2007年06月07日 02:22

8cbe86f0.pngギター・サウンドが全く違う。使っているギターが違うからか。ジャケットはスタインバーガーを持っている写真だ。ジェイムズ・ブラッド・ウルマーもこんなギターを弾くことができたのだ、と変に感心してしまう。それほど、このアルバムでのジェイムズ・ブラッド・ウルマーは違う。それもそのはず、このアルバムにはロニー・ドレイトンというもうひとりのギタリストが入っている。もちろんジェイムズ・ブラッド・ウルマーもギターを弾いているが、そのスタイルはロニー・ドレイトンにあわせているようだ。そしてジェイムズ・ブラッド・ウルマーはボーカルに力点を置いている。

ロニー・ドレイトンはデファンクトにいたこともあり、ジャマラディーン・タクマのソロアルバム「ジュークボックス」にも参加したことのあるギタリストだ。ミシェル・ンデゲオチェロの「ビター」にも参加していた。ジェイムズ・ブラッド・ウルマーとは異なり、カラッと乾いた行儀のよいギターを聴かせてくれる。このダブル・ギターを支えるリズムセクションは、ベースが旧友アミン・アリ、ドラムはラウンジ・リザーズに在籍し、オーネット・コールマンの「イン・オール・ランゲージ」にも参加したグラント・カルビン・ウェストンだ。

ロニー・ドレイトンのギターも悪くないし、ソロ・パートではいかにもジェイムズ・ブラッド・ウルマーらしいフレージングを聴かせてくれるところもある。しかしこのアルバムでは、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーの歌を楽しむのがいいだろう。枯れた声はなかなかのものである。緊張感ではなくゆったり感を楽しむ、すなわち文字どおり「ブルース・エクスペリエンス」である。

録音は1989年で、西ドイツのCalren Studiosで行われた。このアルバムは1990年にIN & OUT RECORDSから発売された西ドイツ盤だ。(20070607/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年06月06日 01:52

fecb41dd.png1980年代の熱いギター・プレイがよみがえった。いや、もっと研ぎ澄まされた緊張感あふれる演奏に進化している。ソロアルバム「オデッセイ」に代表されるように、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターは悟りをひらいたかのような安定した優雅なものであった時期があったが、ここでは鬼気迫る演奏に戻っている。ギタースタイル、そしてサウンドから気がつくのは、ノイズを意識的に演奏に取り入れていることである。これはフレッド・フリスやアート・リンゼイにも似ている。アナーキーな感覚が強く感じられる演奏になっているのだ。

ベーシストに旧友アミン・アリを迎えたこともあるのだろうか。またドラムはコーネル・ロチェスターであり相手に不足はない。このトリオに加えて、ゲストとしてアルトサックスでArthur Blythe(トラック2,6,7)、ソプラノサックスとテナーサックス、フルートでSam Rivers(トラック1,5,4)、バリトンサックスでHamiet Bluiett(トラック3)が参加している。

もともとジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターは万人に好まれるものではない。ギターを少しかじった者が聴いたなら、もしかしたら下手糞だと思ってしまうかもしれない。ミスピッキングと思われる多数の音、コード進行を知らないかのようなでたらめなフレージング、不協和音。しかし一度好きになってしまえば虜になる。唯一無比の魅力がある。

ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターはエロティックだ。全く正反対のギタースタイルはパット・メセニーである。パット・メセニーのギターは中性的で、色でいえばパステルカラーだ。それに比べてジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターからは、汗の匂いがする。色でいえば赤と黒の斑模様だろうか。

1曲目の「イン・タイム」は、ハーモロディック風の曲だ。音の隙間がありながら、緊張感にあふれている。2曲目「ノンビリーバー」もハーモロディック的である。このアルバムの中では優雅な方になるだろう。3曲目では疾走感のある怒涛の演奏を聴かせてくれる。ドラムのコーネル・ロチェスターの迫力によるところが大きいが、ベースのアミン・アリも絶妙のインタープレイで応えている。そして4曲目。この「マンカインド」の冒頭におけるジェイムズ・ブラッド・ウルマーのソロプレイは素晴らしい。ギターの弦に触れ、つまびく指先が見えるようだ。

