2010年05月07日
WINTER HOUSE by Carol O'Connell
名門のウィンター家で刺殺死体が発見される。殺されたのは連続殺人の犯人で、マロリーが逮捕したものの司法の盲点をくぐって釈放されてしまった男。ウィンター家にいたのは誇り高い老女NEDDA WINTER(ネダ)と、40歳なのに幼女のように振る舞う姪のBITTY SMYTH(ビティー)。ネダは強盗と間違えて刺したと言うが・・・・。
捜査に当たったライカー刑事は凶器がアイスピックと知ると、58年前に起きた「ウィンター家の惨劇」を思い出す。その事件では両親、子供達、使用人がアイスピックで次々に刺殺され、ネダは誘拐されたまま行方不明、運よくその場にいなかったクレオとライオネルの幼い兄妹だけが助かった。59年過ぎて帰ってきたネダだが、クレオとライオネルは姉の帰還を喜ぶ様子がない。またネダはその間どこにいたのか話そうとしない。
58年前の惨劇は犯人も不明で、警察官だったライカーの祖父が必死に捜査していた事件だった。一方マロリーはネダの証言に不審なものを感じる。その夜照明が付いていなかったにもかかわらず、ネダは一刺しで相手を殺しているのだ。まるで誰かが襲ってくるのを予期していたかのように。一体ウィンター家に隠された秘密は何なのか?
相変わらずマロリーは現実的で、カビ臭い古い事件にはあまり興味が無い。ただ自分の追い詰めた連続殺人鬼が殺された事件の解決だけが目的。ライカーは祖父の無念を果たそうとしますが。名門の一家の内情を探るにはやはりチョ―お坊っちゃま育ちで人の良いチャールスの存在は欠かせず、彼は珍しくマロリーに抵抗してネダを擁護します。
所々で使われるビッグバンドジャズのBGMも古い家には良く似合い、最後にこれが別の意味を持ってくる点もさすがO'CONNELL!
これまでこのシリーズはマロリーの過去が事件と複雑に絡む内容が多かったのですが、この作品は純粋に「謎解き」に焦点を当てています。だってウィンター家の人々はみんな胡散臭い。40歳で弁護士資格もあるのにぬいぐるみに囲まれて生活するビティー、クレオとライオネルは家に滅多にいないし。ネダに至っては59年間どこで何をしていたのか、それに何故アイスピックを持っていたのか?
勿論犯人は意外な人物だし、その動機が異常で、O'CONNELLらしい極上のサイコサスペンスになっていました。犯人が解った後も意外な展開まであり、この作品はとても楽しめました。