portus roma
グロセートの海に残る古代ローマの遺跡。海水にさらされることで、年月とともに強度が高まるという古代ローマ時代の建築物の一例。



夏休み真っ最中です。

日本からイタリアに戻り、その一週間後には娘は義弟夫婦がいるスウェーデンに姑と旅立ちました。
それまでの一週間、私と夫の検診、娘の眼科検診、歯科検診、さらに両親のいずれもともに旅行しない未成年者の為の警察への書類申請、などなど毎日とびまわってヘロヘロでした。

毎年7月は海でバカンスを過ごす姑と娘ですが、子供が生まれてスウェーデンで過ごすことが多くなった義弟夫婦のもとで7月を過ごす、と姑が言い出したのはいつごろでしょうか。
いくらなんでも海外に娘を姑と送り出すのは私も心配で、最初は反対しました。
「なにかあっても、すぐに駆けつけられないし」としぶる私に、「なにかって、なにが起こるの?大丈夫よー」と姑。
娘は、陽気な伯父(つまり私の義弟)と自転車や船遊びをするのが楽しみで、「ママ、私は行きたい」と言い出す始末。
日本から戻り、警察への申請と書類の受け取りが間に合うのか、間に合わなかったらそれまでだ、旅立てなかったらこれ幸い、くらいに思っていた私ですが、フラスカーティの警察署は、「まったく、この時期はパスポートや未成年者の旅行許可証の駆け込み申請ばっかり」と愚痴りながらも、出発の前日にはきっちり書類を揃えていました。

最高気温は24度、朝晩は15度という義弟夫婦が住む海沿いの家で過ごしている娘は、毎日スカイプで「海の水が冷たい」「今日はピクニックに行った」「補助輪なしでもうすぐ自転車に乗れる」と楽しそうで安心しました。

娘がいない合間に、普段はなかなか手がつけられない部屋の片付けや仕事をしなくてはと気は焦りますが、家の中をすうすうと抜けていく風を感じていると、ついつい手を伸ばすのは買ったまま読んでいない書籍。
このまま、2週間などあっというまに過ぎてしまうのでしょう。

話は変わって。
ここのところ、ポンペイの新たな公開場所のニュース、またメトロC線のサン・ジョヴァンニ駅が電車は開通していないのに古代ローマの遺跡が並べられて公開されたニュースなど、古代ローマ関連のニュースをよく目にしました。
今日書くニュースは、夫が「まったく、人間が作り出す文明は進歩してるのか退化してるのか」とぼやきながら教えてくれた記事からです。

数世紀を経ても崩れ落ちない古代ローマの遺跡の数々、そのコンクリートの秘密が明らかになったのだそうです。
キーワードは、「海水」。

年月を経るとともに強度が高まり、環境を汚染する心配もない。
それが、2000年前に建設された古代ローマ時代の建築物の特徴です。
長年、科学者たちはその謎を解こうと悶々と苦しんできたのです。

古代ローマの1世紀を生きた博物学者プリニウスも、『博物誌』の中で、海の水にさらされる港や要塞のコンクリートが、波に洗われてまるで巨大な岩のようになり、さらに強固になると書いているのだそうです。

ユタ大学地質学教授のマリー・ジャクソン女史は、長年ローマにある「トライアヌス帝のマーケット」や、ナポリ近郊ポッツォーリにある遺跡のコンクリートを調査し、謎に包まれた古代ローマ時代のコンクリートの製造法を研究してきました。
これまでわかっていたことは、火山灰、凝灰岩、水などを原料にコンクリートが作られていたということだけでした。

ユタ大学が研究結果として『Mineralogist』に掲載したところによると、その強度の秘密は「海水」にあることがわかったそうです。つまり、原材料のひとつの「水」は、ただの水ではなく「海水」であった可能性が高くなりました。
海水に含まれる塩分が結晶化し、それがさらなる強度の源となっているのだとか。
イタリアの研究者たちも参加し、トスカーナ州オルベテッロ ( Orbetello ) に残る古代の港「Portus Cosanus」の防波堤をX線で分析したところ、海水が浸食して亀裂ができた部分に、化学反応のように塩の結晶が広がっていることが判明。

研究者たちは、現代のコンクリートの7パーセントが炭酸化し強度が著しく低下する現象を考えると、古代ローマ人の智慧は我々のそれを遙かに超えたものであり、この原理を応用するべきだと考えているそう。
実際、現代のコンクリートは100年も保たず粉々になっていく運命にあるのだそうです。
また、現代のコンクリートは高温加熱することによって強度を高めているのに対し、古代ローマ時代には製造過程で高温加熱はしておらず、これまた参考にすることが多いのだとか。
もちろん、現代建築のすべてに古代ローマのコンクリートを使用するのは非現実的なことではあるが、将来的に参考にするのは大いに意義がある、とジャクソン教授は結んでいます。
古代ローマのコンクリートの秘密は、これだけではなくまだまだ研究すべきテーマだとも研究者たちは語っています。

ジャクソン教授は実際に、エンジニアでもある地質学者トム・アダムス ( Tom Adams ) とともに古代ローマのコンクリートのレシピをもとに、新たなコンクリートの製造に着手したとのことです。
そして、具体的にイギリスのスウォンジー ( Swansea ) では、海水の効能を利用しコストを抑えた強度の高い建築材料を製造する試みも進んでいるとのこと。



私は、このコンクリートの中で起こっており化学反応については、読んでもあまり理解できませんでした。
しかし、亀裂が入った部分に結晶化が起こるという現象については、頭の中で想像して「なんてきれいなんだ」と思ってしまいました。
古代ローマの技術は実用的であるばかりではなく、ロマンがあるなあと非科学的なことを思っています。

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