります。
再びこの世に現れるのは1912年。アメリカの収集家ウィルフリッド・ヴォイニッチがイタリアはローマ近郊フラスカーティにあるモンドラゴーネ荘( Villa Mondragone )から、前述のプラハ大学長の手紙とともに購入したためです。モンドラゴーネ荘を所有するイエズス会は、屋敷の修復に際して財源が確保できず他の貴重な書籍とともにやむなくこの手稿も売却することになったのです。このときからこの本は「ヴォイニッチ手稿」と呼ばれるようになります。

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「植物学」の項に登場する摩訶不思議な絵。「風の谷のナウシカ」の腐界を思い出してしまいます。



それから数年後の1919年、ペンシルヴァニア大学教授のウィリアム・ニューボールド( William Newbold )が手稿の解読に成功したと発表しました。
その主張によれば、手稿は13世紀の哲学者・科学者・神学者であったロジャー・ベーコンの著作のコピーだというのです。この説はすでにルドルフ二世の時代から信じられていた模様。しかしニューボールドの翻訳には、ロジャー・ベーコンの時代には存在しなかった顕微鏡や望遠鏡が登場するという矛盾もあり、他の学者たちはこぞって反論しました。ニューボールドは自身の翻訳の失敗を受け入れることなく死亡し、その後も様々な学者が解読を試み功を奏しないまま現在に至っています。
まずもって、この本が作成された根拠や意図さえもつかめないという有様。

1970年代に入ると、イェール大学の学生であったロバート・ブラムボート ( Robert Brumbaught ) が手稿は奇妙なモノ収集家であったルドルフ二世を欺くために故意にミステリアスに作成したものではないかと主張。
つまりかろうじて翻訳できそうな数ページは、この本に価値を与えルドルフ二世から大金をせしめるために作成されたものでその他の部分は意味のない文字の羅列、というわけです。
それにしては手が込んでいて、この本を「解読できないように」作成した人はその才能だけでほかにお金の儲け方もあったんじゃないか、なんて思ってしまいますが。

その後、ブラジルの研究者 Jorge Storfi は手稿の中の単語が中国語のそれと同様、三つの要素から構成されていると主張しました。つまり接頭辞は声調、真ん中は子音、接尾辞が母音というように(私の中国語の知識はまさにゼロですので間違っていたらすみません)。
この手法で手稿の翻訳を試みたもののこれも意味をなさず失敗。

また生物学者も、DNAの研究に使うスペクトル分析なる技法を使って手稿の言語を分析しました。それによれば、自然現象・人間活動の周期に一致しているのだそうで、言語の中に特に多く使われる単語、単語と単語の間の空間はどの単語の後に特に多いのか、などを分析した結果、この言語はでたらめに書かれたものではなくある「言語」として通用する可能性が非常に強いことが判明したそうです。(この部分、夫に説明してもらいましたが実はよくわかっていない私)。
これが事実なら前述の「故意にミステリアスに作成した大金横領説」は否定されますね。

というわけで、ロゼッタストーンのようにわれわれが知ることのできる言語の対訳でも見つからないかぎり、このヴォイニッチ手稿は謎を抱えたままイェール大学の図書館で眠り続けることになります。

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手稿が保存されているイェール大学の近代的な古文書館。











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