5曲目「ヘルプ」はモダン・ジャズ的なアプローチで、アミン・アリのベースが饒舌に歌っている。6曲目「アバンダンス」はオーネット・コールマン的だ。冒頭のテーマは、とてもユーモアがある。7曲目「ピュリティ」はビートの変化が面白い。

録音は1993年の12月6日と7日、ニューヨークのEastside Soundスタジオで行われた。このCDは1994年にディスク・ユニオンから発売された日本盤だ。(20070606/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年06月05日 01:53

2e87d6e3.pngデイヴィッド・マレイ、ジャマラディーン・タクーマ、ロナルド・シャノン・ジャクソン、そしてジェイムズ・ブラッド・ウルマー。この4人の名前を聞けば胸の高鳴りを抑えきれないはずだ。

このグループのリーダーは、間違いなくジェイムズ・ブラッド・ウルマーだといえる。それは1曲目の「ボディ・トーク」を聴けばわかる。まさにジェイムズ・ブラッド・ウルマーの世界がここにある。だがジェイムズ・ブラッド・ウルマーはただひとつの世界に留まっている訳ではない。聴きようによってはたいへん耳障りな、ノイズの塊のようなギタープレイ。ただ一瞬の空白も恐れるかのように執拗にかきならすギタースタイルは独特のものだが、ここでのジェイムズ・ブラッド・ウルマーの音はたいへん整理されている。予想外に隙間がある。しかし、音が少ないにもかかわらず、グルーヴ感は何倍にも増している。まさに神がかった境地に達しているのだ。

2曲目の「プレイタイム」では、このカルテットがオーネット・コールマンの音楽の正統な継承者であることを証明している。おもわず小躍りしてしまいそうなメロディーが随所にあらわれ、メンバーは各自まちまちに好き勝手をしていながら、それでいてある一つの一体感をもっている。ここではジェイムズ・ブラッド・ウルマーのギターもいいが、デイヴィッド・マレイのサックスがとてもいい味を出している。まるでオーネット・コールマンの生まれ変わりのようだ。

3曲目「ニサ」では、ジェイムズ・ブラッド・ウルマーのもうひとつの顔、ドローンを活かしてゆったりとした空間を聴かせてくれる。4曲目「ストリート・ブライド」は細かなリズムの切り方から、ロナルド・シャノン・ジャクソンの色が感じられる。デコーディング・ソサエティーでやってもおかしくない曲だ。5曲目「ブルース・フォー・ディヴィッド」はデイヴィッド・マレイの作曲だろうか。ここではオーネット・コールマンを意識したものではなく、比較的オーソドックスなサックスプレイをしてくれる。6曲目「バーン!」は典型的なフリー・ジャズスタイルに近い。

録音は1988年2月3日と4日。ニューヨークのA & R Recordingスタジオで録音された。このアルバムは1988年に発表された。ディスク・ユニオンから発売された日本盤だ。解説を中村とうよう氏が書いている。(20070605/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年06月01日 00:55

237f9438.pngWikipediaを見ると、「EGG」と名のつくグループは5つもある。カナダのエレクトロニック・デュオの「EGG」、アメリカのインディ・ポップ・バンド「EGGS」、ブリティッシュ・エレクトロニック・ファンク・バンド「THE EGG」、アシッド・ハウス・ミュージシャンの「Mr Egg」、そしてこのカンタベリー派と呼ばれるプログレッシブ・ロック・バンドの「EGG」だ。

