ぴあムック
発売になりました!
ぴあMOOK『究極のカレー』2011首都圏版&東海版です。
僭越ながら、巻頭インタビューで出させて頂きました。
もちろんお料理も後半で2ページに3品のレシピを掲載してあります。

今回スペシャルだったのは過去の私のマスコミ取材で初のスリランカ料理を掲載できたことです。
具はなんとカシューナッツ。カシューナッツだけ。しかもカツオ節の出し汁!
でもれっきとしたプロパーなスリランカ料理なんですよ。
そしてもう一品はムンバイ名物の屋台料理!!
これはパンのためのカレーでサッパリとしたじゃがいもが病みつきになる味。

いままで18年間、ドロリとしたルーがあるような「日本人がイメージしやすいカレー」を求められ、馴染の無いスパイスを敬遠されてきたインド・スパイス料理史上快挙かもしれません。
もちろんこの本には200ものカレー店やレシピのインフォメーションがあり充分カレーマニアの期待に応えるものになってはいるのですが、そのなかで「ちょっとマニアックだけど本当に美味しい、是非紹介したかった素晴らしい料理たち」が大手メディアさんで陽の目を浴びる時代になってきました。

スパイスはヘルシーであること
現地にはまだまだたくさんの目からウロコなカレーの世界があること
レシピを工夫すれば日本でも充分美味しく再現できること

これらのことがどんどん当たり前になってきました。
嬉しいです!楽しくなってきましたよ!


おうちでアジア
そして1月から神奈川新聞にて連載を書いています。
日曜版に隔週で、タイトルは「おうちでアジア」
インド・スリランカ・韓国・ベトナム・中国点心の5つのエスニック料理を5人の料理家が紹介します。文章をまとめるのは香取・・・・・はい、そうです。今回はライターとしてデビュー!
もともと一冊目の著書『インドごはん』からして書くことが楽し過ぎてレシピ本だかエッセイ本だかわからない出来となってしまったこの私(威張るな自分)、
各国の料理の専門家が語る興味深い話題を、食文化を軸にまとめるのは楽しい仕事です。
頑張っております!連載は一年間です。

スパイス瓶2
ということで、本題に入ってゆきましょう。

そろそろ、言ってみようと思うのです。
以前からずっと、気になっているこの業界で困ってきた部分。

スパイスのファンが増えてきた昨今であるのに、
表示法によってスパイスのファンがつまずいてしまっているいくつかのこと。
まず筆頭は唐辛子の粉の表示です。
私はレッドペッパーといつもレシピに書いています。
たまに見かける「カエンペッパー」もしくは「カイエンペッパー」ですが、これはカイエンヌという辛みの特に強い高級品種の唐辛子のこと。厳密なことをいうとこのカイエンヌ種の唐辛子100%を粉にしたものにこの表示がつけられます。
けれどレシピにとって必要なのがカイエンヌ種の粉でなくてはいけない(そんなことあるのかな)のでなければ、要は唐辛子の粉であれば一味唐辛子粉(七味に対して混ぜ物がない唐辛子粉であるという日本独特の表現ですね)として売っているものも、レッドペッパーとして売っているものも、どれであってもかまわないわけです。

メーカーが「カエンペッパー」と表示していても「レッドペッパー」でもオッケーです。
これはメーカーの独自性の問題。
(辛さにばらつきがありすぎるのはレシピ化には問題なのですが、まあそれは今回の話題とは違うのでまた別の機会に)

でも私たち料理家がレシピを書くときには、カイエンペッパーと書くとカイエンヌ種の粉でなくてはいけないということになります。
料理本の読者は一生懸命「カイエンペッパー」を探します。家にレッドペッパーがあっても。売り場に「一味唐辛子」があっても「ああ、ここにも無い・・・」と探す人が多いのです。一般消費者とはそういうものです。無理ないです。

レッドペッパーと書けば唐辛子の粉の総称なので、私はそう書いています。

ここで気をつけなくてはならないのは「チリパウダー」というもの。
これはメキシコ料理を作るための調合スパイスで、唐辛子を主にオレガノやガーリックなどをブレンドした全く違う粉。よーく見ると少し黒っぽい。
間違えてこれを買ってきてインド料理を作るととても変なものができてしまいます。
料理家は、けして唐辛子の粉のことを日本では「チリパウダー」と書いてはいけません。メキシコ料理以外には。
本当は業界が一斉にこのタイプのものの表示を「メキシカンチリパウダー」にしてくれたらいいのですが。

