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中年空手百条委員会の有明省吾です。

 月刊「秘伝」が発売になって、ぱらぱらと記事をめくっていました。今月は中国北派拳法の特集です。中で興味を引いたのが宮原保先生の記事ですね。先生の師事された温敬銘という中国武術の達人の話が出ていましたが、そこに「
銬手翻子拳」という、ちょっと変わった拳法が登場していました。温先生はこの拳法でも知れた達人だったようです。

 この拳法は「
銬手」という字でわかるとおり、両手を鎖、もしくは枷でつながれた状態を模したものです。監獄に繋がれた人がこうして編み出した拳法だと言われているようです。両手の間隔が確かにある長さよりも広がりませんね。

 あくまでも伝説なのでしょうが、この手の伝説は結構多いように思います。

 形意拳の
郭雲深は、試合で人を打ち殺してしまったことで監獄に繋がれることになりますが、獄中、手かせをされたまま「虎形拳」の稽古をしているうちに、それがコンパクトで破壊力のある「虎撲子」という技になってしまったという話を聞いたことがあります。

 あの有名なカポエイラも、鎖で手を繋がれた奴隷たちがダンスの稽古のふりをして必殺技を練っていたという有名な伝説があります。


 空手にしても、「島津藩の琉球支配で武器を取り上げられた沖縄の人たちが徒手空拳の武術を作り出した」という説がありますね(これはいまは否定されているようです)。

 また、武道とは関係ありませんが、昨今「プリズナ―トレーニング」というのも流行りですよね。狭い刑務所の中での囚人たちのトレーニングという意味なのでしょうが、これもなんとなく同じにおいがしますね。

 なんなんですかね。この抑圧系の伝説ってのは、結構人に好まれる何かがあるのでしょうか。いや、これはあるでしょう。孤独と絶望の中で黙々と武技を磨いている姿というのは非常に絵になることは間違いありません。武技を磨くというのはどういうことかを最も象徴的な形で伝えています。漫画「あしたのジョー」なんかに近いイメージがありますね。そういえば主人公の矢吹丈も少年院の中でボクシングの練習をする場面が印象的でした。そんな中で一筋の光を見つけていく男たちの姿は確かに美しい。

 また、どんなに制約があっても、その時に応じた形で稽古は可能だということを寓意しているようにも思えますね。両手がつながれて自由が奪われたとしても、技を磨くことは可能なんだから、普通の社会人が仕事だ、仕事だいって、稽古をやれねえわけねえだろう!自宅は狭くて稽古できないなんて言ってる場合じゃねえ。ボーッと生きてんじゃねえよ!というような一喝を浴びせられたような気持にもなります。

 うーむ、これは強烈ですねえ。

 制約があればあるほど、それを利して技を磨くことは可能なのだという執念の激しさがありますね。昔、勝新太郎の演じる盲目の剣士、「座頭市」という映画がありましたが、あれなどは、目が見えないという絶望的な状況の中で、目に頼らずに全身の感覚を研ぎ澄まして剣をふるっていましたね。実際に組手なんかでも目に頼りすぎると失敗することがあり、この映画もあながち嘘っぱちだとは思えないところがあります。

 まあ、こういう「武道精神を教える」という意味がこれらの伝説にあることは間違いのないところなのですが、技術論的にももしかすると深い意味があるのではないでしょうか。両手を繋がれた状態、一見不自由な状態にすることで、却って技の威力を増す工夫がここに隠されているのではないでしょうか。

 剛柔流の稽古会で「弧拳」の使い方を稽古したことがあるのですが、孤拳で相手の胸を突くと、突きのように腕の力が入りにくくなりますが、それゆえに体は全身の力を伝えようとして、結果的に大きな威力が出ます。寸突きなどは最初弧拳で行うと感覚がつかみやすいらしいです。制約をかけることで、より大きな力を導いています。

 実は、今日、両手を肩幅に開いてから手首を囚人のように縛り、その状態で「平安」の型をやってみました。一つ間違えるとただの変態になってしまいますが、驚いたことに平安その4までは支障がほとんどありませんでした。(5では最後の卍受けにちょっと支障があります)むしろ、動きに無駄なブレがなくなり、型がシャープに極まるような気がします。これはもしかすると大変な発見をしたのではないかと驚いてしまいました。制約を受けることで体を慎重に使う意識が生まれてきたのかもしれません。

 ただし、これは人前で稽古できませんね。道場で後輩たちにこれをやらせると明らかに何かと誤解されますから決しておすすめいたしません。しかし、妙な快楽に目覚めない程度に、試してみることをオススメします。

 もしかすると、こういう抑圧系の伝説の中には、実は技術論的な秘密があるのかもしれませんね。なんでも自由になるというと、体はどこを使えばいいのだと迷ってしまうようです。動きを制限して「ここは使うな」と言ってやった方が、効率よく体が使えるということもあるのかもしれませんね。

 さて、最後に、片腕で全日本学生剣道大会で優勝した選手がいます。私はこの7分の動画を見て号泣してしまいました。いよいよ稽古をサボれなくなりましたね。みなさんぜひご覧ください。


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