「エッグ」は1968年の7月に結成した。メンバーはオルガン・プレイヤーのデイブ・ステュワート、ベーシストでありボーカルをとるモント・キャンベル、そしてドラムのクライブ・ブルックスの3人である。この3人はエッグを構成する前に、ギタリストのスティーブ・ヒレッジを加えた4人で「ユリエル」というグループをやっていた。この「ユリエル」というグループのことは、セカンドアルバム「優雅な軍隊」にある曲「A Visit To Newport Hospital」で歌われている。

このCDは、エッグのファーストアルバムのリイシューで、オリジナルのファーストアルバムに「Seven Is A Jolly Good Time」と「You Are All Princes」の2曲が加えられている。なおオリジナルの「Symphony No.2」は「Movement 1」、「Movement 2」、「Blane」そして「Movement 4」という4部構成になっているが、「Movement 3」という部分もあったのだが著作権の関係で収録できなかったらしい。2005年に発売されたリイシュー盤では、この「Movement 3」も収録されており、そのためにオリジナルの「Symphony No.2」は20分40秒であったのに比べて、リイシュー盤では23分58秒の長さになったらしい。だがこのCDにおける「Symphony No.2」は20分43秒であるので、オリジナルバージョンのようだ。

エッグの魅力は、まずデイブ・ステュワートのオルガンだ。そしてモント・キャンベルの歌もいい。ボーカリストとして秀でているとは言えないが、気だるい歌い方は独特の雰囲気があり、デイブ・ステュワートのオルガンにぴったりだ。エッグの最高作品はセカンドアルバムの「優雅な軍隊」だと思うが、このファーストアルバムも多彩な曲があって、なかなか、いい。

このアルバムはもともと1970年に発表された。このCDは1992年にDERAMから発売された英盤だ。(20070601/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年05月31日 01:24

128276d6.pngエピソード・シックスは、後にディープ・パープルで活躍するイアン・ギランとロジャー・グローバーが参加していたことで有名だ。エピソード・シックスが結成されたのは1964年の7月だが、イアン・ギランが参加したのは1965年の5月だ。その時点のメンバーは、ボーカルがイアン・ギラン、ギターがグラハム・ディモックとトニー・ランダー、キーボードがシェイラ・ディモック、ベースがロジャー・グローバー、ドラムがハーベイ・シールドの6人だ。1966年と1977年にパイ・レコードからいくつかのシングルレコードを発表したが、イアン・ギランとロジャー・グローバーがディープ・パープルに参加するためにバンドを去ってからは活動が停滞した。しかし1974年までは続き、その後に参加したメンバーの中には、後にロキシー・ミュージックヤイアン・ギラン・バンドに参加することになるベーシストのジョン・ガスタフスンや、クオーターマス、ギランに参加するドラムのミック・アンダーウッドがいた。

アルバムは発表していないようで、ここに集められた曲は、シングル曲やデモ録音、リハーサルなどである。CD1が「The Story So Far...」と名付けられ、シングルとして発表された曲が25曲収められている。CD2は「Bonus Tracks」となっており、デモ曲やリハーサルが6曲、未発表シングル曲が3曲、シーラ・カーター・アンド・エピソード・シックス名義の曲が4曲、ライブ・イン・ヨーロッパの録音が2曲、初期の作曲が2曲、カバー曲が9曲の合計26曲が収められている。これと似たような編集で「Love, Hate, Revenge」があるが、こちらのほうがお買い得感がある。曲数も多いし、何よりも23ページにわたるカラーのブックレットがよい。様々なデータもわかるし、当時のバンドを知るための写真も豊富にある。ファンとしては嬉しい限りだ。

流行りのグループサウンズを真似た個性の薄い曲もあるが、ボーカリストとしてのイアン・ギランの個性を発揮させた曲もある。CD1では6曲目の「スタガー・リー」や8曲目の「キュー・セラ」、9曲目の「リトル・ワン」、そして14曲目の「ミスター・ユニバース」などだ。11曲目の「サンシャイン・スーパーマン」はドノバンの名曲だが、この曲もイアン・ギランらしさに味付けられている。20曲目の「ストーンズ・メドレー」も面白い。名曲「サティスファクション」で始まるカバー曲だ。また3曲目の「ラブ・ヘイト・リベンジ」や22曲目の「アイ・アム・ザ・ボス」など、ソフトであるが印象に残る名曲も多い。イアン・ギランが後にアルバムにまとめる「シャーカズー・アンド・アザー・ストーリーズ」につながる曲だ。

