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アレッツォの骨董屋さん。アレッツォは、金細工や骨董市で有名な街。



8月も終わりになり、夏の終わりのわびしさを象徴するような涼しい風が吹いています。

今年の夏、イタリアはとにかく暑かった。
幸いなことに、毎年発生する真夏の断水だけはなく、暑さしのぎに娘がお風呂で水遊びをしたりするのには問題なかったのがありがたかったです。

娘は6月は日本の私の実家で、7月はスウェーデンの義弟夫婦のもとで過ごし、夏休みを謳歌しました。
8月、夫は今年は2週間の休暇しか取らず、私の仕事の事情もあって、家族で旅行をしたのはわずかに5日間。
イタリア人には珍しく海に愛着がない夫は、今年の夏も山での休暇を計画しました。
娘の希望を入れて、「山でキャンプをする」と言われたときには青くなりました。
トレッキングシューズやトレッキングポールまで買わされたときにはいやーな予感はしたのです。普段から山の田舎町に住み、ゆえに自宅後方には広大な森が広がっているというのに、なにを好きこのんでまたアペニン山脈まで行かねばならないのか。毎年夏の私の疑問です。

昨年の夏も、カマンドリの修道院やカゼンティーノ国立公園のあっちこっちを散歩したのですが、高速をアレッツォで降りながらアレッツォの街は見ることができなかったのは千載の遺恨でした。
というわけで、望みもしないキャンプをするからには、交換条件として「アレッツォによってくれ」と私も主張したのです。
その望みは叶ったものの、まったくハードな夏休みとなりました。
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各地域の旗がひらめくアレッツォの広場

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アレッツォはサン・フランチェスコ大聖堂にあるルーカ・シニョレッリの「受胎告知」。大天使ガブリエルのこのジェスチャー、なぜか笑えます。


アレッツォに向かった理由はただ一つ、サン・フランチェスコ聖堂にあるピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画が見たかったからです。
アレッツォの町は思っていたより空いていて、イタリア人よりも外国人の姿が目立ちました。
トスカーナの町は本当に美しいけれど、トスカーナのテリトリーに入るなり感じるのはバールや美術館の受付の人たちの無愛想さ。こちらから声をかけなければ、彼らの目の前に立っていても無視されてしまうのです。
そして、なぜか教会に入るのにも入場料が必要なのがトスカーナ。
教会見学は無料、というローマに慣れていると、なんだかひどく理不尽に感じますが。
ピエロ・デッラ・フランチェスコのフレスコ画は、傑作中の傑作だと思いますが、これを見るのに10ユーロを払うのはトスカーナならではです。

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誰の作品か忘れてしまったけど、これもジェスチャーが「che vuoi?」という余り品の良くないそれに見えて、不謹慎にも大笑い。

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ピエロ・デッラ・フランチェスコの作品はすばらしかったです。画集で見るより、ずっと力強い感じで。

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写真で見ると繊細なのに、本物はものすごい迫力でした。

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ピエロ・デッラ・フランチェスコの聖母の特徴は、額の広さかな。

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スピネッロ・アレティーノの作品の中にいた動物たち。


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「ライフ・イズ・ビューティフル」の撮影地としても有名なアレッツォ、ジョルジオ・ヴァザーリの生誕地でもあり、「ドレミファソ」を作り出した修道僧グイド・モナコの生まれた町でもあるそう。パネルに描かれた音符がかわいい。


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クティリアーノの脇を流れるリマ川にかかる吊り橋。山道で車酔いしそうな私には、この揺れもきつかった。





アレッツォから向かった先は、クティリアーノという山間の小さな町でした。
ピストイアとルッカのあいだに位置した小さな町ですが、さすがはトスカーナ、私が住む田舎町とは違う美しい佇まいでした。街並みもお店のディスプレイもレストランの食事も、ラツィオの田舎とはちがう洗練を感じます。
迷路のような町で、偶然出会ったおばあちゃん二人からレストラン情報をゲット。それによると、なんとこんな田舎に日本人のシェフがいるレストランがあることが判明。しかしその日は、クティリアーノの老舗レストランで食事をし、終了。

そして次の日に向かったのが、「オッリド・ディ・ボートリ ( Riserva Statale Orrido di Botri )」という国立公園。
「恐怖を催させる ( orrido ) 」という言葉が暗示するものがなにか、公園事務所に入って判明しました。
「ここはヘルメット着用が必須です。いざというときのために、身分証明書を置いていってください。あ、それから今年は雨が少ないのでそれほど難儀はしないと思いますが、膝下くらいまでは水に浸かりますからご承知おきください。お子さんもいるから、一番短いコースでいかがです?行きが2時間、帰りが2時間です」

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「入口」を入ってすぐに現われる光景。道はいったいいずこに?

