トゥルシー
いよいよ200人分の食事の仕込み。
その前に、この旅の経緯は1つ前のブログ(長くて倒れると思うけど)をご覧ください。
チェッティナードに魅せられて  その1【旅のなれ初めとチキン65のルーツ】


・・・・見てきた?
もう疲れたって??ww

どんまいっ。

写真は古いお屋敷の中のトゥルシー(ホーリーバジル)の鉢。
チェッティナードのお屋敷には必ずあるそうです。
このことだけでも語りたいけど我慢します。
話そらしてる場合じゃないですわ。

イドゥリグラインド
私とChiliちゃん、前日に一旦下見。
彼女はチェッティナードのイドゥリがフワフワで柔らかく美味しい、その秘密を見たくてウキウキです。ドーサ用と別に浸水した豆を、現代ではグラインダーで挽きます。

これがね、いつまでもいつまでもどこまでもとことん挽くのよ。
わたしはケララでもウドゥピでも感じたけど、ウラッド豆って挽いてるそばから発酵してくるのよね、向こうの気候だと。
それを、もういいやと思ってもまだまだ挽くの。
それから更に一晩発酵させるというわけです。

昔の臼
これが昔の臼です。
手動でごろごろ。
いつまでもごろごろ。


たいへんだったでしょうね。
延々とごろごろ。

コーヒーフィルター
これも前日の仕事。
サウスインディアンコーヒーの仕込みです。

コーヒーに仕込み?と思いましたか?
伝統的なやり方ではこんなコーヒーメーカーでデコクションという濃いコーヒーの素を作るんです。
それにしてもこのコーヒーメーカーはお化けのようにデカイです。
私が買ってきたのは一番大きいサイズでも日本の茶筒くらい。
一晩かけてデコクションを落とすんですって。

感動とともに、私が思ったこと、それは
明日は絶対にこういうものをこぼしたりして迷惑かけてはいけないということ。

事務所ではいつもいろいろ蹴飛ばしたり引っかけたりして
「ひとりドリフ」やってるの。

見学のための動線もしっかりシュミレーション。
きりりっ。
本気はいると香取、大丈夫。

冬瓜おろす
ハルワーという練り上げて煮たスイーツを作るための冬瓜をおろしています。
これもまた、延々とやります。

この人ヒマというか飽きてるもんだからいろいろ話しかけてくれましたが、タミル語のしかも方言なのでChiliちゃんもまったくわかりません。

面白かったのは何か話しかけられるたびにChiliちゃんがチェンナイにいるご主人に電話して「この人なんて言ってるの!!」と聞くんです。

ご主人、そんな電話が日に10数回???
それでもご主人にも聞き取れないこと多し。
おそるべしインドの言語の多様性。

並んだ食材
翌日使う野菜がキッチンとホールの間の通路にきれいに並べられていました。
これはいいやり方です。

私もかつてインド人の家族として妹の結婚式などを仕切りましたが、調理人にどれだけの食材を渡したか、それをごまかされていないか、用意したものは新鮮か、使い忘れはないか。
そんなことが何の会話もせずに雇い主と料理人たちとがオープンに見てとれます。
ここにあれば誰も盗めませんし使うときに取りに行くにも近い。
ご主人が見ると思えば虫食いだらけの野菜なんか使えません。
なんのごまかしもできない、しかもスマート。

こういう小さい事が合理的に決まっているというだけで、インドではかなりインテリジェントだと思います。

夜明け前に到着
当日。
夜明け前に到着です。
ドライバーさん、明日は朝5時前に来てと言われて泣きそうになってました。
ごめん。
調理スタッフたちが「あ!この外国人本当に来た!」という顔で少し嬉しそうに迎えてくれました。