このCDは2002年にPurple Recordsから発売された。英盤だ。(20070531/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年05月30日 01:11

4876263d.pngこの音楽をどうジャンルづけようかと迷ったが、「グループサウンズ」とすることにした。ディープ・パープルのイアン・ギランとロジャー・グローバーが在籍した伝説のバンドであり、とりわけイアン・ギランというボーカリストを語る上で、とりわけ重要なものである。いったいどんな音楽を聴かせてくれるのだろう、と期待させてくれるのだが、ディープ・パープルやソロ活動を念頭において聴くと拍子抜けするだろう。だがここにはイアン・ギランという個性的なボーカリストがロックの道へ足を踏み出した歴史の一歩がある。

CD1は「The singles, As & Bs」と題されており、シングル曲が収録されている。ふにゃふにゃした甘い曲が続き、典型的な60年代グループ・サウンズ的な曲が続く。ビートルズのカバー曲さえある。しかしバンドのサウンドが徐々にオリジナリティーを確立していく過程がよくわかる。たとえばイアン・ギランとロジャー・グローバーが参加する前のディープ・パープルは、後のキー・パーソンである彼らがいないにもかかわらず斬新だった。このCDからは、グループ発足時には流行のサウンドをなぞった曲作りがされていたが、次第にビートが強くなり、17曲目の「モーツァルト・バーサス・ザ・レスト」のようなクラシックの手法をロックに適用した曲など、次第に初期のディープ・パープルの表現方法に接近していく様子が感じられる。

イアン・ギランのボーカルについては、途中13曲目の「リトル・ワン」あたりから、明らかにスタイルが変わってくる。曲もイアン・ギランのボーカルを中心にすえた作りになってくる。特筆すべきは16曲目の「ミスター・ユニバース」で、ここでイアン・ギランのシャウト&スクリームスタイルの原型が確立されている。なおこの曲は「イアン・ギラン・バンド」の同名の曲とは全く違うのだが、イアン・ギランにとってターニング・ポイントとなった曲であることは間違いない。

19曲目「アイ・ウィル・ウォーム・ユア・ハート」と20曲目「インセンス」では女性ボーカルが聴ける。シーラ・カーターという女性ボーカリストだ。21曲目「アイ・ウォント・ハート・ユー」と22曲目「UFO」ネオ・マヤという人物の作品になっているが、バンドのイメージを一新する曲だ。特に「UFO」はサイケデリックな曲、というかサウンド・イメージといったようなもので、バンドの方向性を模索している様子がうかがえる。

CD2は「Rarities, Demos, and Live Recordings」となっており、トラック1から6が別バージョンとアウトテイク、トラック7から13がデモ録音、残るトラック14から22がライブ録音だ。ライブ録音ではトラック14が「モーツァルト・バーサス・ザ・レスト」で、こなれていないがインパクトのある早弾きのギターが聴ける。その他のトラックでは、イアン・ギランのスクリームがあり、ライブではボーカルスタイルが固まりつつあったのだと思える。

このCDは2枚組で、2005年にCastle Musicから発売された英盤だ。(20070530/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年05月28日 07:37

2afb8bcc.pngセブンス・ウェイブの「サイ・ファイ」は学生時代にプログレ雑誌で紹介されており、ジャケットデザインの大胆不敵さもあって、いつか必ず聴きたいアルバムのひとつだった。今のようにWebで簡単に輸入CDを注文できるという時代ではなかったので、音楽雑誌の新譜情報をチェックしたり、輸入レコード店へ行けば棚の端から端まで見て回るということをした。たいへんな苦労でもあるが、楽しい時間でもあった。人間は好きなことのためには時間も苦労も厭わない。