さてここでカイエンペッパーの話に戻りますと、カイエンペッパーを探しに行って売ってなかった場合、多くの人が「まあ似たようなものだろう」とこの「チリパウダー」を買ってしまうのです。
その結果・・・・・泣きをみます。美味しくできる訳ありません。

さらにややこしいのは「チリペッパー」です。これは英語的に「唐辛子の粉」のことになるので、まあオッケーですね。でも、ややこしいでしょ?
「チリペッパー」とレシピに書いてあった場合、売り場で「チリパウダー」を買ってしまう慌て者さんもやはり多いんです。
はい、インド料理教室を18年やってると、そういう人にたくさん出会いました。だから言ってるのです。
チリペッパーとかチリパウダーと書くよりは「レッドペッパー」のほうが間違いがないのです。

同様に、レッドペッパーと表示した「タカノツメの輪切り」というのもどうなのでしょう・・・・推して知るべし。

スパイス瓶1
はー。ややこしかったですね。
ついてきてますか?(笑)はい、ここらで首の体操でもしないと次読んでられませんね。

もう一つ行きますよ、体操しましたか?

これです。どうしてクミンパウダーにクミンシードと表示してしまうのでしょう(もう泣きたい)
小さくパウダーと書いてあったって、だめです。
これで失敗して「上手くできない」「変な味になってマズイ」と泣きついてきた生徒さんや一般の読者さんがどれだけいたことか。
今まで散々、どうやってクミンシードを使うのかを教え続けてきました。今や英語なんか解らないおばちゃんたちやお爺ちゃんたちもたくさん、私のインド料理教室にいらっしゃっています。
見た目が粉でもシードと書いてあれば「わーい、あったー」と、買ってしまうのです、消費者は。

せっかくスパイスを使い始めてくれた人たちを今までどれだけこの表示が再び遠ざけてしまったか。
お願いです、表示を変えてください。もうこれが通る時代ではありません。スパイスは急激に一般化しているのです。

しいて言えばですね、インド料理のレシピに月桂樹の葉をローレルと書くのも変な話なんです。
インドはイギリス英語圏なので、インド人にローレルなんでフランス語で言っても通じません。
インド料理の場合はベイリーフ、これは私の小さなこだわり。

同様に香菜(コリアンダーの葉)を、インド料理のときにパクチーと書くのもいや。
タイ料理ならいいです。タイ語ですから。
インド式にダニヤーパッターと言いたいところですが、まあこれは日本語の香菜で通じるのでこれでいいかな、
ただし!これを「こうさい」と読めばいいのですが「シャンツァイ」と読むと中国だっ(笑)

メーカーのみなさま、生意気なことを申しましてすみません。
でも、私はおそらく一番エンドユーザーに近い居場所に長年おります。
今後の業界全体のために、1つの意見としてご検討ください。
何度も書きますが、せっかくユーザーがスパイスに今とても興味を持ってくれているのです。がっかりしてしまった人はしばらくまた遠ざかってしまいます。

この仕事はずっと、需要のなかったスパイスを通常の販売ラインに乗せていただくこととの戦いでした。
スパイスはレシピがたくさん世に出ると売れるようになるのか、
スパイスが売っているからそれを使うレシピをメディアは載せてくれるのか、

これは鶏が先か卵が先かの理論です。
スパイスメーカーさんは、売れる確証がないとラインナップに入れたくない。
マスコミはどこにでも売っているものでないとそれを使った料理を紹介したくない。

私は間に挟まれて説得しつづけてきました。
いま、かつて手に入りにくかったマスタードシードやフェヌグリークが少しずつ通常アイテムに入ってきました。
手応えを感じます。
これらのスパイスが今後日本の食卓を更に美味しく健康的にしてゆくように、私はずっとずっと、がんばってゆくつもりです。

化学調味料などと違ってスパイスは使えば美味しくなるだけでなく健康に必ず寄与します。
日本人はそれを学ぶだけの学習欲と能力と経済力があります。
地球は温暖化でどんどん私たちは熱帯の食の智慧から学ぶことが増えてゆきます。
私はこの自分の立ち位置を、しっかり役立つものにするために必死でアーユルヴェーダも勉強しています。
「身体にいいよ」だけでなく「どのようにいいのか」をきちんと語れる料理家になりたいからです。

インドやスリランカと、料理とスパイスが、大好きなのです。


(なお、私は武蔵境に住んでおりますので、この写真は武蔵境駅前のスーパーが置いているメーカーさんのものを参考に撮りました)