本当はものすごく綱渡りだったんです。
マダムの許可は得ていましたがそこはインド。
婚約する息子さんのご家族の女性に話が行ってなかったので、朝5時からの見学を断わられてしまったのです。
お忙しいマダムに泣きつくのは最終手段。香取49歳、なんとか自分の力で乗り切りたい。
Chiliちゃんも青ざめています。でも私たち頑張った。
ちょうどそこで新聞を読んでいたジェントルマンにビビビっときたので、世間話をして名刺など渡し自己紹介し、目的を告げ、どうしても調理の見学がしたいのですと話してみたら、
ビンゴ!その家の家長でした。
快くご許可を得て、2人で大喜び。インドは何ごともトップダウン。
そして運も実力のうち。今回はイケるというノリがあった。

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まず始まっていたのはコルカッタイ包み。
ポテト餡とスイート餡の二種類ありました。ギョーザみたいな感じで揚げたのと蒸したのを両方作ってましたね。
これはおそらく誰にでもできる作業なんだろうね、マネージャー氏(左端の大きな男性)やら中学生みたいな子やら、あとから洗い物や下働きのオバサンまで駆り出されてましたよ。
見に行ったらあまり上手じゃなかったよ。遅いし。
私がやってあげたかった(生意気)。

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その反対側では、親方とみられる親父さんがどんどんと時間がかかるものからカレーを作ってゆく。
若いのも無言でテキパキ働いてるけどこの親父さんの進める鍋の進行に沿っていたと思う。
香取、まずは離れて凝視。
混ぜるときの親父さんのリーチとか油などの危険物の位置とか鍋の通り道とかを確認しながら再現できるレシピをメモしてゆく。
真剣勝負の始まりです。

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前日、泊まっているホテルのオーナー(マダムの妹さん)からも、
200人分の仕込みなんか見ても実際に個人で作るのと違うんだから意味無いじゃない。と言われました。
まあ普通はそうなんだろうな。
だけど私は100とか200とか300とかの食数の経験はたっぷりあるの。
ポイントを見逃さず入れていたスパイスの種類が見抜ければ再現する自信がありました。
いろいろ話した後で、
「で、行くのね」と呆れられ
「Sure !!!」と大きな声で大きな目で返事。
彼女はついに笑い出し、
「I like this woman(苦笑)」と私の肩をポンとたたいて去ってゆきましたよ。

親方を見つめる香取
見れば見るほど、この親方プロでした。
Chiliちゃんの作ってくれた彼女のブログの動画にも出てきますが、キモの作業は外さない。香菜なんてインドの水で洗った後一旦刻んでしまったら即刻腐り始めるんだけど使う直前ちゃんと確認をする。
唐辛子のデコクション(香取の造語)作りも量をぴたりと決めてましたね。かっこいいなあ。


wスパイス(セイロンシナモン)
粉のスパイスは小さなバケツに入っていました。そこからお玉ですくってジャバジャバ目分量で入れてゆきます。早い早い。
インドの料理人の一番カッコいいところです。
でもメモとるのはたいへんよ、
邪魔しちゃいけないからね、料理教室じゃないんだからいちいち聞けません。
これはホールのスパイス。
チェッティナードフレイバーを出す秘密たち。
解る人は解りましたね。インド料理として大きな違いがあります。
セイロンシナモン使ってた!!!!(割って香り確認済)
さすが海沿いからの移住なのだ。

親方とコーヒーブレイク
そして親方が一息ついたときに、言葉は通じないけど、各鍋に入れたスパイスをスパイスコーナーから1粒ずつ手に乗せて鍋の横で親方に見せて、
「これに入れてたのはこれで全部か?」という顔、をする。
親方、興味深く覗いて、合っているのでうなずく。
「こっちのはこれでよかったか?」香取再び聞く。
親方、「これが足りない」と1粒持ってきて足す。
そんなやり取りを経て、私が観光客じゃなくて料理人なんだってわかってきたみたい。
しまいにゃー親方がコーヒー淹れてくれただよ。うっしっし。

職人の爺さんと
このおじいさんはね、やはり難しいキメの調理もやってたからベテランさんですね。
このチームがすごいのは、時間ぴったりに温かく仕上げたこと。
ドーサもワダも冷めてなかった。
プーリもパーンと張ってしぼんでなく、サックリしてた。
パニヤラムの形も美しかった。
たぶんかなり信頼されて任されているのでしょう、流れるような動き。誰も怒鳴らない誰も焦らない。
そして時間ぴったり。