しばらくして輸入レコード店の片隅でアルバム「シングズ・トゥ・カム」を見つけた。「サイ・ファイ」のジャケットに比べて地味な感じは否めず、これが本当に同じバンドのアルバムかどうかと疑いながら手にとってレジへ向かったことを思い出す。そして聴いた後も、しっくりこなかった。それは当時の俺がプログレッシブ・ロックというもののとらえ方が一面的であったためだ。

キング・クリムゾンやイエス、ELPといったバンドをプログレッシブ・ロックとして聴いていた。その感覚からすれば、セブンス・ウェイブを聴いても、確かにピンとこないはずだ。プログレッシブ・ロックという分類そのものに意味がない、と言ってもいい。もっと細かなジャンル分けが必要なのだ。

セブンス・ウェイブはグループの名前だが、実質的にはケン・エリオットトキーラン・オコナーの2人のプロジェクトである。ケン・エリオットはキーボードやシンセサイザーを弾き、キーラン・オコナーはパーカッションを叩く。しかしどちらもマルチ・プレイヤーであり、ボーカルも担当する。

実際のところ「エレクトリック・ポップ」という言葉がセブンス・ウェイブの音楽を良くあらわしていると思われる。キーボード中心の軽いサウンド作りがそう思わせるのだが、リズムはシーケンサーではなくドラムキットやパーカッションであり、しかもかなり熱いドラム・プレイをしてくれる。音が軽いのでポップな印象を受けるが、変拍子が随所に組み込まれており曲の構成はかなり複雑である。トータルアルバムとしての作りも意識されている。

このCDは「シングズ・トゥ・カム」と「サイ・ファイ」という2枚のアルバムを集めたもので、トラック1から14までが「シングズ・トゥ・カム」、トラック15から24が「サイ・ファイ」である。「シングズ・トゥ・カム」は1974年、「サイ・ファイ」は1975年のアルバムだが、アルバムの作りとして「シングズ・トゥ・カム」の方が複雑さを感じ、「サイ・ファイ」の方がダイレクトにロック的な印象を受ける。ボーカルがピーター・ガブリエルを連想させるようなところや音楽に演劇性が感じられるところもあって、ジェネシスとの類似性も感じられる。ロック・オペラ的なところはネクターにも近い。

このCDは1999年にGull Recordsから発売された英盤であるが、MSIが輸入して解説と英詞をつけて日本盤として発売したものだ。解説はたかみひろし氏が書いている。たかみひろし氏は日本にユーロピアン・ロックを広めたことで有名だが、その頃は自分の名前をひらがなで記していた。このCDの解説では高見博史と漢字で記している。(20070528/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年05月25日 01:34

26e4320d.pngこのアルバムは、名作「ブルー」と、ジャズの要素を大胆に取り入れてジョニ・ミッチェルの名を知らしめた有名なアルバム「コート・アンド・スパーク」の間にはさまれたアルバムだ。邦題は「バラにおくる」とされる。

一曲目の「宴」を聴いてわかるとおり、前作「ブルー」を引き継いだような作りになっている。ただしここで歌われるものは、「ブルー」のように男女の愛をテーマにしたものではなく、また男女の愛と女性の生き方についてではなく、もっと広く人の生き方といったようなものを取り上げている。その意味では「ブルー」のような突き刺さる痛々しさが感じられないだけインパクトが薄いといえる。

サウンド的に感じられるのは、たとえば「パラングリル」における冒頭からのフルートの使い方や「レット・ザ・ウィンド・キャリー・ミー」でのサックスなどの管楽器、「恋するラジオ」のハーモニカ、など、ゲストプレイヤーを使った表現の幅が広がっている。リズムについても曲によってパーカッションが使われたり、「ブロンド・イン・ザ・ブリーチャーズ」ではドラムキットが登場する。ハーモニカで参加しているのは「クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング」のグラハム・ナッシュだ。