差し出されたヘルメットをかぶり、夫のリュックには水分補給のためのハイドレーションパックとパニーノ、私はトレッキングポールを持ち、いざ出発。
娘は最近イタリア語で見ている「未来少年コナン」を思いだして、「コナンなら裸足で走ってるね!」とかいいながら大喜び。
夫のサプライズ計画も毎年ハードになるな、と実感いたしました。

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両際から岩が迫ってくるこの難所、風は冷たいし水は氷みたいでした。膝上まで水に浸かった娘、「パニーノ食べないと前に進む勇気が出ない」とアンパンマンみたいな台詞を吐いてました。

別の日に行った別の公園にて。

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こちらはボローニャ方面に向かったところにある「コルノ・アッレ・スカーレ ( Corno alle Scale ) という国立公園。なにしろ広大なので、さまざまなハイキングコースがあります。木に記された「331」というコースを目指して、この日も歩く歩く。

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ここでこの日もパニーノにありつきました。じっとしてると寒い!

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山の中を巡っていると、こんな町が多いのです。

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折しも、クティリアーノでは「夏祭り」が開催されて、ご当地のおいしい料理やお菓子、物産が並ぶ屋台を楽しめました。
町のおばあちゃんが教えてくれた「日本人のシェフ」がいるレストランでも食事をしましたが、ルッカの料理学校からこの街におくられてきたという26才の若い男性、にこやかに迎えてくれました。こんな山奥で、同郷人もいない環境で、懸命に仕事をしている彼の姿に心打たれました。
ポルチーニキノコのパスタも、ウサギの肉のポレンタもなにもかもおいしかったのですが、びっくりしたのはジャガイモの美味。料理の説明してくれたイタリア人の女性によると、「メーロ ( Melo ) 」という標高1000メートルの耕地に育つジャガイモだそうで、「夏祭り」の屋台で見つけて5キロを購入。
そのほか、栗の小麦粉を使った「ネッチョ」というクレープやらロベルト・カティナーリ ( Roberto Catinari ) なるブランドのチョコレートも買いました。これまた我がロッカとくらべると、「祭り」に登場する屋台にまで洗練度の相違が現われているようで、トスカーナの底力みたいなものを感じました。

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日本人のシェフがいた「オステリア」

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ウサギの肉ののったポレンタ

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ポルチーニのパスタ。とんでもなく美味。

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田舎の夏祭りの屋台に登場するにしては高価なチョコレート「ロベルト・カティナーリ」のチョコ。高額なのに、飛ぶように売れていました。

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トスカーナは本当に豆料理が多かった。有機栽培農家が出していた屋台で見つけた「メーロ産ジャガイモ」。


そして、クティリアーノでは、普通の文章にも「接続法」と呼ばれる動詞の変化が使われていたのが興味深かったです。
接続法が使われるべくもないフレーズに使われていて、お国が変われば言葉も変わるものだと楽しく聞きました。




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帰りはルッカに寄ることに。その途中で見た中世の「悪魔の橋」。


最終日は、ルッカへ向かいました。
ようやく坂道から解放されて、平坦な道が歩けると思ったら甘かった。
ルッカの町には、塔が林立しています。その塔を、3つも上り下りして膝がガクガク。
まったく、よく歩かされたバカンスでしたが、腰痛は軽減。動かないとダメだなあと実感したことです。

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塔の上に気があるのが特徴の「グイジーニの塔」。


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奥に見えているのがルッカのドゥオモ

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塔のてっぺんに樹木が茂っていることで有名な「グイジーニの塔」より。このほかに2本の塔を制覇。

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ドゥオモにあったギルランダーイオ作「玉座の聖母と聖人たち」

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「玉座の聖母」の下に描かれていた小作品。これもギルランダーイオかな?


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衣服の翻った様子や、背景など小さいながら素敵。




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同じくドゥオモにあった作品。記憶が正しければフィリッポ・リッピの作品。


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サン・ミケーレ教会。ルッカもトスカーナの町、教会を見学するのに入場料を払います。暑さと疲れでここまで来るとどうでもよくなり、3ユーロ払う気もなく外観だけ撮影。


今週から夫は仕事に戻り、長い長い夏休みも終わりに近づいてきた娘は宿題に追われています。
日中はまだまだ暑いとはいえ、そろそろスイカではなく栗が恋しくなるような、秋の空気がただよっている山の町です。
夏も終わりって、本当に物憂いですね。






 















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