ココナツ削った殻
だいたい、こんなにココナッツ割るのも削るのも、嫌になっちゃうよね。
北インドじゃ正当な料理人修業では石ミルでのマサラ挽きを三年やるって友人のシェフのナシームが言ってた。
挽きながら先輩の配合を自分で勝手に学ぶんだって。誰も教えてくれないって。

はあ。ごめん、まだ続くの。

これからは料理の写真よ。

ペッパーイディヤッパン
巨大蒸し器ではイドゥリの前にまず果てしなく大量のイディヤッパンが蒸され、それはどんどん大きなたらいのなかへ。
これすごい量なのよ。この容れ物すごく大きいんだからね。

たくさん溜まったらそこに胡椒やカレーリーフやら味付けして、千切れてしまってもかまわずグルグル混ぜます。
チリチリになって味もついてまったく別なものになりました。

ペッパーイディヤッパンと呼ばれていました。

イドゥリ蒸しあがり
イドゥリです。

この量を淡々と蒸しつづけます。タイマーないのに時間ぴったりに蓋あけます。
布から剥がすのもするっとうまくいく。
蒸し足りてなかったり温度が下がりすぎたりするときれいに剥がれないのにとても上手。これはたぶん専門職なんだろうな。
オーケストラみたいに、打楽器じゃないけど蒸し物って分野なんだと思う。


ドーサ
はい。ドーサもどんどん焼けるよー。

一人分ずつのミニサイズ。他のものもたくさん食べるからね。
これくらいのサイズで焼き立てをどんどんくれるほうが確かにいいわ。
Chiliちゃんの動画をみると、鉄板の温度慣らしに水かけて、あるもので鉄板を撫でていて・・香取はツボでした。
すてきだとおもった。

女性並ぶ回廊
婚約式がはじまるというので、私たちもサリーを整えホールへ。
昨日見学の許可をくださったご主人が入り口でお客様をウェルカムしてらっしゃいました。
やはり私たち、一番重要な人を捕まえたみたいね。うふ。
そしてホールには着飾った男女がびっしり。
1つ気付いたのは、子どもの姿がなかったことです。通常インドではこんなファンクションの席は走り回るガキンチョ・・いえ、お子であふれ返っています。
ここでは、大人の席には大人だけ。
拝火教徒が例えば35歳とか年齢がおちくつまで結婚しないように(だから子どもの人数が極端に少ない)ここにもなにかそんな匂いがします。
婚約は、この婚約を認めますと参加者全員が署名をします。花嫁はいません。結婚するまで婚家には入れないそうです。全員が署名し終えると僧侶が呼ばれマントラと共にそれを読み上げて儀式は終り。ダラダラ長くやりません。
違う・・・普通のインドの社会と全く違う。
一族が認めたかどうかで結婚が決まり署名が残る・・・・・
うーーーーん。どうなんだろ、これ離婚しにくいな(そういう問題っ?!)


お食事スタート
お食事がスタートしました。お隣の中庭で30人位ずつが入れ替え制。早朝コルカッタイを包んでいた人たちや野菜を切ってた人たちが給仕で大忙し。
女性と男性に向かい合って別れて二列でいただきます。
食べ始めがスイーツだったり、いろいろと面白い。
もちろんものすごーーく美味しかったのですが、

なにしろ香取、すっかり厨房のマドンナ(自称)と化していたため、
つまみ食い・・・じゃなくって、貢がれ食いばかりやってたもんだから・・・

だって・・・揚げたてはうまいっす。

女性たち退場
女性たち退場。
アップで写真に撮るのはさすがに差し控えましたけれどとにかく女性の貴金属がすごい。
銀行業が主と言われるコミュニティーだけのことはあり、女は皆「歩く金庫」!

