初段

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中年空手百条委員会の有明省吾です。
  
 仕事の中で、時折、外国人留学生なんかに日本文化を紹介する機会があります。そこで、いろいろと質問をされることもあります。彼らはそれなりに日本の文化を勉強しているので、質問もなかなかいい点を突いてくることがあります。

 「日本の歴史の中で、なぜショウグンとテンノーが必要だったのか」

 なんてのは、なかなか深い質問ですね。こっちも苦労して答えますが、時にたじたじとすることもあります。中には武道に興味のある留学生もいて、いろいろな質問を寄せてきます。

 「ショーメンに礼!といっているが、ショーメンとはだれのことか?」

 というのも、なかなかすごい質問でしたね。まあ、「神前に礼」といったり、「正面に礼」といったりしますが、礼をする以上は相手がいなければならないはずなのに、誰もいない方向に向かって一斉に礼をするのは奇妙に見えるらしいですね。この質問に答えるのもなかなか苦労しましたが、

 「米軍がアメリカの国旗に敬礼をするようなものだ」

 といったら、意外と簡単に納得してくれました。国旗は国の精神を象徴したものだが、同様にして道場では「武道の精神」の追求に身を捧げる意志をこうして表しているのだという具合に説明しました。ま、これはあくまでも私の意見ですけど、あながち間違ってはいないと思います。

 道場に神棚を置いているところだと、もうちょっと説明がややこしくなります。当然、「あの神様はなんの神様だ?」と聞かれることもあります。

 道場の神棚には「香取」「鹿島」の神様が祀られているという説があります。どちらも日本の建国に大きく関わった神様であり、また剣の威力にかかわる神様だと言われています。また、不動心や道をすすむ強い意志を象徴する神様だと言われています。まあ、まさに日本武道の精神そのものです。神様に祈ると考えるのが嫌な場合には、武の道を強い意志を持って歩むのだという決意を新たにし、武道精神を尊重していると思えばいいかもしれません。「精神」という言葉の中には「神」という字が入っているので、こう考えて間違いないと思います。

 郷に入っては郷に従えで、だいたいの留学生は納得します。ただ、神棚の中に何が入っているのか気にする留学生もいますね。偶像崇拝を禁じている宗教なんかの人はその辺にこだわるようです。まあ中には鏡が入っているので、しつこく聞いてくる人には「汝自身を知れ」「自分の中に神を見いだせ」という意味だとでも言っておくと大体納得してくれます。これはちょっと苦しい説明ですが、嘘だとは言い切れません。

 こんな感じで、我々にとっては当たり前のことを、丁寧に説明するってのはかなり骨が折れることですね。当たり前ってことは、つまり「だって、武道といったら神棚でしょう」といってみな納得しているということですから、神棚がある理由なんて普段はあまり考えていませんよね。

 私自身が深く考え込んでしまったのは

 「なぜ武道ではイチダンと言わずにショダンというのか?」

 という質問です。初段という言葉をとっさに「First step」と英訳して解説してしまいましたが、大体の外国人は驚きます。あのクロオビを取得するのがゴールだと思っていたら、それはただのファースト、ステップに過ぎないということに驚愕するようです。私も自分で英訳していながら、驚愕しました。

 「そうか、そういうことだったのか」

 妙に納得してしまいました。空手の修業をする中で、黒帯は一つの目標です。しかし、子供のころから空手をやってきた子が、黒帯取得を機に道場をやめてしまうという話をよく聞きます。これは、空手に級位が細かく設定されており、かなり長い期間を「色帯」で過ごさなければならないことに由来するのかもしれません。黒帯がゴールに見えてしまうか、一区切りの時期という意味合いになってしまうのでしょうね。

 私は中学時代に剣道初段を取得しましたが、それ以前に「級」を取ったことはありませんでした。いきなり初段からスタートなので、まさにファーストステップという感じでした。この辺が空手では実に細かく、たとえばフルコンでは10級から10段階のステップをたどって昇級をしていくことになります。「飛び級」をすることもありますが、普通にやってれば5年で黒帯でもかなり早いという気がしますね。私は13年かかっています。

 しかし、これがまさに、ファーストステップなのですね。ここからは自分で歩き出すのだという意味なのかもしれません。教えをしっかり守って基礎がある程度できたのだから、それを道具にして空手の道を歩みなさいということなのでしょうね。

 いや、これは深いわ・・・・・・・・・。

 と、仕事中に考えこんでしまいましたね。剣道とか柔道とかは、段位を高くしていくなかで生涯にわたる修業のモチベーションを維持しているのかもしれません。そういう意味では初段はまさにスタートラインという意味合いが大きいですね。一方で空手なんかはそれなりのレベルになるまでは段を取れない仕組みになっていますが、そんな中で、黒帯が一つのゴールだと考えがちになります。しかし、その結果燃え尽きてしまってはいけませんね。

 段がステップだとすれば、級はアプローチですね。助走です。ステップに至る重要な過程ですね。まだまだ飛べないけれども、飛ぶために必要な時期なのでしょうね。いや、これはいいことに気づいたなと一人で悦に入っていると、外国人留学生がこんなことを聞いてきました。

 「じゃあなぜ級は10級からカウントダウンになるのか?」

 助走だからです。最初のステップまで残り何メートルか?というような意味でしょう。いやはや、外国人に武道を説明すると、普段考えないことを考えますね。勉強になります。

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