といったようにサウンド面での拡張がされていることと同時に、ジョニ・ミッチェルの歌にも表現の広がりと深まりがみられる。特に俺のお気に入りは「コールド・ブルー・スティール」だ。実に透明感のある歌い方で、あまりに真剣に聴き込むと、永遠の深みに引きずられそうになる。ブルースである。ジョニ・ミッチェルの解釈したブルースの形があらわれている曲だ。

2枚の名作アルバムに挟まれて、どちらかといえば知名度の低いアルバムかもしれない。しかし「ブルー」ほどの刺々しさがないところが、逆にいえばいつまでも飽きることなく、やや軽い気分で聴くことのできるアルバムだ。

このアルバムは1972年に発表された。このCDはWEA International Inc.から発売された日本盤だ。(20070525/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年05月18日 01:31

b1b4b7a3.pngファンならばこのようなCDを見ると、いったいどんな録音が収められているのだろう、と気になってしかたがないはずだ。2枚組で、CD1は12曲で56分23秒、CD2は12曲で51分01秒もある。合計すると2時間に近い。

収められたものは、あるものはデモトラックらしきもの、またあるものは別テイクらしきもの、そしてライブ録音、アリーナ級の会場から中規模のホールらしきものまで、カセットテープで撮ったようなクオリティの低いものから、正式なライブ録音としても通用しそうなもの、そして遊びで録音したようなもの。とにかくごった煮状態で収められている。

メンバーはベースとギターがジョン・マッコイ、ギターがバーニー・トーメ、キーボードとフルート、バッキングボーカルとしてコリン・タウンズ、ドラムとパーカッションがミック・アンダーウッド、そしてボーカルがイアン・ギランだ。アルバム「ミスター・ユニバース」、「グローリー・ロード」、「フューチャー・ショック」、そして「ダブル・トラブル」からの曲が中心だ。

もちろんオフィシャルアルバムの曲を聴くのが正しい鑑賞態度ではあるが、ファンとしてはこのようなCDも聴かずにはいられない。このCDは2003年にAngel Airから発売された、ドイツ盤だ。(20070518/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

2007年05月17日 03:58

c1f95eac.pngイアン・ギラン・バンドの魅力は、レイ・フェンウィックのギターとジョン・ガスタフスンのベース、マーク・ナウシーフのドラムによる、そのジャズ・ロック的なアプローチだ。そしてコリン・タウンズのキーボードを加えて「プログレッシブ・ロック」としての評価も得ている。しかしイアン・ギランのボーカルはプログレ的ではなく、その対比が面白いという人もいる。

しかしイアン・ギランのボーカルは、ある意味で革命的であり、挑戦的だ。ボーカルを叫び声で表現するのは、例えばオノ・ヨーコが「fly」でみせたような「うぇぇえぇぇ」というものと似ているともいえる。その意味では、イアン・ギランのボーカルそのものが「プログレッシブ」であるといえよう。

このCDは、イアン・ギランのソロの足跡を概観するのにうってつけだ。1枚目のCD1曲目から4曲目はアルバム「Cherkazoo And Other Stories」から、5曲目から7曲目はセカンドアルバムの「クリアー・エアー・タービュランス」から、8曲目から14曲目はサードアルバム「スカラバス」から。2枚目のCD1曲目から5曲目までは「アクシデンタリー・オン・パワポーズ」、6曲目から11曲目まではアルバム「ネイキッド・サンダー」、12曲目から16曲目まではアルバム「ツールボックス」からの選曲である。

録音は元のオフィシャルアルバムどおりのもので、このCDを聴いても驚きはないが、このCDを使ってイアン・ギラン・バンドを手軽に聴くというのもありなのだろう。2005年にUnion Square Ltd.から発売されたものだ。(20070517/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)

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