一流ホテルの宝石店のウインドーにライトが当たって飾ってあるような、総ダイヤモンドのチェーンと巨大色石、
というようなネックレスの本物を、

全員が、

お召しです。

ここまでなのは初めて拝見ですよ、まったく。

メニュー会議
興味深かったのは、近しい親族の女性だけが集まって食後にこのカップルの結婚式に出す食事のメニューの話しあいが始まったこと。
もちろんヴィサラクシマダムが最上の上座です。
おもしろいから末席で混ざってみました。
タミル語になったり英語になったりで半分くらいは聞き取れました。
あれが食べたいこれが食べたいとみんな好き勝手。
北インドのパラタどう?おいしわよーという人には「それって何?」が殺到。
これこれこういうものよ、と解説する横から「高く付きそうね」
しばらく勝手に話させた後マダムがたまに
「話がそれたわ、戻してちょうだい」とピシリ。
翌日マダムにインタビューに行ったときにこの会合のことも質問してみました。
これはここの一族が特にグルメなので毎回やっていて、たいへんなのですって。
どうやらマダムにはどうでもいいことみたいでした(笑)


引き出物
これが帰りに配られた引き出物。
ステンレスのボールにビンロウジュの実、ビンロウの葉(パーン)、
キャッシュの入った封筒(21ルピー)
インドではぴったりの金額にしないで最後に1ルピーを足す習慣があります。
そういえばチェッティヤールの人たちは結婚のダウリ(持参金品)のなかに食器や鍋などの台所の金属製品を50セットか100セット、どちらかを持ってくるとのことです。
なぜか51セットではなく50。99じゃダメで100。
うんうん、すごくコミュニティーに特徴がありますね。

ミュージアム
マダムはご自宅のお屋敷(くどいようだが実情はパレス)を文化継承に役立てようとされています。
二階の細長い回廊スペースに、こんな博物館を作られました。

チェッティヤールの人々の歴史が詰まっています。
単なる民族歴史館というよりは、
人の手間やセンスにあふれた空間です。


トラベラーズキッチン
そのひとつの例がこの「トラベラーズキッチン」
旅行中の煮炊きに必要なものがコンパクトに詰まり、背負えるようになっています。
旅しつつビジネスをしていたんですね。
こういうミニチュアな丹精な世界って日本人も得意とするところですよね。

装飾ココ削り
包丁とか、ココナッツ削りにもアンティークにはこんなに装飾が施されています。
美しく飾るのは建築だけではないのです。
この美意識はインドでも最高のものなのではないでしょうか。
インタビューでマダムに質問してみました。
建築などへの美意識、装飾への情熱の源は何なのでしょうかと。
マダムの答えは、
ここは今でこそダムができたりして水運が変わったけれど昔は砂漠と言ってもよいような場所だった。緑がない。景色が乏しい。
すると人は自分の周囲に「美しいもの」が欲しくなるのだと。

同じ事をラージャスターンの砂漠でも感じたことを思い出しました。
かの地では派手な派手なサリーが灼熱の陽射しと砂漠に映えます。
けれど住まいや生活は地味。
両者の違い、やはりそれは財力だけなのでしょうか。

・・・教育ですよね。とてもとても大事なことです。

クリシュナWエンジェル
こういうデザインがほんとうに、チェッティナードの面白いところです。
ヒンドゥーの神、クリシュナに羽が生え、エンジェルと一緒に昇天しています。
素材はミラー、グラスカッティングまたはガラスエッチングのような加工。
きれいです。

城塞の遺跡
すぐ近くには城塞もあります。
一面が見渡せ、大砲があります。
見渡すと、生活用水のための人造湖や貯水池がたくさん見えて、津波から逃れるために移住してきた際の苦労が偲ばれます。

Kバターボール似の石
そうそう、マハーバリプラムで見た「クリシュナのバターボール」と同じような不安定巨石がここには3つもあったっけ。


次回につづく。チェンナイでチェッティナード料理を習います。

【ねぎらい】ここまでよくお読みになりました。長かったでしょう。
休んでください。