祝 記念シンポジウム 肉腫(サルコーマ・GIST)に特化した外科治療センターの設立

ランチオンセミナーに続いて、13:15〜15:45まで以下のテーマで講演が始まりました。

我が国における肉腫(サルコーマ)・GIST医療の最前線
―17施設、29名の肉腫医療の専門家集団・キュアサルコーマボードの挑戦―


最初に登壇して下さったのは
川口 知義 先生です。(癌研有明病院 顧問 整形外科 前部長)

川口 智義 先生

テーマは 「骨軟部腫瘍に対する外科治療の進歩」です

★ 骨肉腫は80%くらいは根治するようになったそうです 

★ 骨肉腫の生存率は
  Highグレード・・・ 60〜80%
  Lowグレード ・・・80〜100% 

★ 切除縁評価法(骨軟部腫瘍の切除に際して安全で、再発を防げる切除縁)ができてから
  1572の症例数があるそうです。
  ・・昔は、再発防止のために腫瘍を大きく切除していましたが、   
    切除縁評価法が確立したおかげで、
    今ではたとえば不必要な上・下肢の切断などもせずにすみ、
    再発も防止できるようになったということです 
 
★ 浸潤性の腫瘍は、全部切除するとすべてなくなってしまうので、問題が起こる。
  問題が起こらないように思い切り取るが
  浸潤部では顕微鏡的に W2 (more than 1 cm)で切除するのがよいとのことです。

 川口先生2


★大野先生(淵野辺総合病院 外科部長)から川口先生への質問がありました。
 大野 烈士 先生

 <質問>神経や血管との距離をあまり取れない時は
      どうすべきか?

 <答> 1.マージンをつけて丸ごと取る。
      2.そして血管、神経を残す。
      3.そうすると再発はみられない。

大野先生は皆さんがよくご存じのように、手術を断られた難しい多くの患者さんが救われています。
何人もの患者さんの難しい手術をして下さって、心から感謝しています         

 川口先生のレポートについても、他の先生のレポートも
 音函さんのゆとりどりーむにもっともっと詳しいレポートがあります。
 ただただすごいなぁ、と感心するばかりです 
 どうぞ、ご覧下さい。

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次に登壇されたのは
上浦 祥司 先生(大阪府立成人病センター 主任部長、婦人科)です。

上浦 祥司 先生

テーマは 「婦人科腫瘍に対する外科治療の進歩」です。

★婦人科腫瘍は卵巣より子宮が多い。

★子宮体がん→これは CANCER(キャンサー)

★子宮肉腫の組織学分類
 1.癌肉腫
 2.平滑筋肉腫
 3. 子宮内膜間質肉腫
    低悪性度
    高悪性度

   250例ほど集積された症例のうち、
     48%が癌肉腫
     36%が平滑筋肉腫
     13%が子宮内膜質肉腫

  これは発生頻度も含めて、アメリカのデータと全く同じ結果だそうです。

★生存期間は
  子宮癌肉腫・・・・・・・28ヶ月くらい
  子宮平滑筋肉腫・・・・・31ヶ月くらい
  子宮内膜間質肉腫・・・・6ヶ月くらい
 
★子宮肉腫の診断 
 1.腫瘍径の急速な増大
 2.閉経後の子宮の増大
 3.不正性器出血(平滑筋肉腫では40%にとどまる)
 4.月経時以外の下腹部痛(筋腫に一致する痛み)
 5.圧痛、発熱

★子宮肉腫の診断
 1.USG
  結節内の不均一エコー像
 2.MRI
  T1強調画像、T2強調画像の高信号
  拡散強調画像の高信号
 3.組織検査
  子宮内膜生検・・・・癌肉腫
  腫瘍針生検(?)・・・平滑筋肉腫、内膜間質肉腫
 4.LDH(乳酸脱水素酵素)
  LDH2 LDH3の上昇

★単純子宮全摘術・準広汎子宮摘出術・広汎子宮摘出術の切断位置を図で比較

★子宮癌肉腫に奨励される治療法
   広汎子宮全摘術 または 準広汎子宮摘出術が考慮される
 
★子宮平滑筋肉腫に対して推奨される手術術式と術後補助療法は?
  1. 単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術を含めた完全摘出が奨められる(グレードB)
  2.. 追加療法が必要な場合は化学療法も考慮される(グレードC1)
  3. 術後放射線療法の有効性は低いので、日常診療での実践は推奨されない(グレードC2)

 上浦先生

   一番いいのは手術。
   卵巣を取った方がいいかどうかは不明。
   取り残した場合→再手術→さらには抗がん剤治療
   血行性転移がほとんどなので、抗がん剤で治療するも、
   ドクトルビシンは効かなかった 
   ジェムドセは良くなる傾向が見られる。

   手術後の放射線はあまり効果がみられていない。

★子宮平滑筋肉腫・子宮内膜間質肉腫の切除不能進行例や再発例に対して推奨される治療法は?

  1. 再発例で可能な場合は外科的切除も奨められる(グレードC1)
  2. 化学療法による治療も考慮される(グレードC1)
  3. 低悪性度子宮内膜間質肉腫ではホルモン療法も考慮される(グレードC1)
  4. 緩和医療を目的とした照射も考慮される(グレードC1)

★再発例
 182例中、再発時の手術がきちんとできている患者さんは良くなっている  

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質疑応答
  
★森岡 幹先生(昭和大学病院産婦人科)からの質問

 <問>手術後の補助療法はどういうことを目安にしているか?
    GT療法は?

 <答>抗がん剤治療を強く勧めている

★大西 啓之さん(キュアサルコーマセンター 理事)からの質問
 
 <問>ホルモン剤の補助療法について
 
 <答>タモキシフェンにせよ、これが一番というものはない 

★大山 優 先生(亀田総合病院、腫瘍内科)

 ジェムドゼも、補助療法はデータがない。

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 キュアサルコーマノセミナーではいつも先生達も活発に質問されます 
 現場で患者さんの命をになっておられるからでしょうね。
 とっても真剣です。
 症例が少ない肉腫患者にとって、
 診療科の垣根を越えて交換された情報が治療に生かされるのはありがたいです。

 そのおかげで、こんなに短期間で治療がここまで進んできたのだと
 改めて実感したのでした 

個人的な話ですが、
前回、5月に大阪中之島公会堂であったセミナーの時には、
全く面識もない上浦先生に、いきなり感染症にかかっていた腹部のことについて伺ったにもかかわらず、
的確なアドバイスを頂いて、
しかも、とっても優しく答えて下さって、
心から安心することができたのでした。
ありがとうございました